なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「 (白目)」
「……私たちが八人に別れたあと、少し気になって確認したの。
まぁ、その判断自体は責められないわ。
だって、私もたまたま気になって調べただけだもの──。
そんなメカエリちゃんの言葉を聞きながら、私は彼女に渡された書類を確認し、プルプル震えている。
……いや、こんなん震えるに決まっとるやないかい。
「ねぇなにこのハロウィンゲージの内訳!?なんか気のせいじゃなければゲッターとかイデとか書いてあるんだけど!?」
「気のせいじゃないし目の錯覚でもないわ。……あと、その二つに関しては自己申告してくれたからわかりやすい*1ほう、他にも自分からは特になにも言わない未知のエネルギー……みたいなものが幾つか観測されているわ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
今!このタイミングで!こんな地雷みたいな情報を渡してくるんじゃないよ!!いやまぁメカエリちゃんを責めても仕方ないんだけども!!
……叫んだらちょっと冷静になってきたため、改めて先ほどの彼女の発言について思考する。
ハロウィンゲージなる謎エネルギーについては先のゆかりんの解説内でも触れられていたが、その時彼女達が話題に挙げたのはヌカコーラ・およびそこから推測できる放射線・ないしは核エネルギー。
厳密に言えば核分裂の際に引き起こされるエネルギー、とでも言うべきなのだろうが……どっちにしろ一般人にとっては危なすぎるものであることは間違いないだろう。
それが見逃されたのは、偏にハロウィンゲージ全体の方向性のせい。
これらの集められたエネルギーは、
……なんかもうこの説明文の時点で不穏だが、ともあれハロウィンについてだけ効力を発揮するのなら
そのため、その中身──なにが構成要素として含まれているのか、という部分はあまり詳細には調べられていなかったのだという。
それは、そのエネルギーが変換されオルトとなり、エリちゃん達が八人に分裂しても同じ。
彼女達はエネルギーそのものより遥かに危険度の高い存在が目の前に現れたことで、その確認を後回しにした……もとい優先度を下げてしまったのである。
その中で、こうして私の横──オルトからは離れた位置に配置されたメカエリちゃんだけは、他のエリちゃん達と比べて余裕ができ……ゆえに、後回しにしていたエネルギーの組成に目を向けることができた、と。
「なにせ私は鋼鉄の魔嬢ですので。そういったものを調べるための機能というのも一通り揃えているわ」
「なるほど……言い変えるとメカエリちゃんだからこそ気付けた、と」
「一応、二号機でも同じことは出来たと思うわ。彼女の方はオルトへの鉄槌を下すことを優先したから、できるというだけでこのタイミングでそれをしたかどうか、というのはわからないけど」
「あーうん、向こうの方がなんというか厳しい感じするもんね……」
とまぁ、メカエリ間の感性の違いは置いとくとして。
ともかく、こうして私の横に来たからこそ彼女はハロウィンゲージを詳しく調べる機会を得て、そうしてその中で特に主張する二つのエネルギーに気が付いた、と。
……当の二つのエネルギー、ゲッター線とイデだが、共にある作品で『無限力である』と括られたものであり、同時に方針が反対であるためよく対立するモノとしても知られている。
かたや純粋な闘争本能──後世で後付けされたものとはいえ、とある存在を討ち滅ぼすために同族との闘争すら許容するあり方を持つゲッター線に対し。
かたや純粋な防衛本能──文化の違い、人種の違い、考え方の違い……人の断裂を生むあらゆる障害を乗り越え、融和することを求めるイデ。
……まさしく、あり方としても求める結果としても正反対であり、この両者は同じ世界にあればまず間違いなく争い合う関係にある、ということになるだろう。
まぁ、両者が今のところ両立したことのある世界において、ゲッター線側がその本性というか、求めるべき先を示したことはあまりなく。
どっちかというとゲッター線側が常識人、みたいな扱いになっているのはある種の笑いどころのような気がしないでもないが。
