なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・嫌な予感しかしないけど止めるには道理が足りない

 はてさて、推定シノンとしてリーチが掛かっているとおぼしきこの少女。

 一応、背負ったヘカートⅡ*1以外にシノンを連想させるような部分はない。

 声が似ているということも、ましてや言動などが似ているということもない。

 あくまで、その背負いものだけが彼女を匂わせているという状態である……のだが。

 

 

(……ナルト君の一件を思い出すなぁ)

(確か……わしが合流する前にただの人から変化した、とかじゃったかのう)

(あれをただの人、というのは憚られるけどね)

 

 

 どうにも、似たパターンで『逆憑依』となった人物──ナルト君のことを想起してしまうというか。

 ……基本的には珍しいパターンのはず、なんだけどねぇ?

 

 

(場所が宜しくないんだよなぁ……)

(あー、俺達みたいなパターンってことか?)

(一応、動きからして最新式のHMDとかを使ってるわけじゃないとは思うんだけど)

(だからって安全か、って言われると疑問が先立つってわけか……)

 

 

 そうなってくると問題なのが、ここが『tri-qualia』の中であるという点。

 一応、相手が使っているのは以前発表された新型HMDとかのような、フルダイブ系のマシンではなさそうだが……だからといって安心か、と言われるとそれも疑問である。

 

 確かに、フルダイブ系のマシンの方が『逆憑依』の発生率が跳ね上がるため危険性は上がるが、だからといって普通のHMDが安心かと言われればそれはノー……というのは、うちのキリトちゃんを見ていればなんとなく理解できるだろうというか?

 そういうわけなので、今の彼女はわりと危うい状態にあるということになるのだった。

 

 ……ただまぁ、この場において気にするべきことは他にもあったり。

 

 

(『逆憑依』が起きる大体の基準、みたいなのについて聞いたことは?)

(いや、俺は知らねぇな。キリの字は?)

(俺もあんまり。アスナはそういうの詳しいんじゃないか?)

(うーん、知らないこともないけど……正直キーアちゃんに比べたら全然、って感じじゃないかな?)

(まぁ、この中で一番詳しいと思われるのは、キーアで間違いないのう)

(……いや、別に詳しさを問い掛けたわけじゃないんだけど)

 

 

 概要だけでも聞いたことがあるか、みたいな話だったんだけどなー。

 ……まぁいいや。

 とりあえず、『逆憑依』が起きる条件とおぼしきものに、()()()()()()()()()()()()()()()()()可能性が高い、というものがある。

 

 ここで言う『危機』は主に生命の危機を指しており、例えばココアちゃんの元となった少女は、はるかさんの言葉が正しいのであれば余命を気にする必要のあるレベルの重病人であった。

 また、こっちは特殊な例になるがかようちゃんなんかはもろに生命の危機を間近にしていたことが、彼女達の証言により明かされている。

 

 ……この辺り、『逆憑依』する前の記憶が判然としないことも多いために余り検証は進んでおらず、絶対にこれが条件だとは言い辛いところもあるが……。

 まぁ、裏付けが取れるケースにおいて、それが占める確率が高いことは嘘ではない。

 

 また、『逆憑依』が起きやすくなる例として、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というものがある。

 

 これに関しては、琥珀さんが唯一人為的に『逆憑依』を起こせた、という点からの逆算・およびそれを前提としての検証の結果判明したことなのだが……。

 例えば、以前のその人が清廉潔白な人物であったのならば『逆憑依』によって現れるキャラというのも清廉潔白であることがほとんど、という形になる。

 

 無論、絶対にそうなるというわけではないのは、いわゆるレベル4──自身とキャラが噛み合わないというパターンがある以上明白だが。

 それでも、大半の『逆憑依』において()()()()()()()()が選ばれる、というのは間違いではない。

 

 ……それらの情報を総合すると、この子もしかしたら()()なのではないか、ということになってしまうのだ。

 

 

(そう、というと?)

(……作中のシノンと同じだとすると、もしかして正当防衛で誰かを……)

(そして、それを知った誰かに付け狙われている……みたいな可能性もあるかも)

(……いや、流石にそりゃ論理が飛躍しすぎじゃねぇか?)

(まぁね。でもまぁ、気にして見といた方がいいかも、ってのは本当だよ)

 

 

 変に突出する癖があったりしたら特に。

 ……生き急いでいる、いや()()()()()()()みたいな兆候が見えたらアウトである、みたいな感じというか?

 もし仮にそうなったら、寧ろ『逆憑依』を止める方が宜しくない。

 そういう裏事情がなく、たまたま何処と無く似ているために『逆憑依』が発生し掛かっている……という形なら止めた方がいいが、もし現実で問題が起きているのなら成り行きに任せた方が良い……という扱いになるのだ。

 

 そこら辺の見極めをしっかりしていこう、という注意喚起であると話を纏め、念話を終了する私である。

 

 ……うん、念話だったんだよね、今さっきまでのやりとり。

 チャットだと例え表に出さずともなんとなくなにか話している、ということを察せられる可能性があるためにこっちを選んだんだけど……。

 

 

「……ええと……」

「どうかしましたか?」

「え、ええと……なんでもないです……」

 

 

 ……なんでかな、この子こっちがなにか裏で話してる、みたいに気付き掛けてる気がするんだけど。

 これはあれか、既に『逆憑依』が発生し掛かってるとか?

