なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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ガッツリ食ってガッツリ育て!

「しかし、アイツが特殊調理食材だとなると……小松に任せるしかないってことになるのか?」

「冗談止めてくださいよトリコさん!?そもそもあんな大雨の中じゃなんにもできませんよ!?」

「だよなぁ……」

 

 

 再びの対峙に、トリコ君が唸る。

 ……勢いよく飛び出したはいいが、相手の対処に手を焼いていたことを思い出して立ち止まったらしい。

 

 現在対峙している相手である影龍皇は、その構成材質的には雲──水蒸気とその摩擦によって発生する静電気が主体である、と考えることができる。

 ある意味では、以前本土上に大雨を降らせていたジャンヌ・アクアの同類、ないし亜種という風に見れなくもないわけだ。

 

 

「……規模の差こそあれ、どちらも水に関わる存在だと言うことでしょうか?」

「端的に言うとそうなるね。……亜種ってのは、ジャンヌの方は雷──電気を通さなかったけど、こっちは寧ろ電気を積極的に帯びている、ってことかな」

 

 

 マシュの言葉に然り、と頷く私である。

 ……あくまで同類であって同種ではない、というのがポイントだ。

 言い換えると、規模的に影龍皇の方は普通の【鏡像】で説明が付けられなくもない、みたいな感じというか。

 向こうは日本全土だったけど、こっちは精々フロア一つ分の雲を操作しているだけ……みたいな?

 

 まぁ、一フロア分と言いつつ縦に長いため、単なる【顕象】だと無理があるというのも確かなのだが。

 

 

「……ふむ。日本全土を覆う雲となると、そもそもそれを操るためのエネルギーを【鏡像】が得られたとしても()()()()()()()()()とかなんとかって話だったか。それを埋めるのに、あらゆるモノに含まれる【星の欠片】を伝達物質として利用しているのではないか、という結論になったとか?」

「そうだね。実際には【複合憑依】が混じって変なことになってたけど……それを前例として考えると、今回はそこまでのエネルギー規模は必要ないというか?」

 

 

 もしくは、向こうでは足りてなかった『エネルギーを溜め込む時間』が十二分に与えられていたか、だが。

 先ほど消し飛ばした黒雲程度では、あれが溜め込んでいるエネルギーの数パーセントにも達していない……みたいな予測でもある。

 

 ……あちらと違い、対話の意思を持っていない──すなわち留まろうとする()を持っていないということなので、それゆえに上限なくエネルギーを溜め込む【鏡像】が正体である、とするのが丸いだろう。

 問題は、あれがいつ頃成立したモノなのか、という部分。

 ハロウィンに成立したモノではない、もしくはその可能性が高いのがあそこに鎮座する影龍皇である。

 ……となると、エネルギーを溜め込んでいる期間がこちらの予想以上に長い、という可能性が出てくるわけで。

 

 確かに、あの時のジャンヌよりは規模は小さいのだろう。

 この世の中にあるもので、無限を軽々に振り回す【星の欠片】に量で勝るものはそう存在しない。

 ……だが、それが救いにならないほどにあの影龍皇がエネルギーを溜め込んでいるとしたら、正直笑えないことになる。

 

 ……え?またややこしい話をしてるから、とっとと重要なところだけ話せ?

 んじゃまぁ、簡潔に一つ。

 

 

「鱗の処理が面倒くさすぎるんだよなぁ……」

「そう、俺もそう思ってたところなんだよ」

 

 

 基本、龍の鱗というのは『鱗』と聞いて人が思い浮かべるもの──魚と蛇の鱗、それぞれの特徴を併せ持つものだとされる。

 

 魚の鱗は体の外部に出ている骨のようなモノであり、単一で剥がれ落ちることもある。

 それに対して蛇──爬虫類の鱗は人の爪と同じく表皮が角質化したものであり、皮膚と一体化しているため単一で剥がれ落ちることは(一部の例外を除いて*1)ない。

 

 また、魚類の鱗は粘液を伴うため触るとぬるっとしているが、爬虫類の鱗はそういったことがないためさらっとしている……など、同じ『鱗』であってもその性質はまったく異なるものだと言えるのだ。

 

 それを踏まえて龍の鱗を思い浮かべてみる。

 すると、基本的には地上で暮らすモノであること・それからその蛇に近い姿などから、生えているのは爬虫類系の鱗に思えるが……。

 先の影龍皇の鱗を見ればわかるように、魚のように単一で剥がれ落ちることもある……と、両者の特徴を併せ持っていることが理解できるはずだ。

 

 これの何が問題なのかというと、魚の鱗は骨と同じであるため剥がれたあと再度生えるのにそれなりの時間・エネルギーを必要とするのに対し、爬虫類のそれは端的に言うと表皮の変化であるため、仮に爬虫類側の原理で生え変わるのなら必要なエネルギーはそう多くない、という部分。

 爪と同じ、ということは根本的には老廃物であるため、骨の形成よりもそれに必要な労力──エネルギーが比較的安くなるのだ。

 

