なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なななななな、どこでそれを!?」
「カマ掛けただけなんだよなぁ……」
「なにぃっ!?」
うーんノリが良い。
……実際、作ろうと思えば作れるだろうな、とは思っていたのだ。
最近なりきり郷にやってきた人とか、今までもここにいた人とか。
そういう人達から対象となる面子を集め、データを取っていけば実用に足る時間操作系技術を作り出せるだろう、みたいな?
まぁ、実際に作れているかどうかは半々だったため、出来ててありがたいという気持ちはなくもないのだけれど。
「……わりと禁忌の技術じゃねぇか、それ?」
「そうでもないよ」
「なんでだよ」
「『星女神』様」
「あー……」
なお、他の面子からは『やベー技術では?』みたいな反応が返ってきたが……そもそも【星の欠片】って極めると時間操作無効がくっ付くので無意味です、と返しておく私である。
っていうか、じゃないと『星の死海』とか帰って来た時には外の世界滅んでるし。
あそこの時間の流れが正常だったら、一体どれほど滞在した扱いになってるやら。
「……ん?じゃあタンマウォッチ所望なのは……」
「そういうこと。別の時間の流れを作るより、単に時間を止める方が作るの楽でしょ、みたいな?」
で、それに付随して出てくるのが『なぜタンマウォッチを求めたのか?』という理由。
同じ時間操作系なら、別時間を作るアイテム──アイテムじゃないけど精神と時の部屋みたいなものでいいんじゃ?
……みたいな話になりそうだが、実のところそういう完全に時間の流れの違う空間を作る方が難しい、というのは事実。
あとはまぁ、しのちゃんの成長を促すならそっちの方が都合がよい、というのもあるか。
「成長を促す?」
「彼女の【星の欠片】──『揺れない天秤』は以前から説明してる通り、自身を周囲の異常から保護するもの。己を変質させないことに特化するものだから……」
「あ、なるほど。時間停止ってある種の状態異常だから……」
「そ、単にタンマウォッチを使ってるだけで経験値が貯まるのよ」
そう、理由として強いのはどちらかといえばそっち。
時間停止は区分上ある種の状態異常に該当するため、それを使い続けるだけで【星の欠片】としての経験値が獲得し続けられるのである。
これは、フィールドタイプ──周囲と時間の流れの違う世界を使用した場合には得られない効果だ。
というか、【星の欠片】の原理的にそっちで経験値を得られる場合、そのうちフィールドが瓦解する可能性大というか。
「えっ」
「時間停止の場合、単に止まった世界に置いてかれてるだけだから特に問題はないけど、別の時間を主体としたものの場合【星の欠片】はいわゆる流れを妨げる大岩みたいな扱いになるからね、そりゃまぁ滅茶苦茶負担になるのも仕方ないというか」
感覚としては『みんなで一緒に止まろうぜ!』ってやってるのが時間停止で、『新しい遊び場を作ろうぜ!』ってやってるのが別の流れの時間……みたいな?
前者は極論一人が勝手に動き回っててもその人がルールを無視してるだけなので、『みんなで止まろう』という目標に影響はないけど。
後者の場合は遊び場のルールであり、それを守らない相手は排除しなければいけない……という感じだろうか。
「言い方は悪いけど○Vみたいなもの、というか?そういうルールとして見てるから犬が動いてようが話は続く時間停止ものと、時代劇・ファンタジーなのに現実的な新幹線とかが走ってるのは話が違う……みたいな?」
「唐突になに言ってるんです!?」*1
いや、わかりやすいかと思って……。
まぁともかく、【星の欠片】が空間創造系の技能と素晴らしく相性が悪いのは事実。
平常稼働状態ならともかく、高出力状態だととてもよろしくないのは覚えておいた方がいいだろう。
「まぁ、ある程度レベルが下がってればその辺りも考慮して動けるけどね」
じゃないと私ここに居られないし、と締める私である。
「で、試作品のタンマウォッチを受け取ってしのちゃんのレベルアップに勤しんだ私は、その結果しのちゃんがなんかよく分からないことになったことに困惑する羽目になったのでしたとさ……」
「よくわからないとは?」
「なんかこうシノンとカタリナさんが混じった見た目になった」
「それってどういう……ウワーッ!!本当に混じってる!!?」
修行部分は長い&停止時間内なので面白くないということで大幅カット!
……したわけなのですが、その結果【星の欠片】じゃない面々から困惑の眼差しを向けられることになりましたキーアです。
いやだって、ねぇ?
