なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なんというか……かなりの大騒動だったじゃない」
「私が言えた義理じゃないけど、のび太君ってわりと重要人物だからね」
「本当に貴方が言えた義理じゃないわね……」
スキマに消えていったのび太君の残滓を惜しむように見送ったのち、気持ちを切り替えて前を向く私達である。
彼の犠牲は忘れない……もとい、こっちでの常識を存分に学んでからまた出会いたいというか?
まぁ、【顕象】じゃなくて『逆憑依』であったことは不幸中の幸い、というやつなのだとも思うわけなのだが。
ともかく、時刻はおおよそ午後三時頃。
そろそろ挨拶回りを終えて家に戻りたいくらいの時間なので、次の場所に向かったあとに戻ることにしよう、と呟く私である。
「なるほど……戻る時は同行しても構いませんか?」
「ん?……うん、別にいいけど、ゆかりさんとか呼んでこなくても大丈夫?」
「……あ、なるほど。ここからゆかりさんを呼びに戻るような時間はない、と仰っているのですね」
そんな私の言葉を聞いて、きりたんがこのまま同行してもいいかと尋ねて来るのだが……こっから先は余計な寄り道もせずに、最後の挨拶を終わらせてから家に戻る予定であることを伝えれば、そこに付随する意味も同時に察してくれたのか、彼女は直前の判断を撤回するような動きを見せたのだった。
……うん、これから向かう先では電話を掛けるようなスペースもなければ、そもそも電波自体が届かない。
つまり、他の面々を誘う場合は全部終わったあと、うちに着いてから……ということになるのだ。
……新年会が始まって暫く経ってから合流するつもりならそれでもいいかもだが、ゆかりさんのことだから「あとから合流するのはちょっと……」と遠慮する可能性大。
結果、一人だけボイロ組の中で参加する人になる可能性大ともなるわけで、そりゃまぁきりたんも遠慮するというもの。
そこ未来をありありと想像できたためか、彼女は一時離脱と相成ったのであった。
「他、なにか用事がある人は今のうちに抜けておいた方がいいよー?」
「……なによ、やけに慎重じゃない?まるで
「そうだよ?」
「……ん?」
で、再度抜ける人はいないのかと聞いたところ、不思議に思ったのかスカジが声をあげた。……なんでもいいけど『じゃない』って語尾が混じるとちょっとアウラを幻視するね。
「なに?他の奴らに『じゃない』を使うな、と言い含めろとでも言ってるわけ?」
「そういうわけじゃないけども……」
「アンタまで使うなじゃない」
「あら、久しぶりに使ったわね、それ」
「……話がずれてるじゃない」
そんな私の様子に、不満げな視線を向けてくるアウラだが……あれだ、わりと弄られキャラめいた空気も持ってるのが二次創作でのアウラでしょ、みたいに返せば微妙な顔をしていたのだった。
そして、その読み取り能力に賛辞を贈る私……というのが、先ほどのやり取りの意味である。
で、肯定されると思ってなかったスカジは、思わず首を捻ったと。
……でもまぁ、それも仕方のない話。
こんな風に匂わせてる時点で、もとい
「え、なにこの状況。滅茶苦茶怖いじゃない……」
「もっと恐ろしいものがこの先待ってるんだよ……」
「え?」
「のるなアウラ!!戻れ!!!」
「はぁ?なにを言ってるじゃない……」
「いいやもう遅い……言ったそばからまた油断……アウラは死んでもアウラのまま……」
「いやマジでなに?!わけわからないじゃない?!」*1
ははは、アウラは面白いなぁ()。
……冗談はともかく、推定出現してからまだ日が浅いアウラはともかく。
なりきり郷暮らしの長い他の面々──スカジを筆頭にした面々は、これから向かう場所に見当が付いたようで、各々他の用事がないかと思案している様子。
その様子はまさに必死そのもので、事情のわかっていないアウラの困惑は増すばかりである。
「諸事情 諸事情 些細な 諸事情 そういうアウラは事情を知らぬ 己の立場の危うさ知らぬ 私の言葉の危うさ知らぬ 困惑している今そこに」
「な、なんでうちはラップ……???」*2
「そこはキーアラップと呼んで頂戴。……まぁそれはともかく、みんなが必死になってるのは
「は?????」
うん、こうしてジリジリ説明しているのは、相手のことを完全に明言してしまうと逃げられなくなるから、というところが大きい。
……逃げるとはまた大袈裟な、と思う人もいるかも知れないが、今までの私たちの旅の軌跡を覚えている人ならばある程度見当が付くだろう。
そこから逆算すれば、どうしてこうまで言い淀むのか、というのもなんとなく察せられるはず。
……相手を明確にするということは、すなわち向こうに今から行きますよ、と宣言しているようなものなのだから。
「……よく分からないから、短く纏めて欲しいじゃない」
「んじゃあ、簡潔に。──アウラ、自戒しろ」
「いきなり殺すなじゃない……ん?
