なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・地味に増え続けていたので

「おー、キリの字!お前も来てたのか」

「クライン!なんだよ来てるんなら一言声を掛けてくれればいいのに」

「いや……その集団に混じる勇気はないわ、俺」

 

 

 街に着いたところ、そこには複数のプレイヤー達がひしめき合っていた。

 どうやら情報を探したり道具を買い揃えたり、みんながみんな思い思いに行動をしているらしい。

 

 で、そんな集団の一角──情報収集を終えたのか、民家の壁に背を預け息を吐く男性二人に視線を向けた私たちは、それが見知った人物であったことに目を丸くしていた、と。

 

 二人の男性の片割れ──クラインは、キリトちゃんが発する言葉に対し、頭を掻きながら視線を逸らしている。

 ……要約すると、ハセヲ君みたいに周囲の視線に刺されたくない、ということだろう。

 

 まぁ、気持ちはわからないでもない。

 単に見た目だけなら、美少女集団でしかないからね、この一団。無論ハセヲ君除く。

 まぁ、実態は変な奴ら大集合なので、別に外から見た時のような華やかさはないのだけれど。

 

 

「むぅ、随分な言われようじゃのぅ」

「そういう台詞は、外から持ち込んだベリージュースを手放してから言うてもろて」

「む……いやこれはMPを回復するためにじゃな?」

「横にウィンドウで警告出てますよ?」

「ぬぐっ」

 

 

 思わず、とばかりに反論を口に出したミラちゃんだが、そういうのは隣に浮かんでる『つかってもこうかがないよ』の警告を消してから言って貰いたいものである。*1

 あからさまにもう回復できないのに飲んでるやんけ、単に飲みたいから飲んでるだけでしょ君。

 

 ……っていうか、アインクラッド内にベリージュースは売ってないから買い足しできないんだけど、その辺りどうするつもりなんで?

 

 

「その辺りは抜かりないぞ。こうしてカンスト数収納済みじゃ」

「うわっ!?千個近く持ってる!?」

「あはは……ゲームならではって感じだね……」

「ここがゲームであることを前提とすると、逆にそんなに持ってる必要ねーだろって話になるんだがな」

「ああ、ベリージュースのMP回復量は……確か総MPの三割だったか」

「……ええいやかましいわ!わしがなに飲んでようと勝手じゃろうが!!」

 

 

 なんて思ってたら、凄まじく力業な解決方法を提示されてしまった。

 

 ……いやうん、確かに千個近く持ってりゃそうそう枯渇することはないだろうけども。

 それはそれで、ゲーム的には百個くらいでも持て余し気味になりそうな回復アイテムをなんでそんなに……?みたいな話になるというか。*2

 

 まぁ、ここが『.hack//』とかの世界みたいに、特定のアイテムコレクターが跋扈しているとこなら問題ないとは思うけど。

 でもこの人使ってるもとい飲んでるんだよなぁ……しかも美味しそうに。

 

 

「ミラちゃん」

「むう、まだなにかあるというのか……」

「飲んでもいいけど、周囲の目がないところでね」

「ぬ?……あっ

 

 

 ……やはり、ゲーム世界での物の味というものに興味が行きすぎて、今の私たちが抱える問題点に気付いていなかった様子。

 

 ただでさえ今の彼女は目で見てわかる──『賢者の弟子を名乗る賢者』の主人公・ミラそのものだと判別できる姿。

 一応、ゲームの中なのであくまでコラボアバターかなにかだろう、と判断されるけど……それでも衆目を集めやすいことに変わりはない。

 

 となれば、必然彼女の動きが()()()()()()()()()()、ということも話題に上りやすくなるわけで。

 ……その結果、なんか滅茶苦茶美味しそうに飲み物飲んでいる、ということにも気付かれるわけである。

 

 あからさまに他とは違う動きを──自然な動きをしているキャラが居るとなれば、それこそ噂になるのは当たり前の話。

 それは同時に、余計な問題が飛び込んでくる確率を上げてしまうのと同義。

 なんなら、今私たちが居る場所──アインクラッドと合わせて、チートかなにかと勘違いされる可能性も大である。

 

 まぁ、実際のところある意味チート……ハードウェアチートみたいなものであることは間違いないのだが、それはともかく。

 変に話題になりたくない、なるべきではない私たちとしては、ミラちゃんの今の行動は褒められたものではない、ということになるのであった。

 

 ……え?禁止じゃなくて注意に留まる理由はなにかって?

 そりゃ勿論、ここ(『tri-qualia』)で食べたり飲んだりするものは独特の楽しみがあるから、禁止しちゃうのはストレスに繋がるからですがなにか?

 

 

「特にサンジ君の作るパフェは、ここ以外だと楽しみ辛すぎるからね、基本的君ってば年がら年中ここに居るし」

「はっはっ、そうやって褒めて貰えるのは嬉しいねェ」

 

 

 ……で、ここまで来てようやく私たちが出会った男性二人組──クラインさんとその相方についての話に戻ってくる。

 うん、今の流れでわかったと思うけど、クラインさんと一緒に居たのってサンジ君だったんだよね。同じ声が左右から聞こえてくる!

