なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「アリだー!?」
「なんてこった、このゲームは地球防衛軍だったのか……」
「言ってる場合か!?滅茶苦茶湧いてきてるぞこいつら!?」
はてさて、第五層のボス部屋にやってきた私たち。
本来ここのボスとなるのは『フスクス・ザ・ヴェイカントコロッサス』──アインクラッドを第一層から書き直す、という名目で作られた『ソードアート・オンライン プログレッシブ』において登場した巨大なゴーレムのはず、なのだけれど。*1
原作通りでは面白くないということなのか、この層のボスとして選ばれたのは巨大な蟻の一群であった。
……そう、巨大な蟻の
なんとまぁ恐ろしいことに、本来ゴーレムが遺跡と一体となって襲ってくるはずのこのフロアは、今や巨大蟻の巣穴として増改築されてしまっているのだ。
至るところに横穴の空いたこの広間において、死角を消すことは不可能に近い。
……というか、出てくるのゴーレムだと思ってたせいで普通に真ん中まで進んじゃったからボス広間から退避もできないし。
「……ボスを倒さねぇと出られねぇってのは、どこのゲームも同じなんだな」
「なんでお前らそんなに余裕そうなんだよ!?」
「いやまぁ、既に似たようなことやったことがあるから……」
「はぁ?!」
とはいえ、焦っているのはクラインさんくらいのもの。
それが何故かと言えば、似たようなギミックのダンジョンに関しては既に体験しているから、というところが大きい。
無論、この場合の似たようなダンジョンというのは原作での
「……きぎょうだんじょん???」
「うむ。企業が経営してるダンジョン、みたいな感じのものでね。ダンジョン・コアの性質からその企業の主要取り扱い商品に因んだモノに変化するのが特徴なんだよね」
「……????」
おっと、クラインさんが宇宙猫と化してしまった。
蟻がいっぱい湧いているこの状況下においてはその行為は自殺志願者となにも変わらないため、適度にフォローしておく私である。具体的には影分身じゃい!
「あとはまぁ、コイツがいる時点で単なる数の暴力に勝ち目はねぇ、って部分も少なくねぇな」
「……いや、そうは言っても向こうの飛ばしてくる蟻酸とかどうすんだよ……?」
「肉の盾作戦だ!ぐわーっ!!」
「悲鳴をあげながら突っ込んで行った!?」
巨大蟻がなんぼのもんじゃい、ということで無数に増えて群がりに行く私である。……蟻が逆に数に集られるとはこれ如何に。
あとはまぁ、地球防衛軍の蟻と言うと蟻酸を飛ばしてくるもの*2だが、それに関しては私が人の壁になることで防ぐとしよう。
滅茶苦茶痛いがそれで済むのなら安いものさ!……だからここでのあれこれはマシュには他言無用な!
「……なんでまた?」
「『何故せんぱいは私という盾がありながら盾役を率先して志願するのですか!?』って怒られるから」
「そこは素直に怒られとけよ」
「ふぃー、やーっと終わった……」
「結局巣穴の蟻達を全滅させるまで終わらなかったな……」
開いた扉を前に、一つ息を吐く私たち。
都合三十分ほどに及んだボス戦攻略は、超人海戦術による飽和防御を軸として展開し、見事に終幕を見せた。
……のはいいのだが、難易度高過ぎやしないかとちょっと渋い顔になる面もあり。
「明らかに多すぎたからなぁ、敵の数が」
「うーん、もしかしたら攻略の仕方をミスったのかもしれないけど……そうじゃなかったら確実に難易度の調整ミスだよねぇ」
「攻略の仕方?」
「ああうん、なにか条件があったのかもって」
「見付けられなかったからゴリ押したってことだね」
まぁ、ゴリ押しとは言っても比較的穏当な()ゴリ押しだったのだけれど。
本気でゴリ押すならアスナさんが大神使どーん、とかになってるだろうし。
……ともかく、今回のフロアボスの攻略法になにか別解があったのではないか、という疑問が湧くのは当然の話。
何故かといえば、こんなゴリ押しが効くの私たちしかいないからである。
いやだって、ねぇ?
向こうより量的に上回る存在が、相手の動きを逐一止めながら仕留めていく……とか、それ単なる弱いものいじめじゃんというか。
そしてなにより、そういう戦い方をしておいて三十分近く掛かってる辺りが問題というか。
戦闘において、数というのはとても有力なアドバンテージである。
それを最大限に活かした上でこれだけ時間が掛かったというのだから、常識の範疇で用意できる戦力であれば逆に擂り潰されてるはず……となるのはなにもおかしくないだろう。
言い換えると、私みたいなのがいないとそもそも戦場に立つ前に振り落とされる可能性大、というか?
