なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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何者にも害しえぬ聖女の如く

「それはなんというか……意味あるのかそれ?」

「まぁ、効果あるのかって気がするよね……でもこの【星の欠片】の真価は()()()()()()()()()()ところにあるんだよ」

「本体を?」

 

 

 はてさて、仮称『揺れない天秤』……もとい『コングルアント』についてだが。

 この【星の欠片】、普通のそれら(とは言っても、そもそも【星の欠片】自体が普通じゃないのだが)とは明確に異なる点がある。

 

 それが、()()()()()()()()点。

 分かりやすく言うと、今ある世界をどうにかしようという意志が全く見えないという部分にある。

 

 

「……言われてみれば確かに。前聞いた【星の欠片】の説明だと、通常起動の【星の欠片】は原則今ある世界を滅ぼそうとするんだったよな?」

「正確には()()()()()()()()()()()()()なんだけど……まぁ、現在という世界が失われるって点ではどっちでも変わらないよね」

 

 

 こちらの言葉に、キリトちゃんが確かにと頷く。

 ……通常の【星の欠片】は、それが目覚めた時点で前の世界──言い換えると今ある世界が終わり始めてしまう。

 それは、【星の欠片】が目覚めるのは本来世界の終わりの時であるがため。

 言い換えると、【星の欠片】が目覚めているのなら()()()()()()()()()のである。

 

 その辺りの因果の逆転が理由となって、現在という世界は徐々に終わっていくのだが……とはいえ、それが完全に現在による自殺なのか、と言われると少々疑問もなくはなく。

 

 

「疑問?」

「目覚めを知らせる時の余波の部分の話、ってことになるのかな?化学反応的に言うと最初に反応が始まった部分、みたいな?」

「……なるほど?」

 

 

 例えば、水素と酸素の混合気体があるとして。

 それらが反応すると水になるわけだが、しかしこれらの気体は混ざりあっただけでは水にはならない。

 火種を投入したり、混合気体の温度が一定以上になって自然発火しない限り、それらはあくまで『水素と酸素の混合気体』のままなのである。

 

 これに近いことが【星の欠片】にも言えるのだ。

 今までに説明したように、【星の欠片】というのはそもそも確認できないほど小さな世界にあるもの。

 その不確定性こそが【星の欠片】があるという事実を否定しきれないがゆえに発生するモノであり、言い換えると現代科学が支配するこの世界ではその発生は自然と行われているモノなのである。

 単に、それらがこちらに認識できるほどに纏まって(目覚めて)いない……というだけで。

 

 逆に言うと、世界に自殺を促してしまうような()()()()()()()()()()()()()とでも言うべきものがあって、それを感知した世界が自殺を始めている……と解釈することもできるわけで。

 

 

「そうなるとほら、考えようによっては【星の欠片】側が『起きたよー』って伝えたからこそ『そうかー、じゃあ私死ぬねー』『うんー!』みたいな流れになったという風にも言えるというか……」

「……言いてぇことはわかるんだが、微妙に気が抜けるからその例え止めねぇ?」

「でもわかりやすいでしょ?」

「いや確かにわかりやすいけども」

 

 

 ならいいのよ、そもそもこの会話、あとでゆかりんにも見せるんだし。

 そっから上司への報告書に纏める形になるんだから、極力勘違いを減らすのは間違いじゃないのよ。

 

 ……ってな感じにハセヲ君を言いくるめたところで、改めて『コングルアント』についての話に戻ると。

 本来【星の欠片】の産声が世界崩壊の引き金を引くのであるとするならば、この【星の欠片】はその産声が全く聞こえないのである。

 

 

「いや、産声とかなんとか言われても俺らにはわからねぇんだけど」

「そう?オルタにはわかると思うけど」

「……そりゃ私が曲がりなりにも【星の欠片】だからでしょ。というか『産声』なんて言ったらわかりにくくなるの当たり前でしょうが、そんなもの『気配』でいいのよ『気配』で」

「……あ、なるほど。『気配』を感じられてるって時点で休眠状態じゃないってのは察せられるのか」

 

 

 いや、それで納得されても困るんだけど。

 今しがたオルタが『気配』と言い換えたけど、そもそもそれがきっかけになることがわかるのは【星の欠片】の知っている人だけ。

 目覚めた時点で世界が滅ぶ、という前提とその理由が『現在』が【星の欠片】を認知してしまうから、というところにあることを理解してないと、そもそも今なんで滅んでないの?……って疑問に答えられなくなるし。

 

 

「……あー、既に【星の欠片】まみれのこの状況の説明に支障が出ると?」

「そういうこと。単に気配だと私達(星の欠片)がここにいる時点で滅んでないのは何故?……って話になっちゃうから。普通の気配とは違う、世界の滅びを促すもの。……そういう観点からすると『産声』って言った方が通るんだよ」

 

 

 まぁ、どっちもそれを感知するための器官は第六感──虫の知らせ的な部分になるので、どう違うのかを説明するのは困難を極めるわけだけど。

 雑に説明するとすれば、『産声』の方は容赦がない……ってことになるのかな?

