なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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知ってるか、まだ敵は残ってるんだぜ……(白目)

「い、今のは一体……」

「さて。敢えて名付けるのであれば『ネオ・グラビトン・ライフル』などでいいのではないでしょうか?どうせ再度使うこともないのでしょうから」

 

 

 自身が纏っていた鎧を消し去りながら、シュウさんは肩を竦め一つ嘆息する。

 

 ──自身の乗機を鎧として纏う、という意味合いにおいては聖闘士というより装甲娘──言い換えればそういう類いのゲームに近い概念によって変身していた彼だが、余りお気には召さなかったようである。

 いやまぁ、私としてもそういう系統の作品が成功する、なんて風には余り思えないわけだけども。*1

 

 ……ともあれ、人の身でネオ・グランゾンのような力を扱う経験は恐らく彼の糧になる……と説得した甲斐があったことは確かだろう、とネオ・グランゾンごと消失した邪神のいた辺りを見る私。

 あれをこちらの手札で真っ当に倒そうとするとそれこそ私があれこれしないといけなかったので、そういうことしなくてよくなったのは正直ありがたいというか。

 ……代わりにシュウさんに借りを作った形になる?うんそうねぇ……。

 

 まぁ、今はとりあえず中ボス戦が終わったことを喜ぼう。

 なんならそのご褒美?的なものもあるだろうし。

 

 

「……ふむ、ご褒美……ですか。それはどのような……」

「見てればわかるよ。……まぁ、シュウさんにとってはご褒美というより、損害がゼロになる……って方が近いかもだけど」

「……なるほど?」

 

 

 そう話す私たちの前で、邪神の消え去ったあとの空間に電気のようなものが走る。

 それは次第に勢いを増し、プラズマのように辺りを一瞬染め上げ──、それが明けた瞬間、そこに鎮座していたのはネオ・グランゾン。

 その姿を見たマシュが、一瞬警戒を露にするが……それを右手で押し留め、よく見るように告げる。

 

 そう、現れたネオ・グランゾンは()()()ネオ・グランゾン。

 邪神の影響を受けていることを示すような意匠はどこにもなく、まっさらな姿を誇るように見せ付けていた。

 

 

「……これはつまり、そういうことですか?」

「まぁ、扱いとしては【継ぎ接ぎ】に近いだろうけどね」

 

 

 隣でその威容を見上げるシュウさんに、私はそう話しかける。

 ──エネルギー源となる邪神。その形で定着したとでも言えばいいのか……奇しくも、原作におけるネオ・グランゾンのそれに近いような形に落ち着いた、というか。

 

 ……とはいえ、これはこれで色々と報告が面倒だなぁ、と思わないでもない私なのであった。

 扱いとしては無機物に【継ぎ接ぎ】した【顕象】、みたいな感じになるのかなー?

 

 

 

 

 

 

 正直こんなものまともに報告とかやってられないので、シュウさんにそのままネオグラと一緒にゆかりんのところに行って貰うようにお願いし、そのまま次の場所へと向かうために施設の外に出た私とマシュ。

 

 出てきた私たちを見て、ライネスが「終わったのかい?」と聞いてきたため「グランゾンは完全体になったよ」と返しておいたが……うん、その時のライネスの顔と来たら。

 

 

「いや……そうもなるだろう。ネオ・グランゾンとの相性によるとはいえ、普通は起こらないことが起こっているわけなんだから」

「この分ですと、最後の一つもとんでもないことが起きそうですね……」

「止めてくれマシュ、これ以上頭が痛くなるのは耐えきれない……」

 

 

 はぁ、とため息を吐く彼女は見た目の年齢に見合わぬ苦労性を感じさせるが……その辺りはみんなそんな感じでもあるので特筆する必要もないかも?

 

 ともかく、次なる相手──最後の予言である『黒雲』について探索を続けているのだが、これが中々。

 

 

「最初の『青より来る』を海と解釈し、『朱の中から』というのを炎の中と見立て。『白光』は背後の光輪の輝きと捉えた……というのなら、『黒雲』もそういう類いとして考えるべきだけど……」

「まず黒雲が立ち込めている場所を探さないと、だからねぇ」

 

 

 これらの予言は、わりと捻りもなく直球で状況を指し示しているように思われる。

 となると、『黒雲』も文字通りに黒雲立ち込める場所のことを言っている、ということになるのだが……ここで、なりきり郷という立地の問題が出てくるのだった。

 

 そう、基本的に黒雲が立ち込めているような場所なんてないのである。

 何故ならば、なりきり郷内の天候は全て調整された・人工的なものであるがゆえ。

 

 黒雲が何故黒いのかと言うと、それは内部がしっかりと詰まっているから。

 光が雲の中を通り抜けられず、結果として四散してしまっているからこそ人の目に光が届かない──すなわち黒く見えるのである。

 

 で、雲の中身が詰まっているというのは、言い換えると雨の元となる水蒸気が大量に集まっている、ということ。

 そして、それだけ大量の水蒸気が集まっていると、それらの粒による多大な摩擦が発生して雷を発生させる要因を産み出してしまう、というわけだ。

 

 基本、雷のような巨大な電圧を持つものを制御することは難しい。

 雷ほどの電圧ともなると、並大抵の耐電性では耐えられないのだ。

 ……つまり、人工的に天気を操作する場合、雷が発生するのは望ましくないということ。

 そのため、なりきり郷内に発生する雲は()()白い雲、白雲なのである。

 

 

「だから、『黒雲』立ち込める場所、なんてものを探す余地がない……と。一応、少ないながらに黒雲が発生するような場所もあるが……」

「基本的に立ち入り禁止区域、なんだよねぇ」

 

 

