なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「な ん で そ う な る!?」
「ははは。いや別にいじめとかじゃないから。だから頭を前後に揺らすのはやめめめめめ」
マシュとライネスがオルトの目の前で作戦行動、という配置が決まった瞬間、渦中の彼女がこうしてキレ散らかすのは目に見えていた。
なんてったって(原作の)彼女はオルトに相対したことが
となれば、その脅威は痛いほどに身に染みていることだろう。
……そういえば、疑似サーヴァント達はオルトに捕食されても問題なかったのだろうか?
マシュは色々な都合から、決定的に危機的な状況になったら逃げる、という形で捕食されることを免れていたが……そもそもそうして逃げる理由の大半は、生身の存在が捕食されれば文字通り助からないから……というところが大きいはず。
それは、現世の人間を器として降臨する形となる他の疑似サーヴァント達でも変わらないはず。
でも作中ではその辺りを言及された覚えはないから……あれだ、あくまで並行世界の存在に降ろしている形だから、影響は他には及ばないとか?
いやでも、英霊の座にまで影響が発生しているとか言ってたしなぁ……考えられるとすれば、捕食の際に器と霊基を切り離して安全を担保している、とかだろうか?
もしそうじゃないけど大丈夫だったとするのなら、遠く離れた世界で器となった存在と同一である人物が、突然の悪寒に襲われたりしたのかもしれない。
……などとあれこれ考えていたのだが、ライネスがいよいよプルプルし始めたので中止。
ともかく、彼女の怒りはわからないでもないが、私もなにも彼女に愉悦を見出だしたくてこんなことをしている……みたいな意地悪ではない。
この配置は、ちゃんと意味のある配置なのだ。
「キーワードは『記録』、だよ」
「……記録?」
「そう。君──ライネスがFGOに実装される際に行われたイベント。そこで君自身が発した台詞というやつだね」
「……なんでもいいが、なんで君微妙に私の台詞を真似たような口調を使っているんだい?」
「んー、気分?」
「やっぱり愉悦してるだろ君!?」
……ともかく、想起すべきは彼女の実装イベントである『レディ・ライネスの事件簿』。*2
この話の最後の方で起きるイベントの一つに、魔神柱との再びの対決……というものがある。
いわゆる時間神殿の再現、みたいな感じの話なのだが……本来なら、これは絶望的な状況であるはずだった。
なにせ、本来の時間神殿は様々な事情から英霊達が大挙して手伝いをしてくれたからこそ、無数の魔神柱を突破することができたのだ。
だがしかし、今回はそのようなことはない。
相手側も数を減らしているとはいえ、それを踏まえて減らした箇所にリソースを回した状態。
つまり、どう足掻いてもこちら側の戦力で打倒が叶うような相手ではなかったのである。*3
その状況をひっくり返すために使われたのが、主人公の記憶。
その特異点が再現記憶であったからこそ、可能となったある種の反則行為。
「それが、主人公が
「……あー、人類史において彼ほど魔神柱を打倒した人間もいない……だったか。サーヴァントはそういう概念の上ではあくまで道具として扱われるから、それを指揮していた彼・ないし彼女の方にこそそういった逸話は適用される……と」
それが、疑似サーヴァントであったライネスの持つ宝具による、敵対対象への弱点の創出。
そもそも記憶によって形作られた世界において、『冠位時間神殿』での出来事は信用に足る情報強度を持っていた、というわけだ。
それゆえ、主人公は魔神柱への特攻能力を持ち合わせることになり、絶望的だった戦力差は十二分に覆せるものへと変化していった……と。
──それと同じなのだ、今回の状況は。
「……はぁ?」
「逸話による補正。それはまぁ、こっちの世界だと【継ぎ接ぎ】という形で頻発するものだとも言える。そもそも『逆憑依』自体、その原理はサーヴァントのそれに近しいものである可能性が高い。──そう、私たちもまた『記憶』に近しいもの、と言えるわけだね」
わけがわからない、とばかりに首を捻るライネスに、私は一つ一つ丁寧にその理由を挙げていく。
私たち『逆憑依』や【顕象】は原作のキャラクター達が現実の世界にやってきたものだが、その実それのキャラクターはそのままこちらの世界にやって来ているわけではなく、あくまで複製に近しいもの。
