なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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おいホワイトデー祝わねぇか?

「調べるとは言うけど、具体的に何処に行くじゃない?」

「そうだねぇ、片っ端からあちこちの店に突撃するのが一番かなー」

「マジで言ってるじゃない……?」

 

 

 はてさて、いつもの見慣れた服装にアウラが着替えてくるのを待っていた私たちは、ラットハウスから出てきた彼女を連れつつ街を散策中。

 当初危険視された「しのちゃんからアウラへの印象」問題も、今のところは大丈夫そうである。

 まぁ、仮にも魔王たる私がずっと一緒にいて判定が出てないんだから、大丈夫だとは思っていたのだけれども。

 

 

「でもほら、同じ【星の欠片】だからその辺の判定が甘い可能性は否定できないじゃん?」

「それで私が攻撃されてたら目も当てられないじゃない……」

 

 

 まぁ、アウラが【顕象】……【兆し】関連だからスルーされてる、って可能性も十二分にあるわけだが。

 

 つまりリアル魔族がいたらしのちゃんの反応がヤバくなる可能性がある……?

 いや、リアル魔族てなんやねん、という別方向のツッコミに発展するんだけどね、その場合。

 

 

「ただそれもそれで、キリアみたいな他所からの来訪者のことを思うと、わりと笑い話にすらならなくなるんだよねぇ」

「一つ見つかったのなら二つ目が見つかる可能性は大いにある、ってことか……」

「そうそう」

 

 

 無論、可能性で物事を語る以上、『ありえない』と切って捨てられるものはほとんどない、ということも自覚しないといけないわけだが。

 例え一パーセント未満の出来事であれ、それを無数に集めたサンプルに突っ込めば実現性は普通に出てくる……というのは、寧ろ私たち【星の欠片】こそが真っ先に考慮しないといけない話なのだし。

 

 なのでここでの正解は『今のところは見つかってないんだから知ーらね』である()

 

 

「投げ槍過ぎやしねぇか……?」

「全ての道先を未来視で知ってて自由に切り替えられる……みたいな話ならともかく、そうじゃないんなら未来という未知に対して構えすぎるのが間違い、ってのは本当の話だからね。ある程度気を緩めるくらいで丁度いいのさ」

 

 

 神ならぬ我が身では、みたいな話というか。

 ……いやまぁ、これを(星の欠片)が言うのは正直アレなのだが、とはいえ完全に・完璧に未来を知ることができる存在、なんてのは存在しえないので仕方ないというか。

 少なくとも、今見え無いものが正確には()()()()()()()()()である以上は……みたいな?

 

 

「まぁ、その辺りの話は面倒臭いし最終的に『星女神』様の領分になるから投げるとして。とりあえず何処に入る?そこら辺の喫茶店とか行っとく?」

「流石になにも頼まないのに料理屋系統に入るのはなぁ」

 

 

 長くなりそうな話は放置するとして、改めてこの散策の目的に戻る私。

 他所のホワイトデー施策を観察する、というのが今回の役目だが、それには店内に侵入する必要がある。

 

 必然怪しまれるわけで、そこら辺をごまかすにはちゃんとした客に偽装する必要があるだろう。

 となると、料理屋ならなにかしら料理を頼む必要がある、ということになるわけで。

 ……さっきラットハウスで早めの昼食を摂ったばかりの私たちにとって、その選択は中々にハードだと言えるだろう。

 

 

「アクアなんかはわりと食べる方だけど、かといって彼女だけに偵察を任せるのも……ねぇ?」

「単に飯食って出てくるだけならいいけど、もし仮に妹増やして出てきた日には私は切腹するわ、責任を取って」

「な、突然なにを言い出すんですかオルタ!?妹は妹ですよ、増えて困るものじゃないんですよ!?」

「んーこの会話の通じてない感」

 

 

 一人だけ、今からでも追加の料理が入りそうな人間がいないでもないが……彼女の場合は追加の(悪)影響を思うと一人で行動させるのはNG。

 となれば誰か一人お目付け役を同行させる必要が出てくるのだけれど……オルタはそもそも自分に止められると思ってないのでNG、他二人(ハセヲ・キリト)も相性が良くないので無理。

 

 つまり、私がしのちゃんを付けるしかない、ということになるのだけれど……流石に彼女に付きっきりで・かつ二人だけで行動するのは御免願いたい。

 何故かと言えば、私の見た目が問題だった。

 ……うん、今銀髪なんだよね私。なんなら幼女なんだよね見た目の区分。

 ───邪リィルートまっしぐらやんけ!!

 

 

「一応姉ビームには対抗できると思うけど……流石に周囲の空気感までそっち方面に持ってかれると困る。知ってるとは思うけど、私(キリア)方面でそういうの(洗脳系)あんまり得意じゃないから」

「なにをそんなに心配してるんですかキーアちゃん!お姉ちゃんがついてるので大丈夫ですよ!」

「ほらね」

(滅茶苦茶怖がってる……)

 

 

 流石に前の時ほどそこら辺の耐性がないってことはないと思うが、とはいえ一度植え付けられたトラウマがそう簡単に拭えるものか、というのも事実。

 

 ゆえに、こうして自身を家族ですよ、みたいな感じで迫ってくる相手は地味に苦手なのである。

 気付いたら(キリア)とか(アクア)とか母親(ユゥイ)とかにされてそうで怖い(真顔)

 

 そんなわけなので、できればアクアと一緒に行動というのは勘弁願いたい。

 ……となるとしのちゃんに任せるのか、という話になるんだけど……。

 

 

「一見すると最適っぽいんだよね。『揺れない天秤』相手に姉ビームだの母ビームだのはまず効かないだろうから。ただ……」

「ただ?」

「アクアをヤバイ奴(へんしつしゃ)判定されるとすっごい困る。とても困る」

「ああ……」

 

 

 方向性的には『メカクレスキー』成分最大発揮状態のバーソロミュー、みたいな?