仮にこれが実際のアインクラッドで用意されたボスだった日には、みんな五層で死亡していたところだろう。
閉じ込められた人員全員突っ込んでも足りてないどころか、先ほどの私の動きに合わせるならかなりの人数を壁として使い潰すこと前提になるわけだし。
そういう意味で、調整をミスっているかこっちがギミックを満たさないまま──本来負けイベントであるものを無理矢理押し通ったか、ということになるのだ。
「具体的には?」
「あからさまに敵の数が多くて削りきることを想定してないっぽいから、あるとすればそれらの敵の数をギミックで大半吹き飛ばせるか、はたまたこのボスをスルーして先に進む方法があるか。あとはまぁ、一匹だけ司令塔──女王蟻みたいなのがいて、それを倒せば終わるパターンとかかな?」
「あー、それっぽい……」
まぁ無論、これくらい乗りきれると運営側が想定して鬼畜難度を投げてきた、という可能性も決してゼロではないわけだが。
……ともかく、無理矢理攻略してしまった以上その辺りを詳細に検証するのは不可能に近い。
なのでさっきのボスのことは一先ず忘れ、上階の転移門を起動させに行くことに。
その辺りの処理は特に詰まることもなくあっさり終わったため、一先ず先の階層を試し見しに行く私たちである。
「ええと、確か本来の第六層はパズルモチーフの場所なんだっけ?」
「そうだな。ほぼ扉にパズルが設定されていて、解かないと使えないなんてことになっているくらいにパズルまみれの場所のはずだ」
私の呟きに、キリトちゃんが首肯を返してくる。
正規ルートにパズルが仕掛けられているとかなんとかで、とにかくパズルをさせることに心血を注いでいるような場所だとかなんとか。
さて、その情報を前提として、改めて私たちの目の前にある第六層の大地を見てみよう。
「……グラブルかな?」
「もしくはALOか?……少なくとも、SAOでこんな立地を出されたら堪ったもんじゃないな」
……うん。
なんとまぁ、一応アインクラッドの中のはずなのにも関わらず、そこに広がるのは一面の空と、そこに点在する幾つかの浮島達。
グラブルを思い出したのも当たり前の話で、こんな風景はそうそうお目にかかるものではない。
……というか、本来SAOでは底の見えない状態での落下はほぼ墜落死と同義。
流石の茅場さんもそんな鬼畜なフィールドは作っておらず、ゲームがバグった結果現れたホロウ・エリアでもないと見られないエリア構造なのである。*3
そりゃまぁ、空を飛ぶことを前提としたALOのフィールドか、とぼやきたくもなるというか。
いやまぁ、そこら辺の話を置いとくと、普通に景色はいいし見張らしもいいしで中々よさげなフロアに見えるんだけどね?
──不意の落下で確実に死ぬ、ってところを抜かせば。
本来墜落死はアンイクラッドの外に身投げした時しか発生しないものなのだから、それが単純な攻略の時点で発生しかねないフィールドなんぞあってたまるかというか。
それこそ、ゲームでしか出せないフィールドだし、内部的には一度も落ちずに渡りきった扱いしかできないだろう。
色んな意味で
「……で、アスナさんはなにやってるんです?」
「え?えっと……私たちが落ちるのは嫌だけど、どういう仕様なのかは確かめておかないとって思って……」
「だからって大神使を実験台に使うのはどうかと思うよ……」
心なしか泣いてるような気がする、というか。
……大神使の大きさは下手なビルよりも高いため、それを利用してどれくらい底が深いのか確かめているということなのだろう。
それはいいのだが、どうも底の判定が存在しないのかあの巨体があっという間に下に落ちていく姿を見せられては、こっちとしても微妙な顔をするより他ないだろう。
酷いっすよ姉御、とばかりに落っこち続けていく大神使君には同情を禁じ得ない。
……まぁ、彼の尊い犠牲のお陰でわかったことも多いので、そういう意味では仕方のない犠牲ともいえるかもしれないが。
ともかく、このフロアにおいて武器やアイテムの落下による紛失は、普通に消滅するということで間違いなさそうだ。
大神使はユニーク枠であるため、落下して消滅してもアイテム欄?から完全に消滅するわけではないみたいだが、他のアイテムの場合は普通に無くなると見て良いだろう。
……つまり、迂闊に武器とかを吹っ飛ばされると普通に装備をロストする羽目になる、と。
「うーん、ここもなにかしら攻略フラグがあるのか、はたまた純粋に落ちないように頑張れ、ってことなのか……」
「なんかここまでのあれこれを見てると、頑張って落ちるなって言われてる気がする……」
「確かに」
なんでこんなに殺意が高いのか。
思わずそんな愚痴を溢しつつ、一先ず休憩のため第一層に戻る私たちなのであった──。