なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
さてはて、このホワイトデーイベント、もしかしたら異変かも?
……という微妙に胡乱な説をぶちあげた私。
とはいえ丸っきり胡乱かと言われるとそうとも言えない。それが何故かと言えば、今年のバレンタインは
「……そういえば、確かにあったはずなのに妙に記憶に残ってねぇな、今年のバレンタイン」
「リアルチョコの城を贈られたハセヲ君でこれなんだから、そりゃなんかがあった・もしくはこれからあると察せられると思わない?」
その言い方俺が不義理みたいじゃね?……と嘆くハセヲ君はともかく。
現状、私たちに今年のバレンタインの記憶が薄いことは確かな話。
記憶が薄い原因については、
それよりも根本の部分である
いやそんな、イベントごとの際にはトラブルが起きるべき、みたいな決めつけは宜しくないんじゃ?……みたいな反応が返ってきそうな気もするが、よーく考えて欲しい。
「会話のネタに飢えているなりきり民がイベントスルーとかする?」
「しねぇな」
「しないね」
「ないわね」
「ありません」
……ご覧の通りである。
厳密にはなりきり(やってた)民じゃないアクアでもこう断言するくらい、ここの人達は『イベントにはトラブルがつきもの』と思っているわけだ。
これは見方を変えると、そういう『
なにごともなかったバレンタインの後なのだから、
「筋は通ってるじゃない。……ただ、仮にそうだとしてなにが起こるじゃない?」
「考えられるのは……いつかのハロウィンの時みたいなことが起きるパターン、かな」
「いつかのハロウィン?」
アウラの言葉に思い起こすのは、一昨年のハロウィンのこと。
なにせ、その影響でこの地に起きたことは、実質的な
そういうものの外側にいるような存在がいたからこそ、今では虚数事象みたいに扱われているが……それでも、なんやかんやあってなりきり郷が吹っ飛んだことは変わるまい。
「で、なんでそんなことになったのかっていう大本を辿ると、その時のハロウィンはある種の聖杯戦争になってたから、ってところが大きいわけ」
「ええと……ホーリーグレイルだのアートグラフだのっていうやつ?」
「そうそう」
まぁ、なんで『
……『願いを叶えるもの』としての聖杯を世に広めたのは『fateシリーズ』かもしれない、みたいな話もあるのだが今回は関係ないので割愛。*1
ここで重要なのは、あの時のなりきり郷が一種の『聖杯戦争』を行っていた、という事実一つのみである。
「で、戦争ってくらいだから争いに相当するものがあったわけだけど……」
「ああなるほど、確かその時も今みたいに
「そうそう。……状況が似ていると思わない?」
「あーうん。景品の話を聞いてないから完全な判別はできないけど……」
「仮にまたなにか貰えるって話なら、確かにこれが『聖杯戦争』だってことになってもおかしくはねぇか……」
私の言葉を聞いて、小さく唸る一同である。
……とはいえ、これに関してはまだ予想でしかない。
ホワイトデー大会なるものの概要をきちんと把握していないため、予想が先行して突拍子もないことを言っている可能性もあるわけだ。
「実際、前のハロウィンが酷いことになった、ってのをうっすらとでも覚えているだろう面々からすれば、優勝景品に迂闊なものを選ぶのは避けるだろうしね」
「……そういえばそうね。まともな感性なら自分が消し飛ぶ、みたいなのは避けるはずじゃない」
「だからこの女性客がポイントになるのよ」
「どういうことじゃない!?」
ただまぁ、あれからイベントごとに大仰な景品を出すのは厳禁、みたいなルールが制定されたこともあり、少なくとも郷の住民がそういう滅びの流れを誘導するのは不可能になった、というのも確かな話。
……なんかこの言い方だと、望んで郷を滅ぼそうとしている人がいるみたいに聞こえるから一応補足しておくと、
……まぁともかく、意図しようがせまいが滅亡へのカウントダウンを始めるのが難しくなったというのは事実。
だがしかし、忘れてやいないだろうか?なりきり郷という組織そのものが抱えている問題、とでも言うべきものを。
「問題?」
「ああ……そっちについてはわかるじゃない。確か【兆し】やそれに伴う気質が集まりやすい、とかだったわよね?」
「そう、単純に言うと
それに関しては、ある意味深く関わっているとも言えるアウラから声が上がった。
……そう、【顕象】や【鏡像】、『逆憑依』の元となる【兆し】。
そしてその【兆し】が集める気質が
要するに、内を対処しても外から転がり込んでくるのだ、という話である。
「バレンタインほどじゃないかもだけど、ホワイトデーだって人の悲喜交々が行き交うもの。……となれば必然負の感情だって発生するし、気質的な低地であるなりきり郷にそうして生まれた負の感情が転がり込んでくるのもまた必然……」
「そうなれば魔族だの鬼だの化生だの、よくないものが溢れる可能性も増えるじゃない」
「それをどうにかしようとしてくれてるのがビッグビワとかになるんだけど……それのやり方、どういうものか知ってる?」
「え?ええと確か……負の感情を材料にして、無害なものを生み出すことで消費する……みたいな話だったような……」
ただあるだけで発生する問題を、無害なものに変換して消費する……という形で解消してくれているのがビッグビワだが。
本来、その仕事は終わりを迎え彼女は眠りについたはずであった。……いつの間にか再稼働している辺りあれなのだが、それでも彼女が仕事をしているのなら問題はないはず。
……ないはずなのだが。
もし仮に、無害なものに変化させたはずのものが
「……仕事をミスった、ってことか?」
「そうじゃなくて。例えば性格は善良だとしても、軽く握っただけで鉄を折り曲げるような怪力があったら持て余すでしょ?」
「ああ、それは確かに……って、まさか……」
「……本来眠っていた彼女が再稼働を決断するほどに気質が集まっているのだとすれば、同様に
わかりやすく言うと、一般人には無用な莫大な魔力……みたいな感じというか。
とはいえ、それは流石にわかりやすぎるしビワも取らない手段だろう。
例え手がなくともあからさまに爆弾、選ばない選択肢ナンバーワンというやつだ。
──じゃあもし、使いきれないエネルギーを与えられたとして、彼女が選ぶ消費の手段はどうなるだろう?
「ま、まさか……」
「塵も積もれば山となる。つまり、無害なものを
「……この女性客、全部【顕象】って言うつもりじゃない!?」
「流石に全部ってことはないと思うよ?ただまぁ、結構な割合で普通の人に見せ掛けた普通じゃない人、なんじゃないかなぁって……」
あれだ、人海戦術?
……そんなわけで、一般客に見えるが一般客じゃない可能性、というものに言及する羽目になった私なのでありましたとさ。