なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、シュウさんの準備が完了するまでの暇潰しも終わり、黙って待つこと数分。
いよいよ全ての前段階が完了したのか、淡く輝き始める具らんぞん。
その輝きは最初こそ弱々しいものだったけれど、次第にその光量を強め、最終的にはとても直視していられないほどの極光と化す。
まぁ、そのせいで相手の変化を見逃すと困るので、予めみんなにはサングラスを渡していたわけだが。
……あ、最初から眼鏡してるマシュだけは眼鏡付近に黒い靄を出すことで閃光防御に変えてるんで悪しからず。
ともかく、光の中でシルエットが変わっていくのを眺めながら、内心相手に対しての準備を整えていく。
『……ふぅ、第一段階は成功、ということでしょうか?』
「んー、そうみたいだねー」
光が収まり、そこに鎮座していたのは魔神、ネオ・グランゾン。
登場当初と比べると、他にも実力が並ぶ機体が複数現れたため相対的に格の下がったような気がするが、そもそも並ぶものが増えただけで実力自体は変わっていないため、舐めて掛かることなんてできやしない驚異の機体。*1
本来邪神の力を必要、ないし利用しなければ変化できないはずのそれは、しかして私たちの前にその威容を惜しみ無く披露していたのだった。
(……となると、ヴォルクルスないしそれに相当する邪神がやっぱりいる、もしくは今生まれようとしているってことかな……)
相も変わらず、それらの気配は察することができないが……実際、目の前にこうしてネオ・グランゾンが鎮座している以上はそう確信せざるを得まい。
……問題は、相手方がどのタイミングで仕掛けてくるかだが……。
『さて、それでは早速準備をお願いしたいのですが、いかがでしょう?』
「んー、縮退砲の試験ってこと?」
『流石にフルパワーをいきなり、というのもあれですので最初は武装の確認から始めようかと思うのですが』
「ああ……他にも色々あるもんね、武装」
意外なことに、先ほどまであれほど縮退砲に拘っていたように見えたシュウさんは、他の武装の確認を優先すると発言。
……ネオグラの武装の中で一番危険なのは確かに縮退砲だが、その一つ前の武器である『ブラックホールクラスター』も大概危ないのは間違いあるまい。
まぁ、それも含めて大抵の武装はグランゾン時代から使えたモノであるため、どちらかと言えばどれくらい威力が上がったのか、を確かめる意味合いの方が強いような気もするのだが。
ともかく、初手銀河滅亡があり得ないのであればそれに越したことはない。
もしかしたらこの小手調べが
というわけで、私たちは彼の提案を二つ返事で了承したのだった。
『では、まずはこちらです。──ワームスマッシャー!!』
「おおっと全天周攻撃!」
始めに選ばれたのは、ワームホームを開きそこにビームを照射することで相手の周囲三百六十度全てから砲撃を行う武装、ワームスマッシャー。
手前に相手がいるのに全然関係ない方向から攻撃が飛んでくるうえ、曲がるビームのように射線を見切ることが非常に難しい難武器である。
それこそ、後ろに目を付けているのでファンネルのオールレンジ攻撃も避けられる……みたいなどこぞの天パでもないとそうそう回避できないだろう。*2
「まぁ、避けちゃうんですけどね!」
「というかそのためのサングラスだったのかこれ……」
メイトリックスさんに渡して、その見た目をターミネーターにするためだけの小道具だと思ってた……とはライネスの弁。
……いやまぁ、そういう意図が一切ないとは言えないけどね?
はてさて、私はともかく他の面々まで死角からの砲撃を避けられたのには理由がある。
それが、さっき閃光防御のために手渡したサングラス。
これ、正確にはサングラスじゃなくてマジックミラーの類いで、かける電圧によって透明度が変化する特注品なのである。
で、今は透明度が高く黒さの一切ない状態になっているのだけれど……そこに、背後の映像を投影することで後ろへの目としているのだ。
コナン君の『追跡眼鏡』の改良版、とでも言えばいいだろうか?
眼鏡の弦に付いた小型カメラで背後を撮影し、リアルタイムでレンズ部分に投影する……というやり方で、後ろを振り向くことなく背後の状況を確認できるようにしている、というわけだ。
まぁ、ライネス辺りはそれが確認できても回避できるかは微妙なので、現状は簡易礼装・ミニトリムマウによるスケート移動(※半自動)の補助ありきなところがあるわけだが。
「いやはや、作っておいて良かったね
「ところで、
「こっちをこれ以上研究するつもりは今のところないからね。だからこっちはあくまでも『ミニ』なのさ」
「なるほど?」
そもそも私は戦闘は専門外なんだ、人理焼却案件に呼ばれでもしない限り……などと述べながら、彼女はすいすいとワームスマッシャーを避けていく。
……半自動なせいで時々イナバウアー*4とかさせられていたが、あれどっかで腰を痛めたりとかしないのだろうか?
