なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……まぁ確かに、あれが自然に収まるまで待ってたら、一日程度で済むとは限らないけども」
「でしょー?今回のは自然発生したやつだから、下手すると一日で終わらないなんて可能性もあったんで、どうしてもあのタイミングで抜けないとダメだってなったんだよねー」
うむ、服の耐火性などを強化してみたりもしたものの、それでも限度というものはある。
溶岩側の攻撃力を下げ、着物側の防御力を上げる。
単体ではそこまでの効果でなくとも、二つ合わせれば効果は絶大となるが、とはいえそれらも計算式的には単なる加算。
乗算になるものではないので、カットできるダメージにも上限があるというわけだ。*1
結果、着火寸前の服装状態で溶岩を泳ぎきる……みたいなギリギリの状況を過ごさなければならなかった、ということになるのである。
が、それも全体を見ればまだマシな方。
あの後更に溶岩が勢いを増していた場合、服に関しては諦める必要が出ていた可能性大だった。
それを思えば、あのタイミングで出てきたのはわりとベストだった……ということになるわけである。
……みたいな感じのことを、出先でたまたま合流したゆかりんに説明していたのであった。
現在の私達の所在地は、地下三十八階。
いわゆる地下料理街みたいな感じの、私達が初めてここに来た時にご飯を食べに出掛けたあそこだ。
「あの時も大概広かったけど……今じゃあ更に色んなキャラが増えた結果、更に規模が拡張されてるんだよね」
「ここは変わらないけどねー」
「まぁ、うちはそれが売りのようなものですので」
相変わらず美人な
そこでふと、
「……あれ?もしかしてゆかマキ?」*2
「は?なにが?」
「いや、ゆかりさんがなんでこの店贔屓にしてるのかなぁ、ってふと思ったんだけど……見た目は全然違うけど、店員さんの呼び方が『マキ』だからなんじゃないかなー、というか」
「あー、弦巻の?」
「そう、弦巻の」
同じボイスロイドの。
……いや、普通に弦巻のマキさんいるんだけどね?
以前の健康診断の時に、他のボイロメンバーと一緒にチーム組んでたんだけどね?
「それはそれで別腹、なのかなぁって」
「人聞きの悪いことを言わないで下さいよ……」
「とかなんとか言ってたら影、やっぱりお好きなんですね」
「だからからかうのは止めてくださいってば!単にここの料理のお味が好きなだけなんですよゆかりさんは!」
「なるほど?」
で、そんな話をしてたらひょっこり顔を見せてしまうゆかりさんである。
……よく見りゃ他のボイロ面子もいますね?
あれから増えたということもなく、五人で行動するのも変わらないらしい。
「へぇー、ゆかりんってば私のことそんなに好きだったんだー」
「いや違……いや違わな、いや違……?、??」
「それくらいにしてあげてください弦巻さん。ゆかりさんがショートしてます」
「へへへ。いやなんていうか、ゆかりんを弄れる機会ってそう多くないからやれる時にやっとかないと、って思ってねー」
「機会がない、ってだけで弄られてたら叶わへんなー」
「私はその気持ちわかるよ。お姉ちゃんは弄られてる時が一番輝いてるし」
「え?」
「え?」
「……止めましょう、こういうパターンは収拾がつかなくなるやつです」
というか、小学生に止められてて恥ずかしくないんですか貴方達……とはきりたんの言。
ふむ、ここのきりたんはメスガキとかそういう系列ではなく、真面目系のタイプであるようだ。*3
……え?嘘付くな?その右手の粥はなんだって??
