なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なるほど、『揺れない天秤』でモブ達をモブ達として固定するってことか」
「自対象じゃなくて他対象になるのが懸念点だけど、現状問題を解決するのに一番向いてるのがしのちゃんってことに間違いはないね」
「え、ええー?!」
結局のところ、モブ達が不安定だからこそヤバイのだから、彼女達をしっかり安定させれば問題は解決なのである。
で、それを解消するのに恐らく一番向いているのが、なにを隠そうここにいるしのちゃん、ということになるのであった。
まぁ、本人は全くピンと来てないみたいだけどね?
今のところ自分に対してしか【星の欠片】の影響がないのだから、それもまぁ当たり前といえば当たり前の話なのだけれど。
「でもまぁ、よくよく考えてみてほしい。そもそも【星の欠片】ってどういう存在だった?」
「え?ええと……」
「特定の現象を世界の理にまで拡大するもの……みたいな認識が正解に近いんじゃない?」
「まぁ、普通の人にわかりやすく説明しようとすると、大体そんな感じになるね」
オルタの返してきた言葉にその通り、と頷く私である。
本来【星の欠片】とは、その名前が示す通り
ここでいう星とは世界──人の認識が及ぶあらゆる場所のことであり、それゆえに【星の欠片】は新世界の種・もしくは雛型と言うべきものとなっている。
──言うなれば、新しい世界法則になりうるものなのだ、【星の欠片】というのは。
にも関わらず、しのちゃんのそれはあくまで彼女個人で影響が留まってしまっている。
無論、一人の人間の精神を一つの世界と見なす考え方がある以上、これもまた
「【星の欠片】的には、外にいる存在にも干渉できるのが普通……みたいなところはあるよね。つまり、しのちゃんにはまだまだ伸び代があるってことなのさ」
「私に、伸び代……?」
それが個人の世界にのみ収まる程度のモノであるならば、【星の欠片】とは呼ばれないだろう。
彼女のそれは、見方を変えれば心の壁──ATフィールドを作るもの、という風にも解釈できる。
そしてその解釈が是であるならば、彼女は能力を逆転させることで他者の心の壁を解体することができるかもしれない、とも見なせてしまうわけだ。
「な、なるほど……?」
「まぁ、実際にそういう法則なのかはわからないけどね?私も知らない【星の欠片】だし。ただまぁ、【星の欠片】を名乗る以上その本質は
「な、なるほど……」
自分を強固に保ち、他者からの干渉をはね除けるというのは、解釈を変えると『自他を強くわけるもの』ということになる。
……ある種の境界を操るもの、として見ることができるようになるわけで、そうなると必然境界そのものに手を伸ばすことのできる可能性、というものもまた見えてくる。
そう考えると、もしかしたら彼女の
仮にそうだとすれば、彼女の更なる発展にはゆかりんの協力が必要不可欠、ということになるのかも?
まぁ、今回はまた余計な心労を投げるのもあれなので、彼女は呼ばずにこっちで進めるけど。
……既に色々死にそうになってそうだから、あんまり変わらないんじゃないかって?
仮にそうだとしても、ここから更に重荷を投げ付けるのは
とまぁ、多分未だに魘されながら気絶中だろうゆかりんに思いを馳せつつ、改めてしのちゃんに向き直る私。
真面目な話になることを察して居住まいを正す彼女に視線を合わせつつ、私は口を開く。
「そういうわけだから、とりあえず色々試してみよう」
「はい!……はい?」
なお、彼女は思っていた言葉じゃなかったのか、私の発言を聞いた途端首を傾げて不思議そうにしていたのだった。
「んー、いつの間にか【星の欠片】が増えてるってこともあれですが、なによりそこから別のトラブルが生えてきているっていうのもあれですねー……」
「そんなのいつものことでは?」
「それはそうかも知れませんけど、多分そんなドヤ顔で言うことでは無いですよね!?」
「?!」
「なに言ってるのこの人、みたいな顔をする場面でもありませんからねー!?」
はい、そういうわけで呼び出された琥珀さんである。
研究といえば彼女、発展といえば彼女、解決といえば彼女。
恐らくこのなりきり郷で一番多忙であろう彼女は、今回も同じようにトラブルを投げ付けられる形となったのであった。
……いやまぁ、別に考えなしに負担を押し付けてるわけじゃないんだぜ?
