なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「さて、冷静になって考えてみたけど……いや、マジでどうするかね、この状況」
飛び交うビームをひょいひょいと避けながら、どうしたものかと首を捻る私。
現状無茶苦茶やっているため、本当に無茶苦茶なものを発射できずにいるというのが今のネオ・グランゾンの状況なわけだが、とはいえ遅くともチャージを進めている、というのも事実。
このまま逃げの姿勢だとそのうち縮退砲が飛んできてゲームオーバーというわけだが、そうなる前にどうにかしようにも、この攻撃の嵐の中ではなんとも。
……いやまぁ、私一人なら意外となんとでもなるのだ。
最悪【
あれも大概クソ戦法だが、それをリアルにやれるのが私たちの特徴のようなものであるわけだし。*1
まぁ、実際にはその戦法は封じられているわけだが。
理由としては単純、この戦場にマシュがいるという一点。
今も彼女はネオグラの攻撃をガードしつつ、こちらのことを密かに監視……そう、監視している。
本人としては『せんぱいが無茶をしないように』というあれなのだろうが、実質的に監視以外の何物でもない状態になってる辺りに過保護さを感じないでもないというか。
そういう生き物なのだからその行動をとやかく言うのは間違いなのでは?……みたいなことを思わないでもないが、それをバカ正直に伝えると最悪大泣きされるので言わない私である。
……というか、下手にその方面の行動を取ろうとすると、代わりに彼女がもっと相手に突っ込んで行って蒸発しかねないというか。
私と彼女では命の重さというか差し出す際の軽さというかが全く違うため、そんな無意味なことはさせられない。
……となれば、【永獄致死】でごり押すのは最後の手段となるのだった。
まぁ、私としてもその手段は最後の手……というか、そもそも選択するつもりがないやつなので、禁じられることそのものについてはどうこう言うつもりもないのだが。
……え?じゃあどうするつもりなのかって?
確かに以前の私だとごり押すのが一番だったけど、忘れてやしないだろうか?
「そういうわけで──撃ってきなさいよ、縮退砲」
『……ほう?』
「せんぱいっ!?」
なので、そのお披露目も兼ねて──挑発する。
無論シュウさんにではなく、その機体を裏で操る相手に対して、だ。
今までの攻防でわかったが、件の邪神はこの段階ですらその存在の尻尾すら掴めていない。
恐らく、縮退砲で周囲を更地にしたあと、邪魔するものがいなくなったタイミングで現れるように仕込まれているのだと思われる。
原則縮退砲を撃たれたらゲームオーバーなのに、戦闘のクリア条件である邪神の出現タイミングが縮退砲を発射した後に設定されている……という、こちらに勝たせる気の一切ないクソゲー状態、というのが現状だと言えるだろう。
なので、従来のやり方だと私が無理矢理耐える、以外の解法が存在しない悪問と化していたわけだ。
随分と小賢しい真似をしてくれたものだが……とはいえそれも以前の私ならば、の話。
今現在の新生キーアさんならば、別の解法も用意できるというわけである。
それゆえの挑発、それゆえの余裕。
シュウさんを通してこちらを見ているだろう邪神は、その余裕を不遜と捉えるはず。
科学的な実証・実績によって発生する事象を武器とするロボットを使っているからこそ、それによる攻撃は原則的に超常の法則で防御することは叶わない。
何故か?それは私たちが今いる世界が『現実』だからだ。
現実には超常現象なんて存在しない。全ては物理法則に支配され、それによって運行されている。
引き起こすための引き金として邪神が必要である、といってもネオ・グランゾンにおけるそれは
……言い換えるのなら、自身の特殊性はそこまで必須というわけでもないのだ。