 あれだ、クラインさんとアスナさんとキリトちゃんという関連キャラが揃っているから、そういう反応が進みやすくなってる……みたいな?

 

 うーん、このまま先に進んでもいいものか……。

 とはいえここでいきなり引き返すのも、それはそれで宜しくなさそうだ。

 こっちを気にしつつも歩を進めることを止めない少女の姿に、私はなんともいえない気分でため息を吐き出したのだった──。

 

 

 

 

 

 

「火力たっか」

「その分扱いが難しいんですよね。今の私だと他のサイドアーム*2を持ち込むのは難しいですし」

 

 

 一先ず『逆憑依』云々の話は置いておくことにして、彼女の今の動きを確認することにした私たち。

 

 アドバイスをするにしても、彼女がどれくらい動けるのかを見なければわからない……。

 という建前で始まった戦力検分は、少なくともこんな低階層で振り回すような武器じゃない、というヘカートⅡへの評価に終始してしまう形になったのだった。

 

 いや、塵も残さず消し飛んだんですけど敵キャラ。

 確かにアンチマテリアルライフルだし、並大抵の敵だと相手にならないだろうなぁとは思ってたんだけど……。

 

 

「まさかレアポップのコワッパが跡形もなく消し飛ぶとは……」

「確かアイツ無駄に防御が高いから、殻に閉じ籠ってる間はまともに戦闘にならねぇってタイプだったよな……?」

「殻ごと吹っ飛んだぞオイ……」

 

 

 ……うん、みんなが驚愕しているように、以前突然遭遇した結果酷い目にあったレア敵・コワッパの防御ごと吹っ飛ばすという無茶苦茶を達成したのである。

 

 いやまぁ、重量などの問題から寝そべって狙撃するしかない──咄嗟の取り回しが悪い、という欠点があるにしたって、そんなデメリットを吹き飛ばすような軽快すぎる威力だというか。

 しかもアンチマテリアルライフルなので、有効射程はおよそ二キロ。

 ……ほぼ一方的に攻撃できる距離であるため、近距離が疎かとか言われてもデメリットになってないというか?

 

 ……まぁ、本人が言う通りどうにも武装枠を相当圧迫するようで、今の彼女だとこいつを背負ってる限り狙撃しかできない……みたいな感じになっているようだが。

 一応、無理をすれば中腰で撃つこともできるらしいが、その場合は命中率はお察しになるとのこと。

 

 ……原作のシノンはわりとSTRを鍛えているらしく、いわゆる竹槍戦法*3も形にはなるみたいだが、ここでの彼女はそうはいかない……ということになるようだ。

 まぁ、その辺りの話を含めたとしても、その火力と有効射程の時点でお釣りが来る気もするわけだが。

 

 

「でも、折角ならもっと上手く使いたいって思うじゃないですか?……そう、どんな場所でも即座に狙撃体勢に移れるくらいには」

「まぁ『tri-qualia』はセンス重視だから、その辺りはとにかく練習するしかないね」

「……ですよねー」

 

 

 はぁ、と肩を落とす少女。

 まだまだ道は長い、と言った感じである。

 

 ……ただまぁ、こうしてみんなの前でヘカートを使ったことで、やっぱりこれを手離すのは惜しい……みたいな気分にもなったようだが。

 気持ちはわからないでもない、あれだけ軽快に敵を吹っ飛ばせるなら、ストレス発散とかの方面でも役に立ちそうだし。

 

 

「ストレス……」

「おっと、なにかわけありだったり?とはいえリアルの話はご法度だから、ここは聞き流しておくねー」

「あ、はい。ありがとうございます……」

 

 

 ……うん、失言だったかも。

 さっきまでの様子が嘘のように『スンッ……』となってしまった少女に、思わず冷や汗を垂らす私である。

 周囲の面々の視線も痛いし、これはやらかしてしまったんだぜ☆……いやゴメンて。

 

 

「と、とりあえずそちらの現状は把握しました。攻略の上で邪魔になる可能性はゼロなので、今日は登れるところまで登って見ませんか?」

「あ、はい。宜しくお願いします」

 

 

 どうにか話題を軌道修正し、ふぅと額を拭う私。

 そうして、私たちは本格的にアインクラッドを攻略し始めたのだった……。

 

 

*1
ギリシャ神話の女神である『ヘカテー』の名前を持つ、フランスのPGMプレシジョン社が開発した狙撃銃。同社の開発する『切り札(ウルティマ・ラティオ)』シリーズの中では最大となる『12.7mm弾薬』を使用する為、その破壊力はかなりのもの。有効射程は1.8km、発射速度は825m/s。大きさは大体1.3mほどであり、一応持ち運びできなくもないサイズ

*2
副兵装。メインの武器とは違い、常に使うわけではなく特定の状況においてのみ使う武装。近距離用のナイフなどが該当する。現在の少女は重量オーバーの為、ヘカート以外の装備がない状態

*3
長物≒ライフルを小脇に抱えた状態で突撃し、その状態でゼロ距離射撃を行う戦法。見た目が竹槍を構えて突撃する姿に似ている為こう呼ばれる。正確には『スコープを覗かずに撃つ』ことを指し、そう言った形で前線に突撃してくるスナイパーを『凸砂』とも呼ぶ。本来のスナイパーのスタイルからは遠く離れた動きであり、まず現実的にやれるものではない戦法でもある(まずそんな長物持って動き回れない)

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