なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「はぁ、バレンタインでチョコを食べすぎたと?」
「まさかカエル顔の医者に『うん、このままだと君は死ぬね?というか寧ろ今死んでないのが不思議なくらいだね???』なんて言われる羽目になるとは思ってなかったというか……」
「あの人にそこまで言われるの、わりと驚愕なんだけど」
それもはや、血液がチョコになっていたとかそういうレベルなのでは?
銀ちゃんの糖度レベルがまさかの
なお、ここでいうレベル六とは至高の領域……即ち天に至るような話、という意味である。
無論『命の危機で天に昇りそうになっている』方の、だが。
「お、俺もまさかの絶対能力者か。だったら摂取した糖分に牙を剥かれないようにしたいもんだが」
「勘違いしてるようだから言っとくけど、貴方は単なる器だから」
「……あれ?俺もしかして遠回しに糖分に弄ばれてる、って言われてる?」
「遠回しでもなんでもなくそうだが???」*2
というか、現代人は誰一人として糖分に勝ててないが???
……的な、
なお、一応念のために説明しておくと、現在の私たちの位置はさっきのお店の裏手。
表に集まっている女性客からは見えない場所となっている。
何故かといえば、あのまま表で話してたら営業妨害になりそうだったから、というところが非常に大きい。だって、ねぇ?
「まさかあの女性客のほぼ全てが、ロー君と銀ちゃん目当てに集まってるとは思わなかったんだもん……」
「そう?寧ろそれ以外にないと私は思ってたけど」
「実装イベで趣味に走りまくってた人は言うことが違いますなぁ」
「なななななにを言ってるのかさっぱりわからないわ私ぃ↑」*3
あそこに集まっていた女性客、みんなロー君と銀ちゃん目当てだったんだもの。
……いやまぁ、言われてみれば確かにって話なんだけどね?
ロー君はワンピースきっての人気キャラ、臨時麦わらの一味として長い間一行に加わり続けたことでその人気は天井知らずで高まっており、迂闊に死亡でもした日にはネットが大炎上しかねないレベルの存在だし。*4
銀ちゃんの方も腐ってもジャンプ主人公、意識しないとそうは思えないが、要素だけ抜き取ると『決める時は決めるタイプの銀髪キャラ』、人気の出ない要素がないタイプのキャラである。
「つっても、別に嬉しいことばかりってわけでもねぇんだけどな」
「おおっと、私はイヤな予感がするからそれ以上喋らない方がいい、とだけ忠告しておくよ」
「お、おう?」
ただまぁ、要素だけ見て中身を見てない人もいる(できる限り穏便な表現)……的なことを彼が思っていそう、みたいなことも読み取れたため、それに関して銀ちゃん本人の見解を話すことは止めさせたのだが。
ほら、余計な火種は起こさせないに限るというか?*5
「その発言を聞かれた時点で大問題だとは思うがな。……ところで、アイツは大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。去年よりさらにパワーアップしたリリィからの贈り物に対抗するため、エミヤんに徹底指導を受けた今のハセヲ君なら、私たちが会話する時間を捻出することくらい朝飯前だよ」
「なるほど……(去年のあれよりヤベェことになってんのか……)」
そんな私の言葉に反応したロー君は、しかしてそれだけに留まらず表の様子を気にしたような言葉を返してくる。
具体的には、彼らがこうして抜けた穴を一人で補填しているハセヲ君に対しての心配の言葉だったわけだが、私はそれが要らぬ心配であることを知っていたため、冷静に返事を投げたのだった。
そう、去年の時点でハセヲ君は『お世話になっていますので!』という、天真爛漫なリリィからのバレンタインプレゼント(城型ケーキ)に苦しめられた()身の上。
ゆえに今年もそれが最低ラインだと定め、(渋々)エミヤんに指導を受けに行ったのである。
その結果、ある程度の調理なら問題なくこなせるようになった彼は、去年なんて豆粒のようなものだった……というある種の絶望に相対することになるのだが……その辺りは長くなるのでまたの機会に。*6
まぁともかく、彼がそのルックスと声と腕前で女性客を魅了していることはほぼ確実。
なので、安心して私たちは裏で会話ができる、という次第なのであった。
