なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「うーん、生きたいという意識による概念不死でも獲得しているのかこいつ……?」
シンユニロボがやられると最早対抗策ゼロであるため、彼らに向かうヤバげな攻撃(主に触手)を手刀で切り払う私である。気分はトリコ君、みたいな?
「あ、確かに。ナイフで戦うトリコさんみたいですね、今のキーアさん」
「図らずしも、って感じだけどね。あと釘パンチはできないし」
一応、小松君の認識上ではこれらの戦闘行為は調理であるため、そこに携わる私もある意味トリコ君みたいなもの、と言われれば否定はし辛い。
あえて言うのなら本人はちゃんと居る、ってことだが……最終的な到達地点はともかくとして、今の彼だとオルト相手には幾分劣るため、ライネスのボディガードに専念して貰ってたりするので近くにはいないのだけど。
「つーか、可能ならあんまり近付くなとも言われてるんだよな。仮に本気のオルトになった場合、祭事渓谷じゃなく水晶渓谷になったら目も当てられねぇからってんで」
「そりゃそうだろうよ……亜種の時点でも大概だったんだ、【継ぎ接ぎ】の恣意的利用による原種への回帰、なんて覚えられた日にはみんなお陀仏だよ」
……というのは、離れてる二人の会話である。
ともかく、現状の私がトリコ君の代わりとしてここに立っているようなもの、ということは間違いあるまい。
そのせいってわけなのか、手刀の切れ味も次第に増しているような気がするし。
「その上でなおダメージがまともに入ってないってんだから嫌になるよねー」
「向こうも多分同じことを考えてると思いますけどね」
すぱすぱと触手を切りつつ、うんざりしたように声をあげる私であった。
……時々返す刀とばかりに本体に切りつけているのだが、これが中々。
切れ目は入るのだがそれも一瞬、次の瞬間には塞がっているのだからたまらない。
……あれか、ゲッター線も混じってるみたいだから、再生力が強化されてるのかな?
まぁ、こっちがあくまで牽制として攻撃してるから、というところもなくはないのだろうけど。
「確か……やり過ぎるとよくないんでしたっけ?」
「そうそう。今のオルトは弱体化してるけど、そのせいでハロウィン成分が抜け掛かってるから」
正確には、死にたくないという本能がエネルギー……ハロウィンゲージの方向性を変化させかねない、というべきか。
本来ならばハロウィンにしか使えないそれを、『自身の生存こそハロウィンに必須のものである』と誤認させることで別の用途に引き出しているというか。
所詮は誤認なので、そこからさらに別方向に変化させるのは難しいのだが……急激にダメージを与えすぎるとその誤認の範囲が広がる恐れがある、というか。
……全部仮定なのは、結局ハロウィンゲージのこともハロウィン・オルトのこともろくに理解できていないため。
これらの予想が間違いの可能性も相応にあり、かつそれの検証のための時間も取れないため探り探りやるしかないのだ。
とはいえ、それでもわかっていることはある。
ハロウィン関連同士だと決着がつかない以上、この場でオルトに致命傷を与えられるのはロボット達三騎のみ。
その内イデオンこと私とネオ・グランゾンの二人は、概念的な即死手段を持たないため仮にオルトを滅ぼそうとすると周囲ごと、という形になること。
ゆえに、戦隊もののお約束──必殺技が文字通り必殺である、という性質を利用するためにシンユニロボが適任である、ということだ。
で、その必殺技が普通にやると避けられるため、ほどほどにオルトをボコって避けるような余裕を無くしておきたい・そのためにある程度ダメージを与えたい……というのが今の周囲の目的になるわけだが、一撃必殺以外は望むべくもないため意外と調整が難しい……みたいな話になっているというか。
いや、一番いいのは羽交い締めにするとか、そういうのだと思うんだけどね?余計なダメージを与えないから適応もなにもないし。
『なるほど、できるのならばそれが一番確実ですね。できるのならば、ですが』
「オルト相手に組み付くとかマジで単なる自殺志願者なんだよなぁ……」
幾ら今はまだハロウィン属性が強いとはいえ、流石に羽交い締めになんぞしたらオルトの生存本能はマックスになるだろう。
そうなったらハロウィンの縛りは真っ先に邪魔になるため、迷わず適応を目指すはず。
……適応目標が散ってる今ならともかく、そうなったら真っ先にハロウィン属性は剥がれ落ちることだろう。
そうなればスカジのバフは全部無効化されるし、すぱすぱと切れてる触手も切れ辛くなるし、同時にイデオンに触れられる可能性も高くなるのでゲームオーバー、と。
