なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……なるほど、これはとんだ失礼を……」
「いえいえ。私たちももし自分が当事者じゃなかったら、同じ事をしてたかもしれませんので」
はてさて、私たち(主にアスナさんとクラインさん)を見て勘違いするプレイヤーが少なくない中。
私たちは、とある一般プレイヤーと会話をしている最中であった。……二人に気付いただけではなく、他の面々もなにかしらのキャラ(の、コラボアバター)だと認識してしまったからである。
まぁ、私だけは微妙に首を傾げられたのだが。
……髪の色が
他の面々は原作まんま……というと一人おかしいのだけれど、少なくとも髪色の変化はないのでイメチェンかな?くらいで済んだのかも。
「キーアちゃん、言いたいことがあるならハッキリ言っていいのよ?」
「一般の人に怖がられてて草」
「そ、それはその……バイザーが良くなかったというか……」
……で、件の人物であるところのアスナさんはというと、流石に自分の姿が端的に言って怖い、と思われていたことにちょっと傷付いている様子。
まぁ、本人的にはちょっとしたイメチェンでしかなかったのに、思ったより重く取られてしまったことに後悔?みたいなものがあるというか?
……でも仕方ない。だってバイザーと鎧の色からわかるけど、今回の彼女のイメージ元ってあからさまにセイバーオルタなんだもの。
それがアスナさんに(イメージとして)くっついているのだから、ある程度詳しい人なら変な想像をしてもおかしくないというか。
「変な想像?」
「オルタって悪堕ちってイメージでしょ?正確には違うらしいけど。*1で、映画の方とか見たことあるなら暴走とか敵に洗脳されたとか、そんな感じに見えるってわけ。……それから、『tri-qualia』自体はALOに似てるってこととこのアインクラッドの実装の仕方、さらに原作でのアスナさんのポジションを考えると……」
「……あーなるほど。うすい本でよくある展開、ということじゃな」*2
「なるほど、キーアが大嫌いなやつか」
「そうそう私が嫌いなやつ……いやまぁ確かにそうなんだけど、そこで私を話に出す必要ある???」
……雑に言ってしまうと、ALOのラスボスに寝取られた結果の姿、みたいに思われそうというか?
本来白い姿が黒い姿に変化しているというのは、古今東西悪堕ち要素のあるファンタジーで多用されて来た姿であるわけで。
で、アスナさんの場合原作での隙?みたいなものがあるのでそういう想像も容易である、と。
……いやまぁ、隙云々の話をするとSAOのヒロインってみんなそういう要素が少なからずある、ということになってしまうわけなのだが。
だってそういう話からキリト君が救うことで惚れられる、みたいな流れがほとんどだし。
「敢えて言うなら、リズベットちゃんとリーファちゃんだけ隙云々とはちょっと違う感じというか?」
「あー……他の面々が危機からの救助って形が多いのに、その二人は普通に出会ってる感じに近いからか?」
「まぁ、そういうこと」
出会いから惚れられるまでの展開の中に、なにかしら他者による危機が発生しない……みたいな感じというか。
そういう話を書く際に、自然と原作のエピソードに挟み込める話がない、とも。
アスナさんならオベイロン、シリカちゃんならロザリア関連、シノンなら新川恭二……というような、酷い目にあう可能性を想定できる相手・タイミングがないというか?*3
なので、仮に彼女達でそういううすい本を書こうとすると、作者側がそういう展開を作る必要がある……と。
まぁ、そう考えるとリーファちゃんはあれだな、となるのだが。やはり胸か……(遠い目)*4
ともかく、今のアスナさんが『なにかあった』結果に見える、ということは確かな話。
そりゃまぁ、一般プレイヤーからしてみれば怖く見えても仕方あるまい。
……そういう意味で、現在私たちに付いてきているこの人は、中々奇特な人と言えるのかもしれないが。
「えっあっ、ええとその……」
「ああ気にしないで。別にそれが悪いって言ってるわけじゃないから」
こちらの言葉に、恐縮したように縮こまる(ような空気を感じる)プレイヤーが一人。
……見た目からわかる通り完全に一般PCなのだが、この人もまたアスナさんとクラインさんを見て声を掛けてきた人の一人である。
なお、声から察するに多分女性。
見た感じそこまでプレイングが上手いってわけでもないので、単純に上手そうな人に話が聞けないかと近寄ってきた可能性も否めない。
無論、見知ったキャラクター達に物珍しさを感じて近付いてみた、というだけの可能性もあるが。
「そう考えると、やっぱりアスナさんがノイズなんだよなぁ。あからさまに黒いしアスナさんだってすぐに結び付かなくない?」
「え?……ええとその、実は最初鎧については気にしてなくて……」
「ん?」
「その、皆さんと話している時は外してたじゃないですか、バイザー」
「あー……」
なるほど、移動を始めるまでは確かにアスナさんは顔を外気に晒していた。
そこから戦闘フィールドに戻るとなった際に、防具としてバイザーを装備し直したのだ。
なので、そうなるまでは彼女の素顔を見る機会があった、と。
……言われてみれば、確かに顔が見えているのならアスナさんであると認識するのはそう難しくない。
だってバイザーの下は普通のアスナさんなんだもの。目の色が変化していたりしない、というか?
