なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
うーん、BGMまで例のちょっと気の抜けるやつになってる……。*1
思わずそんな現実逃避をしてしまう私たちの目の前で飛んでいるのは、見上げるほどに巨大な竜の姿。
……いやまぁ、作中の表現に倣うならトカゲ、とでも言うべきなのだろうか?
「オイラはトカゲじゃねぇえええぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「ひぃーっ!!?滅茶苦茶五月蝿い!?」
まぁ、トカゲ扱いは彼にとっての逆鱗、こうしてぶちギレボイスが返ってきたわけなのですが。
……はい、ここまでの描写でわかると思いますが、現在私たちが見上げる先にいるのは、アスナさんの大神使に迫るほどの大きさに巨大化したビィ君なのでした。
──ここにルリアちゃんが居なくて良かったな???
「確かに、彼女までいたらもう完璧に『るっ!』の世界でしかないな……」
「そうなったらこっちもパロディモードで対抗するっきゃねぇからな……」*2
「できるかなぁ……?」
濃度が違いすぎる気もするが。
……え?そもそもギャグにギャグを重ねようとするな、と怒っておけって?それはそう。
ともかく、唐突にアインクラッドに現れたレイドボス、その正体が巨大ビィ君であることがわかったのは僥倖。
……なのだが、それはそれとして問題が山積みなのも間違いではなく……。
「ええと……さっきからなんの話を……?」
「ごめんね、詳しいことはまだ説明できないの。でもこれだけ覚えておいて。──二千十七年エイプリルフール、初めて本家プレイヤーの前に姿を現したビィ君。その時の彼の最大体力は、当時のプレイヤーがまともに削りきれるような桁ではない
「……はい?」
こちらの様子に困惑しきりの少女に、私は現状を知らしめるために一つの事実を教える。
この『tri-qualia』にはレベルシステムが導入されていない、という話は以前にもしたと思う。
それゆえ、このゲームにおける武器防具のステータスは、通常のMMOより遥かに重要なものとなっている。
例えば相手が防御値を持つ場合、それが例えどれほど低い数値であろうとも手強い存在に変化してしまう……という具合に。
使われている計算式の都合上、例え数値が『1』違うだけでも最終的なダメージに大きな差が出てくる……みたいな感じというわけだ。
以前戦ったコワッパが手強い敵扱いだったのも、本来防御値が『1』あるだけでもダメージ軽減率としては破格のモノになる……という話であるところに、実は原作と違って『からにこもる』が防御アップ行動として別個に用意されているから、というのが大きかったりする。
その際の防御値の上がり幅は、デフォルトが『1』のところなんと『3』。
……たかが『2』上昇しただけと思うかも知れないが、驚くなかれ防御値は『1』あればおおよそ三桁のダメージ軽減、『2』ならば四桁、そして『3』なら五桁のダメージ軽減を行うというとんでもスペックなのである。*4
……まぁ、これは攻撃値の補正を全く受けてない時に発生するダメージについての簡易的な軽減率なので、実際には装備を整えればそこまで酷いことにはならないのだが。
ともあれ、まともにやると五桁ダメージ軽減してくるような相手を文字通り消し炭にした、少女のへカートⅡの威力もわかろうというものである。
で、それを前提としたうえで言うのだけれど。
防御値、および攻撃値の補正がとかく大きいこのゲームにおいて、体力というのは逆に少なめに設定されている。
何故かと言えば、レベル制でないためにダメージが全然伸びないから、というところが大きい。
装備による補正以外でダメージを大きく伸ばすことが不可能に近いため、膨大な体力をちまちま削ることになるとゲームとしてとんでもない苦行に化けてしまうからだ。
適正装備帯で挑むことが推奨されるというだけで、やってることはレベル上げの代わりに装備ドロップを狙うようになっただけ、とも言えるわけだが。
無論、どれほどいい装備を持っていようが『当てられなければ意味はない』のも確かなんだけど。
「まぁ、たまにいるマゾゲーマーは装備補正を調整してダメージ最小・受けるダメージ即死級でボスを攻略……みたいな頭のおかしいことしてたりするんだけど」
「えぇ……」
本人のプレイングこそ一番の武器、みたいな感じだからやれるやつはやれる……みたいな?