 それを踏まえて先ほどの影龍皇のことを思い出して貰いたい。

 ……そう、鱗を機動兵器に変換して攻撃する、というその行為は本来相応のエネルギーを必要とするはず。

 だがしかし、あれがあくまで鱗として生成されるのならば……そこに使われるエネルギーは、少なくとも本格的な攻撃に掛かるそれより遥かに少ない、ということになる。

 

 分かりやすく言うとこうなる。

 ──鱗の処理が凄まじく面倒、だ。

 

 

「食材の処理の際、鱗はしっかりと落とすのが基本だ。……が、アイツの場合その鱗がそれこそ無限に沸いてくる可能性がある」

「必要なエネルギーの低さと、溜め込んでいるエネルギーの総量から底が見えないってわけか……」

 

 

 先ほども私がやったように、あの鱗はそれこそ()()()()()()()()()()くらいの力業を使わないことには、真っ当に片付けられる気のしない規模のもの。

 ……ライネスは喫緊じゃないんだからと反論していたが、こうして改めて情報を並べてみると普通に必要な処置だった、と言いたくなってくる次第である。

 

 

「……そこだけ見たらそうだが、食材として見たのならそうじゃないんだろう?」

「まぁ、そうだねぇ……鱗を全部剥がしてからじゃないと、その身を捌くのは夢のまた夢……って感じだろうねぇ」

 

 

 一応、先ほどと同じように『虚焦』を連打して相手を殲滅する、という手もなくはないだろう。

 ただ、恐らく相手の本体はさっき倒した邪神と同じく、【兆し】のままこちらの探知などを回避していたと思わしい。

 じゃないとこの黒雲をエネルギーとして確保し続けることは難しいだろう、ということからの予想だが……ともかく、相手の本体を直接指定して『虚焦』をぶち込む、というのはほぼ不可能だと言っても過言ではない。

 

 

「いやまぁ、頑張ればやれると思うよ?……ただその場合、打ち込む場所と相手が問題というか……」

「問題?」

「『虚焦』の取り回しの悪さはさっき説明した通り。……で、【兆し】のある場所っていうのはそれぞれ個別の場所ではなく、言うなればこの世界と位相の違う別世界──そういう存在が成立する()()()()()。……ってことは、そこにいる【兆し】に『虚焦』を打ち込むと……」

「ああなるほど、他の【兆し】も全部巻き込むのか」

「それだけで済めばいいけど、下手すると【兆し】の場所と『逆憑依』や【顕象】の核を保存している場所は同じ、なんてパターンも懸念されるわけで……」

「……最悪の場合、【兆し】を対象に『虚焦』を使うと、その関連となるもの全てが塵に還るかも……ということでしょうか……?」

「うん、そうなるね」

「それは……なんというか……」

 

 

 蟻を駆除するのに爆弾をセットするようなもの、というか。

 ……周囲ごと巻き込んでもそれが殲滅できるのなら構わない、なんて暴論はまず通らないだろう。

 ということは、今の影龍皇を『虚焦』で倒し切るのは完全に持久戦になるし、やり方もさっきと同じく本体ごと吹っ飛ばす、という形にしかならないということになるわけで。

 

 

「でも、それぐらいしないとあの鱗を全部剥がすのは無理がありますよ?!」

「うーん、鱗を剥いだ状態でスタンさせる、とかして一瞬止められるのならまだなんとかなるかもだけど……」

「そっちに関してもキーアしかできないんだろう?」

「ノッキングできる人が別にいるんなら、まだなんとかなるんだけどね」

 

 

 鱗の総数が多すぎる上、出したそばから生えてくる仕様上敵機の供給を止めるのが非常に難しい。

 というか、そもそも黒雲というのが水と電気の複合であるがゆえ、それによる周囲への影響も考えないといけない。

 さらに、それらは調理の前段階であるため、それが終わったあとにようやく本体への包丁が入る、という形になる。

 ……前段階の時点でも大概だが、本体側にもなにかしらのギミックがあった日には、そちらの対処にさらに人員を持っていかれることになるだろう。

 

 そして、なによりも厄介なのは。

 恐らく、それらの苦労は()()であるということだろう。

 

 

「……せんぱい?」

「さて、この難敵をどう調理したものかねぇ」

『──では、私が手を貸したらどうでしょう?』

「!?」

 

 

 私の発言に違和感を感じたマシュが、なにごとかと尋ねて来ようとするが……その前に、周囲に響く男の声。

 それは周囲に響き渡り、警戒するトリコ君を嘲笑うかのように瞬時にその場に現れ。

 

 

『私のネオ・グランゾンならば、鱗落とし程度お茶の子さいさいと言うものです』

「シュウさん!?」

 

 

 その勇姿──完全に機体を我が物としたシュウさんの言葉に、マシュ達が驚いたような声を上げたのだった。

 

 

*1
バクチヤモリと呼ばれる爬虫類は、敵に捕まった際に自身の鱗を落とすことで敵の注意を惹く。いわゆる尻尾切りの派生だが、鱗を落としてそれを行う爬虫類はとても珍しい。鱗を落としたあとは表皮(の、変化である鱗)が剥がれ落ちる形になる為、内部の肉が露出することになり少々ショッキングな見た目になる

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