「口にした時点で取り下げられなくなるでしょ、ってこと」
口は災いの元、とも。
……要するに、他人にも認識できるように言葉を発した時点で、覆すことが不可能になる……みたいな話。
そうこうしているうちに、ロー君が『そういえばトキに呼ばれていたんだった。じゃっ』みたいな感じで一抜けし。
それに続くように『あっ、そうだそうだラットハウス組はラットハウス組で集まって新年会する予定だったんだ』とライネスが声をあげ。
彼女の言葉に同調するように『そ、そうでしたね!私達はここで抜けますね!とても名残惜しいですけど!!』『そそそそそうだね!ごめんねキーアちゃん!!また今度!!』とはるかさんとココアちゃんが頷いて抜けていく。
で、抜けるに抜けられずに残ったのがオルタとアクア、スカジに事情のよくわかっていないアウラだった、と。
「くっ……大して話に絡みもせず、目立たないままフェードアウトしようって作戦が……っ!!」
「そりゃ無理ってもんだよオルタ。ここにいる面々で唯一抜ける理由があろうともダメ、って言われる人間の一人なんだから」
「そうよねクソァッ!!」
「もう、軽率にそんな汚い言葉を使ってはいけませんよオルタ。そういう時はこう言うのです。──
「……私が言うのもなんだけど、それ絶対アンタの口から出てきちゃいけない台詞よね?」
「私はアクアですよ?」
(都合のいい時だけジャンヌじゃないアピールしてやがるこいつ……!?)
巻き込まれ筆頭役であるオルタは頭を抱え、その隣のアクアは悟ったように遠い目をしている。
で、さらにその隣のスカジはというと。
「正直言うと、ちょっとだけ楽しみだったりもするのよね。私はその辺り話に聞くだけだったわけだから」
「うーん、ポジティブと言うべきか怖いもの知らずと言うべきか……」
「そこは勇敢だ、ってことにしておいて頂戴」
なんとまぁ、隣の二人とは少し様子が違い、なんだか楽しそうにしているのである。
まぁ、彼女はこういう話に本格的に参加するのは何気に初めて。……今は忌避感や恐怖心よりも単純な好奇心や興味が勝る、ということらしい。
それが何時反転するやら、とちょっと心配でもないが……意外と向かったあともケロッとしているかもしれない、なんて感想を私に抱かせるのであった。
「……もういいんじゃない?いい加減説明が欲しいのだけど」
「後悔しない?」
「いいからさっさと話すじゃない」
で、最後の一人であるアウラはと言うと。
いい加減結論が先延ばしにされ続けたこともあり、イライラがマックスに達している様子。
……それが急転直下で冷めていく姿を目の当たりにするのは心苦しいのだが、彼女がそれを望んでいるのだから仕方ない。
ゆえに私は、今このタイミングまで明言を避けたこの後の目的地について、明確に口にしたのだった。
「これから挨拶に向かうのは『星の死海』。『星女神』様の居城であり、『月の君』様もこちらを見ている明確な異界。ともすれば、あらゆる存在が意味を失うような極小の海、だよ」
「……唐突に用事を思い出したじゃない。私はこれで抜け「生憎離脱受付は終了しました、以後は強制イベントです」ふざけるなじゃない……」
……【顕象】間で情報の伝達でもしてるのかな?
私が『星女神』様達の名前を出した途端、冷や汗を長し出したアウラの様子に、なんやかんや危険性については伝わっているのだなぁ、と思わず感心してしまった私なのであった。
……え?感心する暇があるなら私を見逃せ?ほっほ、無☆理。