例え与えるダメージが『1』だろうが、それこそ目にも止まらぬ速度で攻撃できるならDPS的には問題ない、とも。
……まぁ、そういうのやってるのってどこぞの鳥頭の人とか、そこのキリトちゃんみたいな変態ゲーマーくらいのものなわけだが。
ともかく、そんな変態染みたことをするのは一部のゲーマーだ、ということを前提においたうえで、あのビィ君のステータスを解析してみよう。
それによれば、彼の総体力は四万。……流石に原典の四億とか言う頭のおかしい数値ではなく、その一万分の一に低下しているが……代わりに、防御値がおかしい。
現在第六層だから、ということなのかその防御値は『6』。
……単純に考えると、攻撃補正が全く無い場合およそ八桁のダメージをカットしてくる防御率、ということになる。
で、八桁というのが具体的にどれくらいなのかと言うと。
「要するに一千万台のことなので、要するにあのビィ君にダメージを『1』与えようとすると単純に装備補正無しで一千万ダメージを与えないといけない、ってことになるね!バカかな!!」
「うわぁ」
いや、こんなところで出て来ていいボスじゃないんだけどこれ!?
実質的な総体力とすると四千億ってことになるから、寧ろ原典より強くなってるじゃねーか!!
……という私の叫びは空しく空に消える。
いやまぁ、適正装備帯ならとにかく手数があればいいし、適正装備より一つ上なら意外といい戦いになりそうではあるのだ。
問題があるとすれば、この辺りのプレイヤーに攻撃値が『6』の装備を持っている人がどれだけいるのか、という話の方。
「ええと……?」
「このゲームにおける装備は、インフレに置いていかれ辛いのが特徴なんだよね。細かく設定されたパラメーターとかもあるにはあるけど、最終的には攻撃値の強化をすればいいんだから」
まぁ、だからこそ攻撃値や防御値の上昇に必要なアイテムは貴重品なのだが。
……実質的に攻撃値や防御値がレベルとして機能している、とも言えるのかもしれない。
一応、武器自体の攻撃力や切れ味など、鍛えられるパラメーターというのは多く存在している。
……いるけど、結局
スキルのダメージ補正とかは攻撃値じゃ間接的にしか上がらないし、上を目指すならやっぱり鍛えないといけないんだけどね。
この辺りは恐らく、この『tri-qualia』というゲームがとかくコラボが多いから、というのが理由として強いのだろう。
基本的に、ゲームというのはインフレするもの。そしてコラボというのは短期的、一過性のものであることがほとんど。
実装したタイミングは強くても、メインが進めばそのうち取り残されて時代遅れになるのが常、というか。
その辺りの解消……ということなのかはわからないが、全体の攻撃値・防御値のレベルキャップという形で調整が施されているこのゲームにおいて、コラボアイテムは愛を注ぎ込めば十分にいつまでも使える装備になっている……というわけだ。
まぁ、逆に言うとそこに商機があるということで、攻撃値や防御値のレベル上げアイテムは基本課金以外での入手が非常に限られているのだが。
ついでにいうと、コラボ武器はその時の適正補正値を初期値として持つけど、ドロップ品も同じことが言えるため入手した時期によっては初期補正が全然違う、みたいなことになるので基本ドロップ品に持ち変えた方が手軽に強くなれたりする……とか。*5
その辺りの話を踏まえたうえで、現在の
……確かにあのビィ君に挑むのなら丁度いいくらいなのだが、ここで一つ手前の階層である第五層の適正補正値を見てみると。
「うん、あのゴーレムでも『3』なんだよね……」
「うわぁ」
そう、補正値の上昇はとても緩やかなのだ。
具体的には、現状の補正値『7』はエンドコンテンツの類いというか?
少なくとも、こんなアインクラッドの低階層で出会うような相手ではない、とも。
実質体力四千億の、あからさまに様子のおかしいビィ君。
……思わず顔を青くしてしまう私の気分もわかって貰えようというもの。
「オイラにひれ伏せぇ!」
「つまりこんなことされたら普通に死ぬってことぐえー!!」
「キーアが浮島と一緒に死んだ!!」
「この人でなしぃ!!」
「え、ええー……?」
で、私はこちらの話が終わるのを待ってたかのように右手を叩きつけてくるビィ君に対し、ターゲット集中を自身に掛けた上で他の面々から離れた浮島に移動してそれを誘導。
結果、無残に破壊された浮島と共に空の藻屑と化したのでありましたとさ。呆気ねぇな……()