なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「挨拶回りって言うけど、具体的にはどういうところに行けばいいのかな?」
「私がこれからそれなりに色んな所に回る予定だから、それについてくればわりといい感じになるんじゃない?」
「なるほど、だからウッドロウさんはああ言ったんだねー」
手間隙は削減してこそ、みたいな?
……そんな感じの世間話を続けつつ、カラコロと音を立てながら道を行く私たちである。
そう、この音からわかる通り、ココアちゃん達は晴れ着にフォームチェンジ☆……しているのだ!
「はるかさんが着付とかできるの意外でしたね……」
「まぁ、ある種の嗜みとでも言いますか……」
いやどんな嗜みだ?
……とか思わないでもないが、そもそもはるかさんについて知ってることが重度のシスコンってことしかないな、と考え直した私である。
凄腕エージェント!凄腕エージェントですからね!?……とかなんとか宣う彼女に「元でしょ」と言葉をぶつけ沈黙させ、あわわと慌てるココアちゃんを肴に進むことしばし。
「げ」
「げ、とは中々ご挨拶じゃないオルタ?それともなにかな?仲良くお姉ちゃんと初詣に出かけてるのを見られたくなかったー、とかそういうあれかなー?」
「そういうウザ絡みが予想できたから会いたくなかったのよっ!!」
そこで、ココアちゃん達と同じように晴れ着に身を包むオルタ達と鉢合わせたのだった。
色違いのお揃いの着物を着た二人は、なるほどとても絵になる感じ。
というわけで、周囲の人々に「一枚いいですか?」って感じに写真を撮られていたため、人集りができていたので気付かれてしまった……と。
「こんなことなら断っとくんだったわ……」
「まぁまぁ。あ、これとかとても綺麗に撮れてますよ?」
「アンタはほんっっとマイペースねぇ!?」
オルタは頭を掻いて嫌そうにしているが、対するアクアの方はマイペースに周囲から貰った写真を彼女に見せ、楽しそうに笑っていたのだった。
……構図が『ミステリー・トレジャー』のそれと同じなのは写真撮った人の趣味か何か?*1
構図に如何わしい意図はなにもないのに、どことなく淫靡な空気を感じるのは何故なのか。
私たちはその謎を探るため、アマゾンの奥地に……。*2
「変なこと言ってんじゃないわよ……それより、なんかすることがあったんじゃないの?」
「おおっと、そうだったそうだった。ここの宮司さんに挨拶をしなきゃいけないんだった」
「はぁ、宮司?」
オルタの言葉で、ここに来た目的を思い出した私。
そうそう、ここに来た一番の目的は宮司さんへの挨拶だったのだ。
他の面々は私の言葉を聞いて不思議そうに首を傾げている。
……そりゃそうだ、少なくとも彼女達の認識では、ここに勤める宮司さんはなりきりでもなんでもない、単なる一般人に過ぎないのだから。
とはいえ、それも仕方のない話。
そもそも彼は
「……誰かの変装、ということかい?」
「まぁ、端的に言うとそうなるね。ついでに言うなら多分大抵の人が知ってる人だよ」
「???」
変装してるのに知ってるとはこれ如何に?
……みたいな感じに顔を見合わせる面々だが、この辺りは実際に宮司さんと顔合わせした時に解説するのでそこまでお預け、である。
ともかく、神社にやって来た一番の目的は宮司さんだが、それ以外にも細々とした目的は残っている。
「具体的には初詣とおみくじ、ね。ってわけで、早速お参りから済ませちゃおう」
「はーい。お賽銭って五円でいいのかな?」
「いいと思うよー」
そういうわけで、ジャンヌ姉妹(姉妹じゃないわよ、と憤慨するオルタは無視)を一行に加え、そのまま賽銭箱のある場所へ。
各々お賽銭を投げた上で鐘を鳴らし、手を合わせ一年の無事などを祈っておく。
数分それに使ったあと、その場からぞろぞろと移動して売店に。
破魔矢を買う春香さんなんかを横目に、みんなでおみくじを引いていく。
「わっ、大凶!?」
「おっ、持ってるねココアちゃん。最近のおみくじってそもそも大凶を入れてない、ないし一つしか入ってないってことが多いらしいから、どこぞの殺人貴じゃないけど選ばれたものの証って奴だよそれ」*3
「仮にそうだとしても嬉しくないよー……」
「まぁまぁ。こういうのは枝に結べばいいのよ」
結果として、ココアちゃんが大凶を引くというトラブルがあったが……確率論的には寧ろレア、みたいな話をすることで慰めることになったのだった。
え?他の人の結果?ロー君と私が凶だったくらいで、他の面々は普通に吉とか出してましたがなにか?