見ればわかるけどしのちゃんが全く?別人になってるんだもの。
具体的にはシノンがカタリナさんの服着てる、みたいなことになってるというか。ついでに言うと滅茶苦茶ビィ君撫でてる()
……いや、さっきまで居なくなかったその子?
「オイラには全く見えなかったんだぜぇ……オイラはいつの間にこんなところに連れてこられたんだぁ……?」
「いや、そもそもソイツ『tri-qualia』内の存在じゃなかったか……?」
「そんなこと、私の愛の前には些細なことよ」
「あっはい」
……いやまぁ、一応特訓の成果なんだけどね、これ。
ざりざり撫でられているビィ君に向けられる憐れむような視線は一先ず置いておいて、その辺りのことを解説する私である。
「特訓の成果ってことは……」
「うん、他者付与に成功したってこと。……って言ってもまだまだ足りてなくて、現状だと一日一人にしかできないんだけど」
「それでも大進歩なのよ、私からすると。自分という範囲を広げるんじゃなくて、あくまで他人は他人として保護するってとっても難しいんだから」
「……キーア、説明」
「へいへい。最初彼女は他人に天秤を適用するって聞いて、自己の範囲を広げることで対応しようとしてたんだよね」
いやまぁ、確かにその方法でも対処はできるだろう。
実際【星の欠片】はあらゆるものに含まれるもの、その考え方を応用すれば他人を自分と同一視するのはそう難しくない。
そうして認識を変えてしまえば、あっという間に他人への付与もこなせていたはずだ。
「それだとダメなのは、そのやり方だと
「……どういうことなんです?」
「あれよ、雑に言うと自他の境界を壊しかねないってこと。……さっきも
「……ええとつまり、その見方に慣れすぎると意図せず相手を溶かしてしまう、と?」
「溶かすってよりは
「うわぁ」
それがダメなのは、その考え方が極論
言い換えると、相手を自分という【星の欠片】に意図せず同化してしまう考え方なのである。
あれだ、そのつもりはないけど『貴方はそこにいますか?』って問い掛けてるようなものだというか。
あっちより酷いことに、その声は自分の──聞いている相手の体の中から聞こえてくるので、無視するのが不可能。
結果、意図せず
それ、吸収先が聖杯からしのちゃんに変わっただけなので全く無意味だよね?
……ってわけで、簡単なやり方は禁止したわけなのである。
「まぁ、禁止した結果こうなっちゃったんだけどね……」
「仕方ないでしょう、自己への理解を深め他者と自分との差を見つめ直さないといけなかったんだもの。……そりゃまぁ、その結果として他の要素との結合も進むわよ」
言い方を変えると、自分の能力の理解の深さが姿の変化として現れた、みたいな感じになるのだろうか?
……ともかく、今のしのちゃんが以前のそれとは違い、なにかしらのキャラであることが一目でわかるようになったのは事実。
その上で問題なのは、恐らくこの姿から変化させるのは難しいだろう、という部分だろう。
「姿を変化させるのが難しい?どういうことじゃない」
「自身への理解を深めた結果変化した姿って意味では、私の髪の色が変化したのと似たようなものだけど……髪とは違って彼女の場合、
「?よくわからないんだけど」
「着替えられない可能性大なんだよこれ」
「!?」
……あれだ、絵柄によってそのキャラに見えなくなることがある、みたいな話。
特定の絵柄だからこそそのキャラとして認識される、みたいなパターンの場合、その見た目自体がキャラの個性として判定されている、みたいな話だとも言えるだろう。
その結果なにが起こるのかというと、服装や髪型を変えることができなくなる。
もっと自己への理解が進めば話は別なのだろうけど、今のしのちゃんだとシノンの見た目でカタリナさんの鎧を着ている今の姿から変化させられない、という話になってしまうのだ。
「一応『清めの炎』*2的な技法を教えておいたから、身嗜みの手入れが全くできないってことはないだろうけど……」
「鎧が脱げないから風呂にも入れない、ってこと?!」
「
「もしかしてオイラのこれも?」
「ざりざり撫でが暫くデフォですね」
「うぎゃあぁぁぁぁぁぁあっ!!?」
なにがあれって、タンマウォッチへの負担的に今これ以上の修行は難しそうなんだよね……。
少なくともホワイトデーが終わるまで酷い目に合うことが確定したビィ君に対し、思わず黙祷してしまう私たちなのでありましたとさ……。