なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・無法をするにも準備がいる

 さて、特攻周りの話をした結果、大分話題が脱線したけどいい加減軌道修正をして。

 

 

「そんな感じで、【虚無】をこの世界で使おうとすると付与術士を装っておくのがいい、ってことになるんだけど……そのおかげ?というかなんというか、ある程度なら『神断流』の方も使えるようになってるんだよね」

「……付与術士自体が【星の欠片】と相性が良い、と?」

「まぁ、そういうことになるのかも?」

 

 

 先ほど『龍封・断天閃』擬き……あの時の命名に倣うのなら『派醒(はせい)*1が使えたのは、この世界──『tri-qualia』自体が【星の欠片】と親和性が高いから、という点も強く影響している。

 じゃなきゃ、どういう方向性にしろ無理が生じてただろうし。

 

 

「と、いうと?」

「【星の欠片】は世界を作るための種みたいなもの、って説明したでしょ?だから、普通の状況で【星の欠片】の影響を高めると十割がた前の世界が崩壊するって。……外での利用はまぁ、他にも【星の欠片】が存在してるせいでバグってるのかなって思うけど、ゲーム世界においてはその辺りの影響は期待できないし」

「あー……察するに、当初の懸念がそのまま影響をもたらす可能性大、と?」

「そういうことになるねー」

 

 

 無理となる理由は大きく二つ。

 まず、そもそもスペック的に再現しきれないパターン。

 こちらは、彼処で元気に戦ってるハセヲ君に現在付き纏っている問題の拡大版……みたいな感じか。

 

 彼の操る『憑神』は、小説版の表記によれば高次の化身……ネット世界に現れた神の似姿のようなものであり、それゆえ八相それぞれが一つの次元・一つの世界足り得る権能を持つのだとか。

 ……ネットを用いて作られた神、という解釈でありそれゆえにそれが持つ力は本来人が御しきれるようなものではない、とも。

 

 その力の強さを示すのが『データドレイン』であり、彼らが現れた時に周囲にもたらす高負荷であるわけで。

 ……まぁともかく、『憑神』というのはその名前通り──ゲーム上の表現だけではわかりにくい部分もあるが、紛れもない『神』なのである。

 で、そんな無茶苦茶な存在であるがゆえに、本来ネット側が彼らの顕現に耐えられず落ちる可能性が高い……みたいな話に繋がるのだ。

 

 これは相手が【星の欠片】であっても同じこと。

 というか、データの最小単位こそ微細だが、それを無限に司るのが【星の欠片】であるため、本来どれほどデータの許容量があろうが無意味なのである。

 ゆえに、【星の欠片】の完全顕現などというものは、ネット世界では現実世界以上に無理が出てくると。

 ……まぁ、ギガストラクチャーどころかペタストラクチャーだのゼタストラクチャーだのと言い表した方が良いような存在*2と、無限ループをひたすら強要してくる微小データのどっちが迷惑か?……と言われると少々困ってしまうわけだが。

 

 ともあれ、一つ目がそんな感じであることを前提とした上での二つ目だが、こちらは世界の違いという部分で無理が生じる、というパターンである。

 

 

「世界の違い?」

「電脳世界と現実世界をごっちゃにするやつなんていないでしょ、って話」

「今色んな方面に凄い勢いで喧嘩売らなかった???」

 

 

 いや、売ったつもりはないけども……。

 まぁともかく、電脳世界に物理法則は持ち込めないし、現実世界に電脳世界の法則を持ち込むことも無理……みたいなのがこの話の主題である。

 いやまぁ、電脳世界を作るためには物理法則が必要だけど、そうして作られた世界の中でまで物理法則が主体かと言われると微妙、みたいな話というか?

 

 基本的に、電脳世界というのは遊びの場として用意されるもの。

 無論、遠くに居る相手とのコミュニケーション手段としての活用なども含まれてはいるが、大まかに『現実世界の軛から逃れるためのもの』であることは変わるまい。

 

 無論、物理法則を再現した上で作り上げられた世界もあるだろうが──根本的な部分として、()()()()()()()()()()を叶えるための場であることは変わらないだろう。

 その目的意識がどこにあるのか、という部分に違いがあるだけで。

 

 そういう意味では、【星の欠片】は電脳世界と食い合いをしてしまう、ということになる。

 なにせ【星の欠片】は新しい法則を作るもの。

 言い換えれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだから。

 

 

「……あー、役割が被っちゃうってこと?」

「そういうこと。こっちの場合は現実で【星の欠片】を使うのと大差ないってことになって、最悪その時用いられた【星の欠片】が新しいゲームシステムの根幹になる……みたいな事態も予測されるね」

 

 

 一つ目が機能しないことによる問題ならば、二つ目は機能したことによる問題……という風にも言い換えられるか。

 ともあれ、本来起こりうるそれらの問題がどちらも起こらなかったというのは、すなわちこの電脳世界──もとい『tri-qualia』の懐が広かったということに他ならないわけである。

 

 

「だから相性が良い、って話になるわけか」

「そういうこと。……逆を言うと、相性が良くなかったらあの時点で私ら全滅してたってことになるんだけどね」

「怖っ」

「まぁ、全滅してもリスポーンするだけで終わってただろうから、そこまで怖がるモノでもないけど」

 

 

 まぁその場合、ビィ君が倒されないまま居座り続けることになり、色んな意味で困ったことになってただろうが。

 ……そのうち倒されるとは思うけど、それは全体の装備基準が上がったということ。

 すなわちインフレに呑み込まれる形で退場した、という形になるので問題ばっかり積み上がる形になるだろうし。

 

