なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「やったか!?」
「フラグを立てるなフラグを!?」
爆風を前に、思わずお約束のやり取りをする私たち。*1
もうもうと立ち上る黒煙はオルトを覆い隠し、その姿がどうなったのかを容易には知らせない。
それが一抹の不安をこちらにもたらすが……その煙が晴れた時、オルトはしっかりと機能を停止していたのだった。
……ついでに言うと、なんか全身がオレンジ色に染まっていたりもする。
「……カボチャになった、ということなのかこれは?」
「蜘蛛でも蟹でもなく
うん、色さえ除けば聖剣砲の直撃を受けた亜種のオルトと同じ姿、というべきか。
……そうなると必然的に次の形態*2を警戒してしまうが、今のところそういう変化はなし。
どうやら、そこから本来は塵になって消えていく……という流れになるところを、小松君による『食材概念の付与』を受けて固まってしまっているらしい。
分かりやすく言うとごく簡単な下拵えされた状態扱い、とでもいうか?
……他者を捕食するオルトが、食材としてまな板に乗せられているとはこれ如何に。
「いやまぁ、端からそれを狙っての部分も強いわけだけど。より強い方向性を【継ぎ接ぎ】して無力化しようって感じだったわけだし」
「今さらですけど……これって本当に調理しても良いものなんですかね……?食べた後に細胞を突き破って出てきたりとかしないですよね……?」
「地味に怖いこと言うね小松君???」
なんだその出来の悪い宇宙生物みたいな再生の仕方。*3
……よく考えたら、私もとい【星の欠片】はそれやろうと思えばできるな?*4
なんてことを呟いたせいで一時小松君が引いていたが……ともかく、第三段階──オルトの調理開始である。*5
現状のオルトは敗北したこと・およびその際に付与された【継ぎ接ぎ】──お前は食材なのだ、という概念により休眠状態となっている。
トリコ風に言えばノッキングされた状態、というわけだが……ここから対処をミスると再び再起動する可能性大なので行動は慎重に、だ。
「とりあえず……全身の肉を柔らかくするために揉んでみますか?」
「具体的にはどうやって?」
「んー……確か生半可な方法だとダメージにすらならないような外皮なんですよね?じゃあちょっと、グランゾンさんに頼んでみましょう」
「えっ」
まずオルトの全身を柔らかくするため、揉み込んでみることに。
そのために使うのがブラックホール、というのはなにかの冗談のようだが、実際それくらいしないとオルトの外皮を歯が立つくらいに柔らかくする、というのは達成できないのでしかたない。
……本当に仕方がないのかそれ?
『……流石の私も、グランゾンでの調理というのは初体験ですね』
「世の中にはロボットでピザを焼いたりする作品もあるから、料理そのものは別に珍しい話でもないってのがあれだよね……」*6
微妙そうな内心を感じさせる声音のシュウさんだが、それ以上の文句を口に出すことはなく素直に小松君の指示に従っている。
……下手に反抗した結果オルトが再起動しても困る、ということなのだろう。
実際、料理が完成するまでは気が抜けないのは確かであるため、絵面に反してパイロット達に走る緊張感は紛れもなく実戦のそれなのであった。
いやまぁ、やっぱり絵面はあれだけどね?!
「……ふむ、分子単位での揉み込みなら流石に良い感じみたいですね。じゃあ今度は身を小分けにしようと思うんですけど……」
「そういえば今さらだけど、このオルトって中身なんなんだろうね?」
「そういえば、本物は中身が炎なんですっけ?」
「しかも一兆度のね。……流石にそんなもの再現しきれないとは思うけど、その代わりこいつハロウィンゲージ製なんだよなぁ……」
見た目の色味通り、中はカボチャだったりするのか。
はたまた、オレンジを炎の色と解釈して中身は炎のままなのか。
……いやまぁ、仮に炎だとしても味とか付いてるトリコ世界的炎に変化してる可能性大だけど。*7
とはいえ、仮に変化してなくて元のまま、だと下手に包丁()を入れた途端に周囲が蒸発する……みたいなことになりかねないため、比較的安全そうな爪先にちょいっ、と傷を入れてみる私である。
……え?さっきその辺り気にせずばかすか攻撃してただろうって?
生きてる間なら向こうも自身の中身がヤバいことに気付いてるから制御してるけど、そういうのが消えてる今だと誰もそういうことしてないから危ないでしょ?*8
FGOだと、死体も残さず消し飛ばしたからその辺りの心配はなかった……みたいな可能性もあるし。
そんなわけで、可能な限り本体から離れた部分に傷を付け、内部構造を確認したところ。
「……やっぱり蟹なのでは?」
「ぷりっぷりの身が出てきましたね……」
外皮の下から現れたのは、蟹のそれを思わせるぷりっぷりの橙色の身。
そのまま茹でてかぶりついたら美味しそう……という感想を抱かせるそれは、見た限り炎ではなさそう……いや?
「よく見ると表面が揺らめいてるねこれ……」
『ふむ、敢えて名付けるならホムラガニの身、みたいなことになるのでしょうか?』
「唐突になにを言ってるのシュウさん……?」
出てきた身を子細に確認したところ、熱くはないが燃えていることが判明。
……つまり、炎が蟹の身みたいな集合を構築しているのがこのオルトの肉、ということになるようだ。やっぱり蟹じゃねぇか。
そうなると途端に鍋にしたくなるのが人情(?)と言うものだが、小松君はそうは思わなかったらしい。
出てきた身を確認した彼は、なにを思ったのかCメカを降りてオルトの元へダッシュ。
死体とはいえオルトに近付くのを躊躇っていた私たちはその行為を止められず、
「……これは」
(迷わず食べたー!!?)
ゆえにその後の彼の行動──
いや、それにしたってよくもまぁ躊躇せず口に入れられるなそれ……。
なんてことをこっちが思っていると、突然光輝く小松君。なんの光!?
「……やっぱり、これカボチャですよキーアさん」
「ええっ!?その見た目で!?」
「この見た目で、です!ですがただのカボチャじゃありません、ド級のカボチャ──ドスカボチャですよ!」*9
「……いや、ドリトライなのかモンハンなのかはっきりさせない?」
どうやら、彼の言うところによればオルトの身は初見の感想通り、カボチャのそれに近似しているらしい。
あくまで近似なのは、それ以外にも複数の旨味が詰まっているから、ということになるらしいが……だからってドスカボチャとはこれ如何に。
ともかく、味がカボチャ系と言うのなら蟹のような調理は止めた方がいい、というのは確かだろう。
基本的にはそのまま茹でるのが蟹だが、カボチャでそれをしてもまず美味しくはならないだろうというか。
……それと、関係ないが小松君が光ったのはオルトの身が彼にとっての適合食材*10だったから、ということらしい。
ここにきて成長するのかこの人……みたいな気分だったが、よく考えたらこの人【顕象】なので【鏡像】を食べてその権能を奪った、みたいな扱いなのかもしれない。
ともかく、オルトが野菜系の味であるならば調理法は決まった、とばかりに小松君はてきぱきと下準備を指示してきて、私たちはその指示通りにオルトを細切れにしたりしていくのだった。
……自分で言っといてなんだけど、衝撃的な発言だねオルトを細切れ、とか。