ともかく、見えないのならまだしも見えてる攻撃を避けられないほどどんくさい人間はここにはいないため、全天周攻撃はその雨が止むまでひょいひょいと避けられ続けたわけである。
『なるほど、貴方に避けられるのは想定内でしたが、他の方もとは。これなら、加減をする必要はなかったかもしれませんね』
「おっとやぶ蛇だったかな???」
無論、そんなにひょいひょい避けられたらシュウさんがどう思うか、という話で。
……なるほど、巻き込まれた形になった非戦闘員に関しては、当たっても怪我をしないように加減をしていたらしい。
らしいが、その結果このようにひょいひょい避けられていたのでは、流石のシュウさんもちょっと考え直すくらいはしてしまうわけで。
『では、こちらはどうでしょう?──グラビトロンカノン、発射!』
「ちょっとぉ!?」
それは大人げないのではないかなー?!
次に選ばれた武装、グラビトロンカノンと呼ばれるそれは、周囲に高重力を発生させるMAP兵器である。
今回はどうやらOG系──重力球を周囲に降らせるものだったが、作品によっては高重力のフィールドを周囲に展開する……すなわち
……いやまぁ、触れられるほどの近距離に重力球投下、ってのもやってることとしては身近にブラックホール設置、みたいなものなので大抵逃がす気がないのだが。
とはいえ、流石にこれを単純な身体スペックで回避するのは無理な話。
なので、マシュに目配せをしたあと他の面々を纏めてひっ掴み、彼女の背後へと全力疾走。
「──マシュ!!」
「はい、お任せ下さい!其は全ての疵、全ての怨恨を癒す我らが故郷──顕現せよ、『
『ほう……?』
そのまま、彼女に宝具の開帳を指示。
彼女が叩き付けるように設置した大盾を中心として、何者にも侵されぬ白亜の城が顕現し、高重力球達を悉く防いでいった。
「流石はマシュの宝具だねぇ」
「いえ……恐らく耐えられるのはここまでです。更に強力な攻撃に関しては、なにかしらの補助が必要になるかと」
「これだからメカ系は……」
正確には、持ち込んだモノではないメカは……という感じか。
もし『再現度』による縛りを受けていたのなら、そもそもマシュの盾を揺るがすことも難しかっただろう。
あくまでこの世界で建造されたものだからこそ、元々のカタログスペックを発揮するに至っているというか。
……まぁ、普通はここまでのメカは早々製作できないので、その辺りを可能にしたシュウさんの執念が凄い、ということでもあるのだが。
ともかく、基本的には圧倒的なマシュであっても基本は『逆憑依』。
原作そのままのスペックの相手が出てくれば苦戦するのは当たり前、というわけだ。
『……なるほどなるほど。となると、ブラックホールクラスター以上の武装に関しては、マシュさんの助力は期待できないと?』
「はい、非常に残念なお話ですが……」
その話を聞いて、テンションが下がったように思えたのがシュウさんである。
……これはあれかな?マシュの防御力ならもしかしたら、縮退砲とかも耐えられそうと思っていた、とか?
いやまぁ、確かにマシュの堅さは凄いけど、それでも地球破壊級の火力なら蒸発することもあったわけで、ちょっと過信が過ぎるような気も……。
ともあれ、この空気感だと実験はこれで終わり、という流れになりそうである。
こっちとしては邪神の気配が掴めないことが心残りだが!そるでも余計な戦闘が減るのなら文句はない。
『仕方がありませんね。では今回の試験はこのくらいに……くらいに?』
「おおっと???」
───なんて風に気を緩めたのが悪かったのか。
シュウさんの言葉とは裏腹に、ネオ・グランゾンはその身の輝きを増していく。
そして、グランゾンとヒンドゥー教、および仏教との繋がりを語る──言い換えれば彼の焦りを示すような会話が挟まり。
『それはそれとして、なのですが。……ちょっと助けて貰えませんか?』
「シュウさんの口から聞きたくなかった言葉!!」
そんな、ある意味彼らしくない発言と共に、暴走ネオ・グランゾンとの戦いが始まったのだった。
……うん、控えめに言ってクソゲーだなこれ!!