なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なるほど……私達も基本的には陽動、ということですね」
「【継ぎ接ぎ】が発生してからじゃないと、迂闊に手出しができないんだよね……エリちゃん達以外」
同じハロウィン属性のエリちゃんならば攻撃も防御もできるが、その実同じ存在同士が殴りあっているにも等しいため、大したダメージが入らない……という感じか。
そして、ハロウィン属性を持っていない存在が迂闊に攻撃を仕掛けると、現状ハロウィンに掛かりきりになってくれているオルトが
一応、この部分に関してはデメリットであると同時に、適度な対応を心掛けることさえできれば、こちらの望む属性に相手を変化させられる──【継ぎ接ぎ】を付与することができる、というメリットにもなっているのが難しいところだ。
ゆえに、あえて一つだけ言えることがあるとするならば……相手側が【鏡像】で良かったね、みたいな感じになるだろうか?
じゃなきゃ、こんな少数精鋭でオルトに挑む、なんて手法は許可されなかっただろうから。
「なにせ、一歩間違えると無謀にもオルトに挑み、ものの見事に討ち取られた冠位一人と色位六人のチームや、同じ類型の二十七祖先代五位みたいなことになりかねないからね」*1
「なるほど。再現する記憶如何によっては、永劫に勝つことに叶わぬ化け物に変化してしまう可能性がある……というわけですね?」*2
私たちの本質が記憶・記録である以上、原作において発生した物事というのはある種の運命のように働く。
そうであるからこそ、打倒したという因果があればそれを辿ることもできるが──同時に、どうしようもない存在であったことすらも辿ることのできる因果として存在し続ける。
大雑把に言えば、今のままでは取りうる可能性が多すぎるのだ。
不利も利も共に降り掛かる状況下において、迂闊な行動を取ることはできまい。
それはつまり、あらゆる状況で最善手を取り続ける必要があるということで──戦闘とは得てしてそういうものであるとはいえ、多人数が絡む場合はそうも言ってられないだろう。
一人のミスが全体を巻き込む可能性が大である、と予め知らされている状況において、最適な選択を取り続けることは並大抵のことでは叶うまい。
まず間違いなく、心の弱い誰かが崩れてそこが起因となり、全てが終わってしまうことだろう。
ゆえに、それを
「【継ぎ接ぎ】によって因果を強調させ、致命的な失敗になりうるところを『まぁまぁ大きめの失敗』程度に格下げさせようってわけ」
「……それでも大きめの失敗、なんですね」
「十分だと思うわよ?何せ致命的な方は一切の取り返しが付かないけど、大きめな方は死ぬ気で頑張れば巻き返しはできるんだから」
苦笑する小松君に、結局は気持ちの問題である、と返す私である。
こっちも相手も原理としては
中身のない演者である【鏡像】はいわばNPCのようなもの。
再現度は大きく変化もせず、原則一定であるが──ゆえにこそ、機械の如き正確さで他者の追随を許さない。
そしてそれは、半ば機械のそれとも称される存在であるオルトに取ってはプラスに働く。──普通にしているだけで再現度の判定が大きく上がるのだ。
その状態を人が越えるには、相応の覚悟が必要となるだろう。
少なくとも、恐れや怯えを含んだままでは無理がある。
そんな状態で、自分らしくあれと言われて実行できる者がどれだけいるだろう?
目の前に自身の命の終わりを突き付けられて、演じていることを止めてしまわない存在がどれだけいるだろう?
……一瞬脳裏に『
ゆえに、この戦いを『命を賭けるもの』ではなく『人としての尊厳を賭けるもの』くらいにランクダウンさせる必要がある、というのがここまで第一段階で述べてきたことだった、というわけだ。
命じゃなくて社会的な立場、というのは正直あまり変化が感じられないかもしれないが……あれだ、命あっての物種、ということで。
「まぁ、生きてなかったら飯も食えねぇからな」
「無駄に命を散らす意味はない」
「それを貴方が言うんですか……」
ともあれ、言いたいことは伝わったようで、最初みんなの間に流れていたえもいわれぬ緊張感、みたいなものは消えたように思う。
世界の命運ではなく、せいぜい自分の身の振り方くらいにまでスケールダウンしたわけだから、気持ちも幾分軽くなった……みたいな話だろう。
いやまぁ、まだなんにも始まってないんでその感覚は錯覚なんだけどね?