 

「そうなの?」

「アインクラッド自体が運営の思惑によるものなのに、それに全く触れられなくなるんだから大問題でしょ」

「あー……」

 

 

 そういう意味では、ビィ君は完全にイレギュラーだったんだろうなぁというか。

 

 ……そうなるとそこの三爪痕はどうなの、という話になるけど……うーん、あれに関しては今のところ不明である。

 相変わらずバグった言語を話してるけど、それも今ではハセヲ君に向けてしか発してないし。

 さっきまでは()()()に話してたんだけどね。

 

 

「……あ、内緒話は終わりました?」

「そうだね。ごめんねいきなりひそひそ話し出したりなんかして」

「いえまぁ、なにかわけありなのはここまでで散々理解してるので大丈夫ですよ」

 

 

 そう考えながら、この会話には混ざってなかった少女の方を見る。

 彼女はさーちゃん&すーちゃんと一緒に私たちとはちょっと離れた部分を確認して貰っていたわけだが……それが内緒話のための隔離行動であることは早々に理解していたらしい。

 いやまぁ、わざとらしすぎる手分けの仕方だったから仕方ないんだけど、それでもまぁ敏いというかなんというか。

 

 ともあれ、再度彼女達と合流し、本題に戻る私である。

 さっきまでの話は──色々脱線したけど、『tri-qualia』内でも(偽装はいるけど)『神断流』は使える、という前フリ。

 そしてここから話すのは、さっき私がなにをしていたのかという部分についての会話である。

 

 

「付与術士のスキルに『空間把握』ってのがあるんだけど、それを『他者集中』でブーストして周囲を探ってみたのね?」

「サラッと言ってるけど『()()集中』とは?」

「んなもん意識して自己の仮面(ペルソナ)を切り換えればなんとでもなるわよ」

「ええ……」

 

 

 なに言ってんだこいつ、みたいな視線が私に突き刺さるが、それに関しては返す言葉もない。

 だってこれ、少女ちゃんも聞いてるからそれっぽいこと言ってるだけだからね!()

 実際には『他者集中』も『空間把握』も使ってなくて、実際に使ってたのは『涅槃寂静』の方だし。

 

 ……え?お前さっきそれ使ったらなんか変なことになるかも、だから使えないとか言ってなかったかって?

 ふっ、状況というのは変わるものだよキミィ。

 

 ……冗談は置いといて、実態としてはここが特殊な空間なのでその辺りを使っても影響が切り離されてる、というところが一番大きいのは確かである。

 それでも【俯瞰】は止めといた方がいいから、使えるのは実質『神断流』くらいのものだが。

 

 

(……逆に何故『神断流』は良いのかのぅ?)

(『神断流』が良いってよりは、【虚無】でごまかす際に汎用性が一番高いのが『神断流』って方が近いんだけどね)

(……なるほど?)

 

 

 一応、他の【星の欠片】も【虚無】でごまかしながら使うことは可能である。

 可能であるが……労力的に一つが限度、かつ【虚無】を汎用的に用いようとすると影響が出ない保証が欠片もないため、結果として影響が少なく汎用性が高い『神断流』が選ばれた、という次第である。

 

 いやまぁ、汎用性云々の話で言うと【俯瞰】も中々のものなんだけどね?

 ただこれ、思いっきり相手に干渉する──悪い言い方をすると()()()()()()()()()技能だから、こういう場面では多用したくない……もとい、汎用性部分を重視すると()()()()()()()()ので宜しくないというか。

 視るだけならなんの問題もないんだけどね、うん。

 

 

「ともかく、私は『涅槃寂静(くうかんはあく)』で周囲を確認したわけですよ。……その結果、このフィールドは現在アインクラッド内じゃない、ということが判明致しました」

「えっ」

「座標もフィールドネームも全部バグってやんの。そりゃまぁ、外に出るための穴なんて見つかるわけないわ。ここだけ隔離されてるようなものなんだもん」

 

 

 で、ここまできてようやく、私が話したかった部分に話題が及ぶ。

 ──現状の私たちは、原作(.hack//G.U.)におけるAIDAサーバーに取り込まれたようなもの。

 そう告げると、事態の深刻さが把握できていない少女ちゃん以外の全員が、ぴしりと音がしそうなくらいに固まってしまったのだった。

 

 ……いや、AIDAサーバーってのはモノの例えだからね?

 そこまで心配したり警戒したりする必要はないからね?……多分。

 

 なんで最後に多分とか付けるの、と怒られたのは言うまでもない……。

 

 

*1
『神断流』独自のシステム。本来必要な『条件』を無視して『他のやり方』を模索した結果、それを成し遂げたことを示す称号のようなもの。元々『神断流』自体が『他者の偉業(わざ)を他人にもシステム的に使えるようにする』という形で発展したモノである為、システムから外れたこと──ルーチン外の行為で結果を引き出すことはほぼ不可能である。それを成し遂げて見せたことで『流派から醒めた(はずれた)』ことを称えられたという形。『断天閃』は居合技であり、()()刀を必要とする為それを手刀で代用して見せたのは間違いなく称えられるべき偉業である

*2
元々は巨大建造物のことを指す『メガストラクチャー』から派生した単語。本来はどれほど大きくても『巨大建造物』ならメガストラクチャーなのだが、ネット世界などで地球規模を遥かに越える大きさの物体が構想された結果、単位である『メガ』を更に大きくした『ギガストラクチャー』という概念が生まれることとなった。あとの『ペタ』だの『ゼタ』だのは、同じく単位から来ている

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