なお、オルタが大吉を出していたのだけど「……これ、皮肉とかじゃないわよね?」とか不満げな顔をしていたことも付け加えておきます。
この状況に巻き込まれていること自体が不運、みたいなことを言いたいのだろう、多分。
「それで?アンタはここからその宮司とやらに顔見せに行くってわけ?」
「まぁ、必要最低限のことは済ませたからね。オルタ達は別に出店とか回っててもいいけど?」
「ここまで来て、さっきの思わせぶりな言葉を聞かされて、一緒に行かないなんてないっての」
「ふーん」
で、それでオルタ達とは別れてもよかったのだが……さっきの話が気になってしまったらしく、そのまま同行するとのこと。
……その流れだと結局最後までついてくる結果になりそうだが、そういえばオルタも最終的に家に誘おうと思ってはいたので手間が省けて良かったのかな、と思い直す私なのであった。
と、言うわけで。
てくてくと歩いていく先は神社の裏手、宮司や巫女さんなどが出入りする関係者以外進入禁止、みたいな場所。
周囲の人達が一瞬『なんで部外者が?』みたいな顔をしていたが、私が手を振り返したことでなんとなく誰なのかを察したらしく、軽く頭を下げて仕事に戻っていく。
「……なんだか手慣れてませんか?」
「そう?たまたまだよ、たまたま」
まぁ、右も左もわからないまま放り出された
そんなことは彼女達には関係ないので説明しない私である。
……正確には、相手に会わせてから説明した方がいい、というだけの話なのだが。
そんな私の態度に首を傾げる面々に微笑み返しつつ、さらに奥の方へ。
歩みを進めたのは神社の奥の奥、居住区に当たる部分。
そこには現在人気はなく、そもそも部外者が足を踏み入れる余地の無い場所であり、流石に他の面々も「いいのかなー」みたいな顔をし始めて……。
「おおっと、どうされましたかな?こちらは私の私室ですので、参拝客の方が見たがるようなものはないはずなのですが」
「お邪魔するわよー、あと見に来たのは貴方の様子だから、ここまで来させたそっちの落ち度だったりするんじゃないかしら」
「……ふむ?」
いや、マジで。
ここまで歩かされたの、彼が見付からなかったからってところが大きいし。
そんな愚痴を呟きながら私達が相対したのは、なんとも冴えない見た目の宮司。
草臥れた、という言葉が似合ってしまうその姿は、ともすれば五十代どころか六十代くらいに見えてしまってもおかしくないくらいの老け方で。
そこに誰かの面影を見ることもできなかったがゆえに、他の面々は揃って困惑していたのだった。
……まぁ、さっき私が『変装みたいなもの』って言ったのに、この姿を見て困惑するのはどうなんだ、みたいな部分も少なくはないのだが。
「いや、そんなこと言ったってだな……」
「生憎、キッドとかあの辺りの変装技術なら予測もなにもないだろう」*4
「ん、それもそっか。……で、もしかしてだけどそっちも不思議そうな顔してるの、私が誰だかわかってないからってことでいい?」
「……あ、あー!なるほど!君か!」
そんな私の言葉に、渋い顔で反論してくるライネス達である。
……確かに、変装のプロ相手にそこから本人の予想を、と言われても困るのは確かかもしれない。
でもまぁ、みんな知ってそうというのならそこまで候補は多くないと思うのだが。
キッドじゃないしルパンじゃない、となれば。
最近の人が誰でも……は言いすぎかも知れないけれど、それなりに知名度がありそうな変装の名手、なんて。
それこそ、片手で数えられるはず。
「その節はどうも。……宮司役を任せられるとは思っていなかったが」
「……あー!?ロイド・フォージャー!?」
「まぁ、流石にこの顔を見せればバレるか」
冴えない宮司の下から現れた顔。
……本業スパイであるその男の偽名は、ロイド・フォージャー。
アニメも大人気なスパイコメディ、『スパイファミリー』の主人公の一人である人物なのであった。