なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、黒雲が消し飛ぶことになった理由を語ったわけだが、ともあれそれはそれとして問題は山積みである。
「ん?そうなのか?」
「目的のブツが見当たってないからね……」
「そうだな、オルトに対抗できそうなモノは見付かってないな」
(……なんでオルトの部分だけ小声?)
(彼に聞かれたら一緒に行く、とか言い出して聞かなさそうだろう?)
(その心配はもっと早くにするべきだったんじゃないかなー……)
まぁ、そんな私とライネスの念話はともかくとして。
私たちがここに来たのは、元はと言えば予言にあった『黒雲』の言葉を頼りに探し物をしていたがため。
……その黒雲はさっき私が綺麗に吹き飛ばしてしまったわけだが、となるとここは予言の場所じゃなかった・もしくは影龍皇は予言の相手じゃなかった、ということになってしまうのだ。
「んんん?そりゃまたなんでだ?」
「あれはあからさまに【鏡像】だったってことと、昨日今日に生まれたような相手じゃなかったこと、それから倒したあとになにも出てこなかったから……ってのが答えかな。さっきのヴォルクルスは倒したあとにご褒美的なものが貰えたけど、今回はなんにも
トリコ君の疑問に、指折りしながら答えていく私。
まず第一に、あの存在規模ならまず間違いなく【鏡像】だった、という点。
何度か話しているように、通常の『逆憑依』や【顕象】だとどうしても再現度の壁が立ちはだかる。
基本的には『逆憑依』よりも【顕象】の方が再現度の制限は高くなるが……それでも、影龍皇もとい応龍皇をそのまま再現できる程の高さにはなりえない。*1
その点で、あれは【鏡像】でしかありえないわけだ。
……まぁ、正確には機体そのものではなく、影で再現した形だったが。
それでもやはり、あれだけの雲をそのまま操れるという時点で、能力の規模が大きすぎることだけは間違いあるまい。
その次が、倒した結果?周囲の黒雲ごと吹っ飛んでしまった、という点。
あれを真面目に分析すると、あの影龍皇は黒雲だった……ということになるわけだが、そうすると推定【鏡像】であるアイツは
「……あ、なるほど。このフロアの竣工・開設は今よりもっと前のことです。ということは……」
「いつから現れたのか、って点ではまだ論争できなくもないけど……とはいえ、この辺り一帯の全ての黒雲を掌握する、ってのも一日やそこらでできることじゃあない。……だったら、あれはハロウィンとは無関係の敵で黒雲の制御もずっとちまちま続けてた、って考える方が普通でしょ」
予言に語られる相手は、その存在の成立理由が『ハロウィンに関連するもの』であった。
ネオグラの時の邪神は若干怪しいが、それもあれが【兆し】だったことから考えて
……まぁ、イデオンみたく以前のハロウィン・ないしそれに関わるタイミングで生まれていたのなら、それもまた別の話になるのだが……。
「イデオンは一応だけど本筋に関わってきてたからね。*2……ってことは、本筋と関係ないところで沸いてた【鏡像】は対象外ってわけ」
「なるほど……」
なんだかんだ言って、イデオン自体はハロウィン……ハロウィン?関連生まれだということが確認できる存在。
となればそういった素振りも見せず、今回唐突に現れた形になる影龍皇はハロウィンとは無関係、とするのが一般的な見方になるわけだ。
それから三つ目、撃破後の報酬が貰えていないという部分。
実はこれが一番大きな、影龍皇がハロウィン関係ではないと判断する理由だったりする。
「と、いうと?」
「なりきり郷におけるハロウィンって、基本的にはFGO……ないしソシャゲの文脈に乗った形で発生するものなんだよね*3。だから、ハロウィン関係の
「た、確かに。落とすものの大半はハロウィンということからかお菓子の盛り合わせなどでしたが、確かに今まで出会った彼らはなんらかのドロップ品を落としていました!」
原理としては、簡易的な願望器の性質も持ち合わせる【兆し】、そこから派生した【鏡像】を撃破した際、周囲に余計な被害を起こさせないようにその『願いを叶える力』を別のものに発散させている……とかになるのだろうか?