あからさまに洗脳されたような痕跡が見えない、とも。
逆に言うと、バイザーを掛けるとその辺りの判別ができなくなり、外見からの印象で認識するしかなくなる……と。
なお、この会話の結果アスナさんは躊躇なくバイザーを投げ捨てた。
なりきりとしてはあった方が良いのだろうが、やりすぎて本当に悪堕ちしても困る、とか思ったのかもしれない。
ともあれ、この一般PCさんを連れて行動することになったのだけれど、なにも適当に受け入れたわけではない。
では何故、目立ちたくないとかなんとか言いながら明らかに噂の出発点・開始点となりうる相手をパーティに迎え入れたのかというと。
「……ところで、もしかしてだけど私たちに声を掛けてきた理由の中で一番大きいのって、
「あ、はい。そんなところというか……当たったはいいけど上手く使いこなせなくて」
視線を相手の背後に移せば、彼女は恥ずかしげな空気を纏わせながら、自身が背負った
……『tri-qualia』が結構無茶苦茶なゲームである、ということは以前語った通り。
その無茶苦茶さは、私たちのような『逆憑依』以外でも、ある程度ならキャラの真似を──アニメやゲームのキャラクターの真似を出来てしまう、というところにも現れている。
例えば、巨大な鉄塊の如き大剣を背負い、傭兵のように戦う人物が居たり。
例えば、拳のみで戦うストリートファイターのような存在がわらわら存在したり。
例えば、ファンタジー系列に思える作風にも関わらず、近未来的武装も普通にポンポン存在するため、それらを扱うキャラの真似もできてしまったり。
そういう流れを継ぐもの、というべきか。
はたまた、そういう流れを助長するものというべきか。
この『tri-qualia』内では、結構な頻度でコラボガチャというものが開催されている。
そして、それらのガチャの中には、特殊な仕様のアイテムが含まれているのだ。
どう特殊なのかといえば、それはそのアイテムの
他のアイテムがこのゲーム相応の──と言っても、他のゲームに比べればリアリティは雲泥の差だが──グラフィックなり性能だったりするのに対し、それらのアイテムはあまりに滑らかな──それこそ、ゲームが違うかのような質感を持つのだ。
そしてそれらのアイテムは、それゆえになにかしらの特殊技能を付与されている。
言い換えると、一種のユニークアイテムだというわけだ。
……一応追記しておくと、これらのアイテムはプレイヤー間の争いを助長するためのものではない。
何故かといえば、結局のところこれらのアイテムはごっこ遊びのためのものだからだ。
端的に言うと、スペック的にはこれらの武器・アイテムより優れたものが存在し。
また単なるごっこ遊びとしても、少しスペックや質感が下がるがほぼ同じ見た目のアイテムなどが代用として実装されている。
つまり、余程拘りがなければ妥協は十分に可能、というわけだ。
そもそもの話、原作外のコラボゲームなどでキャラクターの見た目を再現する際、必要なのはあくまでもアバターとしてのそれだけ。
完璧に原作そのまま、みたいなものは寧ろ求められていないというべきか。
あるいは、仮にそうしてしまうとゲームの中から浮いてしまう、とも。
さて、話を彼女の背中のそれに戻すと。
それはいわゆるガチャの当たり、とでも言うべきもの。
それぞれのキャラクターを象徴すると言っても過言ではない、それがあればそのキャラだと誰もが認知するようなシンボル。
そういうものに定義されるそれを、彼女は偶然にも入手してしまったらしい。
そして、たまたまでも入手したのだから、これを使いこなせるようになりたいとも。
とはいえ、彼女はあくまでも一般プレイヤー。
別にその作品の再現に熱をあげるほど入れ込んでいるわけでもない。
なので、ある程度使ってみて無理そうだと思ったのなら、どこかのオークションに投げるつもりでもあったそうな。
そんな彼女だったが、ここで運命のイタズラがあった。
なんの因果か、彼女がたまたま選んだ移動先に、この
正確には、原作を同一にするキャラクターを再現しているプレイヤーが。
彼女達はそれらのキャラクターとして自然な態度を取っており、ゆえに恐らくは上級者なのだろうことが窺える。
また、他者と会話する様子からはいきなり話掛けても邪険にされる可能性は低い。
それらの話を総合した結果、彼女はその人物に──アスナさんに声を掛けることを決めた。
途中、変な行き違いもあったが……寧ろ、原作そのままから崩しても本人であることを保っているその姿に、見習うべき姿勢とでも言うべきものを感じ、同行を願い出たと。
なんとまぁ、生真面目な気質なのだろう。
そんなことをこちらに思わせる彼女は、自身の背負った
……うん、本当にオークションに流すつもりがあったのか、心配になるような姿ですね(白目)