それゆえ、そもそもこちらで建造されたネオ・グランゾンの武器は、原則的に『逆憑依』達では防御ができない。
恐らく、原作そのままのマシュを連れてくる、などしたとしても場所が現実である限りはこちらの負けは必定だろう。
──ゆえに、その前提があるからこそ、今の邪神に負けは万に一つ・億に一つもあり得ない。
ゆえに、目の前の存在の戯言が、なによりも耳障りな雑音として響く。
『……なるほど、こうなりましたか』
「……縮退圧、増大!重力崩壊臨界点、突破!これは……せんぱい!」
「はいはい、想定通りの結果で笑いもでないわね」
それゆえ、相手の動きは予想しやすかった。
ネオ・グランゾンは瞬時に中空を飛翔。こちらの攻撃が届かないほどの高所にたどり着いたあとは、先ほどまでの猛攻を全てカットし、縮退砲の発射シーケンスを爆速で進めていく。
それは、先ほどまでのノロノロとした歩み──牛歩が、まるでチーターの全力疾走に変化したかの如き劇的な変化。
早送りで進んでいるかのように、全てのシーケンスは加速し──ネオ・グランゾンの目の前には、黒く禍々しき光球が一つ。
縮退砲、その核となる縮退星であるそれは、解放の時を今か今かと待ち構えており──、
『──では、貴方の足掻きを見せて下さい。縮退砲、発射』
それは、ゆっくりと・だが確実に、私たちの元へと落下し始めたのだった。
「──さて、偉そうなこと言ったけど、手伝って貰える?」
「……せんぱい?」
「後輩に華を持たせる、ってわけじゃないけど──あれくらい、防御できなきゃ嘘でしょ?」
さて、目論見通りに縮退砲が発射されたわけだが、このまま手をこまねいていては文字通りにお陀仏である。
無論そんなつもりはないので──近付いてきていたマシュに声を掛けた。
これからやろうとしていることは、私一人で全てを片付けるモノではないと示すために。
そんな私の言葉になにか感じ入るものがあったのか、マシュは暫く目蓋を瞬かせていたが……やがてその表情を引き締め。
「はい、せんぱい!私は貴方の後輩、マシュ・キリエライトですので!」
と、不敵な笑みを見せたのだった。
ならば、こちらもその期待に答えなければなるまい。
ゆえに私もまた、自身の力を開放する。
「──【星の欠片】はあらゆる全ての下にあるもの。そしてそれゆえに、あらゆる場所を繋ぐもの」
集合無意識や、量子のねじれ。
物理的に隣り合わないものにも情報が伝播する手段、というのは確かめられていないものの、それがあるとする証拠のようなものはそこらに転がっている。
それらは目に見えないほどの小さな世界に由来するものであり──ゆえに、それを否定するのはとても難しい。
なにせ、人には明確に見通せない世界がある。
現在という法則に従う限り、そこを見るために越えなければならない壁があるがゆえに。
奇しくもそれもまたかの魔神の力──ブラックホールに纏わるモノであり、それゆえにかの存在の力は私たちにとっても馴染みは深い。
とはいえそれはまた別の話。
この場で必要なのは、私たちが
それは『物語を紡ぐものは自身の体験したことしか紡げない』という言葉と結び付き、意味を変える。*2
──人の想像は、どこまで行っても現実には敵わない。否、人の想像は
まぁ、その事実を人が真に理解できる日が来るかどうかは、私にはわからないが──そも、我が身の
──ゆえに、こういうこともできるのだ。
「
「──真名、複合開放。これは数多の祈り、幾多の言葉を重ねた道の先。いつかその場所に辿り着くために──私は、今の自分を貫きます!!」
本来アクセスできない、並行世界の彼女達に触れ、そこから少しずつ力を借りる。
そして、いつか辿り着くかもしれない──その先の先へと彼女を導く。
一人で足りないのなら二人、二人で足りないのなら四人。
そうして積み上げに積み上げ──
ゆえに、彼女のそれは。
「集結せよ!『
開放された星の暴威を、まったく漏らすことなく封じ込めたのだった。