なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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バフ効果って意外とバカにできない

「あれは……アークナイツの?いやでも、あの宝具はスカディの……?」

「細かいことは言いっこなし、よ!とりあえずあの面倒なやつの干渉は弾いてあげるから、さっさとぶん殴ってきなさい!」

「あらほらさっさー!」

「キーア!?」

 

 

 すさまじくややこしい身の上となったスカジが宝具を展開──巨大な陸上戦艦が現れ、それによるバフ効果が周囲に行き渡ったことを確認し、そのままイデオンを前進させる私。

 その姿にメカエリちゃんが困惑の声をあげるが……それも当然、先ほどまで近付きたくないとか言ってたやつが、平気でオルトに近付き始めてるんだからその驚きも一入、というやつだろう。

 

 とはいえこれには理由がある。

 その理由と言うのが、先ほどスカジが展開した宝具『死溢るる魔境への門(ゲート・オブ・スカイ)』。

 彼女の力の源である海の怪物(シーボーン)を押し入って代わりに収まったスカサハ=スカディの宝具であるそれは、本来はさらにそこから遡って死の国の女王・スカサハの持つモノであるとされる。

 

 そちらが使用されたのは派生作品の一つ・『EXTELLA LINK』でのことだが、その時は広範囲に攻撃を加える対軍としての用法であった。

 スカディの場合はそれとは違い、自身の庇護下にある味方に対して幸運と祝福を与えるものへと変化しており、スカジが使ったものも基本的にはこちらに準拠している。

 それが何故かと言われれば、彼女の中の海の怪物を排除するのにそちらの方が都合が良かった、というところが大きい。

 

 本来の彼女の性質というのはスカディよりもスカサハの方に近いが、しかし本来『スカサハ』と『スカディ/スカジ』という存在には共通点、ないし経由点というものが存在しない。

 これは、『fate』における英雄像の構築が()()()を重視しているから、というところが大きい。

 

 スカサハとスカディが同一の起源を持つ、というのはとある人物のみが提唱していた説であり、本来ならばそれが縁となるようなことはありえない……のだが、その説を補強できるだけの様々な前提があったからこそ成立し得たのだ。

 

 例えば、ランサー……クーフーリンがルーン文字を使う、という点。*1

 地域としては近いが、神話としてはまったく別物である北欧とケルトという二つの神話間を跨がる要素となってしまったそれは、翻ってこの二つの神話を結びつける理由として使われることになった、といえる。……悪く言うと失敗を別の形に変化させた、ということか。

 また、fate世界には『無辜の怪物』と呼ばれる概念がある。

 風評によって他者を変貌させうるそれは、しかして良い影響であれば『可能性の光』という別種のスキルに変化する。

 そしてそのどちらも、民衆の祈り・願い・思いに強く影響を受ける、という点では大差はない。

 

 つまり、『スカサハとスカディは同一の起源を持つ』という情報が無辜によって補強され、そこにランサーがルーン文字を使う、という事実を加えればそんな依田話もあり得るもの、として昇華されるわけだ。

 

 ……とはいえ、これはあくまでもfateという世界の中での話。その論説を外に持ち出すことは叶わず、ゆえにアークナイツのスカジにfateのスカサハをそのまま【継ぎ接ぎ】する、という方法は使えない。

 

 ゆえに、より簡単に繋がりを示せるもの──あからさまに同じ起源であることを示す『スカディ』と『スカジ』という形で繋がりを構築する必要ができた、というわけだ。

 そしてこちらは、先ほどまでの繋げ辛さとは裏腹に非常に代替しやすい関係となっていた。

 

 その理由は三つ、見た目の空気感とゲーム内キャラとしての役割、それから名前。

 見た目の空気感は、互いの服装のこと。

 共にドレスを身に纏い、どこか浮世離れした空気を持つ両者は、相応に繋がり易い属性であると言える。

 

 ゲーム内キャラとしての役割は、周囲にバフを撒くバッファーとしてのもの。

 共に戦略を一変させうるほどの能力を持ち、戦場に一人置いておきたくなるキャラである。

 

 三つ目は……まぁ、今さら語る必要もないだろう。

 これらの三つの要素や細々とした関連点を強調し、スカジの中から海の怪物の影響を抜いた、というわけだ。

 

 ……言葉では簡単なことのように述べているが、これが中々大変だった。

 なにせここまでの要素、基本的には無理やり『そうだ』と言い聞かしてるようなものなんだもの。

 空気感に関してはそもそもスカジが濁心となった後で比べてるので今の彼女にゃ関係ないし、バッファーとしても微妙に役割が違う。

 唯一疑問を挟まないでいいのは名前だけで、どちらかと言えばそこから他の方面に強弁を加えていった形になるわけで。

 

 ……そこまでしないと抜けない海の怪物の影響、というものに色々文句を言いたいところだが、しかしそうでもしないと『逆憑依』としては無茶苦茶になるのだから仕方ない……みたいな。

 

 そう、今の彼女は『逆憑依』としてはかなり歪なことになっている。

 本来ならばアークナイツの──アビサルハンターとしての彼女がここにあるはずだったにも関わらず、それを排除してなお彼女として成立させようとしているのだから。

 

