なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・なにかしら制限とか必要なんじゃないですかね

「……あれ、そのまま開放しておいてよかったのかのぅ?」

「とはいっても、封鎖とかできるもんじゃないからねー……」

 

 

 目の前に広がる浮島から、逃げるようにしてアインクラッドの外に出てきた私たち。

 一先ず休憩、ということで侑子の店にやってきたのだけど、そこで『あのまま第六層を誰でも入れるようにしておいて良かったのか?』……という議題が持ち上がることになったのだった。

 

 一応、私としてはあのままでもいい……というか、あのままにしておくしかないとは思っている。

 これが明確にアインクラッドそのものであるならばともかく、現状の彼処は単にデータとして再現されただけの場所。

 

 ゆえに浮島から滑り落ちたとて、単に(ゲーム的に)死亡したあと近くにリポップするだけだろう、と考えられるからである。

 まぁ、ゲームだから死んでもいい、というのは大概アレな考え方と言うか、元々デスゲームだったものを再現したフィールドで死ぬのは意味が違うだろうとか、色々反論も思い浮かばなくはないのだが……。*1

 

 

「少なくとも試したい、とはならないでしょ。あれは創作だ現実じゃない、と分かってても『もしかしたら』って感覚は消えないでしょうし」

「まぁ、それゆえに誰かに煽られる可能性もゼロではねぇけどな」

「気にするとしたらそこだよねー……」

 

 

 真っ当な感性の持ち主であれば、恐らくアインクラッドでふざける、なんてことはできないはず。

 ……無論、ハセヲ君の言う通り、それゆえに他者を煽る人間も現れそう……というなんとも言えない話もあるのだが。*2

 

 

「ええと……すみません、一ついいですか?」

「ん?なにか問題でもあった?」

 

 

 そうしてうーん、とみんなで唸っていると。

 同行者である少女ちゃんが、おずおずと手を挙げていた。

 なにやら疑問?でもあったようで、こちらに声を掛けてきた彼女に私はその内容を問い返したのだけれど……。

 

 

「その、なんで皆さんはあのフィールドについて難しそうな顔を?えーと、キーアさんの言う通り、落ちても単にリスポーンするだけなんですよね?」

「 」<ピシッ

「それと、なんだか皆さんナチュラルに食べてますけど……いつの間にそんなエモート増えたんです……?」

「 」<ピシッッ

 

 

 ……oh。

 いや……あれだな。

 

 

(すっっっっっかり普通に仲間(逆憑依)だと思ってたなこれ???)

(そういわれてみると、まだこやつは可能性の段階じゃったのぅ……)

 

 

 表では苦笑を浮かべつつ、脳内では念話を通じて他の面々と会話する私。

 

 ……うん、うっかりしてた。

 そういえばこの子、シノンになりうるって王手が掛かってるだけであって、厳密にはまだ『逆憑依』でもなんでもないんだった。

 そりゃまぁ、私たちがなんか深刻そうに話してることにびっくりするのも仕方ないわ。……ついでになんか美味しそうにパフェとか食べてることにも。

 

 っていうか、そもそもの話その前のボス戦の時点で『なにかおかしいな?』とか思っていてもおかしくはないだろう。

 実際、あの戦闘での私の動きってあからさまにおかしかったし。

 ……いや、彼処までおかしい動きをしたのは第五層が初めてであって、そこまでの戦闘では対して疑問に思っていなかった可能性の方が高いけど。

 

 でもまぁ、時々空中歩行(スカイウォーク)してるサンジ君とか、「レア泥率アップ効果とかあったよな?」とか呟きながらデータドレインしてるハセヲ君とか、あとさっきの大神使ぽいぽい放ってたアスナさんとか。*3

 そんな感じで私以外の面々もワケわからんことしてたから、ちょっと判別が遅れたのかもしれん。

 ……でも流石に第六層の躊躇はそれらとは違うので目についた、と。

 

 うーん、とはいえもし彼女がこっちの思う通りシノンになることが定められた存在なら、これらの話は遅かれ早かれ知ることになるもの。

 ゆえに別に知らせても構わないかなー、と思わなくもないんだけど……。

 

 

(ただ、起こってないことを先に想定して動くと肩透かしを受ける、ってのもこの世界の常なんだよなぁ……)

(……ああ、なんだからしくないとは思ってたけど、その辺り気にしてたのか)

(しないわけにも行かないでしょ、ただでさえ口は災いの元なんて風に言われるんだから)

(あー……)

 

 

 むぅ、と脳内でため息を一つ。

 生憎、この世界において未来視というのは信用ならざるモノの一つ。

 いやまぁ、抽象的な予言なら問題はないのだけれど、はっきりと明言するようなものは信憑性がどうにも、というか。

 

 流石に桃香さんとかマーリンとかのレベルになればあれだけど、あれは同時に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からこそできること。

 言い換えると、ピンポイントで一つの未来だけ見ている、みたいなパターンでは信頼性がまっったく担保されないのである。

 まぁ、その辺りは『未来を視ることによる未来への影響』という、本来見逃すべきではないものがある以上仕方のない話なのだけれども。

 

