なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ようやく終わった……」
「なんやかや結構挨拶してくるやつが多かったじゃない」
「人気ね貴方、って言えばいいかしら?」
「こんな人気はいらないんだよなぁ……」
ようやく終わったビワのところでの挨拶会。
結局都合二時間ほど掛かったわけなのだが……こちらの疲労感と引き換えに、成果としてはほどほどな感じなのではないだろうか?
まぁ、【顕象】なのになんか『逆憑依』に近い気がしないでもないようなのが多かったように思うのは、地味に気になる点ではあるのだが。
「と、いうと?」
「普通の【顕象】って原作そのものって感じのパターンが普通だけど、アウラみたいにそれだと問題があるから参照元がネットミームになってる……みたいな?」
「ああ、八雲のみたいになってるということか」
「端的に言うと、ね。……案外、中身を確保し損ねた個体だったりするのかもだけど」
「その辺りは私にはなんとも言えないじゃない。こうなる前のことをしっかり覚えてるわけがないのだし」
「そこら辺は明確に『逆憑依』じゃない、ってことだろうね」
いやまぁ、『逆憑依』にも以前の自分を覚えてない、みたいなパターンがないわけじゃないけど。
というかあやふやであることがほとんどというか?……稀にはっきり覚えてるような人もいるけど。
「キーアお姉さん達、なに話してるん?」
「そうそう、かようちゃんとかその筆頭だよね」
「……?かようがどうかしたん?」
「昔のことって忘れやすいよね、ってこと」
「???」
たまたま近くにいたれんげちゃんを見て、その数少ない例であるかようちゃんを思いだし、うんうんと頷くことになった私なのであった。
「それにしても……ビワから直々に『これが全部ではない』と告げられるとはねぇ」
「安心して警戒を怠らないように、ってことなんだろうけど……それにしたってなんか唐突だったような気がしないでもないというか」
あさひさんやビワ達に別れを告げ、挨拶回りに戻った私達。
アウラをメンバーに加える際、一応お約束として「アウラ、私に同行しろ」とか言ってみたけど……ノリのいい彼女は自分の首を切る時みたいなノリで「この私が……こんな……」とかやってくれたのが記憶に新しい。
「わりと私が仲間になるルートの二次創作多いじゃない。やっぱり私は人気キャラじゃない」
「でも種族が魔族だから描写が難しいんだよね」
「……倫理と道徳・愛がないって難しすぎるじゃない」
まぁ、人間の多様性的にどんなものでも、アダルトな方面での活躍が見込まれてしまうのは仕方のないこと……というやつなのかもしれん。
そんなことをぼやきながら、カランコロンと音を立てつつ進む私たち。
次なる目的地にあてがあるわけではないため、半ば行き当たりばったりの道程だが……個人的な感というか、こういう時はそういう動き方の方が上手く行く、というか。
「……こいつはなにを言ってるの?」
「あら、語尾が『じゃない』じゃないわね。早速ここにいる効果が出てきた感じ?」
「茶化さないで欲しいのだけど?……不自然にならない程度に口調が変わってるだけじゃない」
「あー、『じゃない』って付く喋り方が優先される、みたいな?」
「……そういうことじゃない」
いやなに話してるのこの子達?
……まぁ、言いたいことはわかる。日本語は表現の幅が広いので、似たようなことを言う場合にでも言い方の差が付けられる……みたいなことだろう。
特にアウラの『じゃない』の場合、それは語尾であるため大抵の文章に繋げられる……けど、それでも文脈的におかしくなることもあるだろう。
その辺を踏まえると、話す内容的に『じゃない』という語尾に繋げられないような話の場合、彼女の口調もある程度自由になるのかもしれない。
……まぁ、だからどうしたと言われると困るのだが。
ともかく、二人の会話をBGMに進むこと数分。
勘に任せて歩いていた私は、ようやく目的?である相手を見付けることに成功したのであった。
「それで、なにを見付けたのよ?」
「ほら、あれ」
「んん?……のび太じゃない」
「うわぁっ!!?」
「……大声で叫ばれたじゃない」
「まぁ、頭に角生えてるしそこはね?」
「それを言うなら貴方なんて魔王じゃない」
「ひぃーっ!?食べないでー!!?」
「……滅茶苦茶ビビってるじゃない」
私が見つけたのは、道の両サイドにある林の中で、ぷるぷる震えながら頭を隠す子供が一人。
……上下の服装や空気感から察するに、これは『ドラえもん』ののび太で間違いあるまい。
反応からすると、普通にここに現れたばかりの『逆憑依』とかだろうか?
