なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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これは何処にいる誰のお話なので?

 はてさて、ついに【偽界包括】による複製の生成に成功したわけなのだけれど。

 複製された相手を見て、私たちは思わず間抜けな顔を晒していたのだった。

 

 

「……ええ、マジで言ってる……?」

「これはまた……なんとも」

「でも、状況的にはそういうこと、なのですよね……」

 

 

 そう、私たちがここまで驚いている理由。

 それは、複製されて出てきた存在があまりにも予想外だったため。

 ……勿体ぶるのもあれなので答えを述べるが、【偽界包括】で複製されたイデオンの中身はなんと、小さな火の精だったのである。

 仮に名付けるのなら『火蜥蜴(サラマンダー)』、となるだろうか?

 

 

「……キュルケの使い魔のヒータちゃんのあれとは、また違うタイプね」

「こう、ファンタジー作品に多数存在する、一般的な姿のサラマンダー……というべきでしょうか?」

 

 

 体の全てが炎で構成されているトカゲ……言い換えると、荼毘君の本体であるヒードランが小型になったような姿、とでも言えば分かりやすいだろうか?

 そしてそれは、一般的なファンタジー作品に登場する、よくあるサラマンダーの姿……ということでもある。

 

 

「……つまり、原作がわからない、と?」

「そういうことになるね。……これがイデオンに勝てずに単に負けてくれてたら、私の【偽界包括】がミスってたってことで納得できたんだけど……」

「あれほど猛烈な攻撃を見せていたイデオンが、小さな火蜥蜴如きにあっさりと降参しましたからね。……中から出てきたのも、見た目が同じものでしたし」

 

 

 この話の問題は、あらゆる部分が噛み合ってないこと。

 イデオンという器に自身を収められるだけの力、それをある程度は扱える技量、そしてマシュを苦しめるだけの熱量。

 

 明らかに、力量としては一神話の主神級であってもおかしくはない。

 にもかかわらず、中から出てきたのは単なる火蜥蜴一匹。

 大山鳴動して鼠一匹、どころの話ではない。

 

 ──となれば、答えとして沸き上がるのは一つ。

 

 

「……逃げられた、かな」

「複製されることで自身のことを明らかにされるのを嫌った、ということですか」

「それがわかる上にそれを嫌がる、って時点である程度絞れはするんだけどね」

 

 

 それこそ、先ほど例に挙げた主神級の存在であるとか、力量的にはその辺りであることを容易に想定しやすい。

 ……もしくは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()か。

 

 

「……と、いうと?」

「分かりやすく言うと相手が【星の欠片】なら簡単には複製できないし、『逆憑依』そのものを複製するのもちょっと無理があるね」

「……?今それを行おうとしていたのでは……?」

「【顕象】と『逆憑依』だと複製の難度が違うんだよ」

 

 

 今の私が複製できないのは、大きく分けて二つ。

 

 分かりやすいのは【星の欠片】の方。

 本来のそれが世界の理・新たな秩序であることからわかる通り、【偽界包括】もまた一つの世界であるため内部には自然に【星の欠片】が発生することはない。

 一応、『星女神』様や『月の君』様辺りならばそこも踏まえて複製をすることはできるだろうが……今の私はそこまで【偽界包括】に習熟しているとは言い辛い。

 

 後者である『逆憑依』の方については、そのあり方が複製の難易度を上げる一因となっている。

 中身である核に見た目・普段の人格であるキャラクター性を付与する『逆憑依』は、単純に考えて二人分のリソースを必要とするが、それに加えて内在界についての演算も行わなければならないのだ。

 

 

「……内在界?」

「おっと初出のワードだった。……っていっても、別に難しいことは言ってないよ。よく『人一人を一つの世界と解釈する』みたいな話があるでしょ?あの話を【星の欠片】向けに翻訳・転用した概念ってだけだから」

 

 

 人の体内は一種の異界である……みたいな?

 錬金術の概念である『全は一、一は全』にも繋がる話だが、人一人が自身という世界を抱えていると解釈する場合、『逆憑依』は中々に複雑な構成をしていることが見えてくる。

 

 核となる中の人間が持つ世界と、外見となる外の人間が持つ世界というのは基本混じりあうものではない。

 ……正確には、中身の世界から発生する影響を外の世界はある程度受け取っているわけだが、その反対は原則発生しない。

 その小さな断絶が、【偽界包括】による複製の難度を跳ね上げるのである。

 

 言い換えると。

 現在の基礎概念である『現実』という法則に則って生きている人間を単に再現するだけならなんの問題もないが、装備として『現実ではない』法則を纏っていると問題が出てくる……という感じか。

 雑に言うなら『異世界転生したやつは再現し辛くなる』だろうか?

