なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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多分誰もが思うこと

 ここでまさか新キャラに出会うとは……。

 そんな気持ちでいっぱいの私たちの前に、チンパンジーの男の子であるディディーコングは気球を巧みに操って下へと降りてくる。*1

 ……ゲームでも思ってたけど、それどうやって制動してるんです?

 

 

「ウキャ?ウキャキャキィーッ!」*2

「さっぱりわからん」

「ウキャ!?」*3

 

 

 うむ、二重の意味でわからん(真顔)。

 いやまぁ、一応私の場合は『動物会話』とかの再現で相手の言葉を聞き取るー、とかできなくもないけども。

 でもそれって、何度も言うように無限概念である【星の欠片】の数に任せた超力押し解決法なんだよね?

 ……そんなわけで、微妙に翻訳する時に雑味?的なものが混じったりしてしまうというか。具体的にはノイズとか翻訳のニュアンス違いとか。

 

 なので、『多分こんなこと言ってるんだろうなー』ということはわかるものの、それが正解かどうかは微妙に疑問が残る結果となるわけである。具体的には注釈とか(突然のメタ台詞)。

 

 

「……よくわからないが、通じてるのなら問題ないんじゃないか?」

「いやいや、ある意味私という存在によるフィルターを被せてるってことになるからね。例えば本当は笑顔で毒を吐くようなキャラだけど、その毒の部分が意味の理解には必要ないからってカットされてたらそりゃ別物になるでしょ?」

「具体的には?」

「京都弁が東京弁(ひょうじゅんご)になる」

「それは最早別言語では???」

 

 

 いやまぁ、イギリス語を京都弁に直す、くらいだと意外となんとかなりそうだけどね?*4

 でもまぁ、「ぶぶ漬けどうぞ」を「おとといきやがれ」にしてしまうような翻訳だと、感じるイメージは大幅に変わるでしょうねー、というか。

 

 それだけではない。例えばディディーコングの場合、色んな作品のイメージから一人称を『オイラ』にしてしまうが、その実目の前の彼までそうだ、とは言いきれない。

 というか、そもそも彼らはチンパンジーで人の言葉とか話せないのだから、各媒体の彼の言葉自体翻訳者の主観が混じっている、と解釈することもできる。

 

 そうなると、誰も彼本人が自身をどう呼んでいるのか?……という部分に正しい解釈を当てはめられない、ということになるのだ。

 そこら辺を気にし始めると、どうにも夜しか眠れなくなるでしょう?……みたいな話になるわけである。

 

 

「……まぁ、言いたいことはなんとなくわかったが。それって結局、君以外の誰がやっても付きまとう問題、ということになるんじゃないのかい?」

「……ソダネー」

「じゃあスルーでいいな。さっさと翻訳するように」

「へーい……」

 

 

 いやまぁ、確かにそうなんだけどね?

 言語化の難しさ云々の話をするのであれば、母国語以外全部全滅……どころか、母国語でも下手するとバツが付くこともあり得るわけだし。

 

 でもそこでそこまでバッサリ切られると、それはそれでなんというか思うところが出てくるというか……みたいなことを口にすれば、「お前のそれは長くなるから後で(要約)」とばかりに再度切り捨てられることになったのでした。

 うーん、ぐうの音も出ない正論……。

 

 

 

 

 

 

「で、結局彼はここでなにをしてたんだい?」

「ええとだねー……」

「ウキャー、ウッキャキャキャ、ウキィー……」*5

「……ふむ、熔地庵の奥に用がある、らしいよ?」

「なんだ、ワニの親玉でも殴りに行くのか?」

「ウキッキ、ウキャキャキィ」*6

「ワニは関係ないって。友達に会いに行くらしいよ?」

「なるほど。……一ついいか?」

「なに?」

「うきゃっ?」*7

「……ほんやくコンニャクとかねぇのか、流石にテンポが悪すぎるぞこれ」

 

 

 で、改めてディディーコングから話を聞いていたのだけれど。

 それに待ったをかけたのがロー君だった。……言われてみれば確かに、今までの人語が話せないタイプのキャラ達は、基本的にツッコミしかしていなかったためわざわざ翻訳する必要性が薄かった。

 そのため、今みたいに私が間に入って通訳する、みたいな過程が必要なかったのだ。

 

 だが今回の場合、話を聞く相手として彼にメインを張って貰う必要があるため、必然的に翻訳し続けることを求められる。

 結果、こうしてわざわざ二度手間?みたいなことになっているというのだから、確かにロー君の苦言も宜なるかな、というやつだ。

 

 ……だがこれ、解決しようと思うとちょっと面倒臭かったりする。

 

 

「どういうことだ?」

「ほんやくコンニャク。確かに琥珀さんが開発してたりするよ?するんだけどね……」

「なんだ、あるんじゃねぇか。だったら最初から「対象外」……なんだって?」

「対象外なんだよね、人以外の言語には」

 

 

 何度か語っているように、ドラえもんのひみつ道具というのは真っ当な機械とは言い辛い。

 未来の技術でー、などと嘯いているが、その本質は『子供の夢を叶える』こと。

 そこに昔の『科学はいつかなんでもできるようになる』というイメージが重なることで説得力を持たせている……という形式のものなのだ。*8

 

 つまり、ドラえもんにおける科学とはその実、魔法と大差ないものなのである。

 言い換えると、物事の原因・原理としては一片たりとも信用ならないもの、というべきか。

 

