なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・特攻って難しいよね()

 はてさて、激しい戦闘を繰り広げるハセヲ君達を尻目に、この不可思議な空間を探ることにした私たち一同。

 その探索についてなんだけど……微妙に難航していた。何故かって?そりゃ勿論、

 

 

「……出られそうな穴がねぇ!!」

「うーん、やっぱりあの三爪痕を倒さないと出られないタイプなのかな……?」

 

 

 ご覧の通り、というやつである。

 ……うん、隙間というか穴というか、ともかく外へ出るためのきっかけになりそうな隙、とでもいうべきものが一切見当たらないのである。

 これには流石のキーアさんもびっくりどきどき二十世紀*1……などという謎のフレーズが頭を過る次第であります。

 え、古い?勝手に出てきた言葉に古いだなんだと言われても困る、困らない?

 

 

「いや知らんが……」

「もう、ミラちゃんの意気地無し!」

「流石にツッコミが意味不過ぎるんじゃけど!?」

 

 

 なに言ってるんだこいつ、みたいな視線をミラちゃんから貰いつつ、改めて部屋の中を探知する私である。

 ……私が付与術士をメインにしているのは、さっき使った『他者集中:EX』などの突破力などを買ってのこと、という部分も大いにあるのだが。

 その実、一番の理由というのはそれに託つけて()()()使()()()()()というところも大きい。

 さっきの例でいうと『龍封・断天閃』とか。

 

 

「……ええと、確か『対龍』『対巨大』『対神』に対して効果が累積していくタイプのデバフ、なんだったっけ?」

「そうそう。……ぶっちゃけると、『tri-qualia』内の特攻系バフって使い勝手滅茶苦茶悪いんだよね」

「そうなのか?」

「そうなんです。……基本的にみんな装備更新して補正値上げることの方に心血注いでるから、大抵知られていないけどね」

 

 

 例として上げた技の効果を思い出すように、アスナさんが指を一つ一つ折り曲げていく。

 ……都合三つの特攻を持ち合わせるこのデバフだが、その実ここまでしないと有用性を担保できない、というのが問題だったりする。

 どういうことかと言うと、『tri-qualia』における特攻系技能は基本的に()()()()()()()()()()()なのだ。

 

 

「……んん?」

「具体的に言うと、三つの特攻を付与する場合、相手が満たしている属性によって起動準備が開始され、実際に相手にぶち当てる時には有効になっているモノの中で一番効力が高いものが優先される……ぶっちゃけると共存不可・枠被りの類いになるんだよね」

「ええ……?」

 

 

 グラブルで言うところの、両面バフに両面バフを重ねると効果の高いもので上書きされる……という挙動に近いというか。

 

 いやまぁ、対象が別なんだからバフ・デバフそのものが上書きされるわけじゃないんだけどね?

 ただ最終的な計算の時に『一番効果が高いもの以外は無視する』って処理になってるってだけで。

 

 

「それだけならまだしも、実はこのゲームの特攻付与って効果の最大値がそんなに高くない(+50%)んだよね。だから、大抵の場合『ちょっとダメージ増えたかな?』くらいで終わるというか」

「うわぁ……」

 

 

 うん、コンセントレートが場合によっては四倍(+300%)まで行くことを思うと、頼りないなんてレベルの話じゃないことに気付くでしょというか。

 

 ……なんでこんなことになっているのかと言うと、恐らく計算式を混ぜる場所を間違えたからだと思われる。

 

 

「計算式の場所って、どういうこった?」

「正確には、()()()()()()()()()()()()()()()()から、数値調整班に調整を間違われた……みたいな感じ?」

「……???」

「デバフにも使える、って点でわかると思うけど……特攻系の技能って必殺スキルじゃなく普通にステータスバフの方に含まれてるってこと」

 

 

 わかりやすくいうと、コンセントレートなんかはダメージ計算式にのみ関わってくるスキルだが、特攻系は攻撃アップなどと同じくステータス干渉系のスキルだ、ということになるだろうか?

 もっとわかりやすく言うと、パーセント加算より実数値加算の方が効果が出やすいタイプ、というか。

 

 

「このゲームにおける基礎ステータスってそんなに高いものじゃないでしょ?現状の高プレイヤーでもギリギリ三桁行ってるかなー、って不安になるくらい。……言い換えると、ダメージ計算の時に使う式の方で数値を調整してるというか」

 

 

 武器が重要、とされる話のほとんどを締める理由とでもいうか。

 ……まぁともかく、このゲームにおいて基礎値である『ステータス』は容易には上昇させられないものだ、ということは間違いあるまい。

 逆に言うと、()()()()()その辺りを前提としたバフの効果が、低数値ながら意外に重要になるわけだが。

 例え三割上昇であれ、仮にそれで数値が三十上がるならダメージの方は万とか普通に変わる……みたいな。

 

 じゃあ同じ枠になる特攻系も、例え最大五割上昇でも有用な効果になるのでは?……と思いそうなものだが、それが罠なのである。

 