でもここでそれを指摘してもいいことないので、大人しく黙ってるキーアさんなのであったとさ。
「すみません、急いで来たのですが道中色々あって……」
「ああうん、大丈夫大丈夫。シンゴジが混じってる時点で邪推されるのは仕方ないから」
見た目もあれだし原作での所業もあれだから仕方ない。
まぁ、彼女の特訓の成果なのか、今のシンゴジは往年のお茶目なゴジラ、みたいなコミカルな動きをするようになっているわけだが。
……顔とかは変わってないので、なんというかシュールギャグみたいなことになってるけど。
「
「誰が姐さんじゃいっ。……ともかく、みんな揃ったんならいよいよ作戦開始だ、私たちでオルトを落とす──名付けてオペレーション・シューティングスター!」
「なんだかクロスオーバーしそうなプロジェクト名ですね」
「流れ星だからね、仕方ないね」
なんか無駄に高いらしいねあのソフト。*4
……とまぁ、関係ない話はそれくらいにして。
私たちが目下敵として判断しているハロウィン・オルトは現状、なりきり郷内に上下の穴を開け、好き勝手に移動している最中である。
本来各階層に物理的な繋がりはないに等しいのだが……溢れ出る無尽蔵に近いハロウィンゲージを潤沢に使い、その無茶を成し遂げているらしい。
……無尽蔵に近い、って辺り本来のオルトと大差ないようにも思えるが、使えるのがハロウィンに関係することに限定されているため、今はまだどうにかなっている。
なっているが、ほっとくと永遠にハロウィンを続けようとするため、何処かで止めなければなるまい。
ただ、適当に止めてしまうとこれがとんでもない問題を引き起こす。
外から止められた、という状況が原作において『とある勇者王』に心臓をぶち抜かれた状況と同一と判断され、再起動の準備を許してしまうのである。
そしてこのオルトを停止せしめた勇者王、というのも問題だ。
アニメ作品に明るい人ならば、この名前を聞いて思い出すのは恐らく一人。タイトルからして明言している『ガオガイガー』、その主人公たる『獅子王 凱』だろう。
実はその凱とこの『勇者王』、呼ばれ方も同じなら声も同じという、あからさまにそちらを意識して作られたキャラなのだが……それだけなら単なるパロディで済んだところ、彼の境遇は『獅子王 凱オルタ』と言えてしまうほど、
まぁ、それだけなら最悪『ガオガイガー好きなんだなー』くらいで済んでいたのだが……ここに来て『逆憑依』の持つ『風評に左右されやすい』という面が牙を剥いてくる。
……わかりやすく言うと、第一段階でロボ組を前に出させ過ぎると、その時点で敗北決定になるのだ(ハロウィン要素の方が優先されるメカエリちゃん除く)。
詳しい理屈は解説に譲るが、ともかくこの辺りもライネスが前に出ないといけない理由の一つ、ということになる。*6
「特にシンユニロボは、この段階での相性が最悪だね。合体ロボな上に胸にロボ以外の顔がある、って時点で勇者適正爆上がりだし」
「そもそもイメージ先が戦隊ロボですから、要素の類似性については語るべくもない……ということですね」*7
いや、真面目に狙ってんのかこの配置、となるというか。
……まぁ、要素てんこ盛りであるシンユニロボは、ラーニングされる可能性のある技術もてんこ盛り……って時点で実のところ端からオルト戦には向いてないにも程があるのだが。
ともかく、第一段階でまともに対峙できるのはグランゾンくらいのもの、しかし縮退砲以外での撃滅に確実性が欠けるためメイン戦力としてはカウントし辛く、結局ロボ組は全員補助に回るしかない、という話になるわけで。
「なんていうか……世知辛いね、色々と」
思わずため息が漏れるのも仕方ないと、私たちは頷きあうのでありましたとさ。