 それを踏まえた上で、なりきり郷にて実用化されているひみつ道具を見ていくと。

 異界技術という一種の裏技を用いてはいるものの、基本的には現行の科学を組み合わせた結果としてそれらを再現している、というのが正解。

 そのため、ほんやくコンニャクもその実態は『ナノマシンを仕込んだコンニャクを食べることにより、体内に取り込まれたナノマシンが声帯付近に張り付き、発せられた言葉をリアルタイムで翻訳して発信する』という形のものとなっている。

 

 

「元のほんやくコンニャクだと、話し掛けようとしている相手に通じるように翻訳する、って形でしょ?ドラえもんがドイツ語を話してるのを聞いて驚くのび太、みたいな話もあるし」*9

「……魔法みたいな科学ではあるが、法則性はあるってことか?」

「まぁ一応ね。仮に統一言語を話してるのだとすると、周囲で聞いている人にも意味が通じないとダメってことになるし」

 

 

 というか、仮にほんやくコンニャクで誰もが統一言語話せる、となると傍迷惑なことになるのが目に見えてるし。

 具体的にはコンニャク食べてない人達が一々止まったり跪いたり踊り出したり、とかしかねない。

 同じ統一言語話者じゃないと影響下から逃れられないらしいし。

 

 つまり、実のところ今なりきり郷にある材料・技術でオリジナル通り誰にでも通るほんやくコンニャク、というものを作るのは不可能。

 できあがるのは、一般的な翻訳システムを内蔵したナノマシンくらいのもの……という話になるのだ。

 それが示すことはつまり、

 

 

「ほんやくコンニャクでは猿語とかの動物会話を翻訳することはできない、ってこと」

「……つまり、どう足掻いてもお前の翻訳を間に挟む必要がある、っことか?」

「まぁ、そうなるね。でもそれだとテンポが悪い、ってロー君の主張も一理あるので──」

「あ?」

 

 

 動物の言語を完全に解明した、という話がない以上ほんやくコンニャクは役に立たない、ということだ。

 つまり私が訳すしかない、というわけだが……確かに話が間延びするのは問題だ。

 

 と、言うわけで──、

 

 

『……オイラ、風邪でもないのにマスクをすることになるとは思わなかったよ』

「こうして私の一部から作ったマスクでリアルタイム翻訳して貰おうと思います」

「……それができるんなら最初からやれ、ってのは野暮か?」

「野暮でしょ、今回は一部から作っただけだけど、根本的には私を口元に張り付けろ、って言ってるのと同じなんだし」

『言い方ァ!?』

「まぁうん、想像するとちょっと……となりますよね……」

 

 

 ちょちょいっと作ったマスクをディディー君にあげることで、翻訳して会話する、という過程を大幅に短縮。

 これにより、ほぼノータイムで会話できるように状況を変更することになったのだった。

 

 なお、ロー君が初めからやれよ、みたいなことを言っていたけど。

 実のところ、会話がここまで長引いたこと・およびマスクの作り方などの面からその辺りの説明と納得をディディー君に求める必要があった、などの部分により最初からこの状態で、というのは難しいと伝えることになったりもしたが誤差みたいなものである。

 

 ……と、いうわけでいい加減本題に戻るんだけど。

 

 

「その、君のいう友達ってのは誰のことなんだい?」

『ダビっていうやつのことだよ!お正月だからおいで、って言われたんだ!』

「……ダビ?」

 

 

 その結果、彼の目的地も私たちと同じ、ということが判明したのだった。

 ……偶然にしては出来すぎてるな?

 いやまぁ、多分本当に単なる偶然なんだろうけども。

 

 

*1
『ドンキーコング』シリーズの主人公・ドンキーコングの弟分。チンパンジーだが長い尻尾を持つ(実際のチンパンジーには尻尾がない)。赤色のベストと帽子がトレードマーク。初登場は『スーパードンキーコング』であり、元々はポジション的に『ドンキーコングJr.』の後釜として設計されたとかなんとか(『Jr.』本人は現在のドンキーコングの父親であり、初代ドンキーコングは『Jr.』の父……と、若干わかり辛いポジション)。なおその『Jr.』だが、2023年の映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』ではドンキーコングの二代目として登場、さらにややこしいことになっている

*2
ええー?オイラにもよくわかんないや

*3
えー!?

*4
どちらも皮肉を分かりにくく(上品に)言うタイプの言語。気遣いが足りてると取るべきか、嫌味が過ぎると取るべきかは難しいところ

*5
オイラ、ここの奥に用があるんだ!けど今回のオイラってばジェットとかなんにも持ってないから、どうしようかなーと悩んでたんだけど……

*6
いや違うよ……単に友達に会いに行くだけ。まぁ、その手段がなくて立ち往生してたんだけど

*7
なに?

*8
高度成長期の幻想、とも。当時の科学は人類の発展を永遠に約束するようなものに見えた、ということ。それゆえ、夢物語を叶える為の理屈として広く持ち出された、というわけである。……現実には、科学はなんでもありの夢の手段ではなかったわけだが

*9
『ゆうれい城へ引っこし』というエピソード内での描写。基本的にほんやくコンニャクを食べる場合は相手、ないし自分達側の場合は全員が食べるという形である為、微妙に描写の少なかった『他言語を話す話者が複数いる場合、ほんやくコンニャクの効果はどうなるのか?』という部分を示したものとしてわりと貴重。結果として、第三者となったのび太にはドラえもんが急にドイツ語を話すようになった、という形で認識された

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