言い換えてしまえば私たちも『記憶』である、ということになってしまうわけだ。
さらに、そんな私たちは己を起因とする記憶、こちらの世界で新たに獲得した記憶などによる
それらの事前情報を元に、今現在の私たちの状況を考察して見ると、この状況下において前線に出すべき存在、というのが見えてくる。
それが、総力戦という形でオルトを倒したことにより、それに対する特攻を持っている可能性・ないし獲得しうる可能性を持ち。
ハロウィンの中でも突飛も突飛な類いの作品を自身の原作として持ち。
そして、先の話題においてその特攻を特攻として顕在化することに寄与した人物。
「……は?まさか、そういう?」
「そう。今回ライネスに求められているのは、状況を整えることでオルトに【継ぎ接ぎ】を発生させること。それによる弱体化を狙うのが貴方の一番の役目ってわけだね」
「…………う、恨むぞ原作の私ぃ!!」
そう、この場においてライネスという存在はオルトに対して一番脅威である可能性が高いのだ。
オルトは確かに恐ろしい存在だが、それでも【顕象】もとい【鏡像】であることは変わらない。
ゆえに、【継ぎ接ぎ】が発生しやすいというマイナス面をあの存在も持ち合わせている上に、存在そのものに付与された弱点であるため克服することも不可能。
わかりやすくこっちが責めるべき箇所と化しているため、そこを責めない方が寧ろおかしいレベルとなっているのだ。
それらの事情を説明したところ、その有用性や説得力を完璧に理解してしまったライネス。
逃げられるものではないと併せて悟った結果、彼女は元々の自分への恨み言を叫び始めたのだった──。
「さて、頭を抱えて呻き始めたライネスは置いとくとして……他の面々の配置を確認しよう」
「ほ、放置していいのでしょうか……?」
まぁ、終わったあとに色々労ってあげる予定なので多少はね?
とはいえ彼女のフォローだけに気を遣うのもあれなので、一先ず置いておいて他の面々の配置について。
基本的に、今回の戦闘は三段階ほどの動きを予定している。
まず一段階め、ライネスをオルトに張り付かせて弱点創出ならぬ【継ぎ接ぎ】の発生を狙う。
これが起きないことには後の作戦が続かないため、これを確実に行うために一先ず他の面々も補助を行うこととなる。
「一番大変なのはマシュだね。ライネスを抱えた状態でオルトの周りを走り回り、とにかく【継ぎ接ぎ】が発生するまで耐える必要があるから」
「その際、反撃はしないほうがよいのですよね?」
「そうだね、下手に攻撃をした結果なにかしらに適応されても困るから」
同じハロウィン属性のエリちゃん達ならばその辺りを気にせず攻撃できるらしいので、どうしても攻撃をしなければならない時には周囲の彼女達に任せるのがいいだろう。
基本的にはマシュがライネスを抱えて走り回るわけだが、そうして周囲を走り回っていたらオルト側がなにかを察する、ということもあるかもしれない。
そうなったら向こうがライネスを狙ってくる、なんてこともあり得るのでその時の交代要員となるのがトリコ君である。
「ナイフとフォークは一応概念系じゃなくて物理系だから、オルト相手に使っても問題はないだろうしね」
「じゃあ、俺がライネスを抱えて動く方がいいんじゃないか?」
「オルトの周りで動き回るFGO出身者、ってのも【継ぎ接ぎ】の発生率に関係するからね。できればマシュが抱えたまま動き回った方がいいんだよ」
「なるほど……中々難しいんだな」
周りのエリちゃん達でFGO成分は間に合ってそうな気もするが、生憎とオリジナル以外はハロウィン属性の方が強めであるため余りあてにはならない。
マシュ・ライネス・オリジナルエリちゃんとその他で恐らくは四人分くらいの判定になる、という形だろう。
その人数で【継ぎ接ぎ】を狙うのはわりとギリギリなところがあるため、トリコ君に全部任せるのは宜しくない。
一応、ある程度逃げ回ったあとならばマシュとライネスを一緒にしておかなくても問題はなくなるだろうから、その時合わせてオルトの攻撃が激しくなる可能性を予測している……みたいな形である。
最初からはダメだが、途中からはほぼ確実にやる羽目になる……みたいな?
そんな感じで、連絡を入れておいたキリアちゃんが来るまでの間、私たちは自身のポジションについての確認を推し進めていったのだった──。