 

「罠なの?」

「枠としてはステータス干渉って言ったでしょ?……なのに何故か計算式として実際に使われるの、ダメージ計算の最後なのよ」

「!?」

 

 

 その理由が、その枠と式の中で使われる場所の解離。

 なんとこの特攻バフないしデバフ、計算の上では()()()()()()()()()()()()()()()()ものなのである。

 

 この結果なにが起こるのか。

 このゲームにおけるダメージ計算は、基本的に『ステータス補正等の計算』×『ダメージ補正系の計算』×『補正値による補正等その他の数値の合計』、という形になっている。

 

 カッコの中の計算は基本単純な加算(かつ、カッコ内なので計算的に優先される)であり、先ほどの『五割バフ』というのも内部的には()()()()()()()()()()()()()()……わかりやすくすると()()()()()()()()()()()()という形になる。

 ……雑に数値を使って説明すると、百を掛け算して百五十にしているのではなく、百の五割である五十を足すことで計算している、という形になるか。

 

 なんでそんな変なことを?……と思われるかもしれないが、その辺りは運営に聞いてくださいとしか言えない。

 まぁともかく、ステータス補正は『基礎値の○割は幾ら』という形で別個計算しておき、それを計算式に代入していると思えばよい。

 

 で、そこまで踏まえて特攻の話に戻るんだけど。

 この数値はまず始めに基礎値から加算値を割り出したのち、そうして出来た加算値を()()()()()()()()()の部分に放り込む、という形式になっている。

 

 この『その他の数値の合計』というのは、最終的なダメージを割り出すための部分。

 具体的には相手の補正値とこちらの補正値を比べてダメージの軽減・増加などを見ている部分でもある。

 

 ……まぁともかく、そんな場所に放り込まれるこの数値は、端的に言って──、

 

 

「数値が低すぎるんだよね。まぁ、ステータスが二桁から三桁くらいってことは、加算値も二桁以下ってことになるんだから仕方ないんだけども」

 

 

 ダメージ計算の上では、あってもなくても変わらないような数値になってしまっている。

 ステータスが二桁なら、加算される数値は大体一桁だろう。

 百で割る百を掛ける、みたいな感じに三桁以上が基本となる場所で一桁の数値が加算されたところで、まさしく雀の涙というわけだ。

 

 ……これが、補正値側の五割を取る、とかなら問題がなかっただろう。

 というか、『ダメージ補正系の計算』の部分に入るバフなどは実際そこの数値に対して何割倍を加算、みたいな形を取っているため、三割だろうが四割だろうがしっかり用をなしている。

 特攻だけだ、何故か最大でも三桁行くか行かないか、くらいの数値を参照して一桁二桁の強化値を割り出し、それを補正値の部分に加算しているのなんて。

 

 ……一応、なんとなく理由はわからないでもない。

 単純に補正値に干渉するスキルとして作ってしまうと、効果が高すぎると判断されたのだろう。

 特に一つでも補正値が上回ってしまうと、その時点でダメージの上がり幅がエグいことになる。

 一つ違えば百倍、二つ違えば千倍違うところに、更にそれを五割増し……なんてことになればどうなるかは火を見るより明らかだし。

 

 まぁ、そもそも補正値が影響強すぎ、といえばそうなのだが……ともかく、現状の特攻系がまともに機能していない、ということに変わりはあるまい。

 

 

「なので、効果をデバフ方面にだけ絞ることで特攻を累積させられるようにしたのが、さっきの『龍封・断天閃』だったってわけ。多分倍の倍の倍だから……八倍になってたのかな?デバフの効果量」

「……あんまり高くないように聞こえるけど、実際の効果量はどれくらいだったんだ?」

「んー?えーと、補正値の削減部分に関わるやつだから……雑に計算して八桁ステータスダウン、みたいな?」

「うわぁ」

 

 

 あれだ、全部引っかかると補正値が七違っても普通にダメージ入るようになる感じ、みたいな?

 それだけやるのだから、こっちに掛かるデメリットも相応のモノであり、そこら辺をしっかり設定する(騙す)のに虚無が必要だった、という話になるのであった。

 

 

*1
大層驚いたことを示す語呂合わせ『驚き桃の木山椒(さんしょ)の木』、およびそこから派生したタイトルを持つテレビ番組『驚きももの木20世紀』(1993.04~1999.10、テレビ朝日系列)から。前者の言葉としての由来は不明だが、映画『男はつらいよ』(1968.10~2019.12。期間が長いのは50作目が久しぶりに作られた為。一つ前の49作目は1997.11であり、22年ほどのブランクがある)において主役である寅さんがこのフレーズをよく使ったことで流行った、という話がある。なお後年にはアニメ『タイムボカンシリーズ ヤットデタマン』(1981.2~1982.2)においてロボットの召喚台詞として更に長くなったものが使われたりもしている(『驚き桃の木山椒の木ブリキに狸に洗濯機 やって来い来い大巨神』)が、どっちにしろ死語に近い

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