なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、いきなり修羅場?みたいなものを見せられた私たちなのだけれど。
「いやー、良かったわCEOに許して貰えて。これで私の今後も安泰ってものよ」
「……一つだけ訂正させて貰いますと、今の私はCEOではないです」
「今は、でしょ?」
「……遠回しにクーデターでも企てていると仰ってませんかそれ?」
今はこの通り、みんなでこたつに入ってアイスを食べるくらいにまったりしていたのだった。
……うん、スカディ成分だと思うんだよね、これ。
そう感じた私の視線の先では、美味しそうにアイスを食すスカジの姿。……その子供っぽさはなるほど、周年記念礼装のスカディ様の無防備っぽさを彷彿とさせる感じである。*1
「……ん?それって褒めてるの?貶してるの?」
「安心してるよ、なにごともなさそうでよかったって」
「答えになってなくないそれ?」
こちらの言葉にジトッ、とした視線を向けてきたスカジだが……暫く微笑み返してあげると諦めたように小さくため息を吐いたのち、再びアイスに向き合い夢中になり始めたのだった。
……やっぱ子供化してないこの人?
「まぁ……そもそもスカジさんはアビサルハンターとしてずっと戦い続けて来た身。言い換えると今の彼女はそれらの軛から解き放たれた状態ということになりますので……普段の自省が全部剥がれ落ちてる、ということになるのかもしれません」
「自省、自省ねー」
「なによその言い草、文句があるなら買うけど?」
「売ってないし買わなくていいです」
適当な軽口を投げ合って、こちらもアイスの蓋を開ける。
……うん、この部屋に通された時に、みんなアイスを手渡されていてね。
そんなわけで、束の間のアイスタイム開催のお知らせ、というわけなのでしたとさ。
「それはいいんだが……この後ろで鳴り響いてる音はなんだ?」
「え?甲賀忍法帖」
「それはバジリスクだろうが……っ!!」
いや、○○タイムって言われるとつい反射的に……。*2
まぁ、パチンコとかやらない人なので、踊ってる愉快な兄ちゃんしか脳内に出てこないのだけど。
……とまぁ、話は前後したけど改めて現状の解説をば。
地下千階にまで降りてきた私たちが目にしたのは、多分面会にやって来たのだろうアーミヤさんの足にすがり付き、『CEO許して!』とばかりに謝り倒すスカジの姿だった。
うん、突然こんなものを見せられれば思考もフリーズするというもの。
実際他の面々も『なに……?』とばかりに固まっていたのだが……いち早く復帰した私が『何故こんなことになったのか?』ということを思い出したため、素早くフォローに回ったというわけなのである。
「そのフォローの仕方というのが、彼女と一緒になってアーミヤ君の前で焼き土下座をし始める……というのは、正直場の混乱を収める気が一切ないのかと正気を疑ったけどね」
「本当にすまないという気持ちで……胸がいっぱいなら……!どこであれ土下座ができる……!例えそれが……肉焦がし骨焼く鉄板の上でもっ……!」*3
「本当にやるやつがあるかっ!!」
まぁ、そこで私がしたことは今しがたライネスが語ったように、スカジの横で私が焼き土下座をする……ってモノだったわけだが。
でも仕方ない、スカジがスカディ様の力を受け入れることになったのは、偏に私たちのやったことのせい。
となれば、彼女が責められる謂れというのは少なからずこっちにも掛かってくるのである。
「そうなんですか?」
「ええまぁ……道中語りましたが、彼女をこうしたのは主に私。なので彼女がすることには多少なりとも私にも負うべき責任、というものが発生するのです」
「結構暴論では……?」
「こうした方が都合が良い、みたいな面もありますけど」
「はい?」
「こっちの話です、お気になさらず」
あれだ、わりと猪突猛進というか、雑な面があるので自責だけで賄える話じゃないんだぞ、とブレーキにでもなって貰えれば
……今お前がそこを心配するのか、みたいなこと言ったやつはあとで校舎裏な。
ともかく。
スカジが謝り倒していたのは宝具『死溢るる魔境への扉』によって召喚したのがロドス・アイランド号の影であったことが理由だろう。
……実際どういう原理なのかわからないが、もし仮にあの影の船が本来のロドス・アイランド号とリンクでもしていた日には、それを勝手にオルトにぶつけるなどという大戦犯間違いなしの行動だったため、それを理由として謝り倒すのはわからないでもない。
多分、あの時ハロウィン対策に駆り出された面々のうち、私たちが合流してない舞台にアーミヤさんが含まれていたりしたのだろう。
