なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「オラオラァ!威勢が良かったのは最初だけかぁ?!オイラはまだまだピンピンしてるぜぇ!!」
「うーん、多少動きは鈍重になってるけど、そもそも火力が高すぎる……」
前線にてビィを撹乱する役目を負ったキリトは、彼の攻撃を縦横無尽に避けつつもそう溢した。
現在いるメンバーの中で、唯一
それは何故かと言えば、単純に相手のビィの攻撃力が高すぎるからだ。
現状のビィは、特に姿を変えるということもなく原作そのまま──パワータイプやスピードタイプの姿ではない、通常の姿のまである。*2
まぁ、姿はそうでも大きさは比べ物にならないわけだが……ともあれ、それに比例するように攻撃力も過大になってしまっている、というのが問題だった。
他の姿のような多彩な攻撃こそないものの、単純な腕の振り下ろしすら大地を砕き割る超火力になっているのである。
そして、先ほどキーアが身を以て確かめたように、このフィールドにおいて落下するということは、すなわち死。
……つまり、数少ない浮島を破壊されればされるだけ、他の面々が戦闘に参加できなくなり詰みの可能性が高まってしまうのである。
(……SAOそのものみたいに、死んだら本当に死ぬってわけじゃないのはありがたいけど)
仮に落下死したとしてもリポップするだけ、というのはキーアの動きからわかっているが……だからといって地面がなくなってしまえばそれも意味がない。
最悪改造ロックマンのように、スタート地点に陸地がないのでそのまま落下してゲームオーバー、みたいな詰み状態にされかねない。*3
まぁ、一応キリト自身が空を飛べるため、落下死する前に拾って安全な場所に逃がす、ということはできるだろうが……。
(その場合は俺一人でこれと戦う、ってことになるわけか……)
そうなれば現状戦闘できるのは己のみ。
仮にキーアが現実と同じように空を飛べるのなら、多少はなんとかなっただろうが……。
え?さっき現実みたいに分身してなかったかって?あれは彼女のアバターに付与された特殊スキルなので……。
流石に現実みたいになんでもできる、というわけではない。
などと考えていたところ、頭上に差す黒い影。
「オイラの前で余所見とは、随分と舐められたもんだぜぇええええ!!!」
「おっと。……ええ、金星の女神の加護を持つ私にとって、
「……その言葉を後で後悔しても遅いんだぜぇええええ!!」
ビィによるはたき落としが迫ることを知らせるそれを、キリトは余裕を持って回避する。
……確かに、当たれば撃墜必至の攻撃であることは間違いあるまい。
だが同時に、それは工夫の全く無い単純な力押しの攻撃であり、イシュタルの加護()を持つキリトにとって遅すぎることに違いはない。
仮に相手がスピードタイプだったら別だが、今のビィには素早さの欠片もない。
(……まぁ、無いって風に見せ掛けてる可能性もなくはないが)
無論、実はこちらを油断させるために間抜けなふりをしているだけ、という可能性も否定はできない。
実はスピードタイプなどに変化できるにも関わらず、それをひた隠しにしているのかもしれない。
仮にそうだとすれば、相手が狙っているのはこちらの戦力把握だろう。
現状空を飛べるのはキリトだけであり、そのキリトが戦線離脱を余儀なくされれば、その時点でほぼ詰みのようなもの。
ゆえに、ビィは冷静にこちらの戦力を測り、万が一にも自身が打破される可能性をゼロにしようとしているのかもしれない。
まぁ、仮にそうだった場合はあまりに高性能なAIを積んでいるな、という話にも繋がってしまうわけだが。
それこそ、【顕象】もとい【鏡像】である可能性を疑ってしまう程度には。
(……なにはともあれ、だ)
今自分にできることは、時間稼ぎ。
そのことを十分に知るキリトは、それを相手に悟られぬよう、目一杯
「……なんか、ちょっとノリノリじゃねぇかアイツ?」
「なんだかんだで空を飛べる、ってアドバンテージを活かせるタイミングが無かったからね……」
主にこのゲームにおいては無法すぎるため。
……初お披露目かつ最大の活躍となった『再現ビーストⅡ』の時はまだしも、普段使いで飛行なんて使ってたら一人だけ別ゲーの開幕である。
一応、今回の同行者となった少女の持つへカートⅡのように、空中に対して攻撃を行えるような武器種もあるにはあるが……だからと言ってそれが当てられるか、といえばまた別の話。
何故かと言えば、現状持ち出していないからわかり辛いが……実のところイシュタルの船にして武器、マアンナもしっかり持ち合わせているから、というところが大きい。
