なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……途中で正気に戻って良かったわね、私達」
「あのまま放置してたら、しのちゃんがぬリリィみたいになるところだった……」
「あの年頃のやつにやらせる服装ではないわよね、マジで」*1
いやまぁ、リリィがあれを着てるのも大概あれなのだが。
……ともあれ、アクアの暴走を止めたのち、現地解散となった私たちは現在ゆかりんルームから離れ帰宅中。
とはいっても、時刻的にそのまま帰るには早すぎるため、向かう先はいつもの
「どうせみんなに紹介しないといけないし、だったらラットハウスが一番手にピッタリだよねー」
「まぁ、なんだかんだと駆け込み寺みたいになってるしね、あそこ」
ライネスからは文句が上がりそうだが、新人とかをとりあえず連れていく場所としては最適というか?
……まぁそんなわけなので、しのちゃんを連れての行軍となっているわけなのであった。
なお当のしのちゃんだが、今はなりきり郷内を興味深そうに見回している最中である。
「随分見回してるけど、なにか気になることでも?」
「ええと、ここに入ってくる時ビルを経由したでしょう?そこからさらにエレベータで下に降りて……って感じだったから、幾らなんでも広すぎるなーとか明るすぎるなーとか、色々考えちゃって……」
「……まぁ、言われてみればそうよね。ここって地下なのよね……」
「んー?オルタまでなに当たり前のことを言い出すのやら」
いやまぁ、私たち側が今の環境に慣れすぎている、という可能性もなくはないけど。
そう、なりきり郷は立地的に地下。
しかもビルの真下、という限られた範囲を空間拡張技術などを用いて広げて利用しているという、ある意味不安定極まりない状態。
……ゆえに、しのちゃんがその辺りを変に把握してしまった結果、地下世界の崩壊を招く可能性を危険視されていたわけなんだけど……。
今の彼女の様子からすると、危険云々よりは不思議だなぁという気分の方が勝っている、という感じだろうか?
まぁ、変に危ないと思われるよりはまだマシなんだけど、なんというか【星融体】になってからの彼女、なんだか幼女っぽい気がしてなんとも不安になるというか……。
あれだ、アクアもなんか
同じく【星融体】であろうユゥイも大概あれだし。
「む、変なこととは失礼な。私は単に妹達を守り育てるためにですね?」
「あーはいはい、その辺りの話は耳タコだからそこまでにしてー。……とりあえずラットハウスに着いたから、続きは中に入ってからってことで」
途中、変なの扱いされたアクアから抗議の声があがったが……無辜の姉は変なの扱いが妥当だよ、としか言えない私である。
ともあれ、目的地にたどり着いたので話を止めて店内へ。
……そうして無造作に中に入った結果、思わず目が点になった。なんでかって?
「いらっしゃいませー……って、なんだキーア達か」
「なんだとはご挨拶な。……ところでその格好は?」
「ほら、そろそろホワイトデーだろ?だから男性店員達はスーツ着てご奉仕……みたいな感じらしいぜ?」
川´_ゝ`)「服が似合っていてすまない」
「それは別キャラのミームでは?」*2
店内の男性店員達が、みんな普段とは違う服を着てたからだよ!
具体的にはスーツなのだが、特に変化が大きいのがウッドロウさんである。
彼は原則コックなので服装もそれに準じたモノなのだが、今日の彼は今しがた述べた通りスーツ姿なのだ。
……もし仮にチェルシーちゃんが居たら、目がハートになってそう(小並感)*3
「実際初恋泥棒じゃない。こんなの劇物指定じゃない」
「おおっとアウラ、いたんだ」
「いたんだもなにも、アンタがここに行くように指定したんじゃない」
そんな風に思わず感心していると、店内から聞き覚えのある声が。
視線をそちらに向ければ、ココアちゃん達と同じようにラットハウスの制服に身を包むアウラの姿があった。
そう、彼女は色々あった結果ラットハウスの居候になったのである。
「アウラ、お前の前にいるのはお前の行き先を告げるものだ」
「わざわざネタに合わせて言う必要ないじゃない」
みたいなやり取りの結果、彼女はここの所属になったのだが……見た感じ上手くやってるらしい。良かった良かった。
「よく言うじゃない。もし仮に私が暴走したら?……っていう問いに対しての最適解を設置しておいてどの口じゃない」
「ああ、なんでここに行かせたのかって思ってたけど……そいつの右手目的だったのね」
「仮に『
いやまぁ、一応右手で頭を触るという過程はいりそうな気もするけども。
……ともかく、特殊な能力を持つがゆえに危ない、みたいな相手を監視するなら上条さんが最適なのは間違いないだろう。
無論、彼との会話の結果精神が安定するならそれに越したことはないが。一種のカウンセラー扱い的な?
