なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・空に浮かぶ城、そこに佇むのは

「……一層から攻略開始、かつログアウト禁止の再現のため特定の場所以外では帰還コマンドすら出てこないとは……」

「ここ全体がダンジョン判定だからこそできること、ってやつだな!」

 

 

 はてさて、内部に入ったところそこは草原でした。

 ……つまりはアインクラッド第一層というわけだが、ここで私たちが目にしたのは帰還不可の文字。

 どうやら、作中のログアウトできない状況の再現のため、安全な場所でしかダンジョンから抜けることができない仕様になっているらしい。

 

 いやまぁ、街とかの安全な場所なら抜けられる辺り原作より遥かに優しいんだけど、そこ拘るとこなんだなぁと遠い目になるというか……。

 まぁ、城に侵入する前のあれこれに比べれば、この程度で済んでいるのは寧ろラッキーなのかもしれないが。

 

 

「あー、そうですね。あそこまでやってなにもお咎めなし、というのは中々寛容と言うか……」

「寧ろ傲慢って言うべきじゃないかしら?お前達じゃあ所詮はこの程度、って言われてるみたいというか」

「……いや、そこで私を見つめられても困るんですけどね?」

 

 

 私の言葉に、すーちゃんがうんうんと小さく頷き、その横でアスナさんが小さく笑みを浮かべていた。

 ……彼女の笑みはよく見ると引き攣ったもので、そこに込められた苛立ちの感情を隠しきれていなかったのだけれど。

 

 何故こうなったのかと言えば、今しがた少し触れたようにアインクラッド侵入前に一騒動あったから、というところが大きい。

 

 ここ『tri-qualia』において実装された浮遊城アインクラッドは、厳密にはSAO(ソードアート・オンライン)のそれではなく、ALO──『アルヴヘイム・オンライン』において実装されたものという方が正解である。*1

 分かりやすくいうと、『tri-qualia』の大地から空を見上げた際、天空に見える空飛ぶ城……みたいな感じになっているというか。

 

 また、『tri-qualia』では移動の際に『.hack//』シリーズにおけるエリアワードを使用することで、自動生成ダンジョンを構築しているが。

 特定のエリア──例えばロストグラウンドのような場所の場合、原作のワードをそのまま使用されていたりする。

 それを踏まえたうえで、あの浮遊城に与えられたエリアワードは『遠き 叡知の 進む先』。……茅場晶彦の求めたそれを隠喩するような言葉が宛がわれているのだった。

 

 ……ここまででなにが言いたいのかというと。

 ああして浮いている浮遊城は、厳密には()()()()()()()()()だ、ということだ。

 

 

「にも関わらず、『とりあえず外から攻撃したら叩き落とせたりしないかしら?』とかなんとか言いながら大神使(ほうぐ)使用して周囲を混乱の渦に巻き込んだってんだから、なにかしらペナルティがあってもおかしくはなかったよねー」

「……それ以上その口を開くのであらば、今すぐここで真っ二つに断ち割って差し上げても宜しいのですよ?」

「アスナさん、丑御前漏れてる漏れてる」

「おっと。……もー、さーちゃんが変なこと言うからだよ?!」

「はいはい、ごめんごめんって(今一瞬マジで斬られるかと思った!?)」

 

 

 ……うん、フィールドに干渉できるレベルの武器を貰った結果、それの試し撃ちがしたい……みたいなテンションになってたらしくってね?

 あとはまぁ、色々思うところのあるアインクラッド相手なので、手加減とか無用かなーみたいな感じに全力ぶっぱしてたというか。

 

 その結果、周囲が雷撃で無茶苦茶になったのは言うまでもない。

 ついでに言うならその破壊の中心部で『おのれ、我が道を阻むか浮遊城……!いいでしょう、いつかその大層な玉座(てんくう)から引き摺り下ろし、その全てを(こわ)してくれる……!』とかなんとか恐ろしい声色で呟く黒色の騎士、なんてものが居たものだから、一時期一般プレイヤーが恐慌状態に陥る始末である。

 ……呪いの装備なんじゃねぇかな、大神使。

 

 で、それに付随してなんでさっきアスナさんがこっちを見てきていたのかというと。

 現状の私が本気を出せば、例えシステム的には別物であっても、概念的に結び付けて本体にダメージを与えられるんじゃないか?……と彼女が疑っているからだったり。

 ──いやまぁ、そういうのはハセヲ君に言って貰って。

 

 

「やらねぇしやれねぇからな!?そもそも射程圏外だっての!!」

「そっか、残念。……スケィス使えたらやれそうじゃない?」

「余計な災禍を持ち込ませようとしてんじゃねぇよ!?」

「いやいや、なに言ってるのハセヲ君。私は単にこのゲームを(こわ)そうとしてるだけだよ?」

「おいキーア今すぐこいつからあれ(大神使)引き剥がせぇ!!」

「アスナさん単に悪ノリしてるだけだから気にしなくていいよ」

「はぁっ!?」

「あっ、もう。キーアちゃんってばばらさないでよー」

(俺は時々アスナが怖い……)

 

 

 フィールドだろうがPCだろうが、等しく干渉できるデータドレイン使えるハセヲ君の方が適任だろう、と話題をパス。

 パスされたハセヲ君は暫くアスナさんに遊ばれていたが……普段はその役割を全部請け負っているのだろうキリトちゃんは、なんとも言えない笑みを浮かべていたのだった……。

 

