なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、先ほどの戦闘についての解説・反省会が終わったことで、ついに目をそらしていた事実に触れなければならなくなったわけだが……。
「……えっと、どうされましたか?」
(どう思う?)
(どうって……どうしてこうなった?)
周囲の視線を不思議そうに受ける少女。
──そう、
彼女の名言?まで口にした上、ヘカートⅡによる大物狩りまで成し遂げたにも関わらず、である。
だがしかし、その理由らしきものもなんとなく見えていた。
その理由と言うのが、座っている彼女の膝の上。
「……手付きはすっげぇ優しいのに、なんでかな?オイラさっきら震えが止まらねぇんだ……」
「うーん、可愛いねビィ君……」
「ひぃぃい………」
「うわぁ」*1
そこには、ほんのり青褪めた顔で彼女のなでなでを受け入れるビィ君の姿が。
……うん、声繋がりかな?(遠い目)*2
そうなのだ、小さなビィ君を拾って反省会をする際、彼女はごく自然にビィ君を抱き上げ、自身の膝の上に乗せたのである。
そのあまりにも自然な動きにはビィ君も反応できず、こうして無防備に彼女のなでなでを受け入れる羽目になったと。
……まぁ、例の人のそれと違い、その力加減はビィ君のことを考えた優しいものになっているわけだが。
とはいえ、あくまで撫でる力が優しいというだけで、自身の膝の上から移動させる気がないというのは間違いあるまい。
ゆえに、ビィ君はほんのり恐ろしさを感じて青褪めている、というわけなのである。
……うん、これは御愁傷様って言っとくべきなのかな?
当の少女はにっこにこしててこっちの話そっちのけ、って感じだけど。
「……ところで、君って【鏡像】じゃなくて【顕象】ってことで良いのかな?」
「オイラはドロップ品!」
「……どういうことだ?」
「えーと、さっきまで【鏡像】だったけど、倒された際にドロップ品として新生した結果【顕象】になった、みたいな感じかな……?」
「ええ……?」
あと、今の彼が大人しい理由も合わせて判明した。
倒す、という一連の行為を以てある種の禊とし、結果単なる一個体に零落*3した、という形になるようだ。
まぁ、最後の最後に自分から龍であることを捨てたからこそ、みたいな部分もあるようだが。
「だから今のオイラには変身能力とかないんだぜ。基本的にこの姿でやり過ごすしかねぇんだ……」
(なるほど、それで余計に逃げられなくなっていると)
うーんこの。
……トラウマ的な成功率の低下に加えてそもそものスペック低下まで重なれば、そりゃまぁ逃げるに逃げられなくもなるわな……という感じである。
ビィ君本体に関しての解説はこれくらいにするとして、改めて少女の話。
この分だと、彼女は『逆憑依』としては成立しない、もしくは成立しないギリギリであることに意味がある……みたいなパターンなのかもしれない。
いや、要素が二つしかないから三つ目が来るのを待ってるだけ、みたいな可能性も……?
(どういうこった?)
(多分単純に進めてたら、どこかでヘカートⅡを使うことによる逸話蓄積からの『
(なるほど……?)
かつて、『逆憑依』は要素が二つある場合には発生しない、みたいなことを言ったことがあると思う。
単一のキャラになるか、三つの要素を集めて【複合憑依】になるか。
……一応、単一のキャラになる場合に他の要素がくっついて【継ぎ接ぎ】になる、みたいなパターンも存在するが……そういうパターンは大抵
分かりやすい例がいまいち思い浮かばないが……例えば桃香さん。
あの人は『原作軸で存在してもおかしくない立場の彼女に、型月要素を盛り込んだ』キャラクターであるが、かといって盛り込まれたキャラクター……エミヤのような言動をすることはない。
一応彼女が戦うとなると、干将・莫耶が主武装になるらしいが……その見た目も中華系の武器っぽさが上がった形になるらしく*4、あくまで要素としてエミヤが含まれている、ということしかわからない。
二つの要素が共にメインにはならない、というのはそういうこと。
あくまで桃香さんがエミヤっぽくなってるだけであって、それらの優先度は間違いなく桃香さんの方にあるわけである。
割合が五分五分になることはなく、確実にどちらかが多くなる・少なくなるように配分が片寄る……というべきか。
裏返すと、『逆憑依』というのは
今の少女は状況・武器などの要素からシノン成分を高めているものの、本人の性質・および手元のビィ君によってカタリナ成分をも高めている。
そしてその比率は──目には見えないのでわかり辛いが、恐らく
ゆえに彼女は『逆憑依』にならず、そのままの姿でそこにあり続けている……と。
(この均衡を崩すべきなのか保つべきなのか、私には全くと言っていいほどわからんのだよね。『逆憑依』のフラグが立つってことはなにか問題を抱えている可能性大だけど、基本的に私たちってその問題自体を解決しに行ったことってほとんどないし)
(そう……なのか?)
(唯一かようちゃんの一件がそれっぽいけど、あれはあれで彼女の
正確には『終わったものに続きを付け足した』、というべきか。
……トラブルの根本を片付けに行ったわけではなく、そもそも起因を潰すのが正解かもわからず。
やったこともないので正しいとも言えず、ゆえに静観するしかない……みたいな感じというか?
まぁ、あくまで問題そのものを私たちが横から解決しようとすることに忌避感があるだけであって、向こうからSOSがあればすぐにでも手伝う準備はあるのだけれど。
(ならいいんじゃねぇのか?)
(常に後手になる、ってことに目を背ければ……って話になるからねぇ)
(あー)
いやまぁ、積極的に先手を取りに行ってないだろと言われればそれまでなんだけども。
……でもねぇ、別に私たち彼女の恋人でもなければ親友でもない、あくまで今日あったばかりの知人程度の仲なわけで。
踏み込んでいい線引きがわからない以上、下手に地雷を踏んで事態を悪化させた、みたいなことになったら目も当てられないというか……。
そんな感じのことが積み重なって、どうしようかなーと頭を抱えている最中なわけである。
……まぁ、結果的に要素が釣り合う形になってしまったのは、そうして静観していたからって面もあるのだけれど。
(あの流れなら、普通にやってれば今頃シノンになってただろうからねぇ。……まさかビィ君とかが好きなタイプの人だとは思ってなかったというか)
(惰性で付き合ってれば向こうから問題が進展する、って呑気に構えてたせいってことだろ?)
(仰る通りで……)
うーん、ハセヲ君が手厳しい。
……まぁ、彼自身も本気でこっちを糾弾しているわけじゃなく、話の流れでこう言った方がいいと思っただけで、自分にも責任があると感じているみたいだから反論はしないが。
──うん、そうなんだよね。
静観してたのが問題、というならここにいたみんなが悪いということになってしまう。
とはいえ『逆憑依』周り、それもそれが成立する瞬間についてなんて、誰も正確な情報は知り得ていない。
なんとなく
つまり、こっちが深刻に捉えているだけで、実態はとても軽い──思春期なら抱えてない方がおかしいような問題が、『逆憑依』の種として選ばれているなんて可能性もあるわけで。
ただでさえネット上で相手のプライベートな部分を尋ねる、なんてご法度を侵さねばならないのだ、そりゃまぁ誰だって日和見主義になるってもんだろう。
ゆえに誰かを責めることはできない。
できるのは、ややこしくなった現状をどうしようか、と頭を抱えることくらいのものである。
「……?みんなどうしたんだろうね、ビィ君」
「オイラは愛玩動物!」
そうして難しい顔をして唸る私たちを、当事者の少女は不思議そうに見つめていたのだった──。