……ともかく、この両者が揃う場合対立する、というのは半ばお約束。
ゆえに生じる問題と言うのが、外から見ると
「……なるほど。本来無限力──その発現が明確に世界へと影響を与えるモノであるにも関わらず、両者が揃った環境においては
「そういうこと……いやまぁ、私が調べよう、って意識を持たなかったのも理由の一つだけど」
あれだ、ハロウィンのことを真剣に考えると頭が痛くなるから無意識に避けてた、というか。
……実際、メカエリちゃんの報告書を見たあと、私の方でも組成を調べてみたのだ。
結果、思わず白目を剥いたわけだが……ともかく、根本原因であるエネルギーへと目を向けるのが遅れた、というのはわりと致命的なミスであるし、そうでないとも言える。
「と、言うと?」
「……イデオンをここで凍結するしかなくなった」
「あっ」
……そう、イデオンの中から忽然と消えていたイデ。
それは最初から入っていなかったのではなく、ハロウィンゲージの中に含まれていただけだったのだ。
最初にイデオンが登場したのが神有月──出雲でのことだったので失念していたが、彼の次の登場はその年のハロウィンロスタイムだった。
……そう、端からこの世界のイデはハロウィンの使者だったのだ。
ということは、だ。
あの時彼処に置かれていたイデオンは、言うなればたまたまイデがハロウィンの話をするため、ハロウィンゲージに集合した際に脱いでいただけのもの……みたいなことになるわけで。
それを火事場泥棒みたいに使用している今の私は、イデから滅茶苦茶睨まれている状態ということになる。
……となれば、だ。最悪、ハロウィンゲージ内のイデはこちらに無理難題を吹っ掛けてくる可能性が大、ということになり──。
「最悪、オルトを倒したあとに召喚される可能性が生まれた」
「……ネットでの『生きるために人の意思を擬態し取り入ろうとする姿』を学習・もとい参考にしてオルトが動き、それをイデが指示する……ということ?」
「そういうこと(白目)」
うん、オルトとも融和しろ、とか無茶苦茶言ってくる可能性大ですね(白目)
……いやまぁ、本家本元とやれ、と言われるよりはマシだろうけど、それにしたって難易度ルナティックどころの話じゃないんですがそれは。
ついでに言うと、イデオンを私に使われている状況を嫌って取り返しにくる可能性もあるし。
……それに関しては寧ろ向こうの好きにさせ、取り返された直後に私が『星解』から凍結を狙う、みたいな方法で完全に排除することもできるからまだマシだけども。
ただ、そうなると必然的にイデでの支援は不可能、ということになる。
……オルトに取られるかイデに取られるか、みたいな話がなくなるだけヨシ、とでも思わないとやってられない。
そんな風に歯噛みする私の前で、事態が更なる変化を遂げる。
「……!キーア、あれを!」
「は?……えっちょっ、いや確かに構成要素に含まれてたけどもぉ!?」
最初にそれに気付いたのはメカエリちゃん。
彼女が指差したのは空、本来ならばなにか問題の起きるはずのない、
今、そこに見えるのは高速で落ちてくる一つの隕石……隕石!?
そう、街一つ分くらいの大きさの隕石が、こちらにも明確に見える大きさと速度を伴って落ちてきているのである。
もしやと思うが……これはあれか、ハロウィンゲージ内の『源石』による影響、というやつなのか?!
天災を引き起こすとされる『源石』のは危険性については、今さら議論する必要はないだろう。
だがしかし、あれもハロウィンゲージに含まれている以上、基本的には害のないものとなっていたはずなのだが……これあれだな?イデが私に目を向けてるせいで隙ができた、とかそういうあれだな?
「どういうこと?」
「なんやかんやでイデとゲッターはあのエネルギーの中の纏め役だった、ってこと!穏健派と過激派のそれぞれの代表、みたいなもの!」
上が統率を緩めたため、その下の構成員が好き勝手なことをし始めた、とも言えるか。
特に、
「だからって唐突に隕石は止めてほしいなぁ!!」
俄に慌ただしくなる眼下の街並みを横目に、私は一先ずの脅威である隕石と対峙することになったのだった……。
嫌がらせかな、これ?