 

 まぁ、本当に雑に説明しすぎていて、微妙に誤解を発生させかねないのだが。

 

 

「誤解、というと?」

「異世界転生なんて現実にはないでしょ?でも『逆憑依』は現実に──少なくとも()()()()()()()()()()()()()()()()()なわけだ」

「……なるほど、『現実』というものの判定がとても厳密である、ということですね」

「そういうことー」

 

 

 今のこの世界においては、『逆憑依』だけが『異世界転生』扱いされている……というのが正解なのかも?

 言葉の上ではどの『異世界転生』も同じだが、その実その言葉を持ち出す時基本的に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、というか。

 

 例えばこの世界が『オーバーロード』の世界だったりすると、私はモモンガさんを複製することは不可能である。

 ……実際には彼の中身は本物の鈴木悟の複製である、みたいな話もあるので完全に、とまでは言えないが……少なくとも、その世界の『現実』が鈴木悟の生きる世界であるならば、本人の複製はともかくモモンガさんの複製を行うことは至難を極める。

 

 その理由というのが、複製の際に属性のラベルを張り替えてしまうため。

 転生者や『逆憑依』は()()()()()()()()()()()()()()()、というような感じの属性を持つもの。『逆憑依』の場合は()()()()()()()()()()()()()()()()()()だが、どちらにせよ『外が偽、中身が真』という扱いであることに差はあるまい。

 これは彼らが転生者や『逆憑依』である限り変わらない属性、ということになるわけだ。

 

 ところが、【偽界包括】による複製というのはその状態に関わらず()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ものである。

 偽物が本物に劣るとは限らない、みたいな感じでフォローをしているものの、それでも『原作ではない』という属性は変わらない。

 

 ……そう、なんでもかんでも『偽物』としてしまうために、転生者や『逆憑依』なようなものを複製すると本来変化しないはずの中身──なにがあっても本物であるはずのその部分を偽物に書き換えてしまうのである。

 その結果、存在としての本質が変化してしまい、複製しきれないという結果に繋がってしまう……と。

 

 ただこれ、本来は問題になるはずのない話だった。

 本物であることがなにより重要となる、というような話が基本的にそう多くないのが一点。

 ……少なくとも多重構造になっていないのなら、そこら辺は幾らでもごまかせるので問題ないのだ。

 

 また、仮に多重構造になっていたとしても、その世界に現れた【星の欠片】はその世界の『現実』であるため、同一の世界に住まう相手のラベルを保持することは難しくない。

 仮に互いの『現実』がずれていたとしても、その場合複製される側が創作の存在である、という属性が付与されていることがほとんどであるためこちらも問題にはならない。

 端から複製されている存在を複製しても、それがデータ由来なら確かめようがない……みたいな話だ。

 

 ──故に、『逆憑依』というものがどこまでもイレギュラーとなる。

 今この世界にいる【星の欠片】は原則この世界の『現実』ではない。

 その上で、どちらの『現実』が優先されるということもない。

 ……互いの『現実』が同一ではないのにも関わらず平等・同等であるという状態が珍しいうえに、その状況下で異世界転生に等しいような状況が巻き起こっている、ということになるわけだ。

 

 この特殊な状況が【偽界包括】による複製に対して不具合を起こすため、少なくとも私が複製を行おうとすると『逆憑依』相手には使えない……ということになるわけなのだ。

 

 なお、これはあくまで『複製として外に出力できない』だけの話であり、例えばさっきマシュへと強化を施したような『能力の貸出』の面については特に問題なかったりする。

 ……まぁ、あの時のあれは【偽界包括】内の『逆憑依』のマシュを通して()()()()()()()()達の力を借りていた、という形なので別に外に出力しようがしまいがあんまり変わらないのだが。

 

 

「……貴方の技能と『逆憑依』が色々とややこしい事情を抱えていることはわかりました。それで?今回の相手の予測については?」

「あーうん……多分このタイミングで逃げることで【星の欠片】なのか『逆憑依』なのか、そのどちらかを判別させることを避けたかった……って感じかな?」

「どちらなのかを判別できれば、次からは確実に対処されるから……と言うことですか?」

「まぁ、どうにも今回の話(ハロウィン)とは別口っぽいからねぇ」

 

 

 なにを目的にしていたのか、それを探ることは相手が消えてしまったためわからんけども。

 

 ……そんな風に締め括りながら、私たちは複製の火蜥蜴と見つめあう火蜥蜴をなんとも言えない顔で眺めていたのだった……。

 

 

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