なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、荒ぶるハセヲ君を鎮めた私たちだが、実のところ久しぶりに集まろう……としか事前に話していなかったため、微妙に手持ち無沙汰になっていたりする。
「現実で集まるのは無理、ってことでここ選びましたが……別にしたいこともないんですよね」
「下手に動くと仕事に発展しそうだもんねー」
「あー確かに。ここも大概ブラックボックスだからねー」
たきなもとい
……確かに、このゲーム内で下手に動くのは事件の香り、というのは間違いないだろう。
無論、彼女達の場合はそもそもそのアバター自体が厄物なので、動く動かないはあんまり関係ない気もする……というのも間違いないのだが。
「……あ、厄物といえば」
「聞かないわよ」
「実は最近SAOエリアが出来上がって……」
「聞かないって言ったのになんで話すのかなぁ!?」
そんな中、ふと思い出したように声をあげたのがキリトちゃん。
……それは別にいいのだが、事前に嫌な予感がした私は聞かないよ、と耳を塞ぐポーズ。
それにも関わらず、彼女は話題を提供しきったのであった。人の話聞かないねこの子???
それにしても、SAOエリアと来たか。
……いつぞやか、茅場さんが『この世界は浮遊城を求めている』みたいなことを言っていたような覚えがあるが……ついにその辺りの回収が始まった、ということなのだろうか?いやまぁ、回収云々言うなら『アーカムシティ』の時点でそうなんじゃないの、って気もするんだけども。
「……ん?浮遊城?」
「アインクラッドのことだね。この世界はあの城を生み出すために生まれたものだ、って開発者の一人である茅場さんが言ってたことがあるんだよ」
「このゲームあやつの製作だったのか……」
「エグゼイドの社長も含むけどね」
「不安感が爆増したんだが???」
そんな風にあれこれ考えていると、あまりこのゲームで遊んだことがないというミラちゃんから疑問の声が。
……同室のアスナさんからなにかしら聞いていそうなものだが、よく考えたら茅場さんって外に顔を出す時は基本ウェスト博士の方になっているので、スタッフクレジットまで確認しないと出てこない茅場さんや社長のことは案外わからなかったりするのかもしれないなぁ、と一人納得することに。
実際『tri-qualia』のゲーム部分には、二人の癖とか空気感とかは感じられないわけだし。
「……そうか?」
「コラボが強すぎて、そういう疑問が出てき辛いんだよここ……」
「言われてみれば確かに……」
……レベル制ではなくプレイヤーのスキルに頼ったゲームシステム、という辺りも二人のゲームとして見るとちょっと疑問が浮かばないでもない、というか?
辛うじて茅場さんの方はこういうの好きそう、みたいな感じはあるけど。
あの人確かもう一つの世界を作りたかった、みたいなこと言ってたはずだし。
ともあれ、そういったほんの少しの匂いも、多種多様なコラボシリーズが全部押し流して行くというのだからたまらない。
ついこの間なんて随伴キャラの見た目に非常食……もといパイモンが実装されたとかなんとかでお祭りになってたし。*1
この分だとペロロ様*2とかが実装されるのも時間の問題だろう。
「え?ハ○ドリ君?」*3
「流石にそれを同一視するのは、過激なファンから○されてもおかしくないと思うよ」
「じょ、冗談だってば……」
途中さーちゃんが寝ぼけたことを口走っていたが、そんなこと例の人に聞かれたら首の骨折られてもおかしくないぞ(意訳)、と返せば流石に発言を撤回していたのだった。
……ゲーム内だと無下限とか関係ないからね、仕方ないね。
「そうそれ!地味にずるいよねキーアさんとハセヲ君!」
「いや、俺は寧ろ外でなんでもできねぇんだからこれくらいは許して欲しいんだが……」
「そういう意味ではキリトちゃんがおかしいんだよね、なんで外でも空飛べたりするの?」
「そんなこと言われても……イシュタルの服がおかしいだけというか」
「あるよぉ!武器あるよぉ!!」*4
「止めろよ……」
で、話題はそこから『tri-qualia』内でチート臭い動きができる面々への愚痴に。
ハセヲ君はあくまでゲーム内でしか発揮できない能力なので勘弁してくれ、と呻いているが……キッピー知ってるよ、最近夢とかで『力が欲しいか……』的なやり取りをスケィスとやらされてるってこと。
以前は自分のことをあてにするな、みたいな空気感だったと聞いているが……なにか心境が変化するような事件でもあったのだろうか?