 

 

「容赦がない?」

「元々産声って子供が生まれた時にあげるものでしょ?両親に元気に生まれたことを伝えるためのもの、みたいな」

「……そうだな。産声をあげない子は危ない、なんて話もあるし」

「だから、『産声』の方は世界に気付かせる気でいっぱいなのよ。目を逸らさせない、気のせいだと後回しにさせない……みたいな感じにも解釈できるかな?」

 

 

 あれだ、【星の欠片】は小さい存在なので、必然的に気付かれようとすると遠慮なんかしてられなくなる……みたいな?

 結果として、それが持つ気配が強く強く世界に伝播し、『現在』に自分が目覚めたことを知らせる……と。

 

 

「それに対して普通の『気配』の方は、気付かれないようにするためにとても小さいのよ。まぁ、『星女神』様がその辺りのフィルターを買ってくれてるからって面もあるけど」

 

 

 曇りガラスの向こう側、もしくは部屋の向こうから聞こえてくる音……みたいな感じか。

 壁やガラスを通した結果くぐもってしまい、向こう側にいる相手がなんなのか判別できなくなっている……みたいな解釈でもいい。

 そもそも【星の欠片】は『あるかないかわからないからあるかもしれない』というあやふやなもの、ゆえに少しフィルターを通すと目覚めてないのと大して変わらない状態になるのだ。

 

 とはいえなにか動いているのはわかるので、そこを指して『気配』と仮称する……みたいな?

 

 

「で、それを前提として話をするけど。今みたいに安定する前のジャンヌ達って、『気配』じゃなくて『産声』バリッバリに出してたんだよね」

「え゛」

「まぁ、そのままだとヤバイから『星女神』様がフィルタってくれてたんだけどね」

 

 

 まぁ、意識してそうしてたというよりは、キリアがこっちに来た時点でフィルターをオンにしてた、ってだけの方が近いのだが。

 ってか、じゃないとキリア襲来の時点でこの世の終わりである。

 母とかなんとか言われてるけど、あの人普通にそこらを歩いているだけで『世界の終わり』が確定するレベルの厄災だからね。

 

 

「まぁ、それは私についても同じことが言えるわけなのですが、その辺り私は自前でなんとかできなくもないので……」

「逆に言うとキリアさんの場合は補助なしは無理だと?」

そのラインの人(ナンバーツー)だからね、そもそも」

「ああ……」

 

 

 まぁともかく、その気がなくてもわりと『産声』を漏らしやすいのが【星の欠片】である、ということに間違いはあるまい。

 ……その前提の上で、『コングルアント』は最初から最後まで『産声』の気配がない。

 本当に君今励起状態なの?……って疑問に思うくらい、この存在は世界に主張をしないのである。

 

 

「で、それがなんでだろうって思ってたんだけど。……多分、全部自分の中で完結しちゃってるんだよね」

「……どういうことだ?」

「本来外に漏らすもの・もしくは漏れてないとおかしいものを、理由や理屈はどうあれ一つの器に押し留めてるってこと。その結果、不変性がヤバイことになってる」

「はぁ?」

「具体的には──ん、これがいいかな」

「え、ちょっとアンタなにを」

 

 

 その理由は、かの【星の欠片】が器の保護を最優先にしているため。

 その結果として、彼女は()()()()()()()()()()()()ものになっているのである。

 

 ……とはいえ、口頭だけだとわかり辛いと思うので実践。

 おもむろに立ち上がった私は、そのまま両手を腰だめに構えて。

 

 

「かー、めー、はー、めー」

「ちょっ」

「なに考えてんだコイツー!?」

 

 

 ちょちょい、っと虚無を弄って気を集中。

 結果、両手の間に掻き集められて行く気の塊は青く輝き、周囲を照らし始め。

 

 

「はぁーっ!!!」

「やりやがったー!!?」

「って、え????」

 

 

 次の瞬間、収束されたそれは私の手から真っ直ぐに──しのちゃんに向けて放たれる。

 それは過たず彼女に突き刺さろうとして──しかし、その前で不自然に掻き消える。

 あとに残されたのは、不思議そうに首を傾げるしのちゃんだけだ。

 

 

「──とまぁ、こんな感じに『攻撃の無効化』とか発生してるってわけ」

「……もっと穏便な手で試せー!!」

「いでぇ」

 

 

 なお、その結果みんなから拳が飛んできましたが、私に攻撃の無効化とかついてないんだから加減してほしいなって()

 

 

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