「最近は研究員も増えたんでしょ?」
「……まぁ、そうなんですけどね?あれこれありすぎて手が足りないと直談判したところ、八雲さん直々に予算やら人員やら増やして下さいましたし」
「そうそれ」
「…………はい?」
「研究員が増えたってことは、まだまだ新人達の教育が行き届いて無い、ってことでしょ?他所で幾ら優秀だったとしても、なりきり郷で起きる案件に初見で対応できる人なんて珍しいわけだし」
「……まぁ、それはそうですね」
「そこで実地訓練を積ませようってわけ。はい、
「モノは言い様すぎる!?」
はい。……はいじゃないって?
まぁでも、【星の欠片】案件が現状一番優先度が高いのは事実なのだ。
どうやら私が知らないところで、琥珀さんってばキリアとかからそっち方面の話を聞いたりしてるみたいだし。胃を押さえながら。
……それだけ関心があるのなら、こうして【星の欠片】が関わる・及び関わらざるを得ない案件に興味がないわけがないし。
なので、
「その結果、束さんの貴重な休日が潰れたんだけど……」
「別にいいでしょ、知ってるんだぜ君が休みの日に干物と化してるの」*1
「なななななにを言ってるのかなこのパーフェクトヒューマン束さんがそんなどこぞのうだつの上がらないサラリーマンみたいな休日の過ごし方をしてるわけがががががが」
「……束、それ自分から白状してるようなもんじゃない?」
で、琥珀さんが連れてきた助手達が、この二人。
前から彼女の補助をしていたクリスと、最近琥珀さんのラボに加わった束さんである。
クリスの方は【星の欠片】案件にも慣れきったようで、特に緊張した様子もなく自然体だが……束さんの方はそうも行かない様子。
原作なら自分の方がトラブルメイカーだろうに、なんと情けのない……!
「仕方ないでしょー!?私ってば多分に二次創作の影響受けまくり、いわゆる白束さんなんだからねー!?っていうか原作の私ヤバくない!?」
「まさか主人公のこと殺したいくらいに気味悪がってるとはねー」
いや、どっちかというと妹と主人公の姉への執着が思ったより強かった、というべきか。*2
……まぁともかく、原作におけるマッドサイエンティストまっしぐらな彼女に比べ、ここの束さんが比較的マシな方であることは間違いない。
それは同時に、自分以外の非常識に対する耐性が下がる、というデメリットを抱えるモノでもあるわけだが……その辺はほら、これから慣れていけばいいというか?
幸いなことになりきり郷はそういう展開に事欠かないので、安心して対トラブルの経験値を稼ぐことができるだろうし。
「そんなもの稼ぎたくなーい!!」
「諦めなさい束、アンタもそのうち私みたいにビーストと相対する羽目になるのよ……!!」
「ウワーッ!!同僚がわりと大概な経験してるぅー!!?」
……などと、短い間にごりごり経験値稼いでしまった結果、どこか遠い目となっているクリスを見ながら考える私である。
うん、戦闘要員じゃないのになんでこの人『ビースト擬き』と戦ったことあるんだろうね?
いやまぁ、話の流れというかなりゆき上仕方のない話ではあったんだけども。
ともかく、同僚の心強い励まし()に感涙の涙()を流す束さんにうんうんと頷きつつ、改めてとどめの一撃を叩き込みに行く私である。
「正直
「
(露骨に、)
(目を逸らした……!?)
はい、君初登場いつだか思い出してみろよ、みたいな。
……カードゲーマーとかなりきり郷だと寧ろトラブルの代名詞だろう、よくもまぁトラブルに巻き込まれるのは嫌だとか言えたもんだな、みたいな?
いつぞやかは他所の世界でもトラブルのきっかけになりかけてたりしたし、カードゲームの抱える潜在的脅威を思えば【星の欠片】なんぞ雑兵……え?流石にそれは頷けない?
まぁともかく、どっちかといえばトラブルメイカー側に属するカードゲーマーを、自分からサブ
流石にそこを突かれると黙るしかない、とばかりに大人しくなった束さんに周囲が唖然とするのを見つつ、改めて私は今回の案件についての説明を始めたのだった……。