それとは別に、おかしなことになっているのがキリトちゃんである。
彼女は後天的な『逆憑依』……と言うと語弊があるが、このゲーム内でアバターを入手した結果キリトちゃんになった、というわりと特殊なタイプの存在である。
聞けばこうして変化する前は確実に男だったそうで、その辺りをブルーノちゃんにあれこれ言われたりもしたそうだが……。
ともかく、アバターが現実の姿にも変化をもたらした、という点が後を引いているのは間違いあるまい。
何故か?この間ゲームで手に入れたとか言ってたイシュタルの衣装の効果──空を飛べる、というのが現実でも適用されているというのだ。
まぁ、空を飛ぶと自動的にあの痴女衣装になるらしく、本人的にはあまり使いたがらないのだけれど。
恐らくアバターから変化したタイプであるため、同じようになにかしらのキャラクターのアバターを与えられると【継ぎ接ぎ】が発生するのだろう、と琥珀さんが言っていたが……。
そう考えると、やっぱり本体に影響を与えずアバターが本人の姿ではない、というさーちゃんとすーちゃんのアバターも大概厄物だなぁ、と改めて確信する次第だったり。
「……話が戻ってきてません?」
「おおっと」
「ってことは、この後はSAOエリアに移動だな!」
「いや行かないよ?……行かないってば!?」
なんで今日のキリトちゃんはこんなに強引なんです!?
「で、押しきられちゃってみんなでやって来た、ってわけだ」
「……こうしてここまでやって来たことで、なんでキリトちゃんがあんなに強引にここまで連れてきたのかわかったんですけどね」
「ふふふ、実は結構楽しみにしてたんだ、キリトちゃんも私も」
はてさて、強引なキリトちゃんの誘導により、本当は近付きたくもなかったSAOエリアにやってきた私たち。
そこで出会ったのは、こうして楽しそうに声をあげるアスナさんだった、というわけである。
……おのれキリトちゃん、男子会だっつってるのにデートの予定入れてやがったのか!……え?お前もデートだなんだと言って家を出ただろうって?知らなーい。
まぁともかく、キリトちゃんがアスナさんと予定を入れていた、ということは間違いあるまい。
ただまぁ、これに関しては少々彼を責められない理由もなくはなく……。
「いやだって、SAOエリアだろ?……アスナが滅茶苦茶強いとは言え、俺ら二人だけで挑むのは流石に無謀が過ぎるというか」
「あーうん、この浮かれようだと止めようとは言えないよね……」
「あ、キリトちゃんったら酷いんだ。なんやかんや言ってもそっちだってちょっと楽しみにしてたくせにー」
「それはほら、キリトなんだし多少は、っつーか……」
「このゲームバカどもめ……」
うん、ご覧の通り。
……自身の原作に関わる話であることから、二人ともそれを見て見ぬふりができない状態にあったわけである。
この辺は『逆憑依』にそういうところがあるので責められない、というか。再現できるものなら再現したい、と思ってしまうのは仕方がないことというか。
そこで二人だけで突っ込まないだけ、寧ろ自制が効いているとすら言えるわけで、こうなってしまうと私たちも怒る気が失せるというもの。
……仕方がないので、いい加減腹を括ることにしたのであった。
「それにしても……アスナさん、またイメチェンした?」
「うふふ、新しい装備を試したい……って気持ちもなくはないんだよね」
で、そうして落ち着いたところで、改めてアスナさんに視線を向ける。
彼女の服装は、いつものそれとはまた別のものになっていたのだが、どう変わっていたのかわかるだろうか?
……答えは単純、いつもは真っ白な鎧──初期の彼女が纏う血盟騎士団のそれが、今は真っ黒な鎧へと変化しているのだ。
分かりやすく言うと、アスナオルタ……みたいな見た目と言うか?
まさかの悪堕ち?……って感じなのだが、これがわりと冗談でもなんでもなく……。
「まさか報酬ドロップで『決戦武装:大神使』なんてものゲットするとは……」
「頼光さんみたいな戦いをするんだったら、その反転みたいなものである丑御前の方も極めないとね!」
「えー……」
そう、今の彼女は丑御前──FGOにおいて頼光さんの別の面、とされている存在のそれを真似したような状態になっているのだった。
まぁ、完全に真似しているというよりは、オルタって言葉に従って悪堕ちしたみたいな感じに振る舞う気、みたいな方向性らしいけど。
わざわざ目元を隠すバイザーまで新調した、と言われれば思わず引きつった笑いしか浮かぶまいというもの。
これからこんなの()に突撃される羽目になる浮遊城に、思わず同情してしまう私なのであった……。