なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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三十一章 今年はホワイトデーがヤバイです
ほうら新しいサンプルだよー()


 はてさて、休日のデート()のはずがとんでもないことになってしまったわけで。

 結果、こうして新人を──それも見た感じ特に『逆憑依』にもなんにも見えない相手を迎え入れることになったわけだけど、その前提に関しては前回説明した通りである。

 

 

「前提だけね!!肝心の部分はご丁寧に端折(はしょ)られたんだけどね!!」

「別に端折ったわけじゃなくて、本人も一緒にいた方が説明しやすいから呼んだ、ってだけなんだけどね。……んじゃまぁ、挨拶して貰える?」

「あ、はい」

 

 

 なお、ゆかりんからは肝心の部分が抜けてるぅ!!……と絶賛絶叫を貰った次第である。

 まぁ、その行為をさせたのは私なので若干の罪悪感はあるにはあるが、同時に私の口から出た説明だけだと納得し辛い部分もあるだろう……みたいな感じで、こうして当事者たる彼女を呼んだという面もあったりなかったり。

 

 ともあれ、傍らの少女に挨拶を促した私はと言うと。

 

 

「ええと……【複合憑依】?確か【星融体(インクルード)】……なんて風に呼ぶんでしたっけ?……の、有瀬(ありせ)志乃(しの)です。宜しくお願いします」

「え、ああご丁寧に……【複合憑依】?いや待ってなんか今新単語があっあっあっ

「やべぇゆかりんが過呼吸起こしてやがる!いいか、落ち着いて息をするんじゃ!ひっひっふー、ひっひっふー」

「ひっひっふー、ひっひっふー……って、なにやらすんじゃおバカ!!

「おお、すっかり元気に」

 

 

 キーアん嬉しいよ、ゆかりんが元気になってくれて……。

 ……いやホントだから、そんな睨まんといてってば。

 

 ともかく、いいから詳細な説明しろ……という感情が乗った鋭い眼差し(※涙目付き)が飛んできたため、少女ちゃんもとい()()()()()の言葉に合わせて説明をする私である。

 

 

「さっきまでの説明で、彼女が『カタリナ』と『シノン』に挟まれる形になったせいで『逆憑依』化してなかった……って話は理解してるよね?」

「ええまぁ。珍しいパターンだし記憶に新しいし……それで?」

「今の彼女はそれらの要素と【()()()()】による【複合憑依】、もとい【星融体】に──って、ゆかりん?」

あ゛ーっ!!あ゛ーっ!!あ゛ーっ!!

「……あ、ダメだこりゃ。ジェレミアさーん蘭さーん、あとお願いしまーす」

「はいはーい。ゆかりさんこっちでお休みしましょうねー」

「ハーブティを用意しております、これを飲んで落ち着いてください」

「もうやだ……おうちかえる……おうちかえってねるぅ……」

「うーむ、まさか幼児退行してしまうとは……」

 

 

 まぁ、あからさまに厄介事の気配を漂わせている相手であるゆえ、ゆかりんの精神と胃にダメージが行くのは仕方のない話なのだが。

 とはいえ最終的には呑み込まなければならないのも確かなため、どうにか英気を養ったのちに立ち向かって欲しい。

 

 ……とかなんとか宣いつつ、いつものゆかりんルームを見渡す私である。

 そこにいる面々はといえば、現在ゆかりんを連れ立って離脱したジェレミアさん達を除き、私を含めて六人。

 

 まず私、それからしのちゃん。

 ついで当時の説明のため、現場にいた面子からハセヲ君とキリトちゃんの二人がピックアップ。

 そして、最後の二人に選ばれたのが──、

 

 

「なるほど。何故私が呼ばれたのかと暫く考えていましたが……つまり、新しい妹が増えた、ということなのですね!」

「えっ」

「うーん、あながち間違いとも言い切れない感覚……」

えっ

「……止めたげなさいよ、普通に困ってるわよそいつ」

 

 

 ──ご覧の通り、彼女の先輩のようなものに当たる存在、アクアとオルタが控えている。

 

 彼女達はしのちゃん以前の同類──【星融体】としての発見例第一号であることから、その本質を調べるために同行を願った形となる。

 まぁ、彼女達を【星融体】と呼ぶ、ということ自体つい最近決まったことなので、それが持つ特性とか性質とかまだまだブラックボックスもいいとこなのだけども。

 

 

「……というか、なんとなく感覚的にだけど、私達とも微妙に違うでしょ、そいつ」

「えっ」

「お、オルタにはわかるんだ?【星の欠片】として習熟してきたってことかなー」

「まっっったく嬉しくないけどね。……とりあえず、そいつのそれ()()()()()でしょ?」

「……はい?」

「あら、そこまでわかるんだ?」

……はいぃ???

 

 

 おおっと、しのちゃんが困惑から首の角度がヤバイことになっている。

 そのまま放置してると首が三百六十度回転してしまいそうな恐ろしさがあるので、指摘して首を戻すように指示する私である。

 なお、本人は「え、回るんですか一回転?」と変なことを気にしていたが……まぁうん、【星の欠片】になったんならやれてもおかしくはない、とだけ。

 

 

「ええ……なんなんですかその……ええ……?」

「一応補足しておくと、()()()()()()()()()()()()()()()()ってだけだからね?積極的にやりに行かないように」

やりませんよ?!

