なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・意外とヤバイぞ電脳世界(※今さら)

「ええと、状況を整理しましょう。私たちはあの三爪痕に連れられてここに来た、それで間違いない?」

「多分ね。……断言できないのは、あの三爪痕自体が原作そのままじゃないからってところが大きいけど」

「なるほど、なるほど」

 

 

 私が『無闇に不安に広げるんじゃない』と怒られ正座をしている中、皆を代表してアスナさんが話の進行を行っている。

 黒い鎧の彼女はこちらの言葉に手を顎に置き、なるほどと呟きながら左右にうろうろとしていた。

 

 ……軽い歩行は脳の機能を活性化させると聞く*1が、それは電脳世界でも有効なのだろうか?

 などと益体(やくたい)もないことを私が考えていると、彼女はその左右への彷徨(うろちょろ)を止め、こちらに向き直り。

 

 

「……やっぱり、アイツを倒すことを先決にすべきなんじゃ?」

「いやまぁ、それはそうなんだけど……その場合なにも策がないとさっきと同じことになるよ?」

「うぐっ」

 

 

 現状元凶だとしか思えない、三爪痕の討伐を主張してくる……のだけど。

 さっきそれでどうなったのかを思い出せ、と告げれば途端に口ごもってしまった。

 

 ……まぁうん、そもそも私たちが周囲の探索に移ったのは、現状の私たちでは三爪痕の触手に対して対抗手段がないから……というところが大きいので仕方ないのだが。

 彼らの戦闘から離れることでそれに巻き込まれることを──三爪痕がこちらに標的を変え、それによってハセヲ君に無用な負担を掛けないようにすることをも目的としたモノである以上、今さら戻ってどうこう……みたいな選択肢はないのだ。

 

 

「まぁ、仮に三爪痕を倒す以外の解決策が見付からなかった、というのならそれはそれで収穫ではあるから。……とりあえず、巻き込まれないくらいの位置で応援でもしてる?」

「いやー、寧ろ邪魔じゃねぇかそれ?」

 

 

 あれだろ、バトルフィールドの外からヤジ飛ばす感じになるんだろ?……とはクラインさんの言。

 まぁ、現状だとそうなるというのは間違いではない。

 間違いではないが、これがこと()()()()に対してはそうとも言い切れない。

 

 

「……そうなのか?『鬨の声(ウォークライ)*2にしろ『他者集中』にしろ、基本的には術者本人も戦闘範囲に入ってないと意味がないような気がするけど*3

「ふっふっふっ、舐めちゃあいけねぇぜキリトちゃん。私は現状付与術士のトッププレイヤーなんだぜ……?」

「どういうテンションだそれ……?」

 

 

 誰もやりたがらないからのぅ、とか抜かすミラちゃんの両頬を引っ張りながら、胸を張って宣言する私である。

 

 ……いやまぁ、実際のところは付与術に見せかけて『神断流』で補助しよう、って話なんだけどね?

 少女ちゃんの手前、その辺りのことを明言するわけにはいかないからぼかしてる……ってだけで。

 

 とはいえ、まるっきり付与術士としての仕事から外れているのか、というとそうでもない。

 ()()()()()()()()()()に偽装できるような技の方が、この世界ではなにかと有用なわけだし。

 

 そういうわけで、いい加減正座を止めて立ち上がった私は、他の面々を引き連れハセヲ君達の戦闘区域の付近へ移動。

 いきなり肉薄されることはないだろう、というくらいの安全な距離に陣取り、大きく息を吸い込んで。

 

 

「『天網恢恢(ほえる)』!」

『???!』

「うるさっ!?」

「いや『ほえる』て……」

「あ、でも効いてる!?」

「マジでか?!」

 

 

 指向性を持たせた()を、三爪痕にぶつけてみせる。

 

 本来のそれ──『咆哮(ほえる)』は、元ネタであるポケモンにおけるそれと同じように、戦闘を強制終了させる技の一つである。*4

 相手に向かって()えることで、相手を畏縮させ逃げるように仕向ける……言ってしまえば戦闘拒否の技なわけだが、とはいえ誰もが逃げ出すわけでもない。

 原作であるポケモンでもそうだが、野生戦ならともかくトレーナー戦で人間が逃げ出すことはない。

 その場合、効果は『強制的な控えとの交代』というものに変化しているわけだが……『tri-qualia』の場合はまた違ったものになっている。

 

 こちらの場合、特定のボス──こちらが逃走不可であるような相手の場合、効果が『相手へのデバフ』へと変化しているのだ。

 具体的には『行動の際判定を強要し、失敗した相手を一時的な行動不能状態にする』という、ポケモンで言うところの『まひ』のような効果になっている。*5

 

 で、『天網恢恢(てんもうかいかい)*6は『神断流』の技の一つで、こちらも声に関するもの。

 具体的には『相手に怒気のこもった声をぶつけ畏縮させる』という感じの技で、畏縮した相手は暫くスペックが駄々下がりする……という、わりと使い勝手のよいデバフ技になる。*7

 

 仮にポケモンでいうなら、『全能力二段階ダウン(回避・命中率含む)』という感じだろうか?

 ……え?ぶっ壊れ?仮に本家に逆輸入するならデバフの癖に五回しか使えないとかそういう枠になるから許して?ダメ?

