なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・縺ゅ↑縺殄a縺昴%縺ォi縺セ縺吶°

 光が収まった時、周囲の光景は一変していた。

 

 場所は先ほどと同じく、ボス部屋の前……のはず。

 そう断言しきれないのは、その実それらが断片的にしか認知できないため。

 

 分かりやすく言えば、その部屋は()()()()()()

 無理矢理空間を引き伸ばした結果、とでも言えばいいのだろうか?

 四隅となる角の部分が先ほどより遠くなり、そうして足りなくなった分の壁や床は黒いひび割れで覆われている。

 

 足元のそれはあくまで黒いなにかでしかなく、別に踏んだり触れたりしても問題は無さそうだが……視覚的にも気分的にも、あまり気持ちの良いものだとは思えない。

 あからさまにおかしくなっている、と判別できてしまうのだから尚更だ。

 

 

「こいつは──」

 

 

 そしてなにより、ハセヲ君の雰囲気が一変したことが宜しくない。

 生憎この世界(ゲーム内)では本領を発揮し辛い(できないとは言ってない)私にとって、そこにある空気を感じ取るのは中々に難しい。

 

 ここで言う空気感とは、文字通りのそれではなく気配や意識の話。

 こちらに向けられているだろう敵意や殺意の察知、ということであり──、

 

 

「──確かに、俺がキーアと出会った時にも()()()()()からな、まぁわからないでもねぇ。……だが、だからこそわかる。お前は、あれとは別だ」

『縺ゅ↑縺殄a縺昴%縺ォi縺セ縺吶°』

 

 

 厳しい眼差しで、前方を睨むハセヲ君。

 その前にゆっくりと降りてくる、白い光。

 ──姿を表した怪異、『三爪痕(トライエッジ)』。

 敢えて『蒼炎のカイト』ではなくそう呼んだのは、あからさまに彼の様子がおかしかったため。

 グラフィックデータが所々欠けた代わりに、金色の()()()()()()()されたその姿は、彼が見た目通りの存在ではないことを示している。

 

 そしてそれゆえに──見知った姿と同じ()()が、はたしてその見知った誰かと同じ行動原理なのか、という点にすら疑念が挟まり。

 

 

『縺溘□縺昴≧、縺溘□縺昴≧縺溘□縺昴≧縺溘□縺昴≧』

「っ気を付けろ、来るぞ!!」

 

 

 ゆらり、と彼が足を上げ、ハセヲ君の警告が辺りに響き渡ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「え、ななななにあれ!?」

「ああそうか、それなりに古い作品だから知らない人も居るよね!ハセヲ君の所に出てくるキャラ、って言えばわかるかな!?」

「いやそもそも彼がコラボアバターなの今知ったんですけど!?」

 

 

 暫しの停滞ののち、弾丸の如くこちらに飛んできた三爪痕の右の斬撃を少女ちゃんを抱えながら飛んで躱す私。

 ……何度も言うが、このアバターあんまり戦闘向きじゃないのでまともに打ち合うのは宜しくないのだ。

 まぁ、仮に戦闘職だとしても正面から受けていいものか、という疑問符は付くのだが。

 

 

「見た目は『虚空ノ双牙』っぽいが、その実別物じゃなあれ」

「一本だけ金色だからなんだろうって思ってたけど……伸びるのは反則じゃないかなっ!」

 

 

 三爪痕の持つ双剣は、本来『虚空ノ双牙』と呼ばれるもの。

 禍々しい──奇っ怪な形をしたその剣は、本来三本の刃が付いたモノなのだが……その内の一つ、真ん中に相当する刃が彼を補っているとおぼしき金色の()()()構成(つぎはぎ)されていた。

 そのあからさまな異常に警戒していたがゆえ、被害は避けられたが……その金色の刃はなんと、彼がそれを振るのに合わせて伸びたのである。

 

 さながらしならせた鞭が飛んでくるようなその起動に、少々肝を冷やしたが……警戒していたので誰にも被害はない。無いのだが……。

 

 

「……奇襲が失敗したからって、常時伸ばしっぱなしってのはどうなんだ?」

「開き直ったということかのぅ?……まぁ、仮に奇襲を止めたとて厄介であることに変わりはないが」

 

 

 あくまで初撃のみの玉手箱、みたいなものだということなのか、現在金の刃は触手のように伸びた状態でその鎌首をゆらゆらと揺らしている。

 どうにも性質的にも触手──生物のようなものであるようで、それが間違いでないのならわざわざ双剣を振るわずとも伸びて攻撃してくる、とかもあり得そうだ。

 

 あれだ、.hack//的に言うのならオーヴァンの肩のあれが刃にくっついてる、みたいな?

 

 

「……?」

「まぁうん、とりあえず危ないってことだけわかればいいよ……」

「あ、はい」

 

 

 ……うん、少女ちゃんに通じないの微妙に面倒臭いな?

 機会があればリマスターを渡すとしよう、なんて風に決心しつつ、改めて敵に向き直る。

 

 

『繧ゅ→繧√k繧上l繧栄a縺溘□縺励¥繧ゅ→繧√k』

「相変わらずなに言ってるかわかんないけど……穏やかじゃないってことは確かだね」

「元々のアイツも大概言語機能がバグってたが……こいつは輪を掛けて意味不明、だな!」

 

 

 攻撃される前にこちらから、とばかりに武器を大剣に換装して突っ込んで行くハセヲ君。

 それを迎え撃った三爪痕は、ほぼ直立不動のまま右手の剣でそれを受け止める。

 ──一瞬の硬直ののち、互いに互いを弾いて吹っ飛んでいった彼らは、

 

 

「!?てめぇ!!」

「えっちょっ、こっちぃ!?」

 

 

