なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、話し合いの結果三爪痕の台詞を思い返してみよう、ということになったのはいいのだけれど。
「……ログとか残ってるか?」
「いや、近くで対峙してたハセヲ君が一番ログ取りやすいでしょうよ、それを私たちに聞く?」
「それはそうだけどよぉ……」
戦闘中はそんなの気にしてないっつーか……とは、情けない顔をしたハセヲ君の言である。
ゲームなんだからバックログ*1見ればいいのでは?
……とかツッコミが飛んできそうなやり取りだが、それをするには問題があった。
そう、現在私たちが滞在中のこのフィールドである。
実はこの特殊フィールド、基本的なゲームとしての機能が阻害されてしまって、まともに動かなくなってしまっているのだ。
具体的には、メニュー部分に障害発生しまくりというか。
……元々アインクラッド内はログアウトできないのでわかり辛いのだが、よくよく見るとメニューバーにあるグレーアウトした『
とはいえメニュー機能そのものが停止しているというよりは、バグかなにかでそこに繋がる経路が断たれている……って感じみたいなので、ここから離れられればその障害も回復するとは思うんだけどね。
……勿論、ここから離れられればの話だけど!!
「ああうん、極力気にしないようにしてきてたけど……エリアチェンジもできないもんね、今の私たち」
「探索途中でワープポータルとか見付けたけど、完全に機能停止してたからね……」
現在私たちが居る場所は、
ゆえに、そこから移動すれば遺跡の入り口にだってたどり着けるのだけれど。
そもそもの話、その入り口自体がワープポータルによって扉のない建物の中に侵入する……という形での移動方法だったため、現状入り口にある動かないポータルの前に行けるだけ、という状態になってしまっているのである。
その理由は勿論、メニューと同じシステム方面であるポータルも停止してしまっているから……ということになるわけで。
メニューの方が戦闘系以外動いていないのと同じく、遺跡のシステムもそのほとんどが停止してしまっているのだった。
……これを遺跡内部に類似したフィールドに強制転送されたせいと見るか、実は私たちみんな停止時間内に閉じ込められているのかと見るかで対応が変わるわけだが……。
「とりあえず、調べた結果としては『よく似たフィールドに閉じ込められた上で時間が停止・ないし停滞してる』って感じだと思うね」
「まさかのどっちも?!」
個人的に観察した結果、多分『他所に移動した上で時間停滞中』が正解だと思われるのだった。
……え?分けた意味?最初はどっちかかなー、って思ってたからですね……。
「ただまぁ、細かく見ていくと『どっちかだけ』だと説明できない部分が出てきてねぇ」
「と、言うと?」
「他所に移動した、ってだけだと外からアプローチがないのがおかしい。時間が同じように流れているとすると、こっちもまた外からアプローチがないのがおかしいってことになるんだよね」
「……???」
おおっと、キリトちゃんが疑問符を浮かべまくっている。
仕方ないのでもう少しわかりやすく説明すると、前者は『運営が認知できない領域に飛ばされているのに、
後者は『時間停止状態でないのなら、対三爪痕戦で結構な時間が経過しているはずなのにも関わらず他のプレイヤー達がやって来ないのがおかしい』という意味である。
前者に関しては、『tri-qualia』に存在する自動バグ取り機能に引っ掛からないのがおかしい、とも言い換えられる。
一応そのバグの源が【顕象】などの【兆し】関連なら無視されることもあるが、そうでないならわりと迅速かつ丁寧にバグというのは片付けられてしまうものなのだ。
「そうなのか?」
「だから余計のこと、この階層だけおかしい……特にこの遺跡に関しては言うに及ばず、ってことになるわけ」
「確かに……序盤からバグり散らかしてたからな、ここ」
私の言葉に、小さく頷くクラインさんである。
……
三爪痕のせいとすることもできるが、わざわざ別フィールドにご招待されたことを考えるとそれとこれとは別枠のような気もする……というか?