「……まぁ、アイツも声からして好かれるタイプだからな」
「クラウドさんとかも連れてくれば完璧だね!」
「そうだn……いや待て、なんかイヤな予感がするから止めておこう。具体的には思い出の中でじっとしてられないヤツがやってくる気がびんびんにする!」
「え?ダンブルドアさんが狐耳に?」
「なにそれすっごくみたいんじゃが!?」
「ど、どこから現れたのミラちゃん……」
その結果、何故かミラちゃんが現地に召喚される羽目になったが……うん、企業のCMってはっちゃけてなんぼ、みたいなところあるよねとだけ呟いておく私である。*7
「仮にセフィロスが居ようが居まいが、俺には関係ねぇけどな。そもそも他にクラウドいるわけだし」
「止めろぉその名前を出すなぁ!」
「ダンブルドアさんが『名前を言ってはいけないあの人』みたいな扱いになってる件について」
キリトちゃんが茶化すように言うが、なりきり郷でそういう冗談は本気に取られるぞ、と返せば途端に真顔になって「ごめん……」と謝ってきたのだった。わかればよろしい。
まぁ、うん。
ダンブルドア氏はあくまで若い時の声が同じ、というだけなのでそこまで影響は大きくないと思うが、問題は通常時で同じ声のキャラ。
具体的にはリンボのことになるが、奴なら嬉々として狐耳生やして来そうなのでイヤなのだ。
なんならそのまま『拙僧が悪い狐になったら、貴方は怒って下さりますかな?』とかなんとか多方面に喧嘩を売るような発言をして周囲を更地に変えそうな予感すらするというか。
なお、この場合の更地とはリンボがやるのではなく、彼の言動にぶちギレた狐系キャラ達にリンチされた結果土地が死ぬ、的な意味である。
「仮にそうなったらリンボの一人勝ちみたいな感じになるからね」
「ああ、快楽主義……」
……ってなわけで、脱線していた話を戻して。
やっぱりと言うかなんというか、ホワイトデーイベントというのは基本的に『男性が女性に対して奉仕する』みたいな形式になるのが一般的、ということになるらしい。
少なくともこの百貨店内のテナントは、どこもそんな感じでイベントを回していたのだった。
「どこも凄い女性客じゃない。もしヒンメルがいたら店員側になってそうじゃない」
「うーんそうかなぁ?あの人そういうとこは一途な気がするけど」
「遠回しに働いてる男子を一途じゃないって言うのは止めるじゃない」
それ喧嘩売ってると思われても仕方ないじゃない、というアウラの台詞にそれもそうか、と反省する私である。
ともかく、仕事はまだ続くのだという銀ちゃん達に別れを告げて再び観察を始めた店内では、色んな男性キャラクター達が店員として働いているのが見える。
で、客の方なんだけどどうにもその大半が一般客?に見えるのだが、これはどういうことなのだろう?……というのが現在の疑問であった。
「なにかおかしいのか、これ?」
「おかしいでしょ、だってここなりきり郷なのよ?」
「……あー、仮に一般人っぽい人が居たとしても、そもそもこんなごった返すほどじゃないと?」
「まぁ、なりきり郷全土の一般人が集まればこれくらいになるかも、みたいなところはあるけど」
それって逆に、みんなこの百貨店に集まってるってことになるじゃん?
……と付け加えれば、それは確かにおかしいなぁという反応が返ってくる。
そう、現状の不思議は一般女性客の多さにある。
一応、いつぞやかに見掛けたことのある『モブっぽいなりきり達』というパターンの可能性もあるが……それも流石にここまでの規模だとは思い辛い。
いやまぁ、『イケメンにきゃーきゃー言うモブのなりきり』なんてニッチな需要がないとも言わないが、それがこれほど集まるものか?……と言われると首を捻らざるをえないというか。
無論、パパラッチとか拝んでる爺さん婆さんみたいなのがありなのだから、彼女達みたいなのも普通に成立するのはわかるんだけどね?
でもほら、人垣をどこでも形成するレベル、となると流石に疑わしさが勝るというか。
「なんで、これを異変と取るか単なる偶然と取るかで、これから私たちがするべきことも変わってくると思うんだよね」
「異変かぁ……」
それは、これがホワイトデーに託つけた異変なのでは、という懸念。
そしてそれが正しいのであれば、私たちはもっと本腰を入れてこの事件に向き合う必要性があるという、ある意味当たり前の確認なのであった。