 

 

 うむ、いいツッコミだ。

 そのツッコミはなりきり郷において強い個性になるだろう、これからも頑張って欲しい。

 ……とかなんとか適当なことを宣いつつ、改めて彼女についての解説に戻る私である。

 

 なお、二度手間にならないようにこの会話は録画されており、目が覚めたゆかりんの網膜に直接投影することで報告の代わりとさせて頂く次第でありまする。

 

 

「いや、止めてやれよ……」

「網膜投影のあと記録媒体に残した状態で出現させる予定だから、そっちを上手く纏めて上司に報告してね、って意味もあるよ?」

マジで止めてやれよ……

 

 

 おお、ハセヲ君が深々とため息を吐いている。

 だがいいのかな、そんな反応してて。実のところ前回のあれこれでヤベーものになったのは君も同じなんだけど。

 スケィス呼べるようになった結果、現実世界でもスタンドみたいにスケィスハンド出して攻撃できるようになったの知ってるんだぜ私?

 

 これで名実ともに君もヤバイやつ入りだね!

 ……なんて風に祝ってあげたら、なんとも言えない表情でそっぽを向いたハセヲ君なのであった。自覚はあったらしい。

 

 

「……つまり、現状八雲に余計な心労を掛けずにいられるのは、ここにいる奴だと俺くらいのものってことか……」

「まぁ、キリトちゃんは普段から心労掛けてるんだけどね?」

「なんでだよ!?」

「イシュタル」

「…………」

 

 

 なお、一人だけ逃げようとしたキリトちゃんに関しては、そもそも心意とイシュタル混じってるっぽい(じゃないと外で浮ける理由がわからない)ためこれっぽっちも安全じゃない、と釘を刺しておく私であった。

 ……まぁ、安全安心じゃない云々の話するなら私だってそうなので、ある意味ヤマアラシのように互いに互いを傷付ける不毛な争いにしかならないのでいい加減切り上げるが。

 

 

「で、話を戻すと。【星融体】第一例……というと実は語弊があるんだけど、本来の初発見対象であるユゥイは状態の確認とか望むべくもないから()()()()()()()()ってことで通させて貰うとして……まぁともかく、アクアとオルタの場合は【星の欠片】がわりと変質してる、ってのは確かだね」

「そうなんですか?」

「じゃないとそんな風に呑気にしてられないっての」

「はぁ」

 

 

 よくわかってない様子のアクアに、一応私から自身が該当している【星の欠片】についての説明を受けているオルタがツッコミを入れている。

 ……実際、もし仮に彼女達に付随することとなった【星の欠片】──【終末剣劇・潰滅願望(レーヴァテイン)】がまともに稼働していたら、彼女達はこんな風にのほほんとしていられないことだろう。

 

 ジャンヌがアクアと呼ばれるのは、その性質に『海』が付随した結果だが……【レーヴァテイン】の中でそれを司るのは()()()()、すなわちノアの大洪水を元にした終末再現である。

 とはいえ元にしたのがそれ、というだけでそこに付随する意味はまた別であり──本来の意味合いは『涙』。

 終わる世界を悲嘆し涙す乙女の涙であり、その涙にて沈む世界を意味するもの。

 言ってしまえば『世界は悲しみに包まれているのでその悲劇を思って涙を流す乙女の慈悲』による滅び、ということになるのだ。

 ……オルタの方が同じような前提で『悲しみ』が全部『怒り』に差し替わり、最終的な結果が『世界を怒りの炎で包み焼き尽くす』になる辺り、今の彼女達に似合いすぎているというか。

 

 

「逆にいうと、ぴったり符合するからこそ止まっているとも言えるんだよね。これで少しでもずれてたら、本来の【レーヴァテイン】の役割──今ある世界の終わり、って目的に邁進してる可能性大だし」

「……ヤバくねぇか?」

「そうよ、他の【星の欠片】もヤバイけど、積極的に世界を滅ぼしに掛かる【レーヴァテイン】はその比じゃないのよ」

 

 

 言い換えると、職務に忠実すぎるということにもなるわけだが。

 

 ……ともかく、本来の【レーヴァテイン】を思えば、今のアクアとオルタが穏便に過ぎることは確かな話。

 そしてそれは、彼女達が純粋な【星の欠片】ではなく【星融体】としてここにあることが大きな理由であることは間違いあるまい。

 

 

「雑に言うと溶かして型に詰め直したチョコみたいなもんよね」

「唐突なバレンタイン要素……?」

「いや、今年のバレンタインは珍しくなにごともなく終わったでしょうに。……その分ホワイトデーが怖いけど、それはともかく」

 

 

 ここで言いたいことは一つ。

 アクア達と違って特に融けていない【星の欠片】を持つ【星融体】、なんて不思議存在になってしまったのがしのちゃんだとすると。

 確かに、両者は同じ【星融体】でも違うもの……と言えそうな気もしてくる。

 

 しかしてこれは、あくまでしのちゃんに宿った【星の欠片】が特殊だったというだけの話。

 ……【星融体】として成立するものはそもそもその状況自体特別だ、みたいな話もあるがそこは置いておいて……。

 

 

「ともかく。彼女に宿った【星の欠片】。それがなんなのかを知ることは、あの時起こったことを(つまび)らかにするのに必要なことは間違いない。……ってわけで勿体振らずに言っちゃうと、彼女の【星の欠片】は『天秤』だったのよね」

「天秤?」

「そう、釣り合った天秤ってこと」

 

 

 一先ず、解説のためにあれこれと情報を並べ始める私なのであった──。

 

 

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