なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なにも本気で殴る必要ないでしょうに……」
「完全にヒートアップしてたじゃない貴方……物理的に止めないと飛びかかってたでしょ」
「…………」
「目を逸らすんじゃないわよおバカ!!」
「いてぇ!?」
はてさて、のび太君を前にしてパルパル*1してた結果、こうしてゆかりんに思いっきりぶん殴られることになったわけなのですが皆様いかがお過ごしでしょうか?私は元気です()
……まぁうん、のび太君を見てると色々ツッコミたくなるのが我が性分、こうなることは想定して然るべきではあったのですが、実際にこうして出会うまでどうなるかの想定など無意味なので仕方がない云々かんぬん。
「……その、なんで僕のこと、そんなに嫌いなんです……?」
「謙虚すぎるやつが嫌いってのも大きいと思います」
「謙虚……?」
「ええい、止めなさいって言ってるでしょうに!」
「今の向こうから聞かれたんだから仕方なくない!?」
ええい、ぼこすか殴りおってからに、バカになったらどうするんだバカになったら。
……え?頭を殴ると脳細胞が死ぬってのは本当のことだけど、お前の場合脳どころか全身纏めて死んでるからある意味関係ないだろうって?それはそう。
……とまぁ、私お得意の体を張ったネタにドン引くのび太君を見つつ、これからどうするのかについて思考する私。
うむ、確かに意外と持ってる方の癖してなにも持ってない、みたいな動きをするのび太君に嫉妬する気持ちがあるというのは嘘じゃないが、同時にその前に語っていた懸念についても嘘ではない。
彼が今までの作品達からくるイメージ──ある種の無辜を背負いやすいというのは本当の話。
ある意味では私よりもトラブルに巻き込まれやすい体質である、というのは確かなことなのだ。
それだけだと問題点がわかり辛いが、
「ええと……?」
「原則的に、のび太君が
まぁ、こっちでひみつ道具を作ってる第一人者である琥珀さんとかを巻き込めば、一応その辺りは解決できるかもしれないが……それは同時に、琥珀さんにドラえもんとしての属性を強く意識させるものである、ということにもなりうる。
無論、ひみつ道具と名の付くもの・ないしそう呼ぶしかないような道具を作っている時点でわりとあれな気もするが、それよりもなによりも『のび太君と関わる』方が影響力が高いことは言うまでもない。
……つまり、琥珀さんがたぬき動画みたいに青く染まる日もそう遠くないかもしれない、という話になるわけだ。
「……あー、あんまり喜ばしい話ではないわね」
「ええと、よくわからないんですけどー……ここにドラえもんっていないんですか?」
「いるわよ?一応ね」
「じゃあそういう心配をする必要はないんじゃ……」
「一定の確率で局部を露出するタイプだけどね」
「一定の確率で局部を露出する!?」*2
こちらの言いたいことを理解したゆかりんがうーんと唸り、そんな彼女の様子を見てのび太君が不安げに声をあげる。
……その言葉の内容を聞いて、ゆかりんは答えを返すが──返ってきた内容に、のび太君は原作でよく見る驚き顔で答えていたのだった。
うむ、今までスルーしてきたわけだが……このなりきり郷には、一応ドラえもんが在籍している。
……いるのだが、その実態は完全にネタ方面の存在であった。いわゆる『レベル1』想定の存在、と言うべきか。
基本的にあまり話に関わってこない彼らだが、別に存在が無視されているというわけではない。
寧ろ、彼らがそれらのキャラクターの枠を埋めていることによって、余計な問題を未然に防いでいる可能性すらあるのだから、今となっては普通に感謝されている部類というか……。
「ええと、どういうことですか?」
「例えば、なんらかの作品のボスキャラが居るとして。普通、そういうのがそのままこっちに来ると滅茶苦茶迷惑になる、ってのはわかる?」
「え?えーと……ギガゾンビとかがこっちに来る、みたいなことですか?」
「そうだけど……真っ先にそれをあげる辺りそれだけ印象深いってことかな?」
「まぁ、普通にヤバイですし……」
こちらの話を聞いて、のび太君が例にあげたのはギガゾンビ。
ドラえもんの映画のうちの一つ『のび太の日本誕生』に登場する敵役である彼は、ドラえもんシリーズの中でも特に語り継がれる部類の悪役である。
それが何故かといえば、彼がドラえもんの来た未来よりもさらに先の未来から現れた存在だから、というところが大きい。
