なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、壁や床にも注意しようね(要約)という話を終えたところで、改めて攻略再開である。
なお、さっきまでの話についての少女ちゃんの反応だが、『逆憑依』特有の問題がなくとも『かべのなかにいる』状態になったらキャラサルベージ不可能になる可能性大*1、と大雑把に説明した結果、いそいそと丸薬をストレージにしまい込んでいた。
「あ、一応言っておくけどストレージに入れたあとはちゃんと装備するんだよ。具体的には口内に」*2
「口内に装備!?」
「え、驚くとこかなそれ?『かべのなかにいる』状態になったらストレージからモノを取り出すとかできないというか、できても起爆ができんよ?」
「いやその、『使用する』を選んで『はい』でいいんじゃ……」
「……生憎この丸薬、全身を吹っ飛ばすほど火力がない判定だからさ。口の中に入れといて噛み砕いた、って扱いにしないと死亡フラグ立たないんだよ」
「威力が限定的過ぎる……!!」
とはいえ、しまい込んだままだと意味がないので装備するように注意したんだけど……うん、どうも感覚が狂うね、こっちの。
まだ彼女は『逆憑依』じゃないから、こっちとの感覚の違いがどうにも……。
いやまぁ、今回に関してはそもそも口の中で爆発して頭を吹き飛ばす、という形式で死亡判定を誘引するモノであるため、その辺りを納得させるのは難しくなかったんだけども。
(ちょくちょくミスってんな、今日)
(仕方ないでしょ、実際になってないだけで気配はもう『逆憑依』なんだものこの子)
(気配?)
念話でハセヲ君がみんなの代表とばかりに私にツッコミを寄越してくるが……この辺りは私の見方が変わったせいなのでどうしようもないげふんげふん。
……まぁうん、今の少女ちゃんの状態が特殊なせいなので、気を付けていても私には無理があるというか。
(あれよ、『tri-qualia』の中だと普段はそこまで影響しないものでもちょっと過敏になるのよ)
(……もしかして、【星の欠片】の話?)
(まぁ、そういうこと)
アスナさんの言葉に、内心で小さく頷き返す。
その結果、私の現在のモノの見え方、というのも少々影響を受けているわけで。
(具体的に言うと、今の少女ちゃんは『逆憑依』にしか見えないのよ、少なくとも私には)
(だからちょくちょく部外者に話すべきじゃないことを漏らしちまってるって?)
(そういうこと。……隠し事は今みたいに念話で済ませるべきなんでしょうけど、そうもいかない理由もあるし)
(……なにか、問題なんてあったか?)
そこまで会話して、ふいと視線を少女に向ける。
……彼女はこっちの視線が自分に向いたことに小さく驚いたような動きをしていた。
そう、
これはすなわち、こちらのことをちらちら見ていたということの証左である。
……こっちが探索をおざなりにしているように見えたのかもしれない。もしくは──、
(……裏でなにか話してることに気付いているって?)
(まぁ、実際さっきも疑ってたしね。……こういうところも彼女が『逆憑依』になってないだけで扱いとしては『逆憑依』なんじゃないか、って思ってしまう理由)
ともかく、こうして念話で会話をしていると気付かれるのはほぼ確定。
そうなると裏でなにを話してるんだろう、とこちらを気にする理由を与えてしまい、少なくとも遺跡攻略に際してはよくない影響を与えてしまうわけだ。
(あとはまぁ、『tri-qualia』内での念話はそもそも控えた方がいい……みたいな部分もあるかな?)
(ぬ、そっちの理由は初めて聞くのう?)
(そりゃまぁ、あれこれ考えた結果さっき気付いた話だからね)
(ふむ?)
あともう一つ、念話を多用すべきではないという理由があるが……こっちはそもそも『tri-qualia』内での念話が宜しくない、という話になる。
何故なら、こうして裏であれこれと会話する、というのは
(……いや待った、もしかして)
(そのもしかして、よ。多分他所のネトゲでも同じでしょうけど……『tri-qualia』の中なら余計のこと。逸話補正はなにも
(それは……どういう問題が起きるんだ?)
(プライベートって言ってもチャットを提供してるのは運営だからね。言い換えると今は聞かれてないけど、その内運営には全部筒抜けになる)*3
(……なるほど、裏で作戦会議する時とかに困るのか……)
そう、
今でこそ向こうが波長を掴めていない?とかでなんとかなっているが、それこそサンプルが増えればそれも突破される可能性は大だろう。
そうなれば、私たちだけで秘密の会話ができるというアドバンテージは崩れ、なんなら明確にチャットをしている判定になるので目の前の彼女にも普通に認知できるようになってしまうだろう。
……このゲーム、チャットをしていると『チャットをしている』って表示が出るようになってるからね。*4
会話の邪魔をしない・させないための処置というか、他のプレイヤーからの迷惑行為を即座に認知するための処置というか……。
まぁともかく、誰かと会話している相手を邪魔しないように、という配慮であるそのシステムが、今回に限っては『私に隠れてなにか話してる』という認知を少女ちゃんに与えてしまう、ということは間違いあるまい。
結果、あんまり彼女の前で念話を使うのは止めておいた方がいい、という話になるのであった。
……え?彼女がいなければ念話を使っていいのかって?
そこに関してはそもそも仲間しかいないんなら隠したい会話とかないから、別に使う必要性がないというか?
無論、作戦会議用に裏で使う可能性はあるが……今みたいに長時間会話するために使う、なんてことはない。
言い換えると、運営にサンプルを必要十分まで集めさせることがない……という話になるわけで、そりゃまぁ問題にする必要性が薄くなるというか。
そういうわけで、少なくとも彼女の前で念話を使うのは(それが緊急のモノでない限り)避けたい、という話になるのであった。
(まぁ、それもこれも彼女が『逆憑依』として中途半端だから、っていうのが理由なんだけどね!)
(すっげぇ元も子もねぇこと言い出したんだが……)
(気にするなクライン、よくあることだ)
まぁ、最終的な結論としては『少女がどっち付かずなのが悪い』、なんて話になってしまうのだけれど。
……間違えないならこうして裏であれこれ話す必要ないし?
いやまぁ、それが私の見間違いのせいであることも確かなのだが、その見間違いを誘引するのが彼女と運営なのだから、私ばかり責められるのは違うだろう云々かんぬん。
……呆れたような視線がこちらを向いた気がしたけど、決して折れないキーアさんである。*5