で、オルトと対峙してる時に他の面々の中から彼女の姿を見つけてしまったスカジが、これは後で埋め合わせしないと酷いことになるぞ……と悟ったと。
まぁ、当のアーミヤさんは実のところ別に全然怒っておらず、彼女の
「いやでもだって、あの状況・あの気迫のCEOからあの言葉以外を読み取るのは無理だと思うのよ私……」
「一体なにを読み取ったんですか……私は『頑張れスカジさん』とか、そういうことしか呟いてませんでしたよ?」
「いいえ、あれは絶対『あとでお話がありますので顔を洗って待ってるように』とか、そういうことを言っている目だったわ……」
「私のことなんだと思ってるんですか?!」
ここで魔王、っていうと本当に怒りそうなので黙る私たちである。
……え?そこで黙る時点で最早明言しているようなもの?せやな。
もー!……とばかりに怒るアーミヤさんからのぽこぽこパンチ(意外と痛い)を甘んじて受けつつ、苦笑いを一つ。
ともあれ、ハロウィンの後始末がようやく終わった、と胸を撫で下ろす私なのでありましたとさ。
「まぁ、あの奇行についてはそれでいいとして……ここはどういう場所なんです?」
「隔離塔内の談話室……みたいなところになるのかな?周囲からチラチラ視線を感じると思うけど、それはここの住人達が物珍しさに集まってきてる……みたいな感じというか」
「なるほど……?」
はてさて、話は現在の私たちがいる場所──広目の空間の一画・フローリングの上に畳が敷いてあって、その上に炬燵がある──についての話になるわけなんだけど。
ここは、アーミヤさん達と合流したあとに移動した場所、隔離塔内部の談話室にあたる部分の部屋である。
時期的に冬であるため、外で会話し続けると普通に寒いので建物内部に移動した、みたいな話なのだが……同時に、隔離塔がそろそろ隔離塔としての規模を縮小できるかどうか、みたいなことにもなっていたので、その確認も含めての訪問……という意味合いも含まれていたり。
「縮小?ここなくなっちゃうの?」
「完全にはなくならないけどね。ただまぁ、アーミヤさんとかスカジとかの研究結果からアークナイツ組の行動制限が解除されそうだったり、他の面々も問題点を解決する目処が立ったから、その分の人達のスペースは減らそう……みたいな話になっているというか」
「へー」
元々、隔離塔に隔離されていた面々というのは、
逆に言うと、周囲への被害を発生させないと判断されたのならば、隔離しておく理由がないのである。
そのため、毒の体の制御方法を手に入れた静謐さんだとか、はたまた源石由来の症状を封じ込めることに成功したアークナイツ組なんかは、ここから出る目処が立ったのである。
今日は、その辺りの最終確認の意味合いもなくはない……というか?
「他の面々はエー君から提供されたナノマシンと、アーミヤさんから得られたデータで比較的穏便な治療が行われてるんだけど……スカジだけは色々と事情が事情だったうえに治療も別口だったんで、こうして直々に私が見に来たってわけ」
「……ん?ってことはもしかして、私の移動先って……」
「まぁ、私の家だね。もしくはアーミヤさんのとこだけど」
「んー……まぁ、素直にキーアのとこにお世話になっておくわ。CEOとは顔を合わせる機会も多そうだけど、貴方とはここで別れたらなんだかそういう機会が減りそうだし」
(……暗に出番が欲しいって言われてる気がする?)
おお、メタいメタい。
……いやまぁ、実際にスカジがそう考えてるわけじゃないだろうけど、結果的にそんな感じになってる感があるというか。
ともかく、結構特殊なことになっているスカジはこのまま合流し、私たちの挨拶回りに付いてくることになったのだけど。
「アーミヤさんは?」
「スカジさん以外にも確認するべき相手がいますので。……あ、一応弁解しておきますが、別にここでロドス・アイランドを設立しようとか、そういうことは考えていませんからね?!」
(……さっきのスカジの話、微妙に気にしてる……)
無理もない、結局呼び方が『CEO』のままだし。
……あれ、そういえば原作での彼女の呼び方ってどうだったっけ?
多分、ここではまだそこまで親しくないのと、半ばからかってるような面も含めての『CEO』呼びなんだろうなぁ、とは思うけど。
ともかく、アーミヤさん的には変に反抗勢力扱いされるのは御免らしい。
他のアークナイツ組を引き連れて蜂起しようだなんて思っていませんからね、みたいな感じのことをこちらに告げる彼女と別れた私たち一行は、次の目的地へと向けて前進を始めたのでしたとさ。