なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、呑気にお茶を飲んでいるようにしか見えない私だけども、別にここから帰ることを諦めたとかそういうわけではない。
確かに、今現在外に出てしまうと、溶岩に埋め尽くされたこのフロアを見ることになるだろう。
──だからといって、ここで足を止める理由にはならない。
「……まぁ確かに、このまま足止めされると最悪次の日になってしまうわけだから、それは避けたいところだけど……」
「そうは言うが、ここからどうやって戻るつもりだ?」
「それはもちろん、溶岩を泳ぎます」
「は?」
「溶岩を泳ぎます」
「は???」
いや、そんな「わからん」と言わんばかりの顔をする必要なくない?
やることとしてはとても単純なんだし。……あ、いや。泳ぐってのは誇張表現かな?
そう答えを返せば、周囲の面々はなんのこっちゃ、とばかりに顔を見合わせていたのだった。
「……(状況が状況なので流石にひき攣った顔)」
「あーうん、予め安全だと説明されていても、そうなるのは理解できるよ。僕はそういうの平気だから、微妙に感覚が違う気もするけど」
『みんなー、気を付けてねー』
はてさて、やることが決まったのならこれ以上駄弁っている時間が惜しい……とばかりに、二人の見送りを背中に受けながらみんなを引き連れ外に出た私。
無論、そのままなんの対策もなしだと大火傷間違いなし、なのだが……ここで、なりきり郷のダメージ軽減効果が火を(?)吹いた。
具体的になにをしたのかって?
極々単純に、私がそのダメージ軽減効果を増幅したってだけの話ですがなにか?
まぁ正確には
「なるほど、確か【
「そういうこと。現在私達がダメージ無視をして歩けるようになっているのは、非殺傷の範囲が拡大された結果ってわけだね」
元々、そこら辺の溶岩から受けるダメージが即死じゃないからこその荒業、とでもいうべきだろうか?
要するに、受けるダメージを極端に減らした上で強行突破しているわけだ。*1
これなら、元々のスペックが大して高くない面々でも溶岩を歩ける……というわけである。
まぁ、端から見たら今の私たち、平気な顔で溶岩の中を歩いているなんとも不気味な集団……ってことになっちゃうんだけども。
「うー、最初に大丈夫だって言われたけど、それでもなんだか変な感じだよー……」
「右に同じく、です。……感覚的には、お湯の中を歩いているだけ……というような気分なのですが」
「見た目がどうしても現実に引き戻してくるからねぇ……どう言い繕っても溶岩以外の何物でもないわけだし」
「ダメージを極力減らした結果、深めの風呂の中を歩いているような状態になってる……って感じだからね。それだけならまぁ、単に変な気分ってだけで済むけど……場合によっては溶岩に潜って移動しないといけないから、ますます気分的にあれになる……みたいな?」
端的に言うと『溶岩が発生させるあらゆる事象がお湯と同程度になる』、というくらいの軽減率なわけだが。
それだけだと『溶岩は水じゃない』という部分で色々問題がでてくるため、そっち方面は私が別口で保護していたりする。
……具体的にいうと、人肌に触れて低温になった溶岩が固まらないように、みたいな?*2
溶けた岩と書くように、溶岩の主成分は高熱になって溶け出した金属系の物質など、本来硬質の物体。
ゆえにそれらは空気に触れるなどして温度が下がった場合、最終的には岩石状の物体に変化する。
つまり、溶岩の中を考えもなしに泳ぐと、最終的には固まってどうしようもなくなる……というわけである。
なんなら、普通のお湯や水と同じ扱いで泳いだ場合、肺とか胃とかで冷えて固まってしまう……みたいな危険性もあるというか?
いやまぁ、普通なら心配するような話ではないのだが。
あくまで人間側に温度保護あるからこそ、それに触れた高温の物体は必然的に冷めていく……というだけの話なので。
そこら辺を考慮した結果、溶岩の固化を阻害するバリアみたいなものも一緒に併用することで、溶岩を泳ぐことができるようになっている……というわけなのである。
……いや、何度も言うように正確には歩いてるんだけどね、私たち。溶岩で見えないかもだけど、地面に足は付いてるし。
「……いや、これなら溶岩の上を歩くってんじゃダメだったのか?」
「そっちを選ぶと他にも必要な条件が増えるので……」
「増えるんだ……」
なお、見た目のアレさなどを総合してロー君が文句を言ってくるが……現状は移動を自身の足に頼っているからこそどうにかなっている、という面もあるため無理ですと返す私であった。
言うなれば
なので、これにさらに『溶岩の上を歩く』みたいな補助まで付与してしまうと、あまり好ましくない状況に陥る可能性大なのである。
具体的には、アクションゲーでノーダメチート突っ込んだような扱いになる……みたいな感じ。
「……それのどこが悪いんだというか、なんでそういう扱いになるんだ?」
「要素の複合の結果チート使ってるように見える、って形になるとそういう類いの【継ぎ接ぎ】が発生するってこと。今ならぎりぎりダメージ判定を避けながら移動しているだけ、って言い訳できるのよ。マリオがマントで溶岩の下飛んでる、みたいな感じで」
「わかるようなわからないような……」
まさにマグマダイバー!……みたいな?*3
まぁともかく、不便な点を一つでも残すことで変な影響を弾く……というのは余計な【継ぎ接ぎ】を防ぐ上では重要な対策方法。
そこら辺を理解した上で行動してください、というのが私からの要望ということになるのでしたとさ。
「……よくわからないんだけど、貴方以外がやる分にはいいのよね?」
「まぁ、一応は。結局のところ今の
「そう。じゃあ……はい」
「おおっと?」
で、そこまで説明したところで、スカジから声が掛かる。
その発言に間違いじゃない、と返せば彼女は小さく頷いて、すいと腕を一振り。
……するとどうだろう、みんなの足が地面から浮き上がったではないか。
これはあれだな、スカジ本人というよりはスカディ由来のルーンでみんなを浮かした、とかそういうあれだな?
「少なくとも、単に歩くよりは早いでしょ?……元の私ならみんな担いで走る、とかもありだったんだけど」
「あーうん、今の貴方って肉体労働はそこまで得意ってわけでもないもんね……」
「代わりにあれこれできるんだから、文句を言ったらバチがあたるけどね」
やれやれ、と肩を竦めるスカジに苦笑いを返し、周囲に視線を向け直す。
他の面々は文字通りに溶岩を泳ぐ形になったため、少々戸惑っていたが……やがて各々好き勝手に泳ぎ始めたのだった。
あれだ、着物で泳ぐ……みたいな意味不明な状況にちょっとハイテンションになってる人もいる、みたいな?
「見て見てキーアちゃん!バタフライだよー」
「着物の袖のせいで、見た目がスッゴいことになってる!?」
「というかお前、バタフライとかできたんだな……」
「流石はココアね!お姉ちゃんも頑張るわ!!」
「対抗してはるかさんまでバタフライを!?」
世界広しと言えど、バタフライしてる着物着用ココアちゃんとかここでしか見られないでしょう。
その横に視線をずらせば、その姉まで同じようにバタフライしてるし。
……そんななんともずれてる感想を抱かせるような光景を見ながら、私たちはこのフロアを抜けるために溶岩を泳いで行ったのであった。