 こう、危険性はないんだけど正直言ってキモい()みたいな判定になると、結果として『自身に恐怖という脅威をもたらす相手』として判定されかねないというか。

 

 もし仮にそうなった場合、さっきのなりきり郷が滅ぶ云々の話に飛び火しかねないので、実際のところは絶対に二人きりにしてはいけないタイプの組み合わせなのであった。

 なお、当のアクアからは『もう、お姉ちゃんをなんだと思ってるんですか!』とお怒りの言葉が飛んできていた。そういうところだよ(白目)

 

 

 

 

 

 

「最終的に料理屋は全部後回し、って感じで決着しましたね」

「それがいいじゃない。変に会話バトルになっても面倒じゃない」

「お、いいこと言うね。流石は自分が主役のエピソードが作成されることが決定するだけのことはある人気キャラ!」

「なんか皮肉言われてるみたいで嫌じゃない……」

 

 

 というか、本当に人気過ぎじゃない私?*1

 ……と首を捻るアウラである。一応区分的には単なる中ボスみたいなもんなんだけどね?

 

 なんてことを駄弁りつつ、やってきたのは百貨店。

 複合施設としてなりきり郷内でも最大級となるこの店舗は、それゆえに内部に集められたテナントも膨大なものとなっている。

 

 

「だからこそ、ここを調べることでサンプルをたくさん手に入れられるってわけじゃない」

「まぁ、個店舗と比べるとやれることが限られたりするから、あくまでサンプル扱いだけどね」

「その辺はテナントってそういうものだから仕方ないじゃない」

 

 

 洋菓子店や服飾関係、貴金属類に小物、食料品に趣味用品……。

 幅広く取り揃えられているのは、それだけテナントが集合しているからこそ。

 ゆえにサンプルをとにかく集める用途には向くが、同時に単なるサンプルにしかなり得ないという弱点も含む。

 イベントやるならやっぱ実店舗の方が制約少ないからね、仕方ないね。

 

 ……なんて前提を共有しつつ、店内に入った私たちは人の流れに沿うように通路を進んでいく。

 ホワイトデーフェア開催中、ということもあってどうやら人の流れが集中するのは洋菓子店などの食料品店が多いようだ。

 無論、服飾関連や小物類の方にも流れていく客足は多い。

 

 

「ただなんというか、お客に女性が多すぎない?」

「……ああそうか、企業側は基本商品の提供元だから、本来ならモノを買いにいくのは男性になるはずなのか」

「それにしちゃあ、やけに黄色い声ばっかりな気がするんだが……って、あ」

「あ?……って、あ」

 

 

 多いのだが、同時に客層が女性ばかり、というのも気になるたころ。

 

 ホワイトデーが男性から贈り物をする日、とするのなら本来ここで人波を構成するのは男性のはず。

 企業からモノを贈るのではなく、()()()()()()()()()()()()のが普通のはずなのだから、ここで女性が客層の大半を占めるのはおかしい……みたいな疑問から首を傾げた私たち。

 

 それからそう時を置かず、ハセヲ君がなにかに気付いたように声をあげたため、みんながつられて彼の視線の先を追うことに。

 

 彼が見ていたのは、客足が向かう先──言い換えればこの波の終点。

 どうやら上の方に視線を向ける限り、そこはとある洋菓子店──数あるテナントのうちの一つが店を構える場所のよう。

 店名を示しているのだろう装飾から視線を下にずらせば、ガラス越しにパティシエが調理を行う姿を眺められるようなスペースが目に入る。

 周囲の女性客達は、どうやらそのガラス越しのパティシエをお目当てに集まっている様子であった。

 

 私たちが思わず声をあげたのは、そこで調理を行う相手に見覚えがあったため。

 そう、私たちの視線の先──ガラスの向こう側で洋菓子を次々に作り上げていたのは。

 

 

「……なぁ医者のロー君よぉ、なんで俺はこんなところで自分が食べられるわけでもない洋菓子を作る羽目になってんだ?」

「んなもん決まってんだろうが、お前が血糖値がやべぇって泣き付いて来たんだろうが」

「それがなんでこうなるんだよ……」

「自分が食べられない洋菓子を前に忍耐を鍛える訓練」

「ダイエットぉぉぉぉっ!?これダイエットのノリなのぉぉぉぉぉっ!!?」

 

 

 ツッコミの声と共に、周囲から黄色い声があがる。

 ……うん、彼と言えばそうだよね。そりゃそうなるよね……みたいな気持ちが胸中を埋め尽くすが、とはいえそれで終わらせるわけにもいかない。

 なので仕方なく、みんなを代表して私が声を掛けたのだった。

 

 

「……なにやってるの銀ちゃん」

「なにっておめぇ、無償奉仕……ゲェーッ!!?キーアッ!!?

「俺もいるぞ」

 

 

 二人──ロー君と銀ちゃんは、ガラス越しにその存在感を周囲に振り撒いていたのだった……。

 

 

*1
4/17に発売予定の『葬送のフリーレン』のノベライズのこと。五つの話が収録される予定だが、そのうちの一つがアウラの前日譚になるとのこと

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