なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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フォークとナイフ乱れ飛ぶ嵐

 さて、突然トリコ君と小松君の二人を同行者として加えることになった私たち。

 正直言えば加えたくはなかったのだが、この状況下から別行動に持っていくのは至難の技であるため、仕方なく同行を許したのであった。

 

 

「んー?なんだか様子が暗いな。これでも食うか?」

「……それは?」

「ビーフチキンの焼き鳥だ。上手いぞ?」

「…………」

 

 

 エレキロック内の荷電には時間が掛かる。

 原理的には静電気発生装置のそれになるわけだが、そうして帯電させたあと周囲の電圧からの保護を十二分に行うには、創作由来技術による電荷の固定が必要になる。

 その辺りの詳しい原理はよく知らないが……なんにせよ、この部屋での滞在時間がそれなりに必要である、ということは間違いあるまい。

 

 そのため、どうしても手持ち無沙汰になってしまうわけなのだが……トリコ君達はお構い無しにご飯を食べていた。

 流石にこの場で調理を始めたわけではないが、用意していたバッグから調理済みのモノを取り出して食べているので微妙さ加減は変わらないだろう。

 ……いやまぁ、彼らのスペックとそれを把握するための仕組みからして、食事によるエネルギー補給が重要なのはわかるんだけどね?

 

 なお、彼が差し出してきたビーフチキンとやらだが、これも原作には存在しない。

 正確には、それのさらに上位版といえる「牛豚鳥」という三種の肉が楽しめる生物がいたりするが、今彼が差し出したものはそれではない。*1

 ……そこからも解る通り、彼らの纏う法則は最早彼ら自体が作り出していると言い換えてもよく……。

 

 

「……ひょっひょ(ちょっと)?」

「難しい顔してたら上手いもんも不味くなっちまうぜ?」

「……食べるとも言ってないんだけどね、私」

 

 

 口腔内に突っ込まれた焼き鳥の串に目を白黒させつつ、それをやった下手人──トリコ君を軽く睨む私。

 だが彼はそんなことお構い無しに、美味しく食べろとばかりに私に声を掛けてくる。

 

 見れば、他の面々も同じように焼き鳥の串を渡されており、なんとも言えない表情を浮かべていたのだった。

 

 

「……まぁ、彼の言う通りだろう。今から渋い顔をしていても仕方ない、というやつだ」

「まぁ、そうだけども……いや待った、なんで他のみんなは直接口に突っ込まれてないのよ?」

「?いや、いきなり串なんて突っ込んだら危ないだろ?」

「おいまてやこら」

 

 

 私は危なくないのか?と問い返したら、彼から返ってきたのはキョトンとした顔。

 

 ……まさかとは思うが、人間扱いされてないとかないでしょうね?

 仮にそうだとすると、ほんのり「美味しそう」とか思われてそうで怖いんだけど?

 

 そんな風にツッコミを返したら、彼からは「いや、俺だってなんでもかんでも食べたいとは思わないんだが……」と不満げな顔を返されることになったのだった。

 ……これ、私が悪いのかなぁ?!

 

 

 

 

 

 

「入ってすぐは、意外と平和そうなんだな」

「これを見てそう言える辺りやっぱおかしいよ貴方……」

 

 

 さて、エレキロックを介した体内の電荷の平均化を終え、意気揚々?とカタトゥンボ内に入場した私たち。

 ……そしてすぐに後悔することになったのだった。

 だって滅茶苦茶雨が降ってるんだもんよ……。

 

 電気を帯びまくった雨粒であるため、なんの対処も無しに触れると漏れなく感電する……まさに電涙(でんるい)とでも呼ぶべきそれは、しかして対策を先にしておいたので単なる強い雨、程度で済んでいる。

 ……済んでいるのだが、だからこそ余計に横の人達の行動が際立ってしまうというか。

 

 

「おおーっ!採れ立てのサンダージュースのお出迎えか!小松、ちゃんと採取しとかないと勿体ないぜ!」

「と、トリコさん!皆さん引いてますから!とりあえず落ち着いて!!」

 

 

 そう、()()()()()()()()とか、まさに雷の絞り汁(サンダージュース)と呼んで然るべきものだろう。

 ゆえに、トリコ君達が喜び勇んで水筒に溜め込もうとするのも、ある意味では予想範囲内となるわけである。

 ……いやまぁ、言葉の上では止める側に回っているように見えて、その実ちゃっかりと水筒に雷涙を溜め込む小松君にみんなの目が死んだ、というのが一番の問題点だろうが。

 

 うん、常識人と言ってもあくまで()()()()()()()()()常識人、というのが小松君なのだ。

 ゆえに、彼にストッパー役を期待するのは端から間違い、というか……。

 

 

「……サンダージュースはともかく、風の強さも凄いな」

「大きな雲ができる環境ってことは、それだけ温度の変化や水分の蒸発・それらに伴う上昇気流が盛んに発生しているってことの証左だからね。そりゃまぁ、雨以外の気候条件も悪くなるのは当たり前というか」

 

 

 一先ず彼らの行動は置いておいて、改めてフロア内を見回す私たち。

 

 大抵のフロアは横に広いのだが、このフロアは縦に広い形となっている。

 ……冷静に考えると地下施設であるのに縦が広い、というのもおかしいのだが……その辺りはここがなりきり郷である以上仕方ない、と思っていただきたい。

 