「キーアお姉さんには効きませんのであれですが、他の人には普通に効くんですよね、キュケオーン」
「なんか本来操れないはずなのに、普通に召喚してたのなんだったんだろうねあれ」
「なにを言ってるのかはよく分かりませんが、あれ多分シャドウだったからどうにかなった、とかそういうやつだと思いますよ」*4
いや、なにを話してるんだろうね私達。
あれかな、
ともかく、あれこれと暴走するボイロ達を落ち着かせるきりたんの手腕は中々のモノ、と言わざるをえまい。
「おや、意外と好評価。これはもしかして、お年玉など貰えるフラグなのではないでしょうか?」
「別にあげてもいいけど、その場合貴方からも貰うけど?」
「え?……あー」
で、ネタに乗っかる嗅覚も中々のモノ、と。
でもあれだね、身内への観察眼は中々のものだけど、それ以外に向ける視線は若干抜けてる感があるというか。
どういうことかと言えば、ここに集っている面々の大半が幼女……もといロリっ子に分類される存在である、ということ。
私は勿論ゆかりん(八雲の方)もそうだし、ライネスだってそう。
ココアちゃんは見た目高校生……と言い張るのは難しい上にそもそも中身が恐らく小学生。
見た目成人女性なスカジも、中身にスカディが混ざっていることで若干精神年齢とか幼くなってるし……みたいな感じで、明確にお年玉が貰えそうな相手というと、ロー君かはるかさんくらいに絞られてしまうのである。
そういう意味で、私にお年玉を集るのはミス……という話になるのであった。
無論、かしこいきりたんは今の短いやり取りで全部その辺りの話を理解したようで、あーあと肩を竦めていたわけなのだが。
「慣れないことはするもんじゃないですね。そもそもキルケー成分が漏れ出てる関係上、どっちかと言えば他人にあげたい方の人間ですし」
「それはそれできりたんが他人に貢いでる、って感じで騒ぎになりそうだけど」
「……完全に悪い男に貢ぐ少女の図、ですね」
「言い方ぁ」
意外と尽くすタイプのキルケーなので、それが滲み出てるここのきりたんも区分的には尽くすタイプ、と。
まぁ、あくまで滲んでるだけなので、本質的にはきりたんだし【継ぎ接ぎ】でもないし……みたいなことになるみたいだが。
とまぁ、一先ずきりたんについての話はここまでにして、と。
「ご飯食べたら次はどこ行こうかねぇ」
「おや、なにかご用事でも?」
「正月の挨拶回り中なんですよね。明けましておめでとうございます」
「はい?……ええと、明けましておめでとうございます……?」
今言うんだ……みたいな感じに困惑するゆかりさんを眺めつつ、頼んであった唐揚げ定食に箸を付ける私である。
……うん、やっぱりここで定食を頼むと付いてくる鶏ガラスープは上手い。
単品で頼めるものじゃないことと、そもそも副菜未満なものであることもあって中々手軽に楽しみ辛いが……そこら辺を踏まえてもなお食べたくなる味、というか。
まぁ、わりと本格的な中華系のスープがなんで定食屋で?……という疑問も生じなくはないが、そもそもここそういう店なんで……みたいな?
「お褒めのお言葉、ありがとうございます」
「いえいえ。そういえば、他の【顕象】の方が挨拶に来たりとかは?」
「幾らかお見えになってますね。アルトリアさんはいつものようにお見えになりましたし、ハクさんもビワさんを連れ立ってお見えに」
「うーん、見事にうちの身内しかいない……」
いやまぁ、基本的に【顕象】は保護観察対象であり、その大半がうちの庇護下に投げられるんだから、それも当たり前といえば当たり前なのだが。
ともかく、
……そういえば、ビワの本体に挨拶しに行ったことがないな?
「え?あの子の本体って……基本、あの子だけ残して世界に溶けた、って話じゃなかった?」
「そのあと何度か顕現し直してるって話もあったでしょ?」
「あー、そういえば……」
思い出すのは、今まで色々あった出来事。
そして、それによってビワ以外に生み出された新たなたぬき、ションボリルドルフの姿。
彼女もまた、【顕象】の一人ではあるがうちの所属ではない、というタイプの人物。
そこまで思考して、次にすべきことを定めた私。
「よし、在野の【顕象】達の把握もかねて、ビッグビワやルドルフに挨拶しに行こう」
「簡単に言うけど、向こうの所在とか知ってるの?少なくとも私は知らないけど」
「それに関しては単純明快、普通に聞けばいいのさ」
「誰に?」
「そりゃ勿論、」
部下であるビワに対して、でしょ?
そう返したところ、何故かそのやり方が頭から抜け落ちていたらしいゆかりんは、ぽんっと手を叩いて「なるほどその手が」とか呟いていたのだった。
……いやゆかりん、正月疲れとかでも貯まってる?
それ以外無いと思うんだけど……とは、言わないでおく優しいキーアさんである。