なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
『へぇー、君達もダビのところに?奇遇だねー』
「こっちとしては、彼の元に向かうために毎回気球を用意してくれてる誰か、ってのが気になるけどね」
普通に考えるのなら荼毘君本人なのだが、果たして常に燃えてる彼にそんなことができるのか?……みたいな疑問もなくはないというか。
いやまぁ、こんなところに浮いてる気球なんだから、多分耐火性・耐熱性は中々のものなのだろうとは思うのだが。
そんなわけで、私たちは現在気球を乗り継いで先へと進んでいる……などということはなく。
特に制限もないので、普通にみんなを浮かして移動している最中である。
……え?他人を浮かせるのはそれなりに難儀、みたいなことどっかで言ってなかったかって?
その辺りはほら、私も成長したということで……。
まぁともかく、流石にこの人数で気球を乗り継いで……みたいなのは無理がありすぎることは確かであるため、こうして浮遊状態にすることで高速移動している、というわけなのである。
「そもそもの話、あの気球をそのまま追っ掛けると滅茶苦茶時間が掛かるし……」
「比較的落ちても問題のない場所をルートに取っているから、まともに渡ると安全ではあっても時間的には……ってやつだね」
今しがた触れたように気球のルートが冗長すぎる、というのも問題の一つではある。
原作みたいに溶岩の海を突っ切る、という形ではなく可能な限り付近に陸地があるような場所に設置……浮遊?されているため、結果として目的地に向かうのにかなり大回りになっていたのだ。
安全面を考慮するのは確かに必要なことだが、荼毘君の所在地は熔地庵の最奥。
……言い換えるとどこかで必ず危ない橋を渡る必要のある立地、ということになるので正直意味があるかなぁ、という感想になるのである。
あとはまぁ、なりきり郷内ならフィールド効果による死亡も起こらないので、仮に溶岩に落ちてもどこぞの配管工みたく叫び声を上げながら跳び跳ねる、位で済むという事情も……え?あれはあれでやり過ぎると一乙するだろうって?*1
それ以外にも、仮にここの面々が全員気球を乗り継ぐ、となった場合に生じる問題点は幾つかあるが……それに関しては現在のみんなの服装を見て貰えればわかる話なので割愛。
「……まぁ、着物で跳び跳ねろってのは無理があるだろうな」
「それにライネスやココアちゃんなんかは、乗り継ぐ際のジャンプ力が足りない……とかになりそうだしね」
「もー!流石にそんなミスはしないよー!」
『……ええと、オイラ仕様だから多分普通の人には無理があると思うよ……?』
「え?」
「空中で謎の二段ジャンプができること前提だからね……」*2
しかも側転中にいきなりその場で飛び上がる、とかいう意味不機動である。
……流石に大化の改新とか飛鳥文化アタックとかの更なる無法*3を必要とするような難易度ではないものの、それでも真っ当な人間には不可能な配置で置かれているのだからたまったものではないだろう。
っていうか、気球の制動を前提としてるような場所もあるし。
『あれってオイラ達にはできるけど、他の人にはできないみたいなんだよね』
「一時的な【継ぎ接ぎ】が発生してる、ってことなんでしょう。ゲームでできたことなんだからできてもおかしくはない、みたいな法則が働くというか」
最初彼にあった時にも話題になった、気球の制動技術。
……基本的には平面移動ではあるが、それでも普通の人間がなんらかの器具もなしに気球を移動させる、というのは無理がある。
にも関わらず、ディディー君達にはそれができる、というのは──気球とコングファミリー、という組み合わせで一時的な【継ぎ接ぎ】が発生していると考える他あるまい。
裏を返せば、彼のいない状態で気球に乗ったところで、私達は単にそれに乗れるだけ、という扱いにしかならないということ。
なんなら、基本的に体重の軽いディディー君を前提としているため、私達が乗ったら普通に落下する可能性大、みたいな面もある。
それら、複数の要因を鑑みた結果が今の移動方法である、ということを改めて教えられたココアちゃんは、思わず肩をがくり、と落としていたのだった。
「え?気球?知らないけど?」
「マジで誰が設置してるんだあれ……」
はてさて、浮遊移動は特に問題が起きることもなく、その行程を完遂。
結果として早々に荼毘君の家に到着することができたわけなのだが……同時にあの気球は彼が用意したものではないという事実も明らかになり、なんとも微妙な空気を醸し出すことになってしまったのだった。
「……まぁ、別になにか危険があるって訳でもないし、スルーしよう!」
(投げた……)
(見事に投げたな……)
気にはなるが、とはいえ現象としては単に気球が浮く、というものでしかない。
他の場所ならともかく、熔地庵の上空を飛び回るような物好きは早々いないので、特に問題はないだろう。
そんなわけで、当初の目的を思いだし荼毘君に年明けの挨拶をする私達である。
「はい、明けましておめでとう。……そういえば一つ聞くんだけど、前と呼び方違うよね?なんで?」
「……ええと、燈矢君だとわかり辛いかなー、と……」
「ふーん?まぁ、別に好きに呼んでくれていいけどねー」
……本人が燈矢の方がいい、と言ってたのにあれだが。
なんというかこう、『燈矢』という呼び方だと微妙に本人が思い浮かばないというかなんというか。
あとぶっちゃけ『燈』の字が出し辛げふんげふん。
……まぁともかく、彼の様相からすると荼毘君の方が通りがいいだろう、みたいな部分からの呼び方である。特に他意はない。ないったらない。
そこに変な意図がない、と理解してくれた本人からも了承が取れたので、今度からも荼毘君と呼んでいこうと思う次第である。
「……いや、本当にそれでいいのかい?又聞きではあるが、君の方からそう呼んでくれ、と頼んだと聞いたけど」
「んー?……まぁ、確かにそうだね。でも僕もあとから考えたんだ。寧ろ燈矢って呼ばれる方があれなんじゃないかな、って」
「は、はぁ?」
……あーうん、どっちで呼ばれてもあんまり変わらないような気がする、みたいな?
