なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「名前は天秤繋がりで【
「……なぁ、今の説明部分だけで八雲のが発狂する未来が見えたんだが」
「今回の説明には関係ないからスルーして、って言えば大丈夫だよ多分」
聞いたことのない【星の欠片】の名前だから気にする、ということなのだろうが。
子細を話してしまうと概念がこちらに根付き、結果として
……え?それはそれで酷いんじゃないかって?キーアんしらなーい。
「性質的には【
「……なぁ、わざとなのかそのノリ」
「んふふー、どうかなー」
「うざっ」
おおっと、ハセヲ君の露骨な嫌な顔。
まぁ確かに、今の私の言動がウザかったのは確かなので反省()して居住まいを正す。
……まぁ、そうなるとおちゃらけた空気が消えるということなので、
「……あれ、滅茶苦茶汗掻いてないか?」
「本当ですね、実は暑かったりしますか?」
「逆よ、逆。そいつ、今の状況にまいってんのよ。まぁ、当たり前と言えば当たり前の話ですけど」
このように、私が
なんでかって?そんなもん、
「んん?……あっ」
「気付いてくれたみたいだけど言うわねー!!確かにその可能性は──
「あーあ、キーアまでぶっ壊れちゃったよ……どうすんだよハセヲ、お前のせいだぞ?」
「なっ、いやこれ俺が悪ぃってのは無理がねぇか!?」
「全部が全部アンタのせいってわけじゃないけど、精神を立て直す暇を奪ったのはアンタのせいよね」
「ぬぐっ」
折角未来にこの動画を見てのたうち回るゆかりんを想像して溜飲を下げてたのに、そんな逃げの一手すら奪われたらもう私も発狂するしかないんだよなぁ!!
これあれだよ、なんなら未来のゆかりんの発狂も取り止めになっとるわ!!
自分がのたうち回る前にのたうち回ってる奴がいるから却って冷静になるやつだわ!!ちくしょう神は死んだ!!!
頭を抱え転げ回る私だが、それで問題が解決するなら誰も苦しまない。
……ってわけで、転がる度に苦しみ増すね?……みたいな負のループの開幕である。誰か手札誘発打って(なげやり)
「……あ、あー。おほんおほん。一応聞くんだが、本当になんにも分からねぇのか?」
「わたしのちしきにはないよー」
「その言いぐさだと、既にどういうものなのかはわかってるってことか?」
「……そうだね」
(あっ、戻った)
(戻ったっつっても、あくまで絶不調が不調になった、くらいのもんっぽいけどね)
(うるせーな、わかってるっつーの……)
とはいえ、説明を求める相手がいるのなら、それを受けないわけにもいかない。
元々その為に集まったようなものでもあるので、気持ちを奮い立たせ改めてソファーに戻る私である。
気分的には最悪の一言だが、どうにかテンションをあげて解説に戻るとしよう。
「ってなわけで、私の知識にない全く新しい【星の欠片】だけど──その実、方向性というか性質というかは、既存作品に類似したものが見られるタイプのものだったわ」
「既存作品に?」
「そ。さっきも少し触れたけど、本来【複合憑依】に【星の欠片】が混じると、成立はするけどそのあと別のものに変質してしまうって欠点があるわけ。これについては大丈夫よね?」
私の言葉に、みんなが一つ頷きを返してくる。
……アクアとオルタの例というよりは、アクア本人のパターンと言うべきか。
彼女は水着ジャンヌとゲンシカイオーガの二つの要素と、それを繋げるものとして【星の欠片】の内の一つである【
それらは全て属性として『水』であり、ゆえに親和性・関連性を持っていたわけだが……その実、
いやまぁ、【複合憑依】は本来関連性を必須とするものなので、それがあることは決して問題とは言い難いのだが……あえていうなら関連しすぎていた、というか。
慈悲による涙である『落涙』は、ジャンヌの性質にとてもよく合い。
涙による世界の沈没をもたらす『落涙』は、すなわちゲンシカイオーガがもたらす惨状を幻視させる。
ジャンヌとカイオーガの親和性は言うに及ばずだが、そもそも三者ともに相性が良すぎたのも確かな話。
それゆえ、【星の欠片】による融和反応が進みすぎ、最悪の場合世界の滅びを誘引していただろう。
それを留め、単一の存在として成立させるための楔として選ばれたオルタは、その過程で実は対応する属性のほとんどを持ち合わせてしまっている。
……雑にいうと『落涙』の対の『憤怒』であるし、ジャンヌの対のオルタであるし、ゲンシカイオーガの対のゲンシグラードンでもあるのだ。
「え、そうなのか?」
「まぁ、属性として統括されてるってだけで、オルタ自身にその辺りの影響はないけどね。……一応、ルドルフが場を整えてくれたことでその辺りを誘引できた、って感じでもあるし」
あれだ、今の形に再定義し直すのに必要だっただけなので、後から抜けてもとりあえず問題はない……みたいな?
まぁともかく、この二人が本来【複合憑依】に【星の欠片】を混ぜた時より色々問題が大きくなっていた、というのがわかればいい。
「そんなに違うの?」
「詳しく語ると長くなるから省くけど……少なくとも最終的な形は単なる【星の欠片】で落ち着くはずだからね。今のオルタ達みたいにそれぞれの形を保ちつつ【星の欠片】も使える、みたいな形になるのがレアパターン過ぎるというか」
あれだ、水素と酸素を反応させると水になるけど、今の二人は水も水素も酸素もちゃんとある……みたいな感じというか。
本来なら反応が進めば
そういう意味で、しのちゃんの方もまたレアな状態に落ち着いてしまっている。
彼女の場合、【星の欠片】が他の要素をなに一つ変化させていないのである。
いや寧ろ、
「変化させないことに、」
「重きを置きすぎている……?」
「ジャンヌ達のパターンが変化を中途半端に残すものなら、そもそもしのちゃんの場合は
名前は思い切り二人の混合なんだけどね*1、と小さく苦笑する私である。
まぁ、そこは単にカタリナさんとシノンを呼び寄せる種だった、ということになるのだろうが。
ともかく、彼女は【複合憑依】になる前から『逆憑依』としての属性が二つあるせいでどちらにもならない、みたいな不可思議な状態に陥っていたわけだが。
今の彼女はさらにそこに【星の欠片】を入れることで、
さながらそれは、左右の皿に乗せられた重りがぴったりと釣り合い、左右のどちらにも
「……ん?」
「敢えて名付けるなら『揺れない天秤』、ってところかな。支柱となる本体にはなんの影響もない、って点でちょっと特殊だけど」
「え、ってことは……」
「うん、なんとも珍しいことに、しのちゃんってば基本的にあんまり特別なことはできないんだよね。ちょっとシノンっぽく銃撃が上手くて、ちょっとカタリナさんっぽくビィ君が好きってだけで」
そう、彼女の特殊性はそこにある。
仮にも【複合憑依】──『逆憑依』なのにも関わらず、本来『逆憑依』が持ち合わせる特殊性のほとんどを発揮しない。
あくまで一般人のような、されどそれは奇妙な均衡によってもたらされた偽りの平穏。
──敢えて名付けるなら『
とある借金まみれの男が手に入れたスフィア、それをひっくり返したかのような、
それが、彼女に与えられた可能性なのであった。