わかりやすく言うと、なんでもできる存在として描かれるドラえもんより遥かになんでもありな存在、ということだ。
未来の科学、という言葉である種の魔法とも呼べるものを成立させているのがドラえもんだと述べたことがあるが、その理屈で言うならどう足掻いても勝てる筋のない存在、とでもいうべきか。
……リメイクの方では科学ではなく原始的な力で勝つ、みたいなことになっている辺り大分トンチが効いている感がなくもない。
一応、このギガゾンビもゲーム作品に派生させれば和解の道筋があり、なんとかできなくもない類いではあるのだが……逆に言うとゲーム要素を持ってこないと、普通に世界征服を企む危険人物として処断するしかない、ということでもある。
そうなってくると、端から登場させないか、はたまた登場しても問題ないように処理する……というのが対策として有効である、ということになるだろう。
その対処として有効なものの一つが、再現度が足りない上に変な方向にねじれてしまって本来の姿を完全に再現できないようにしたもの……なんて解釈もできてしまう『レベル1』達、ということになるのであった。
まぁ、正直これを対処というのは憚られるわけだが。
そういうなりきりをしていた人を、ある種バカにしているようにも聞こえるわけだし。
「本人が楽しいのが一番……って話でもあるから、そういう人が出てくること自体を否定するようなことはないけどね」
「はぁ、なるほど……?」
「そういう対策の一つとして数えられるのが、例のドラえもんってわけ」
「あ、そういえばドラえもんの話だった」
「えー……?」
で、話は例のドラえもんのことに戻ってくる。
件のドラえもんは、原則まともに会話が成り立たないタイプの存在である。
機械類がそもそも再現度との噛み合わせが悪い、というのは何度も言っていることだが、それでもそれが必要なものであれば──
とはいえ、緩くなろうが再現度が足りないと問題が出てくる、というのは変わらない。
件のドラえもんはそこに『ネットでの変なキャラ付け』に引っ張られることで、成立し得ない部分をある程度無視することに成功している例の一つである。
そして、成功してはいるもののそれはあくまで『逆憑依』として成立するか否か、という部分についてだけの話であり、『ドラえもん』というキャラクターとしてはまた別の話。
結果、効果のないひみつ道具をポケットから出しながら、時々一定の確率で卑猥な単語を呟く、という存在として成立しているのである。
……あ、一応補足しておくと、元ネタが元ネタだからかあくまで言葉として卑猥な単語を呟くだけであり、なにか見てはいけないようなものをどこからか取り出すというわけではない。
「これだけだと単にドラえもんって作品に喧嘩売ってるだけに見えるけど、例えば『ネズミを前にしたドラえもん』みたいなものをスルーできる、って利点もあるんだよね」
「あー……」
おっと、この例えは流石にわかりやすかったらしい。
ドラえもんと言えばネコ型ロボットなのにネズミが苦手、というのが特徴の一つだが、この特徴には付随する彼の行動というものがある。
それが、苦手なネズミに対しての反応。
真っ当なドラえもんである場合、ネズミを前にしたらまず間違いなく『地球破壊爆弾』ないしその派生を取り出すことが想定されるのだ。
基本的には追い詰められた時の反応であって、毎度毎度『地球破壊爆弾』を取り出すわけではないが……逆に言うと、キャラの個性として昇華されているその動きは
……わかりやすく言うと、例え本来なら再現度的に不可能であっても、この状況を引き起こすとドラえもんは『地球破壊爆弾』を
そういう危険な状況を、件のドラえもんは回避してしまえる。
変なタイミングで変なことを言い出すことに目を瞑れば、危険性は普通のドラえもんより遥かに低いと判断してよいということになるわけだ。
……まぁ、代わりに普通のドラえもんが見たい層には嬉しくない、ということになるわけだが。
「とはいえ、ドラえもんってわりとポンコツなところもあるから。……再現度足らずで余計にポンコツになるのとどっちがマシなのか、みたいな話に発展しかねないというかね?いやまぁ、そういうキャラに世界の命運が掛かってくるようなもんを与えるな、って話なんだけど」
「その辺りはそういう作品だから仕方ない、ってわけね」
「ええと、うちのドラえもんがとんだ迷惑を……」
「同じことが君にも言えるんだけどね」
「えっ」
いや、最初からそういう意図の話だったじゃんこれ。
思わずなんで、とでも言いたそうなのび太君に対し、君も大概要注意人物だよと返す私なのでありましたとさ。