なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「くそぅ、キーアの尊い犠牲は忘れないゾ!」
「ええ!彼女のために私たちは勝たないと!」
「ああ、全力で行くぞ!」
「え、その……えー……」
はてさて、私があっさり撃墜されたのち、なんかわざとらしいまでに張り切る面々を見て、少女がなにか言いたげにしているわけだが。
その視線は、みんなととある一方を行き来しており、なんというか忙しない。
とはいえそれもそのはず、さっき撃墜された私が早速近辺にリポップしているのだから、困惑しない方が珍しいとまで言えるだろう。
でもまぁ気にせんといて、これも分身のちょっとした応用だから。
「なんだァ今のは……手応えが無さすぎだぜぇ……」
「そりゃまぁ、注意を引くための陽動だからね(小声)」
なお、でっかいビィ君の方はまんまと騙されている様子。
……いやまぁ、私が手応え無いのは本当のことだから仕方ないんだけどね?
多分百人やれば百人倒せるような雑魚ステータスだし。
まぁ、ステータスに大きな伸びが出にくい、というのは他のプレイヤーだって同じなんだけども。
その辺りはほら、他の面々は装備がちゃんとしてるって相違点があるし。
「……?その言い方だと、貴方は装備が整ってないの?」
「整ってないというか、整えられないというか……」
「?」
そんな私のぼやきを聞いていたのか、少女が不思議そうにこちらに声を掛けてくる。
確かに、この言い方だと私は装備がちゃんとしてない、ということになるわけだが……これに関してはちゃんとしてないというより
そんな私の言葉に、さらに不思議そうに首を傾げる少女だが……これに関しては現状話すものでもないのでとりあえずスルー。
その代わりに、彼女にこれからの作戦を伝えることにする私であった。
「一応聞いておきたいんだけど、そのへカートⅡの攻撃値って幾つ?」
「え?えーと……『3』、かな」
「なるほど、流石は最近の景品だけはある」
尋ねたのは、彼女の持つへカートⅡのステータスについて。
レアボスであるコワッパを軽く吹っ飛ばせる辺り、それなりの性能は持っているはずだと踏んでいたが……。
なるほど、彼の防御値と同値の攻撃値を持っているのだとすれば、あんなにあっさり吹っ飛ばしたことにも頷ける。
頷けるが……恐らく仮に攻撃値が『2』や『1』であっても変わらず倒していたような気がする、というのは私の気のせいじゃないだろう。
「……と、いうと?」
「攻撃補正の方が凄いんじゃないかなって。多分だけど倍率結構高いんじゃない?」
「え、えーと……『しっかり狙いを付けることで威力上昇』みたいなスキルは確かにあるけど」
武器や防具のパラメーターというのは、基本的に三桁を越えることはない。
二桁前後のそれを補正値による計算に放り込んでダメージなどの判定をするため、あまり大きな数にすると普通にバランスを崩壊させてしまうためである。
……しかし、それだけだと武器種に拘る意味が無くなってしまう。
単純にDPSを考えるなら手数の多い武器──双剣などを握るのが一番賢い、ということになるだろう。
その辺りの是正のため……ということなのか、各武器種には特殊なスキルが付与されることがある。
例えば短剣なら『攻撃速度上昇』、弓矢なら『貫通力強化』『射程上昇』などというような。
これらのスキルは武器種によって発現するものが決められており、例えば長剣に『攻撃速度上昇』が付くことはないし、その逆で短剣に『破壊力上昇』が付くこともない。*1
代わりに必ずそれらのスキルが武器に付与されているわけでもなく、有用なスキルがしっかり乗った武器を入手するためひたすらドロップ品収集を繰り返すプレイヤーも多い、というわけだ。
で、話を彼女のへカートⅡに戻すと。
これはキリトちゃんのアバターと同じくコラボガチャで手に入れたモノとのことだが、以前説明した通りそれそのものは多少珍しい武器、という程度のものでしかない。
ごっこ遊び、ないし見た目を寄せるための装備としての需要が基本であり、それを使ってゲーム世界を蹂躙しよう……みたいなことはできないようにされているわけだ。
だがしかし。仮にそうだとしても、拭いきれないアドバンテージというのがあるのも事実。
それが、以前少しだけ触れていた『特殊
より正確に言えば、その武器種に発現しうるスキルを全て揃えた上で、一つ特殊なスキルが付与されている……ということになる。*2
「粘れば一応、特殊スキル以外は集められなくもないんだよね。まぁ、それを粘るのが大変なんだけど」
「ええと、どれくらい大変なんです?」
「スキルの抽選率には高低があるから、ものによっては一ヶ月掘り続けても理想武器が出ない、なんてこともあるとか」*3
「ひぇ」
雑に言うと、その労力を全て短縮できているという一点で、既に羨ましいと思われてもおかしくない、みたいな?