 

「──とまぁ、そんな感じだったからね。でもまぁ、そもそも大神使をアスナさんに与えたのって運営だし、あれくらいの騒動は想定してたのかも?」

「むぅ、それはそれで向こうの掌の上、って感じがしてやだなー」

「まぁまぁ、落ち着かぬかアスナよ。……とりあえず、こうなったからには素直に攻略するのだろう?」

「最後までやるかはわからないけどね。変に深入りして、変な反応起こされても困るし」

「問題は、運営がそれを許してくれるかだよねぇ……」

「だねー……」

 

 

 で、時間は戻って今現在。

 叩き落とすのは諦めて素直にカオスゲートに向かい、エリアワードを入力してアインクラッドに突入した私たち。

 その結果、この第一層──原作のキリト君がイノシシ狩りをしていたフィールドに足を踏み入れることになったのだけれど。

 そこで何気なく(あるいは手癖・心配から)システムウィンドウを呼び出し、ログアウトボタンがグレーアウトしていることに気が付いた……と。

 

 いや、思わずさっきはみんなしてビビりまくったよね。

 まぁそれを見計らったように運営からのショートメールが届いて、そこに書いてあるお知らせを読むことになったのだけれど。

 ……一般人からしても冷や汗ものだと思うんだけど、実際にそういうことが起き得ると知っている私たちからすれば、まさに冗談で済む話じゃないというか。

 

 ゆえにまぁ、アスナさんがさっきより過激になってるのは仕方の無いこと……え?さっきの件に対してのペナルティみたいなもんかもしれないだろうって?

 

 

「……うん、ちょっと自重するね」

「あっはい」

 

 

 今しがた私の脳内で巻き起こったツッコミが、アスナさんの脳内でも発生したのだろうか。

 彼女は先ほどまでの様子が嘘のように大人しくなり、小さくしゅんとし始めたのだった。

 

 ……まぁうん、落ち着いたんならそれでいいよ、うん。

 

 

「ですが……実際どこまで深入りしたものか、というのは悩ましいですね。今のところはこちらの杞憂だと思いますが、これが杞憂で無かった場合が怖いですし」

「確かにのぅ。今のは変に警戒しすぎたこっちの自爆、とも取れるが……」

「この浮遊城が出来上がった目的に裏があるなら、一般層だけで攻略させるのは後が怖いんだよねー」

 

 

 で、落ち着いたところでこれからの行動目的について、である。

 

 この浮遊城アインクラッドは、恐らく運営は運営でもプログラムが用意したものである、ということは間違いあるまい。

 基本的にイベント事は外から提案という形でプログラムに入力され、それを受諾したプログラム側が自動生成するという形式になっている、らしい。

 その上で、今までアインクラッドは導入しようとしてもできなかった、とも聞いている。

 

 要するに、今ここにある浮遊城は、プログラム側が『その時が来た』とばかりに用意したものだ、ということ。

 で、あるならば。

 この城にはなにかしら明確な目的がある、ということでもある。

 その目的がなんなのか──例えば、大量の一般層を閉じ込めて『逆憑依』を量産しようとしている、みたいな眉唾な話だって気にしておかなければならないのだ。

 

 

「実際、『tri-qualia』が原因となって『逆憑依』になった、って人も複数いるからね」

「俺とかアーミヤさん達とかだったか。……システム的に親和性が高いってだけの話だから、実のところはその辺り意識してるわけじゃないかもしれないけど」

「その辺りはまぁ、プログラムに直接聞いてみるとかしないとわかんないだろうね」

 

 

 実例であるキリトちゃんを眺めつつ、ため息を一つ。

 ……危ないといえば、そもそも既に『逆憑依』になっている面々も同じ。

 バレンタインの時の幽霊列車騒動でこの世界に回収されることとなった社長さんとその娘さん……みたいな感じで、この世界は()()()()()()()()()()()()()()()()()()……みたいなことを茅場さんが言っていたことがある。

 それを元にすると、この世界が求めているのは『逆憑依』としての誰か、なのかもしれないという予測が立つのだ。

 

 それが既に成立している存在なのか、それともこれから成立させようとしている存在なのか。

 その答えはそれこそ本人(プログラム)に聞かないとわからないだろうが……ともかく。

 

 

「危険がそこにある、という以上は単にログインしただけで戻るわけにはいかない、ってのも確かだよね」

「あとはまぁ、なんやかんやで楽しみにしてるっぽいキリトちゃんの期待に答える必要もあるよねー」

「……いやその、あくまでやらなきゃいけないのなら楽しむべきってだけの話でだな?」

 

 

 ここで尻尾を巻いて帰る、というわけには行かないのは明確。

 ゆえに、とりあえずログアウトができる安全な街まで進んでみよう、という話になるのだった。

 

 

*1
プレイヤースキルに重きを置いた、ある意味で『tri-qualia』とも相性の良さそうなMMO。『ソードアート・オンライン』シリーズに登場する作品であり、プレイヤーは妖精の一人として他種族との戦いなどを楽しんでいく作品となっている。作中の出来事により一時存続を危ぶまれたが、運営が移管されたことにより無事存続することとなった

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