 ともかく、今の状況で彼女に話を明かすのが正解なのか不正解なのか、微妙に判別しきれないのは確かな話。

 ゆえに、他の面々にも尋ねてみるわけなのだけれど……結果はおおよそ半々、という形になったのだった。

 

 

(こやつが迷うような判断の場合は基本的に迷わせ続けた方が良い)

(今までの経験上、ってやつだね。私もそっちに賛成かな)

(俺は反対かなぁ、遅かれ早かれ起きることってのは間違いなさそうだし、だったら予め教えておくのは無駄にならないと思う)

(俺もキリトに賛成だな。こういうのはうだうだしてるだけ無駄だ)

 

 

 キリトちゃん達の言い分はこんな感じ。

 ミラちゃんとアスナさんは伝えない方がいいだろうという感じで、反対にキリトちゃんとハセヲ君はさっさと伝えるべき、というスタンスのようだ。

 

 

(んー、僕的には微妙かなー。最初キーアさんも言ってたけど、『逆憑依』の条件の話を思うと相手の事情がわからない状態で先に話を進めるのはどうかと思う)

(私は反対だな。『逆憑依』の目的・意義が考察通りであるなら、さっさと伝えてその発生を促した方がいいだろう)

 

 

 すーちゃんとさーちゃんの二人は、思考の中まで女の子っぽくする必要はない……ということなのか、普通に男口調で自身の主張を語ってくる。

 それによれば五条さんの方は伝えない方がいい、夏油君の方がさっさと伝えるべきというスタンス。

 

 ただし先の四人が『私の話すこと』という面に着目しているのに対し、こっちは『伝えられる相手の事情』の方を気にしている、という部分が違いとなるか。

 

 

(うーん……俺としてはなんとも。つーか起きるか起きねぇかも分からねぇ段階で話すことなのか、って感じだったんじゃねぇのか?)

(俺としては伝えておくべきだと思うぜ。それによって気を付けるべきモノについても思考が及ぶようになると思うしな)

 

 

 で、最後の二人。

 クラインさんとサンジ君の二人はこんな感じ。

 自分が『tri-qualia』を通して『逆憑依』となったクラインさんとしては、ここで『逆憑依』が起きるかどうかについて懐疑的。

 そしてサンジ君の方は、そもそも『逆憑依』は起きるということを前提とし、その上で気にすることが他にあるのではないかという主張であった。

 

 ……確かに、今さっきまで私たちが気にしていたこと──あの浮島をそのままなんの警戒もなく進んでいいのか?

 という部分を説明しようとすると、最低限この『アインクラッド』が不安定な──本当に単なるイベントステージなのか、という懸念を抱いていることを伝えなければならない。

 それは同時に、その疑念を抱く理由となったものである私たち『逆憑依』についての話もした方がいい、という話に繋がるわけで……。

 

 ただ、現在そう(逆憑依に)なっていない彼女に伝えることで、なにかしら変な変化を招いてしまう可能性もまた否定はできない。

 そう考えると、やっぱりこの意見の結果──割れたそれが実情を示している、ということになるのかもしれないのだった。

 

 そんな風に脳内会議を経た結果、態度にも思わず唸る、という形で反映されてしまったわけなのだが。

 それを見た少女が、何事かを呟こうとしたタイミングで──、

 

 

「おーい!ニュースだニュース!!」

「え、なんだよいきなり」

「いきなりレイドボスが出てきたんだよ!例の最新階で!」

「はぁ?」

 

「…………!」

 

 

 店内の離れた席。

 そこに座る相手に駆け寄ってきた別のプレイヤーが、なにやら興奮した様子で彼に声を掛けている。

 耳を傾けてみれば、どうやら『アインクラッド』の第六層で、突然レイドボスが発生したとのこと。

 

 先ほどまで私たちの話題となっていた場所でもあるそこに発生した異常、はたまたイベント。

 そのタイミングの良さ、もしくは悪さを見るに、全く関係のない──意味のない話だとは思えない。

 

 他の面々と顔を見合わせた私は、一先ず直前までの話を棚上げし、再び第六層へとトンボ返りすることになったのだった。

 そして私たちはそこで……。

 

 

「ビィイイイイイイイイイイイィィィィィィッ!!!!」

「 」

「 」

 

 

 叫ぶ小さな竜の巨大な姿?を見付けることになったのであった。

 ……まさかのオイラァ!?

 

 

*1
キリト「死んでもいいゲームなんて温すぎる、みたいな?」キーア「よりにもよって君が言うのその台詞?」

*2
いわゆる度胸試しの類い。成否があやふや、もしくは否の方に片寄っている物事にあえて突撃することにより、ビビってないと示す若者の無謀

*3
二年後にサンジが覚えていた空中移動、それが『空中歩行(スカイウォーク)』である。別名だが恐らく原理的には六式と同じだろう。『データドレイン』の方は相手のデータの書き換えの際、その時に奪ったデータをアイテムという形で放出しているとも考えられる

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