……これも前に言ったことだが、それらのアドバンテージがあってなおコラボ武器は他の武器に追い付かないこともある。
そう考えると、特殊スキルも付かない通常ドロップのコラボ武器は掘る価値がない、ということになるのかも?
まぁその辺りの是非は置いておいて。
話をガチャで出る当たりの方に戻すと、通常ドロップ品に比べると特殊スキルが付与されるという一点が上、ということになるわけだが。
とはいえ、そうして付与されるスキルというのはそこまで強力ではない、ということが多い。
具体的には、先ほど彼女がへカートⅡに付与されていると言ったスキル──仮に『コンセントレート』*4呼ぶとするならば、その倍率が遥かに上のものがある、と言った具合に。
「……これより?」
「それより。まぁ、精々二倍から三倍とかだろうけども」
同武器種に付く同系統のスキルがあるとして、大体それの二から三倍が通常のドロップ品に付与されるスキル、みたいな?
まぁ、実のところそれだけ差があるのには理由がある。
その理由は、これが
「?」
「そのスキルは厳密には『コンセントレート』じゃない、ってこと。スキル枠に普通の『コンセントレート』がグレーアウトしてたりしない?」
「え?……あ、本当だ。確かにある……」
さっきガチャの当たり武器は『発現しうるスキル全てが付与される』と言ったと思うが、これは同じような区分のスキルが特殊スキルとして付与されたとしても、変わらずに遂行される部分である。
……代わりに、初期状態では今確認したようにグレーアウト*5しているのだ。
何故かというと、これらのスキルは
「……?」
「グラブルとかFGOとかやってたら知ってると思うけど、系統が同じとされるスキルは効果が重複しなかったりより高い効果に統合されたり、はたまた上限があるから付与しすぎても意味が無かったりするんだけど。系統違いのスキルはそれらの制限がなく付与できて、かつ効果が乗算になるんだよね」
グラブルで言うなら片面と両面、FGOで言うなら攻撃力アップと宝具威力アップ・カード性能アップのようなものか。
似たような効果であるが内部的には別種の効果として扱われており、同時に付与すれば高い効果を期待できる……みたいな感じと言うか。
それと同じことが、特殊スキルの方のコンセントレートと通常スキルのコンセントレートにも言える。
つまり、本来であればこれらのスキルは重複するのだ。
ゆえに、特殊スキル側のコンセントレートは効果を低めに設定されていると。
じゃないとあからさまに効果が高くなりすぎるわけだ。
「……ん?じゃあなんでグレーアウトしてるのこれ?」
「単純な話、それは補正値を上げると解禁されるんだよ」
「なるほど……」
で、グレーアウトされているのがなにを意味しているのか、だけど。
これは、現状では効果がないことを示している。スキルが有効になっていない、というわけだ。
何故かと言われれば、これは強化することで解禁されるスキルであるため。
……要するに、なにもなしに解禁すると強すぎる、と判断されているわけだ。
なので、強化することで解禁される、と。
……さっきも言ったが強化には貴重なアイテムを必要とするため、それをするだけの価値があるかどうかを自分で考えないといけないんだけども。
「で、今からそれを解禁しようと思います」
「……は?」
「頑張れ、君が今回の主役だ」
「は……え……???」
でー、今回はー、それを解禁して彼女にビィ君を倒して貰おう、ってプランらしいっすよ?
……と告げたところ、彼女は困惑したように声を上げたのだった。