 えーケチ、マスターズの方とかわりと意味不な技実装してるくせにー。*8

 

 まぁともかく、『ほえる』に『天網恢恢』を偽装する形で放たれたこの声は、それゆえに本来『天網恢恢』の持つ効果に加えて『まひ』の追加効果まで発生している。

 その効果はご覧の通り、現在の三爪痕は先ほどまでの動きは見る影もなく、まさに精彩を欠いたものへと変化してしまっていた。

 

 

「……いや、無茶苦茶じゃねぇかこのデバフ技」

「最初っからこれしておけばよかったのではないかのぅ?」

「生憎だけど、使用回数に制限があるし前準備もいるんだよ()」

(本当かなー?)

 

 

 うわぁ疑われてる。

 まぁ確かに、こんだけ便利なデバフならもっと活用しろよ、とか思われてしまうのも無理はない。

 無理はないと認めた上で言うのだが、こんなぶっ壊れ運営が許すと思うのか?……というか。

 

 

(……ないな)

(ないね)

(ありえんのぅ)

(でしょー?だから【虚無】によるごまかしを踏まえても、早々使えるものじゃないんだよ)

 

 

 表向きの理由としては『いわゆる必殺スキルに相当する』、裏向きの理由としては『最悪BANされる』になるか。

 

 ……いや実際、少なくともビィ君戦でこれ使ってたら運営がAI差し向けて来てたかもだからね?あからさまにバランスブレイカーだし。

 ビィ君に向かって使った『龍封』の方はトリプル特攻刺さんないなら大したことないけど、こっちは音を聴く器官があるなら誰にでも効く……どころか、実際のところは相手がこちらの声を認知する必要はない(音波が当たればいい)仕様だから、実質的に効かない相手が存在しないと言い換えてもいいくらいだし。

 ……いやまぁ、実際のところは効かない相手もいるんだけどね?デバフ完全無効タイプの敵とか。

 

 

「まぁ、そういう相手にも行動キャンセルくらいは誘発できるから、まったく無意味ってわけでもないんだけどね」

(ガンドだ……)

(ビーストにも効くガンドとかと同じ枠だこれ……)

 

 

 なおその実態は、『神断流』の共通効果により『覚える気があるなら誰にでも使える』技術である。──ふふ、怖いか?私は怖い()

 

 

*1
歩行に限らず、適度な有酸素運動は脳の機能を活性化させ、記憶力や思考力を改善するとされている。また、歩くことが認知症の予防に繋がるという研究もあり、考え事の際に歩き回るのはある種理に叶っているのかもしれない

*2
戦意高揚を目的とした戦闘前の掛け声。ゲーム的にはパーティバフの類いであり、精神系無効・音系無効以外の味方に時限式の攻撃力アップを付与する。効果量が大きいが、代わりにターゲット変更が行えなくなる(精神が高揚した結果暴走している、という状態を再現する為のもの)などのデメリットも

*3
バフやデバフは戦闘判定が出ている時にしか使えないのが普通だろう、という主張。ターン性RPGで顕著、逆にアクション系が混じる場合は戦闘前にも使える(代わりに秒数制限が付いている)のが普通。また、その場合でも効果が切れた時にバフを掛けなおすのであれば、ほぼ確実に自身も戦闘に参加している必要がある(ボス部屋の入り口(外側)などからバフやデバフだけ投げ入れることはできない、ということ。ターゲット範囲外と言うべきか)

*4
似たような技に『ふきとばし』が存在。覚えるポケモンが違うだけで、効果はどちらも『相手を強制的に逃走させ、戦闘を終了させる』。トレーナー戦において効果が『現在の相手ポケモンと控えポケモンを入れ換える』ものに差し換えられるのも同じ。なお、それぞれ『音系』『風系』の技に該当しており、それらを無効化するとくせいを持つポケモンには無効化されることがある(『ふきとばし』が『風系』になった&それ関連のとくせいが増えたのは最近のことであり、それゆえ無効化される可能性のある『ほえる』より『ふきとばし』が優先されることの方が多かったのだとか)。なお、類似技である『ともえなげ』は相手にダメージを与えながら交代させる(野生の場合は戦闘が終了する)ので上位互換に見えるが、前者二つが必中になったのに対してこちらは外れることがある・前者二つは『みがわり』を貫通するがこちらは貫通しない、などの差がありどちらかといえば相互互換の類いである

*5
なので、ポケモン的には『へびにらみ』などの方が近い

*6
アスナさんが なにかいいたそうに キーアをみている!……冗談はともかく、『天網恢恢』とは『天網恢恢疎にして漏らさず』の略。天に巡らされた網は一見目が広くて粗く、何かを捉えるのに適さないように見えるがその実悪人を決して逃すことはない……ゆえに、例えどれほど上手く悪事を隠して見せたところで、悪人は必ず捕まってその罰を受けることになる、だから悪を犯すべきではない……という、老子が自著にて述べたもの(『老子道徳経』第七十三章中の句「天網恢恢疏而不失」より)。自然における『悪』なので、人の思う『悪』とは違う可能性あり

*7
技としての『天網恢恢』は端的に言うと『相手を叱りつける』もの。単純な怒声でも効果はあるが、相手の背景などを知っているとそこら辺を叱る言葉を組み込んで効果を上げることもできる。技としての肝は『発声方法』なので、意外と応用が利く

*8
『ポケモンマスターズEX』における『リーフ&ファイヤー』のこと。正確にはファイヤーの持つパッシブスキル『マサラの愛情』の効果により、デバフを使うと一緒に攻撃・特攻・特防を下げられることによるもの。『にらみつける』自体は防御ダウンで変わっていない。……というか、これでも大概壊れ技なのにキーアの『ほえる(魔改造)』は完全に禁止技にしかならない。なんで許されると思ったんですか?(現場猫)

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