まぁ、そこは今深堀りするところじゃないので置いといて、この部屋云々の後者の話。
こっちは他のパーティを持ち出したものの、浮島での手間取り方からして本当にまだ到着できてない……という反論が使えそうなので、それとはまた別の方向から論理を補強したいと思う。
「別の方向?」
「ミラちゃんやアスナさんがわかりやすいけど……
「「!?」」
重要なのは、結局
私たちが『tri-qualia』を始めてから結構な時間が経過しており、かつ『このフロアをボス部屋前まで確認したら
──そう、いい加減外から不審に思われる可能性が高いのである。
「こっちならゆかりんとか、そっちならモモンガさんとか。……ともかく、いつまでも『tri-qualia』を終えようとしない私たちに違和感を覚えて、外から声を掛けてくる可能性はとても高い」
「……そっか、すっかり感覚が麻痺しちゃってたけど、そもそも私達って『フルダイブっぽいなにか』でしかないんだもんね……」
「外から声を掛けられれば普通に聞こえるはず、ということか……」
私たち『逆憑依』は、それが元々持つ『
……持つが、それは実際のフルダイブとはまた別のもの。
感覚器官を二つ持つような感覚というのが正解であり、外のそれとゲーム内のそれを切り離して使うことのできる才能、とでも言うべきものが自動付与される不可思議なものでもある。
まぁ、その辺りの感覚の二重化による違和感によって、ゲーム酔いしてしまう人も少なからずいる(※ゆかりんとか)ため、メリットばかりのものとも言い辛いわけだが。
ともかく、例えフルダイブっぽい挙動を取ろうとも、私たちのメインの感覚が現実に置きっぱになっていることは確かな話。
──にも関わらず、現状外から不審がる声・心配するような声は聞こえない。
ネカフェから接続している面々もいるので、個室ゆえに声掛けがされない……みたいな可能性もあるが、それでも互助会から接続しているはずのアスナさん達がなにも聞いていない、というのはおかしい話だろう。
「まぁ一応、二人が同室かつ女性だから、部屋の中まで入ってこないって可能性もあるけど……でもそっちって確か定例会みたいなのあるんでしょ?だったらモモンガさんから念話の一つくらい飛んできてもおかしくない……ってことにならない?」
「……実際あったしのぅ、そういう機会」
ゲーム中にモモンガさんの念話が飛んできた場面を思い出したのか、微妙に苦い顔をするミラちゃんである。
……説明にわかりやすいので抜粋したけど、今いる面々ならすーちゃんもとい夏油君も互助会組のため、モモンガさんの念話を受ける可能性のある人物。
三人いて誰もそれを受けていない、となれば
それが今回の場合、このフィールドが停止空間内にあるのであれば説明できる……と繋がるわけである。
……え?それだと前者と後者が両立する理由にはならなくないかって?
それに関しては『tri-qualia』を作ったのが誰なのか、ということを念頭に置いて貰いたい。
「神が自分以外の
「うわ、嫌な説得力」
実際の彼らがどうかはともかく、【複合憑依】としてある彼ら──茅場以下三名が、ゲームを作る際に時間停止系能力に警戒を抱かないわけがない、というか。
特に、仮面ライダークロノスという時間観覧にもろに抵触する存在と関わりのある神に関しては、なおのこと。*2
……そう、このゲームのバグ修正プログラムは、ゲーム内に限定されるものの『時間操作耐性』を持つのである。
具体的にはメインプログラムとは別個のプログラムによって処理されているため、メインでの障害を無視して動ける……みたいな?
「マジかよ……」
「そこら辺も含めて、遺跡内部のバグが放置されてたのが余計にあれだった、って話になるわけ」
唖然とした表情で呟く面々に対し、小さくため息を吐きながら返す私。
……無論、強力なバグ修正プログラムとはいえ、【兆し】関連は無視・ないし太刀打ちできないという問題も抱えているわけだが。
いや、下手に対応しようとして更なるバグを呼び寄せるのも……みたいな懸念もあるのだろうが。
ともかく、このフィールドが本来
ゆえに、その原因だと思われた三爪痕が倒れたのに解放されない現状に、私たちはもう少し本腰を入れて問題対処を行うべきだと主張しようとして──、
「──縺ゅ↑縺殄a縺昴%縺ォi縺セ縺吶°」
「……はい?」
熱に浮かされたような少女の発した言葉に、思わず聞き返して、そして──。
「そういうわけで、新しくうちの仲間になることになった少女ちゃんです」
「よ、よろしくお願いします……」
「待って色々待って???」
その日の翌日、少女をゆかりんに紹介する私、という光景が繰り広げられることになったのであった……。
え?過程が省略された?
長くなるので次回だ次回!(メタ発言)