「生憎上条さんはそういうのとは無縁の生活なのですが?」
「
「偏見だー!!」
不幸だー、みたいなノリで叫ぶ上条さんに苦笑を返しつつ、いい加減入り口に留まるのもあれなので席に移動する私たちである。
店内の装飾はどことなくホワイトデーを想起させるものとなっており、先月のバレンタインといいイベントごとに積極的なラットハウスの気質をよく表しているとも言えるだろう。
そんな空気を感じながら席に着けば、メニューの方もホワイトデーっぽいものになっていることに気付く。
具体的には執事が目の前で入れてくれる紅茶、みたいな感じのモノが並んでいるというか。
「……執事喫茶かな?」
「まぁ、ホワイトデーらしさというのも中々難しいものだからね。我が兄上殿が居るのであれば存分に使い回すところなのだが、生憎とここには居ないし」
「おっとライネス、もしかして今日の料理は?」
「私……と言いたいところだけど、生憎調理はトリムマウだよ」
「ぴっかぴかぴー」*4
思わず私が感想を呟けば、調理場の方から聞き覚えのある声。
ここの主であるライネスが奥から出てきたため、今日は彼女が料理人役なのかと思ったのだが……ふむ、実際には
まぁ、彼自体もスーツ姿なので、本来は表に出ることを想定しているのだろうなぁ、という感じではあるのだが。
なお、ピカチュウの姿に関しては右手のフライパンがよく似合っていた、とだけ告げておく。*5
「ホワイトデー大会、ねぇ?」
「去年の君達、あれこれやってただろう?あれから『ホワイトデーも騒ぐべきでは?』みたいな主張が上がったみたいでねぇ」
「おおっと、まさかのやぶ蛇だった」
なのでイベントの是非については特に語らず、あくまでイベントそのものの話に移行する私である。
で、今回のトラブルについてなんだけど。
なんでも、去年私たちがやったホワイトデーのパーティに感銘を受けた面々が、今年はそれに負けないようなイベントをやろう……と発起したらしい。
結果、生まれたのがホワイトデー対抗イベント。
参加者を募って最高のホワイトデーを演出しよう、という大層頭の悪い企画なのであった。
「そもそも最高のホワイトデーとは?基本的にバレンタインの返礼、って意味合いが強いんだし、らしさとか定義できなくない?」
「だからまぁ、そういうところも含めて競う……みたいな話になってるみたいだぜ?俺の服装もそういう意味のものだし」
「ええー……」
ホワイトデーを競うってどういうこっちゃ(真顔)
もうこの時点で企画の迷走を感じないでもないが、それでも強行されてしまう辺りがなりきり郷がなりきり郷たる所以というか。
ともあれ、去年の賑やかさに負けなければなんでもいい、とばかりに参加者を募ったホワイトデーイベント、参加者は多く今のところ好評だとかなんだとか。
「そういうわけだから、君には他所の施策を調べてきて欲しいんだよね」
「どういうわけ???」
「ほら、君って実質的にラットハウスOBみたいなものだろう?」
「うーん否定できない……」
なんでそこで私の名前を出したじゃない、もしかして私を忙殺しようとしてるじゃない……とかなんとか苦言を発するアウラをスルーしつつ、ライネスの言葉に渋々頷く私。
確かに、身内が複数所属しているのだから私もここの所属のようなもの。
ゆえにライネスから頼まれれば断り辛い……のか?本当に?
微妙に疑念を感じつつ、けどまぁ別になにか他の用事があるわけでもないので彼女の頼みを聞くことにした私であった。
なお、現在の同行メンバーはそのまま継続である。
「えっ」(寝耳に水、という顔のキリト)
「…………」(だろうな、って感じでフォークを咥えて半目になっているハセヲ)
「?」(よくわからない、とばかりに首を傾げるしの)
「…………」(マジで言ってんのコイツ、みたいな渋い顔をしているオルタ)
「よくわかりませんが、姉の力が必要なら協力は惜しみませんよ!」(いつも通りのアクア)
「意志が全く統一されてないじゃない」
「アウラ、お前もついてこい」
「!?」
いや、なんか暇そうだしラットハウスからの同行者一人くらい必要だったし?
……というわけで、急遽他所のホワイトデー施策を調査する旅が始まるのであった。