ともかく、平時は別としてハロウィンやクリスマスのようなイベント事の際、なりきり郷内には共通の概念のようなものが適応され、結果として倒した敵はその時期に因んだアイテムを落とすようになる、というわけだ。
なお、平時の場合は倒した敵は空気に還る。
恐らくはこの辺りのおかしな現象とそれを支えるための力場的なもの(多分『なりきりパワー』)に還元されているのでは、とのことだが詳しいことは不明である。
……まぁ、その還元先が今回みたいなイベント事の時にリソースの配分を行ってくれている……と考えるのが普通なので、そこまで詳しく研究するものもいないみたいだが。
真面目に考えると頭がいたくなる、的な意味で。
ともかく、イベントの最中は敵を倒すとアイテムを落とす、というのは常識なわけだ。
ところが、さっきの影龍皇はなにも落とさなかった。
なんなら塵一つ残さずに消滅した。……私が使った技のせい、と思われそうだがそれは違う。
私の使う【虚無】は、確かに微細な世界を巡る技能。
それゆえ、それに由来する分解はそれこそ何者にも抗えぬものに見えるが……倒したアイテムのドロップ化、というのはこの場所に敷かれた
言ってしまえば一種の【星の欠片】による干渉であるため、幾ら私でもシステムそのものを阻害することはないのである。
……っていうか、阻害すると下手したら私がなりきり郷になるわっ。*4
「……どういうことだ?」
「ええと、せんぱいの【星の欠片】は端的に説明しますと、ルールの擬人化のようなものなのです。そのため、他のルールにかち合った上でかつ迂闊に勝ってしまうと、そのルールとせんぱいが交代してしまうという悲劇に繋がると言いますか……」
「なるほど、わからん」
うーん、メイトリックス氏がクエスチョンマークを浮かべている。
……とはいえ説明してるのはマシュなので、そのうち理解させられることだろう。
ってわけで彼らのやり取りはスルーするとして。
敵がアイテムを落とす・もとい敵がアイテムになるという一連の流れは、一種のシステムである。
同じシステム系の技能を持つ私の場合、そのシステムごと破壊もできるが……その場合、新しく私がシステムを作る必要が出てくる。
それはどう考えても問題なので、そうはならないように加減というか、システムとかち合わないように攻撃しているわけだ。
……なおこの辺りの話、実は今の姿になったからこそ浮上した問題なので、以前の私については当てはまらないから悪しからず。
ここで重要なのは、あくまで今の私のことだけ、というわけだ。
それを踏まえてさっきの戦闘を思い返すと、確かに私の攻撃がやりすぎの粋であったことは否めない。
……否めないが、同時にこの姿の私にしか使えない攻撃であったことも確かで、それが間違いないのなら無差別ではあっても
で、システムそのもののことを無機物とは普通言わないし、【星の欠片】的な認識としても同一。
なので、先ほどの攻撃の対象には入っていない、ゆえに私はシステムを攻撃してない。
……というか、仮に『虚焦』でシステムに攻撃したのなら、融通の効かない効果範囲のせいで、まず間違いなくなりきり郷が崩壊してるって話だ。*5
黒雲で全身を構成されていたため、纏めて吹っ飛んでしまった影龍皇君がその証拠である。
……長々語ったが、つまりなにが言いたいのかというと。
「ドロップ品を落とさなかったってことは、あれはハロウィンの法則に従ってない部外者だったってこと。イベント中に他のイベント始めたとか、もしくはイベントできないからメイン進め始めたみたいなノリだったってことだね」
「FGOを始めたばかりの新人みたいなムーブだね」*6
あれはたまたま遭遇した一般通過ボスだった、ということになるのであった。