なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……さっきも思ったんだが、SAOのモンスターだけが出てくるってわけじゃねぇんだな」
「まぁ、それだとSAOのゲームやればいい、って話になっちゃうしねー」
突撃してくるドスファンゴ*1を回避しながら斬りつけるクラインさんに、小さく苦笑を返しながらとどめの一撃を脳天にぶちかます私。
哀れなドスファンゴはその一撃によって体力を全損し、特徴的なエフェクトを残しながらポリゴンの塊となって霧散していったのだった。……そこはSAO仕様なのね。
現在私たちが居るのは第五階層。
ゲームなどでは遺跡をモチーフにした作りとなっており、クォーターポイントほどではないものの五階ごとの区切りとなる階層であることも相まって、ここから難易度が少しずつ上がっていく仕様となっている。*2
それはここ『tri-qualia』でも変わらないようで、先ほどまでの階層では雑魚モンスターといえば単なるブルファンゴだったのだが、ここではドスファンゴがそれなりの頻度で湧いてくるようになっていたのだった。
まぁ、流石にモンハン本編ほどタフではないのだけれど。
「急所攻撃とかで十分対処できるからな」
「
仮にできるとすれば、一時期環境を無茶苦茶にした
……そう返したところ、いまいちピンと来なかったのか「アレって?」と聞き返してくるキリトちゃんである。
「えーと、アイルーっているでしょ?二足歩行の猫の」
「ああ……いるな。それが?」
「あれって登場したのが
「……そりゃまた、なんで?」
「ランダム性が幾つかあったみたいだよ?毛並みとかカラーリングみたいな戦闘とは関係ない部分から始まって、覚えるスキルとかどういう行動を優先するか、みたいな部分まで」
なので、その辺りの解説を休憩がてら行うことに。
語るのはモンハンのマスコットであるアイルー、その中でもハンターと一緒に戦ってくれる相棒のような存在であるオトモアイルーについて。
彼らがハンターに付いてくるようになったのはPSPにおける第三作、モンスターハンターという作品が明確に跳ねた記念碑のような作品とも言える『モンスターハンターポータブル2ndG』。*3
国内だけで四百万本売り上げたこの作品において始めて、アイルーはハンター達と共に戦場で戦うようになったのだが……その当時はまだまだシステムとして荒削りなものであった。
具体的には、その時は基本囮にするのが基本戦術……みたいな感じだったというか。*4
「今みたいに積極的に攻撃に行ったりしてくれなかったみたい。猫らしく気まぐれだったとか?一応、性格によっては攻撃を優先してくれることもあったみたいだけど」
「……性格が違うとどうなるんだ?」
「まったく攻撃せずに採取に精を出したり回復だけしてくれたりとか?」
「……確かに囮にしかならなさそうだな」
現状の最新作である『ライズ』では戦闘も採取も回復もなんでもやってくれる辺り、その違いは明白と言えるだろう。
そりゃまぁ、モンスターからのターゲットを分散するくらいにしか使えない、なんてことを言われてしまうのも宜なるかな、というか。
無論、それは性格やステータスの吟味を怠った結果、というのも間違いではない。
何度も連れ歩き成長させることで、攻撃の際にモンスターから素材を入手するようになったり、小型のモンスターであれば撃退できるくらいには強くなったりもするのだ。
あとはまぁ、なんだかんだと言っても猫なので、見てて癒される……みたいな効果もあったそうな。それに関しては今も、だが。
まぁともかく、どちらかといえばソロで遊ぶ際に場面を賑やかしてくれる相手、みたいなものだったのは確かなのだろう。
……それだけならまぁ、大した話ではないのだが。
PSP全盛期である当時は、同時に
「問題?」
「ある意味キリトちゃんにも関わりがある*5かな?──チートだよ、チート」
「……うん?今もそれはある程度問題になってないか?」
「当時は特に知識の薄いような人でもすぐに手が届く、ってくらいに一般化してたんだよ」
主にPSPが高性能のわりに改造しやすかったから、という所が大きいとは思うが。*6
……まぁともかく、当時のモンハンはチート問題とも付き合う必要性のあったものだ、ということは間違いあるまい。
無論、酷くなるのはこれから先──
ともあれ、当時のモンハンチート界隈で有名になったもの──被害が一般層にも広がりやすいものの一つに、アイルーを利用したものがあったことは確かな話。
「……ん?どういうことだ?」
「さっきアイルーは配信できる、って言ったでしょ?……要するにこれ、改造アイテムの配信と方向性的には同じことなのよね」
「あっ」
……そう、この話においてアイルーが問題になるのは、それが他者に受け渡せるものだったという点。
言い換えると、ステータスを改竄された──チートを施されたアイルーを、簡単に他者に受け渡せてしまったという部分にある。
そう、単純なステータスの改竄程度であるため、他のプレイヤーのデータに移動させたとしても特に問題なく機能してしまうのだ。
チートと言うのは原則、それを使用するプレイヤーがなにかしらの特殊な手段を用いる必要があるもの。
言い換えれば『道具がなければできない』ことなのだが、これに関しては他者から貰うという形でその条件を容易く満たせてしまう手軽さこそが問題だったのだ。
ハンター本人のステータスを改竄するより遥かに簡単に行えるこの行為は、それゆえにそれが問題であると気付けない人間にとって『寧ろ何故使わないのか?』と考えさせてしまうほどのものだったわけである。
「その結果発生したのが、攻撃力の値をバカみたいに上げてどんなモンスターでも一撃で倒せるようになった
「うわぁ」
そうしてそのアイルーに付いた名前が、悪魔猫・ないし悪魔アイルー。*8
当時のとある掲示板においては、おおよそ尋常な生き物とは思えない姿として例えられるコピペが出回るようになったとされる、おぞましきチートの産物である。
……この話が何故話題になったのかと言えば、やはりその導入の容易さにあるだろう。
友達から貰えばそれですぐに使えるのだから、それこそ導入に対する心理的抵抗さえ越えてしまえばなんの準備もいらない。
通常のチートが一応『そういうツールを自ら進んで使う』という、ある種の物理的抵抗を越えることを必要とすることを思えば、当時のプレイヤーの中でこれを使わずに済ませられた者達はある意味鋼の精神の持ち主だったんじゃないか、とすら思えてくるレベルだ。
「そ、そこまでか……?」
「当時はチートに対する認識が今ほどしっかりもしてなかったしね。やらない方が悪い、くらいに考えてた人も結構多いんじゃないかな?」
「えー……」
その辺りを語り出すと、とある政治家さんにも飛び火するのでこのくらいにしておく*9けど……まぁともかく、今から見れば明らかに犯罪になるような行為でも、それが『犯罪である』という認知が進んでいなかった当時ならその広がりようも……というわけで。
こう考えると、今の時代はチートとか改造とかに対する認知が進んだんだなぁ、と思わないでもない私である。
……いやまぁ、代わりに内部データの解析みたいなグレー?ブラック?みたいな方向に進んでいる人もいるようなので、その辺りどうなんだろうなぁとも思うのだが。
……とまぁ、ここまで語り終えたことである程度休憩できたので、チート云々の話は一度打ち切るとして。
いやほら、あんまり深掘りしてると私たちとチートの境界って?……ってなるから宜しくないし?
「……?えっと、もしかして
「ああいや、キリトちゃんとか存在が諸にそうだから」
「……ああ、そういえばビーターってそういう意味でしたね」
不思議そうに首を捻る少女にごまかすような笑みを返しながら、私たちは遺跡の奥へと進んでいくのだった……。