要するに、本来なら防御もバッチリなのだ、あの姿のキリトは。
それこそキーアがなにかしら対策を練って攻撃する、みたいなことをしなければほぼ勝ち確というような性能であるのだから、封印してしまうのも宜なるかな。
そういう意味で、今のキリトはちょっと浮かれているとも言えるわけだ。
「まぁ、だからといって仕損じるような人じゃない、ってのはハセヲ君も知ってるでしょ?」
「まぁな。……だからこそ俺達の方は、アイツが上手くやることを信じてできることをやるってわけだ」
で、それ以外の面々──キリトとキーア、件の少女を抜いたメンバーはというと、現在念話で飛んできた作戦を実行中。
離れた浮島をひょいひょいと飛び移りながら、フィールドの中心部へと移動を続けていた。
また、キリトに関しても彼らから付かず離れずの位置をキープしつつ、ビィを誘導し続けている最中。
「しかし……上手く行くのかのぅ、これ」
「行って貰わないと困るよねー、私たちじゃあ無理があるし」
「まぁ、そうですね。少なくともこの姿では、大した火力も出せませんし」
そうして飛び移る中、ミラが溢した言葉を悟が拾い、それに傑が小さく頷きを返す。
……彼女達は今回、本当に特にできることの無い面々。
出せる火力が標準的なものに留まっているため、こういう大型のボス相手だとできることがほとんどないのが原因だ。
とはいえ、彼女達がこの場に居る意味が全く無いのかと言われれば、それはまた別の話。
こうして逃げ続けることにもまた意義があるため、彼女達はあれこれ言いつつも安全な場所ではなく危険な場所に、敢えて逃げ続けている。
問題があるとすれば、そのことにビィが気付くかどうか。
「精々甘く見るがよい、創星の竜の器よ。わしらの反撃は、ちとばかり痛いぞ?」
届くはずもない挑発の言葉を投げ掛けながら、ミラはまた次の浮島へと飛び移り始めたのだった。
「やぁっと捕まえたぜぇ!!これでお前らもおしまいだぁっ!!」
「ぐっ……!!」
さて、ある程度の時間が経過した頃。
向こうに自分を脅かすような武装がない、もしくはそれを準備する暇がないと確信したビィは、早速進撃を開始。
先ほどまでの鈍重さが嘘かのような俊敏な動きでキリトちゃんを捉え、誇らしげに天に掲げて見せたのだった。
……どうやら、そのまま握りつぶすつもりらしい。
「キリトちゃんをぉぉ、離しやがれぇぇ!!」
「ん?なんだぁ、飛べるやつまだ居たのか。でもなんにも持ってねぇのにオイラに向かってくるのはバカじゃねぇか?」
それを見過ごさないのが、紳士でありフェミニストであるサンジ君。
ビィ相手には隠していた
なにせ、サンジ君は見た限り丸腰。
そんな状態で一体なにをするつもりなのか、と鼻で笑ったわけである。
無論、
「こうするんだよ……"
「!!?いでぇ!?なんだこいつオイラの腕を蹴り上げやがったぁ!!?」
──彼がその程度で怯むのか、という話だが。
サンジ君のアバターは、原作のサンジができることを可能な限り再現できるように、と作られたもの。
ゆえにその攻撃は巨大生物相手であろうと普通に届きうる牙。
それをまともに受けたビィの腕は大きく弾かれ、キリトちゃんを握っていた方の手にぶつかってその拘束を緩ませる。
「──、簡易発動!『
「ほげぇあっ!!?」
すかさず、拘束を逃れたキリトちゃんが宝具を発動。
しっかりチャージしたわけではないため、それは威力が大幅に下がったものだったが……それでも、顔にぶつけられれば怯みもする。
拘束を完全に脱したキリトちゃんはその隙に空を駆け、十分な距離を取る。
数秒後、顔の周りに発生した土煙を払ったビィは、原作でもよく見掛けるマジギレ顔を晒していた。
「やってくれるじゃねぇか……これから第二ラウンドってことかぁ?」
「──いいえ、これで終わりよ」
「あん?」
そんな彼が発する気迫は、かなりのもの。
遠く離れた私たちにも届くのだから、それと真っ正面で相対している二人が感じている圧力はいかほどのものか。
とはいえ、それを感じさせることなく啖呵を切る姿は流石、というべきか。
その姿に思わず笑みを溢しつつ、傍らの彼女に合図を送る。
「いきなりなにを寝ぼけたことを言ってんだおめぇ?」
「それがわからないのなら、やっぱり貴方は単なるAIってことなんでしょうね。──女神は、別に一人だけじゃないのよ」
「はぁ?──!!?」
「──教えてあげる。敗北を告げる弾丸の味、『ファントムバレット』」*4
その合図を受けた少女は、一度息を吸って吐いたのち──目標をスコープ内に納め、静かにトリガーを引いた。
──