もしくは、燈矢呼びだと被害者的性質が強くなりすぎてあれ、みたいなところもあるのかも。
今の彼を見て、どちらの呼び名が似合っている気がするか?……と聞かれたら、大半の人は『燈矢』の方を思い浮かべるだろう。
少なくとも、にこやかに笑う荼毘なんて想像できない、となるはず。
あさひさんがわりとあさひさんしているので忘れがちだが、彼らのそれはあくまでその姿を顕現用のそれとして定めただけであり、別に彼らそのものになりたくてやっている、というわけではない。
それゆえ、変に【継ぎ接ぎ】を誘引するような状況はノーサンキュー、ということになる。
その辺りが、彼が呼び方の変更を許してくれた理由なのかもしれないな……なんてことを思いつつ、出されたお茶を飲む私であった。
「……まぁ、本人が納得しているのならいいが。それで、挨拶は終わったのだから次に向かうんだろう?」
「それなんだけど……」
「……なんだその、気まずげな顔は」
ともあれ、これにて荼毘君への挨拶は終了。
さっさと次へと向かうべき、というライネスの話は間違っていないのだけれど。
……うん、今私達がいる場所が何処なのか、ってことを思い出して欲しいというか。
「は?場所?」
「下手に飛んできたからちょっと忘れてるのかもしれないけど……ここって熔地庵なのよ」
「はぁ、それがどうし……あっ」
そう、私達が今いる場所は、熔地庵の最奥。
浮遊して飛んできたとはいえ、そこに向かうまでにはそれなりに時間が掛かる。
……ということは、だ。
一帯が溶岩で覆われている熔地庵、その階層の特徴は豊富な溶岩による様々な自然現象。
その内、人工的に近い形で行われるのが全面の溶岩の入れ換え──午後四時から行われるそれだが、その時以外にも自然現象としての溶岩の噴出、というのは発生しうる可能性が大いにある。
つまりはまぁ、そういうこと。
ここに来た時点で周囲の溶岩活動が活発化しており、結果この家の外は現在溶岩で水浸し?みたいなことになっているのである。
「要するに、今外に出ると普通に焼けるってこと」
「なるほど……じゃあ暫くここで足止め、ってことか」
「うん、最長で明日の朝までね」
「……おい、聞き間違いか?今明日の朝までって聞こえたが?」
「聞き間違いじゃないよー、タイミングが悪いってやつだね」
現在の時刻は大体お昼頃。……そろそろ一度ご飯でも食べに行きたいところなのだが、本来であればこの時間帯に足止めをくらう、ということはあり得ない。
基本的には溶岩の入れ換え──噴火のタイミングを午後四時になるように調整を施しているわけだが、それはある意味突然の暴発を防ぐ目的も兼ねているわけで。
よく、地震を人為的に発生させることで大型地震を起こさないようにする……みたいな話があるが、それを実際にやっているのがここの溶岩関連なのだ。
……とはいえ、そっちの話の問題と同じように、人為的な発散では実のところ本命を抑えるのには足りていない、という部分も変わっておらず。
ゆえに、今回みたいに突発的な溶岩の噴出により、暫く移動を制限される……なんてことも起こりうる。
問題なのは、そうして突発的に発生した噴出というのは、基本的に人為的なそれより遥かに規模が大きくなりやすい、ということで……。
「うん、予測だと明日の朝までずっと噴火してるってさ」
「……あれ?帰れないってこと?」
「このままだとね」
「それって大問題じゃ!?」
「そうだねぇ」
「もー!?なんでキーアちゃんはそんなに落ち着いてるのー!?」
──うむ、どうしようもないね。
そんな感じで、私はお茶のおかわりを飲んでいたのであったとさ。