……というか、羽交い締めにできるのが私もといイデオンかグランゾンしかいない辺り、その時点でダメそうな匂いがすごいというか。
『イデオンはまさに論外ですが、私のグランゾンもあまり長期間は抑えておけないでしょうね。下手をすると数分もしないうちに取り込まれる……なんて可能性も否定はできないでしょう』
「今はオルトの機能はほとんど停止してるけど、流石にハロウィン属性外れたら活性化するだろうからねぇ……」
敵性体の離脱を阻む銀糸、レボルーション・ウェブだったか。*1
任意による戦線離脱を禁じるこの技能は、今のオルトには備わっていない。……いや、機能していない。
この辺りもこのオルトが原種や亜種より弱い、という証左になっているのだが……同時に、ハロウィン属性から解き放たれた時に使ってこない、と言い切れる理屈もない。
つまり、迂闊にオルトを羽交い締めにした結果、ハロウィン属性への適応が急激に進みそれを排除できるようになったならば、まず間違いなくオルトはそれらの機能を再起動するだろう。
そうなればまぁ、一巻の終わりである。……一応は『星女神』様辺りがなんとかしてくれるとは思うが、どっちにせよ世界が一度終わることは間違いあるまい。
ついでに言うと、そんなことになったら彼女の失望ゲージが貯まって世界への敵対者フラグが……、
「いや待て!?そんなものが立つのか?」
「かもしれないね、ってだけの話だよ。この程度なら貴方達だけでもなんとかできたでしょうに、とか思われてたらなくもないというか」
「求める基準が厳しすぎるだろうが!!」
うん、そこに関しては反論もない。
……まぁともかく、できれば失敗したくないというのがわかって貰えればそれでいい。
そんなわけで、現状ではシンユニロボ君の必殺技をなんとか当てる方法を探りつつ、その一環としてほどほどにダメージを与えては適応されない程度に回復を繰り返されている……というのが実態なのであった。
「……そういえば、なんでキーアさんそのものは適応されてないんです?」
「前も言ったけど、『生きたい』と願うオルトにとって『死にたい』が根幹にある【星の欠片】は意味がわからないしできるなら理解したくない類いのものなんだよ。だから、それで攻撃をしたらとりあえずダメージは与えられるってわけ。GOD EATERの偏食因子*2とかと考え方は近いんじゃないかな?」
「ええと……アラガミ細胞は嫌いなものは一切食べない、みたいな話でしたっけ?」
「そうそう、そんな感じ」
嫌いなものをぶつけて攻撃しているので、向こうも積極的に学習しようとはしてないというか。
……まぁ、アラガミ細胞ほど偏食家ってわけでもないだろうから、あんまり多用すると逆ギレ的な対応が飛んでくる可能性もないではないのだが。
「……?いえ待ってください、偏食家……?」
「おっと小松君、なんか突破方法見付けた感じ?」
「ちょっと思い付いたんですけど……」
「…………なるほど?ちょっとその発想はなかったわ」
そうして話題に出したものが、この状況を打開する手段を閃くきっかけになるというのだから、世の中わからないものである。
作戦としては、至って単純。
……なのだが、結果的に私への負担が増してるのは、なんというか隠し事の罰なのだろうかとちょっと首を捻らざるを得なかったりするというか。
「とはいえ、今のところこれより良い案も思い付かないから実行するんだけど、ね!ってなわけで──【
「!?」
私の言葉と行動に、初めてオルトが驚愕の姿勢を見せた。
それもそのはず、オルト的には苦手なものに当たる私の気配が、唐突にイデオン以外からも立ち上ぼり始めたのだから。
私の使う技能の一つ【
基本的には他人の持つ武器に憑依的なことをして、【星の欠片】によるレベルアップを行う……みたいな感じのものなのだが、その際【
その際、それらの自己崩壊を防ぐ──もとい、肩代わりしているのが私……もとい【星の欠片】なのだが、雑に言うとそれこそがオルトにとって驚愕だったのだ。
全ての細胞が全ての細胞の代替となりうるオルトにとって、自身でもないどころか単なる獲物の代替となって消え失せる【星の欠片】、なんてものはまさしく理解の範疇外。
まっったく理解したいとも思えない要素の一つであり、それで攻撃された日には思わずビクッ、となるぐらいに嫌なものになっている。
それが、周囲に唐突に無数に現れたというのだから、彼の混乱も一入というものだろう。
さらに、イデが嫌がっているのはイデオンに入っている
「必然、固まっちゃうよねぇ!!」
「今です、ユニバースロボ!」
「!!」
勝手に対処してくれるイデは動かず、ゆえにシンユニロボの攻撃にも付与された
結果、オルトはまともに必殺技をくらい、そのままお約束の如く爆発したのだった。