 人の立ち入りを基本考えていない、というのなら熔地庵のような場所も存在するが……そういうところは()()()()()そうなっている場所。

 必然危険性はそちらと同じであり、余り立ち入りたいとは思えない。

 ……まぁ、前者の例からすると多分そこなんだろうなぁ、という気もするのだが。

 

 

「で、その目的地というのは何処なんだ?」

「電気系能力者達の楽園、カタトゥンボ。実際に存在する雷多発地域から名前を貰ったこのフロアは、耐電装備無しに立ち入ることは禁止されているほどの危険地帯だよ」*2

 

 

 なにせ、直通のエレベーターが存在しないほどの危険地帯である。

 ……いやまぁ、相手が電気なのだからそれも仕方のない話なのだが。

 

 空間的に遮断されているため、本来想定されるそれよりは危険性は少なくなっているが、それでも一つ部屋を挟んで準備をしてから立ち入る……という行程を必要とする辺り、下手をすると熔地庵より危険性が高いというか。

 まぁ、金属製の物体が少しでも触れていれば通電してしまうわけだから、それくらい気を付けないと危ないということでもあるのだが。

 

 ……ともかく、なりきり郷内で黒雲を探そうとすると、その筆頭となるのは間違いなくこのフロアである。

 なりきり郷ちゃんもそう言っているので、最早間違いはないだろう。

 一つ気になることがあるとすれば、何故かこちらの問いに言い淀んでいたことだが……。

 

 

「まぁ、行けばわかるでしょ。というわけで、耐電装備を用意しつつ行軍だー」

「はい、せんぱい」

 

 

 まぁ、今さら怖じ気づいても仕方がない。

 というわけで、最低限の耐電装備を用意しつつ、唯一の移動手段である隣接フロアに向かって歩く私たちである。

 

 ……とまぁ、そんな感じで歩き出しは良かったのだ。

 元気が溢れているというか、空元気でも進もうという気概があったというか。

 どっこい、今となってはみんな意気消沈としている。

 それもそのはず、たどり着いたフロアにその答えがあった。

 

 

「おっ、さっきぶりだなアンタ達。自己紹介は必要か?」

「……いえその、お構い無く……」

「そう言うなって!アンタ達もこの先──ベジタブルスカイに用事があるんだろ?視線で解るさ!」*3

(これはどっちだ?マジにあるのかトリコ特有のあれか???)

 

 

 密封フロアとなっているそこは、一度外側の存在を招き入れたあと一度完全に密閉し、耐電装備を身に付けたあと内側の扉を開く……という、ある種のエアロック*4のような仕組みになっている。

 敢えて名付けるのならエレキロック、とかになるのだろうか?

 内部と外部の電位を均等にして感電を極力防ぐ、みたいな。

 

 ……ともかく、その『電位を整える』という過程を挟む関係上、中に入った人物は暫く待たされることになるわけで。

 そうなれば必然、一緒に入った相手の顔を見ることもある。……引き延ばしは止めよう。

 私たちと一緒にエレキロック内に入ったのは、先ほど熔地庵でスルーしたトリコ達一行。

 

 そして彼らが目指しているのは、この先──カタトゥンボ内にある()()()()()()、野菜達の楽園・ベジタブルスカイ。

 かもしれない、と半ば疑問系なのは、彼ら『トリコ』のキャラクター達が、自身の原作に周囲を巻き込むタイプの存在であるため。

 ……言い方は悪いが、彼らは狂人の類いなのだ、色んな意味で。

 

 

「……そんなにヤバいやつらなのか?」

「んー、例えば今ここで雷が落ちてきたとするでしょ?普通の人は感電するとか避けるとか、まぁそういう話になるんだけど……」

「おっ?なんだなんだサンダージュースの話か?特定の場所でしか飲めないが、ここでありつけるんなら願ったり叶ったりだな!」

「……この人達だとこうなる」

「なるほど、わからん」

 

 

 メイトリックス氏が小声で私に話し掛けてきたのを、耳聡く聞き付けたトリコ君が近付いてくるが……一応訂正しておくと、『サンダージュース』なる飲み物は(原作にも)存在しない。

 が、『トリコ』のキャラクター達はそれが食べ物・飲み物だと思い込んだら()()()()()()()()()()()()()()()()のである。

 なので、例えば彼らの前に単なる雷が落ちてきた場合、先の『サンダージュース』なる飲み物として扱われ、実際に飲めるようになってしまうのだ。

 まぁ、あくまでも『トリコ』のキャラクターが関わった時にだけ起きる特殊事象なのだが。

 

 ……なんでそんなことになるのか詳しい理由は不明だが、ともかく彼らが関わるとろくなことにならない、というのは間違いあるまい。

 

 

「……でも、この分だと別れることは不可能、なんだよねぇ……」

 

 

 ニコニコと笑いながら、私たちの隣に立っているトリコ君達。

 ……これはどうしようもないな、と諦めの表情を浮かべる私だが、誰かなんとかしてくれませんかねマジで……(白目)

 

 

*1
取って付けたような装備感、ということ。鎧として洗練されていないというか、あくまで元となったロボットの意匠を想起させる為だけのものというか

*2
ベネズエラのマラカイボ湖に注ぐカタトゥンボ川の河口付近で起きる自然現象、『カタトゥンボの雷』のこと。『マラカイボの灯台』とも。一分間に28回もの落雷が観測されることもある、世界有数の落雷多発地域

*3
『トリコ』世界において、天空に続く巨大な蔓『スカイプラント』を登り、途中の積乱雲を突っ切った先にあるとされる野菜の楽園

*4
宇宙船などに用意されている、気圧差のある部屋の間を移動する為の部屋。気圧の急激な変化は身体に多大なダメージを与える為、それを避ける目的などがある

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