 

 

「まぁ、実際そういう繋がりだからな俺ら。サンジの飯って言ったら旨いことで有名だから、ちょっと食べに行ったらこう話が弾んで……みたいな?」

「そうそう。侑子さんにちょっと見てきて欲しい、って頼まれたのもあるんだけどな」

「侑子に?」

 

 

 なるほど、確かにネットでも有名になってたような?

 ワンピースのサンジが店員に居る店、みたいな感じで。

 

 ……しかし、これまた気になる話が出てきたというか。

 侑子がサンジ君にアインクラッドの偵察を頼んだ、ということだが……本人が来なかったのは、意外と本人の戦闘力が高くないという部分もあるだろうが、恐らくは彼女がこの浮遊城の求める世界であった時、面倒なことになるのが見えるから……みたいな話だろう。

 

 そもそも侑子がここにいること自体、ある意味では『tri-qualia』に閉じ込められたから……みたいな話だし。

 その延長線上として、このアインクラッドもまた侑子を求めている……みたいな可能性はなくはないだろう。

 まぁ、なんのために侑子を求めているのか、みたいな部分がわからないのであくまで憶測になるけど。

 

 ともかく、今ここにサンジ君とクラインさんが居る理由、みたいなものはわかった。

 となれば、次にすることは一つ。彼らが集めた情報を共有して貰えないかを聞くことだろう。

 

 

「ん?聞きたいんなら話してもいいが……」

「なにかしら対価を渡すべきでしょ、そういうものだから」

「そうだなぁ……」

 

 

 別になくてもいいんだが……みたいな感じのクラインさんだが、この辺りは決まりをちゃんと守る意思を見せておくべき部分、みたいな?

 ……誰もいないところならともかく、現状この場所は衆目に晒された場所。

 そんなところで一方的な情報のやりとりなんてしていたら、後々他所からたかられる可能性大というわけである。*3

 

 なので、こちらから対価としてなにか渡そう、という話になるんだけど……。

 

 

「うーん、一応交渉って形式にしておこうか?そっちの情報ってどんな感じ?」

「一応、一層の大体の情報は集めてきてあるぜ」

「うわっ……それって結構高くなるんじゃないの?」

「まぁ、まともに情報屋が扱うとするなら、かなり吹っ掛けられるやつだな」

 

 

 ううむ、意外と優秀というか?

 彼らが集めてきた情報というのは、どうやらこの一層に関連した情報、そのほとんどであるとのこと。

 まぁ、プレイヤーとして情報を最初からある程度知っているクラインさんがいたからこそ、みたいな部分もあるのだろう。

 

 それから、だからこそ見えてくる本編との違い……みたいな部分とか。

 原作では、ベータプレイヤーだからこそ引っかかる罠……みたいなものもあったらしいし。*4

 なお、その辺りの悪辣な罠のようなものはとりあえず無かった、と先に教えて貰ったりもした。これくらいなら他に聞かれても、みたいな感じのようだ。

 

 

「他のやつらも気になってるだろうしな、その辺りの話は」

「なるほど……クラインさんがそれを口にすることで、周囲への拡散も期待できるってわけだ」

 

 

 この辺りは、周囲が抱いている微妙な危機感、みたいなものを解す目的もあるらしい。

 ……確かに、クラインさんとアスナさんがここに居る上に、舞台がアインクラッドとなれば警戒されるのも間違いはあるまい。

 まぁ、パッと見た感じキリト君が居ないせいで、実はここにいる面々は運営が用意したNPCみたいなものなんじゃ、なんて憶測も生んでるみたいだけど。

 

 

「しっかり居るんだけどね、キリト()()()だけど」

「そーっと近付いたあと、俺を見て『あれ?』って感じに帰って行くんだよな……」

 

 

 ソードアート・オンラインが『一人の特別なプレイヤーの話』みたいなものであることから、今回のこれもそれに倣ったものなのでは?……なんてことを思うプレイヤーは多い、ということなのだろう。

 まぁその結果、夢を砕かれたみたいな感じに去っていく人がいっぱい居るのは、正直どうなんだと思わないでもない私なのであった。

 

 

*1
ゲーム『ポケットモンスター』において、使っても意味のない消費アイテムを使おうとした際にでるメッセージ。プレイヤーが目にしやすいのはいわゆるドーピング系アイテムを使用した際。設定された数値まで使うとそれ以上ステータスを上げられなくなる為、その際にこの文言が表示される

*2
大抵のゲームにおいて、消費アイテムの所持数上限は99個であることが多い。これは二桁で表示できる数の最大数であるが、これを100にすると今度は三桁表示できるのにそれ以上持てないのか?……と疑問が湧くから、みたいな面もあるのかもしれない

*3
無料だと客の質が下がる……みたいな話。その場所を利用できる層が増えれば勿論ビジネスチャンスも増えるが、同時に問題のある相手にかち合う可能性もまた増える、ということ。世の中のソシャゲは基本無料で客層を広く保っているが、同時に普通に有料にしていたら届かない相手にも届く/届いてしまうことで発生する問題・ないし利点が多くある

*4
一層ボスであるイルファング・ザ・コボルト・ロードの攻撃パターンが有名。体力が減ると武器が変わるというのはベータと同じだが、その内容が曲刀から刀に変更されていた。一応、ゲームシナリオ的にはベータから本編の間にボスの交代劇があった、ということになるらしい(つまりベータと本編では別人)

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