 こちらに攻撃してきたハセヲ君など眼中にないとばかりに、代わりにこちらに向けて突撃してくる。

 奇しくも先ほどの開戦時と同じ挙動だが、しかしてさっきとは違いこちらには他の面々が固まっている。

 

 

「よくわかんないけど……とりあえず、潰れなさい!!」

 

 

 ゆえに、対処はそこまで難しくない。

 接近されると危ないのなら、近付けさせなければいいだけの話。

 それを即座に理解したアスナさんの一声により、虚空から現れた大神使の前足が突撃してきていた三爪痕を踏み潰す。

 

 相応の衝撃と揺れ、立ち上る土煙。

 これで無傷はないだろう、と皆が確信する中、

 

 

「……っ、ちぃっ!!」

「えっ!?」

 

 

 その土煙の中から飛び出してくるのは、金色の触手。

 こちらの意識の隙間を縫うように飛び出して来たそれを即座にミラちゃんが反応して叩き落とすが、

 

 

「……ぬぅ!?」

「えっちょっ、なにそれ!?」

 

 

 叫び声は二ヶ所から。

 一つ目であるミラちゃんのそれは、触手を叩き落とした自身の右手に付着した金色の粉のようなものが、自身の右手をゆっくりとポリゴンに分解しているところが見えたため。

 

 二つ目の方はアスナさんで、そちらは大神使が声もなく大きく仰け反ったため。

 そちらもよく見れば、相手を踏み潰した前足がゆっくりと、だが確実にポリゴンへと分解されて行っているのが理解できた。

 

 

「ええぃ、スキル広域化!」

「ぬぉっ!?……お、おお?収まったとな?」

「アスナさんは今のうちにそれしまって!」

「あ、はい!」

 

 

 そしてそれを認識した瞬間、躊躇いなく私はスキルを一つ発動。

 その効果により金色の粉は別所に転送され、かつ侵食も止まる。

 それを確認したのち、すぐに大神使を片付けるようアスナさんに通達。

 こちらの声が普段のそれとは違う真剣みのあるものだと気付いたアスナさんは、なにを聞くこともなくこちらの指示に従ったのだった。

 

 ……ここまでで数十秒も経っていないわけだが、それでも相手の危険性はよく理解できた。

 

 

「……理屈はわからないけど、あの触手に触れると侵食されるみたいだね。多分あのまま放置してたら分解されてたか、もしくはデータとして回収されて向こうの手駒になってたかも?」

「強奪スキルってことか?……三爪痕にそんなの無かったと思うけど」

「だから、これはあの金色の継ぎ接ぎ由来のスキルだろうね」

「なるほど……」

 

 

 原理は不明だが、あの触手に触れてしまうとそこから侵食される、ということで間違いはないだろう。

 なんなら触手から離れた欠片──粉ですら侵食技能が付与されているらしく、まともに攻撃を受けるのは自殺行為とも。

 

 ……これが.hack//出身であることから発生するものならば、現状ハセヲ君以外に対処できる人員がいない、ということになるのだが……。

 

 

どりゃああぁあっ!!!

「…………」

 

 

 そう私が思考する中、土煙の中から無傷で現れた三爪痕に、再び突進して行ったハセヲ君が肉薄。

 地面を削りながら放たれた渾身の振り上げは、しかしそれを事前に察知していたであろう三爪痕には届かず、彼に回避を強要するだけに終わる。

 

 とはいえそれで仕切り直しの時間が生まれたことも事実であり、大袈裟なほどに後方に回避していく三爪痕を見ながら、私たちはザッと後退してきたハセヲ君と合流することに成功したのだった。

 

 

「打ち合ってみてどうだった?」

「……動きの基本は完全に三爪痕(アイツ)だ。まともに取り合われてねぇ、って点でも初めにアイツと会った時の流れとそう変わらねぇ」

「なるほど……?」

 

 

 ある程度対抗できているように見えたが、そういうわけではなかったと。

 ……いやまぁ、最後こそ回避してたが最初の突撃は普通に片手で迎え撃ってたしなぁ。

 

 となると、逸話補正的な感じで現状宜しくない、と。

 

 

「え?」

「……場所が違ぇから断言はできねぇが、このままだと負けそうな気はしないでもない」

「ええ?!」

 

 

 珍しく弱気な彼の様子に、たまたま隣にいたアスナさんが困惑しているが……無理もない。

 物語の序盤、()()()()()()()()()()()()()()ハセヲ君は、三爪痕に対して惨敗を喫している。

 このままでは、その時の流れと同じようなことが起きるのでは?……と感じ取ってしまうのは無理もない。

 

 

「──つまりは、だ」

 

 

 ゆえに、彼は決断する。

 

 

「四の五の言ってる暇はねぇってことだ」

「え?」

「ここでアイツにやられても問題はねぇのかもしれねぇ。所詮はそういうイベントでしかなくて、これはある種の負けイベってやつなのかもしれねぇ」

 

 

 その懸念を吐き出しながら、されどそれが懸念でない可能性を知るがゆえに。

 

 

「だが、それで済ませてちゃあ俺は俺である必要がない。この場に立っている意味がない。──だから、敢えて言うぜ」

 

 

 するべきではないと、目覚めさせるべきではないという忠告を──無視する。

 

 

「俺は、此処に居る!来いよ、スケェェェェェェェェイスッ!!」

 

 

 心の底から、求めるように吐き出したその言葉。

 それは大気を──作り物の大気を奮わせ、世界に染み渡っていく。

 ゆえに、その音は響く。

 彼の者の到来を告げる福音(ハ長調ラ音)は、再び世界を震わせる。

 

 

『縺昴%縺ォ繧ゅ>縺殤o蜿ッ』

 

 

 そしてそれゆえに、その言葉は()にも届いたのだった。

 

 

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