なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、ぶっ壊れ()デバフを真正面から食らった三爪痕が動きに精彩を欠いたわけだが、無論その隙をハセヲ君が見逃すわけもなく。
「こいつで終わりだ!!食らいやがれ、『オールオーバー』!!」
「なんか知らん技使っとる……怖……」*1
とどめとばかりに放たれた大技──自身の背中に生えた翼のような剣?によるオールレンジ攻撃、および最後にそれを束ねての大切断……これ超究武神覇斬じゃね?*2
……ま、まぁともかく。彼の大技により三爪痕はバラバラになってしまったのだった。
データとはいえわりとグロいなこの状態……。
『……ァ、……』
「まだ死なねぇのか、タフすぎるだろコイツ……」
「とはいえ、ここまでバラバラにされちゃあなにもできないはずだ。一先ず警戒は解いても問題ないと思うぜ」
バラバラになった三爪痕は、足の方からじわじわと消え始めている。
……一辺に消えないのか、と思わないでもないがそもそも三爪痕自体も結構な重データだったはずなので、すぐに消えないのはある意味仕方のない話なのかもしれない。
ほら、ゴミ箱とか空にする時、中のデータが多いと時間掛かるでしょ?
とはいえ、流石に近くに頭が転がっている状態で話し続けるのはあれなので、戦闘態勢を解いたハセヲ君を連れて少し離れた位置に移動することに。
離れすぎて頭を見失うとそこから逃げられる可能性もなくはないので、一応確認ができるくらいの位置に留めてはおくが。
「……そういえば、さっきの姿は?」
「あー……スケィスと融合した状態、とでも言えばいいのか?ほら、ギルモンとかがやるやつ」
「マトリックスエボリューション*3ってこと?……じゃあ
「なるほど?」
で、最初に触れたのはさっきのハセヲ君の姿について。
Xthフォームから進化したようなさっきの姿は、位置付けとして本当にその次、みたいなモノに相当する形態らしい。
公式的にはXthの次はVthフォームだが*4、Xthの派生なのでMXthフォームと言ったところか。
……名前に関してはともかく、原理としてはスケィスの力をこの世界で発揮するためのもの、という形になるらしい。
影響を抑えるため【継ぎ接ぎ】になったことで、そこからデジモンの進化やペルソナ・その他の変身系技能のようなものとして扱えるようになった……みたいな感じか。
結果としてネット世界では無類の力を発揮できるようになったみたいだが、それはそれとしてデメリットも大きいようだ。
「より強くこのアバターに結び付いたことになるからか、斬られたりすると滅茶苦茶痛ぇんだよな……」
「なるほど、フルダイブとしての性質も強まっちゃうと」
その分操作の精密性も上がったりしているので、完全にデメリットだけとも言い難いみたいだが。
あとはまぁ、使いすぎるとアグモン達みたいなことになりかねない懸念もあるようだ。
「アグモン?」
「私たちの仲間にその見た目の人が居てねー。その性質に引き摺られてるのか、彼はここから出られないんだよねー」
「そりゃまた、大変なことになってるやつもいるんだな……」
「ビィ君に心配される、ってのもなんだか変な話だけどね」
未帰還者と同じような扱いになる、というか。
……いやまぁ、ハセヲ君の現在の居住区はなりきり郷内であるため、外で居なくなるよりかは騒ぎは抑えられると思うけども。
とはいえ、郷内でも未帰還者が発生しうる、という事実だけが一人歩きすると問題なので、できれば止めて欲しい事態ではある。
……今の状態が半ばそうだろ、というツッコミは無しでお願いします()
で、ここまでの話で疑問に思ったことがあるかもしれない。
具体的には、未帰還者だのハセヲ君の力だの、あからさまに外部の人間に聞かせることじゃない話を少女ちゃんの前で普通にしていること、という部分。
……これに関しては、彼女の状態を直接見て貰った方が早いと思う。
「大丈夫?」
「だ、だーいじょうぶよ……これくらいなんとも……ない」
まるで酔っぱらいのよう、とでも言えばいいのか。
現在の少女ちゃんは、一種の酩酊状態のようなものに陥っており、完全に前後不覚。
そのため、こちらの会話内容もろくに把握できてない始末なのであった。
三爪痕がバラバラになったあと、彼女は今の状態に陥ってしまった。
となれば、この状態は三爪痕のせい、とするのが丸い気もするけど……。
「触れられてもないのになにか影響が出る、ってのも変な話なんだよねぇ……」
「でも、多分アイツが狙ってたのってこの子だよね?」
「なんだよねぇ……」
そうだとすると、そもそも
認識障害系だとすると見てるだけで問題が発生する可能性もあるが、そうなると今度は私たちに問題が発声してないのが疑問を呼ぶというか。
ただ、今しがたアスナさんが告げたように、戦闘当初三爪痕が狙いを定めていたのは恐らく彼女。
……となると、周囲に被害を出さずにピンポイントで干渉を行っていた、という可能性が微妙に捨てきれなくなるのだ。
「……まさかとは思うが、倒したのがよくねぇってことはねぇよな?」
「……あー、どうにかして因果を繋いで、倒されたらデータが少女ちゃんに回収されるように仕向けてた、みたいな?」
「実際アイツが倒されたらこうなったんだし、否定する材料はないよね……」
そこで、ハセヲ君が気まずげに声をあげる。
三爪痕を倒した結果こうなったのだから、向こうは初めからこうなることを織り込み済みだったのでは?……という主張だ。
確かに、あり得ない話ではないと思う。……思うのだが、なんとなく初めから織り込んでいた、というのは間違いだとも思う私である。
何故かと言えば、それは最初に三爪痕が普通に襲い掛かってきた部分。
そこから、もうちょっと直接的な干渉を考えていたのではないかと思い至ったのだ。
なので、現在の
本来の手順をなぞることは不可能になったため、代わりの案として作り出したものなのではないか、と考えるわけだ。
「ふむ、なるほど……じゃあそれを踏まえたうえで聞くんだが、
「んーちょっと待って、既に解析はしてるから……」
そこまで聞いて、ハセヲ君が再度こちらに尋ね返してくる。
確かに、現状三爪痕が倒れたことによる干渉、というものがあるならそれを感知するのも阻害するのも、共に行えそうな人物は私くらいしかいない。
一応、ハセヲ君が思いきってデータドレインを試してみる、という方法もなくはないけど……これに関しては最終手段である。
だってデータドレインに
そんなわけで、私が調査やらなにやらやらなきゃいけないわけなんだけど……その一方、私の頭の片隅には気になることが引っ掛かり続けていたのだった。
「気になること?」
「三爪痕の台詞。バグってたけど、表示されてた台詞って
「……ふむ?」
それは、テキストウインドウに表示された三爪痕の台詞。
傍目には単にバグった台詞──秩序のない文字の羅列に見えるかもしれないが、逆にある程度バグ文字を噛ったことのある人にはなんとなく見覚えがあるものだった、というか。
具体的には多用される『縺』の文字。この文字が多く羅列されるパターンがエンコードミスのパターンに存在する、と言えばわかりやすいか。*5
「言われてみれば確かに……」
「ということはあれか?あやつは意味のある言葉を喋っておった、と?」
「……まぁ、驚くことじゃあねぇわな。実際のアイツも聞き取り辛いってだけで、一応こっちと会話しようって気はあったみてぇだし」
なるほど、と頷く一同。
つまり、三爪痕がなにを思って彼女を襲ったのか、というのはあの時の言動に答えが隠れている、ということがほぼ確実になったのであった。