 ともかく、広すぎて最早成層圏まで続くような高さとなっているそこには、このフロアの特徴でもある黒雲が高く高く繋がっている。

 無論、そこからはバチバチと電気の迸る音とでも言うものが響いていて、迂闊に近付けば感電などの電気被害を容易に引き起こすだろう、ということが見て取れるわけなのだが。

 ……一応、このフロア内に進入する前にそれらに対する対策はしておいたが、それでも高電圧地帯に無策で突っ込めるほど万全、というわけではない。

 

 

「だから、できれば上に昇るまで・もしくは登った先で目的のモノが見付かってほしいんだけどね……」

「仮に見付からなかった場合は、あの黒雲の中に突撃する必要が出てくる……というわけか」

「まぁ、簡単に言うとそういうことになるね……」

 

 

 なので、ここに探し物のためにやってきた私たちとしては、そんな危険地帯に突っ込むことなく目的を果たしてしまいたいのだけれど……。

 

 思い浮かぶのは、今までの予言の結果。

 蒼い海から現れたシン・シリーズ、朱の炎の中に鎮座していたイデオン。

 そして、自らが白光を放っていたネオ・グランゾン。

 ……それらを前提として考えると、まず間違いなくあのバチバチ言っている黒雲の中に探し物がある……と見てよさそうで。

 

 たまらずはぁ、と大きなため息を一つ。

 いやだなぁ、行きたくないなぁという思いが胸中を渦巻いて仕方がない。

 とはいえ、そうやって立ち止まっていてもなにも解決しないのも確かな話。

 改めてため息を一つ吐き、それでも無駄な足掻き的な行動として、黒雲の中以外の場所を探しは始めることにしたのだった。

 

 

「うーむ、雷雲鳥とかライトニングフェニックス*2とか見掛けるんじゃないかと思っていたが……居たのはこいつくらいだったな」

「ぴーか、ぴっかぴーか」*3

 

 

 で、それから数分後。

 付いてくるトリコ君に「なんで付いてくるのさ、さっさと上に登ればいいじゃん」と問い掛け、「いや、お前達が探してるってものが気になってな。もしかしたら俺達が探してるものにも関係あるかもしれないし」と答えが返ってきたりしつつ。

 可能な限り黒雲を避け、フロア内を確認したわけなのだけれど……縦に広い分、このフロアは横方向にはさほど(あくまでも他のフロアと比べたら、だが)広いわけではないため、あっさりと確認は終了してしまっていた。

 

 で、その間に見付けたモノと言えば、現在ライネスの頭に乗っかっているピカチュウ──トリムマウくらいのもの。

 どうやら彼、今日は休みだったらしくここで電気浴を楽しんでいたらしい。

 そこをすわ食べ物か?……と勘違いしたトリコ君に引っ張り出された、と。

 

 

「そこで食べ物だ、と勘違いしなかったのはいいことだけどね」

「流石の俺も、こっちに友好的な相手ぐらいはわかるって。……友好的じゃなかったらちょっとあれかもしれねーけど」*4

「ぴっかぴーか!」*5

 

 

 いやまぁ、味についての明記があるポケモンも幾つか存在するし、場合によっては食べられてるってこともあるんじゃないかなー?

 その辺りはぼかされてる部分もあるので、実際にはどうなのかはわからんけども。

 

 ……ともかく、トリムマウを一行に加えた私たちは、次なる目的地──積乱雲の向こうに視線を向ける。

 

 

「ふむ、スカイプラントも無しにこれを登るのは骨が折れそうだが……どうやら、最初の仕掛けは十二分に効果を発揮しているみたいだな」

「電磁誘導的ななにか、ってことでいいのかなこれ……」

 

 

 道と言える道もないその先に、雲の上側に広がる部分がある……という話があるが、実際どうなのかは知らない。

 

 だがしかし、そこになにあるかは別として……エレキロック内で施された仕掛け──電荷を自身の中に留めるというそれは、副次的に電気に弾かれる、という効果を持つことになっていた。

 ……言い換えると、今ならこの黒雲を──電気を多く含んだこの雲を足場にできる、ということである。

 

 それを確かめるように、雲の上でピョンピョンと跳ねるトリコ君。

 そんな楽しげな彼の姿を見ながら、私たちは「どうか、雲の上に目的のモノがありますように」と密かに切実な願いを抱くのであった……。

 ……そういうのって裏切られるのが常?うるせー!!

 

 

*1
『トリコ』に登場する読者投稿の猛獣の一体。鳥の翼と牛の体躯を持った大型の豚、といった見た目の生き物。部位によって牛・豚・鳥と肉の味が変わり、かつその乳も牛乳より濃厚。骨から取れる出汁も三種の旨味が詰まったものが取れる、まさに夢のような食材。少ないながら養殖もされているが、基本的には野生種が大半

*2
『トリコ』において、積乱雲内を飛んでいた大きな鳥。羽が稲妻を弾くなどの特徴から、積乱雲内でも自由に飛ぶことができるとのこと。因みに『雷雲鳥』の方は原作にはいないオリジナル

*3
俺休みの日だったんだけどなー

*4
ラッキーの卵、ヤドンの尻尾、コイキングそのもの……などが有名

*5
ポケスペよりヤバそうなこと言うの止めない?

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