 とはいえ、それも仕方のないこと。

 わりと人気がある方である気がするアビゲイルとか葛飾北斎とか、そういう『外様(とざま)の神』に関わる存在は基本的に『逆憑依』にはいないのだから。

 ……なりきりとして掲示板で見たことがない、というわけでもないのにも関わらず、である。

 

 シャナがアラストールを連れていないように、彼女達の場合も契約した神々を内包しない、という形でこちらに来てもおかしくないような気がするのだが──クラスとしてフォーリナーであることが重要な彼女達の場合、恐らくその状態が『逆憑依』の条件に当てはまらないのだろう。

 なので、例えばこちら側で『ジャック・ド・モレー』を見掛けることがあった場合、それは例外なく男性の方としてこちらに顕現するはずだ。

 

 ──そういう前提がある上での、スカジである。

 本来ならば彼女もフォーリナーの類いとして処理されそうなものだが……彼女達の属するアビサルハンターとは、毒を以て毒を制す類いの存在。

 言い換えると仮面ライダーとかその辺りの存在に近いものであり、それ単体では再現すべき神性というものがいない。

 言い換えるとスカジだけが特殊だった、というわけだ。……いやまぁ、ミヅキ君とかも大概ではあるのだけれど。

 でもあっちはアビサルでもアビサルハンターでもない単なるエーギルだし……いや、これ以上は長くなるから止めておこう。*2

 

 ともかく、スカジだけが『逆憑依』として成立しうるにも関わらず、一般的なフォーリナー達と同じ問題点──『海の怪物(外様の神)』の影響を受ける可能性を持っていた。

 ゆえに、その危険性を排除する必要性がどうしても存在した……というわけである。

 

 

「いやホント、本人的にはどうなのかはわからんけど、こっちはすっごい大変だったんだよ。要素が要素を潰さないように、本人の人格を阻害しないようにって感じで。……幸いスカディ様は力だけ貸す、みたいな感じで納得してくれたけど」

「……その言いぶりからすると、【継ぎ接ぎ】成分であるはずの彼女と話をした、という風に聞こえますが?」

「……さて、張り切ってオルトを倒すぜ!」

(露骨にごまかしましたね……)

 

 

 ……うん、上手く行ったんだからいいんじゃないかな!!

 

 ともかく、今のスカジはスカディの力を振るう者、ある種の疑似サーヴァントみたいなことになっているわけだ。

 そしてそれ故と言うべきか、その能力の影響力はかなり強いものになっている。

 どれくらいかと言うと──オルトの『祭事渓谷』を中和するくらいには、だ。

 

 

「……なんと?」

「と言っても、これはオルトが本来のそれより遥かに強さが下だから、って前提あってのことだけどね。施術の際に引っ張ってきたのは()()()()()()()()()()()だったから、スカジ側の能力が高いのは当たり前だし」

「ああ、噂の【偽装召喚(パラレル・インストール)】というものですか?」

「いんや、これは別の……って、そこはどうでもいいのよどうでも」

(……また聞かれなくない内容だったみたいね)

 

 

 なんかメカエリちゃんが私を見る目が大分胡乱なものになっている気がする……。

 とはいえ今は詳しい話をしている場合ではない。

 確かに今のスカジの影響力がオルトのそれより強い、というのは間違いではない。

 ……ないのだが、その出力を何時までも維持できるか、と言われればそれはまた別の話になるのである。

 

 

「と、言いますと?」

 

「いやこいつの干渉すっごいんだけど?!滅茶苦茶ごりごり削れてる!!?これ後でアーミヤに怒られ……あ゛*3

 

「……ああいうこと」

「なるほど。腐ってもオルト、生半可な策では食い破られるということね」

 

 

 原作を同一にする存在、かつ()()による影響を受けない存在の一人であるスカジの干渉は、オルト内部の源石の効果を著しく低下させる。

 それにより空から降り注ぐ隕石は姿を消し(正確には飛来する前に削り飛ばされ)、残る祭事渓谷もフィールド効果で中和することに成功しているのだけれど……そこまでやってもなお、この優位は時間制。

 そもそもの話、スカジがあの宝具を展開するのに結構なエネルギーを必要としているため、与えられた猶予は数分程度でしかないだろう。

 

 その間に、作戦第一段階から第二・第三まで終わらさなければならないわけだが……第一に関しては終了の目処が立っている。

 ならばやるべきことは一つ、

 

 

「オルトを行動不能にする!行くよメカエリちゃん!」

「了解。オープンコンバット、メイガス・エイジス・エリザベート・チャンネル、行動開始」

 

 

 数十キロの距離を一瞬で駆け抜け、私たちは主戦場へと足を踏み入れたのだった──。

 

 

*1
本来彼が使うのはオガム文字。当時はケルト周りの資料が少なかった為にこんな珍事が発生したのだとか

*2
海の怪物達は自身の神・王となるべき個体を幾つか選定しており、その内の一人がスカジ(の中の存在)であるとのこと

*3
「あとで」「お話が」「あります」「アーミヤより」(ヒュッと息を呑んだあとガタガタ震えるスカジ)

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