なんとなく、あのまま歩いていれば誰かに会える気がする、ということで移動を続けていたが……うむ、これは要確保対象だな、うん。
「……挨拶回りの予定じゃなかったのか?」
「サブターゲットってやつよ。それに、なんとなくだけど放置は不味い類いの相手、みたいな気配がしてたから……」
「まぁ確かに……彼を放置するのは色んな意味でおすすめしないね」
周囲を私たちに囲まれ、この世の終わりみたいな顔でガタガタ震えてるのび太君である。
……なんでこんなに震えてるんだろうと思ったが、よく考えたら今の同行メンバー、ココアちゃんとはるかさん以外はわりと怖いタイプの人しかいねーわ。
中身的にはぜんっぜん怖くないんだけども。
で、怖い人筆頭のロー君がへたり込んでいるのび太君に視線を合わせるためにしゃがみ込む。
思わずビクッ、と震えるのび太君だが……そんな彼の様子を無視するようにロー君は彼の頭をガシッと掴み、逃げれないように固定。
そのまま、簡単な触診に移行したのであった。
「ひぃーっ!?」
「やかましい、黙れないなら俺が黙らせてやるぞ?」(動かれると正確な診断ができないので止めてください、の意味)
「…………?!」
「おやおや。そうして口を塞ぐのはおすすめしないよ?なにが起きるかわかったものじゃないからね」(口内の確認ができないから隠すのは止めた方がいい、の意味)
(こ、こここ、殺されるぅ!?助けてドラえもーん!!?)
「これはひどい」(これはひどい、という意味)
なんだこれ。
……のび太君って普通に機転が利くタイプだから、下手に逃げ道とか残しとくと普通に逃げられかねないってことでみんなで囲んでるんだけど。
その結果、弱いものいじめ感が跳ね上がってるんじゃが。
今にも失神しそうな彼の様子は大変庇護欲を刺激するが、仮にここで手を緩めると普通に逃げ出しそうなので特になにもしない私である。
……あとはまぁ、地味にのび太君そのものに私があんまりいい印象を持ってない、というのも助けない理由かもしれないが。
「そうなの?」
「まぁ、周囲に持ち上げられやすすぎるというか。……一人くらいトゲトゲしとかないと全部押し付けられそうというか?」
「あー……映画とか?」
不思議そうにこちらに訪ねてくるスカジに、その理由を答える私。
……普段はちょっと抜けてる小学生……くらいの扱いの彼だが、その実最初から元の未来では会社を興すくらいには変に行動力のある人物でもある。
また、ダメな彼が持つ数少ない特技……みたいなモノである彼の銃撃の腕前やすぐ寝られるという特徴が、二次創作なんかでは戦士に必要なものとして定義されている……みたいなのも、人によっては見たことがあるのではないだろうか?
それらを総合すると、彼は【継ぎ接ぎ】の影響をとかく受けやすい存在、ということになる。
いつの間にか物語の主役に祭り上げられている確率が大、というべきか。*1
彼自身は一応単なる小学生であり、本来世界の命運みたいなものを任せられるような存在ではない。
それでもそれを任せられるような事態に陥るのは、偏にドラえもんのせい……と言えなくもない。
見方によっては、『なんでも叶える』ドラえもんのもたらす反作用、と取ることもできなくはないわけだ。
それだけならドラえもんの方を気にすればいい、という話になるのだが……ここで彼が映画で起きるトラブルを複数回乗り越えている、というのが問題になってくる。
つまり、彼自身にその気がなくても周囲の読者達の祈りによって、彼は祭り上げられやすい性質を持っている……と。
そして、本来『逆憑依』とは【兆し】に端を発する祈りによって現れしもの。
……彼自身の性質と【兆し】の性質が合わさると、他の面々より遥かに再現度の判定が緩い、みたいなことになりかねない。
その辺り、ある種ここでは先輩となるしんちゃんとかは弁えているというか、気にするポイントを理解できているけど……恐らく今このタイミングでここにやってきたばかりののび太君の場合、自分がそんな危険人物だってことには欠片たりとも気付いていない可能性が大なわけで。
そこら辺自覚して貰うためにも、私くらいは反抗的な目線でも送っておこうかなと思っている次第なのであった。
「まぁ私怨がないとは言わないけどね!クロス談義でのび太君持ってくる奴らはみんなタヒね!」*2
「最後の最後に凄まじい当て付けが飛んできたわね……」
というか基本ダメな少年、みたいな文脈だったのに銃得意とかどうなん?……みたいなツッコミもなくはないけど!!
いや、今の時代に役に立たんとか言うけど、普通にクレー射撃とかでオリンピック選手目指せばええやろがい!
結局真に持たざるものとは言えんやんけテメー!ドラえもんまで貰ってんじゃねぇよ!!
……とかなんとか、あれこれ思い付く自分がいないとは言わない。
言わないけど態度には出す。ええい、この恵まれ男め!
「……あの人、なんであんなに睨んでくるんですか……?」
「気にすんな、多分またわけのわからん論理飛躍してるだけだ」
「はぁ……?」
「早速ロー君といつの間にか仲良くなってやがる……!」
幾らなんでも早いわ!!
……そんな感じの私のパルパル攻撃は、なにごとかと察知してやってきたゆかりんに後頭部を殴られるまで続いたのでしたとさ。